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【147】ごろごろデー



有言実行とでも言うのか、本当にベッドの上で転がったまま離してくれないディス。


前日に朝食を部屋に運ぶようしっかり手筈を整えていたらしく、少し前にセシルがワゴンに二人分の朝食を乗せて運んできた。


「こんな風に貴方とゆっくりするのも久しぶりのような気がします。いつも朝からバタバタと忙しいですからねぇ貴方は」

「それは仕方ないよ、朝食の準備があるし」

「ふふ、貴方が朝から忙しくしているおかげで美味しい食事が頂けるのですがね」

「とりあえずさ、お腹空いたから冷めないうちに朝食食べたいんだけど」


起き上がりベッドから降りようとしたがすぐに押さえ込まれ「ワゴンをベッドの方まで寄せましょう」と、ディスがベッドから降り、ワゴンをベッドのすぐ脇に寄せると、手に取ったパンを小さくちぎり、私の横に腰を掛けてこちらに向いた。


「はい、どうぞ」

差し出されたパンを受け取ろうと手を伸ばすと

「違いますよ、口を開けてください」


・・・はい?

これは、あーんしろって事か?!


「さぁ早く、口を開けてください。お腹空いたんですよね?」

「いや、自分で食べれるけど・・・」

「さ、早く」

絶対に譲らないという力強い目で見るディスに、仕方なく口を開けると、途端にニヤけた表情となり嬉しそうにパンを口に入れた。

口の中にパンが入ったので口を閉じると、口唇に触れたディスの指先の感触にドキッとする。


「ふふ、顔が赤くなってますよ。可愛い」


確信犯かっ!


可愛いと言いながら、横から絡みつき悶えるディスを無視して、ワゴンに手を伸ばし自分でパンを食べた。


その後も二人でベッドの上で寝転がりながら、お喋りや読書を楽しんでいると、部屋に響いた扉を叩く音。


セシルが朝食の食器を片付けに来たのか?

「はーいー、どーぞー」と声をかけると、扉を開けて顔を出したのはヴァルテスだった。


「ヴァルテス?どうしたの?」

思いもよらなかったヴァルテスに少し驚いた顔をすると「あ、もしかして邪魔だった?」

と、笑いながらテヘペロというような顔をしたヴァルテスに、ディスは容赦ないひと言。


「えぇとても邪魔です。用がないならお引き取りください」

「えー!ルキア、冷たーい!お嬢、ルキアが冷た過ぎるー」

「え、ちょっと待って待って。何なのいったい」

「あぁ、ちょっと暇だっただけっす」


はぁー?!


「ヴァルテス」静かに名を呼んだディスの声には少し怒りが感じられた。


「いや、確かに今は暇は暇なんだけど、それは冗談で、午後からアルフ兄と一緒に森に討伐に行く予定なんだけど、お嬢も行かないかな?と思って誘いに来たんだ」


「エルファミアは行きません。今日は二人で一日ゴロゴロすると決めていたんですから」


えー!と言うヴァルテスに「あまり邪魔すると、ヴァルテスが森に着いたと同時にドラゴンを放ちますよ」


「ひぃっ!ごめーん!」ヴァルテスは即座に逃げていった。


「せっかく誘いに来てくれたんだから、あまり怒らないであげてよ」

「いえ、私と貴方の大切な時間を邪魔する者は、何人たりとも許しませんよ」



暫くすると、昼食を持って来てくれたと同時に朝食の食器を片付けて出ていったセシルも、私の部屋に入るとディスがベッドに居る状況がもう何度目かなので、驚くこともなくなったようだ。


コンコン

昼食を終えるとすぐに、扉の音が響いた。

また、今度は誰だ?と思いつつ「どーぞー」と声をあげると、顔を出したのは、今日は母様と別行動らしいマリアだ。


「エルー、いま手空いてる?」

「今度はあなたですか。見て分かりませんか?空いてませんよ。エルファミアはいま私と戯れるのに忙しいのです」


はぁ?何恥ずかしいこと言ってるのさ。


「え、いつも普通に戯れてるじゃないの。出来ればおやつにタルトを食べたいなぁなんて思ってたんだけど・・・」


マリアの言葉を聞いて、ガバッと起き上がったディス。

「タルト!・・・あなたにしては良い案ではないですか」

「でしょ?私なんて卒業祝いの時にアデレから一口もらっただけなのよ?!」

「それはどうでもいい事ですが、あぁタルト・・・食べたいですねぇ」


ディスは、ベッドの上でまるで体育座りのように膝を抱えながら、チラッと横にいる私を見た。

おい、今日はゴロゴロするんじゃなかったのか!?

更にマリアとディス二人で、捨てられた子犬のような瞳でじーっと見つめてきた。


・・・くっ!仕方ない。


「じゃぁ調理場に行きますか」

よし!と拳を握り喜んでいる二人。

この二人って以外と気が合うよね?


調理場に行くとすぐに生地に取りかかり、カスタードクリームを練り、タルトが焼き上がるとカスタードの他に、調理場にあった果物でタルトを仕上げ、少し冷やしてからオヤツタイムだ。


「んー、周りのクッキーのようなサクサクとカスタードクリームが合うわー!本当美味しい!」

「ですね、パイも良いですがタルトも好きです」


パイって何ー!と叫んでいるマリアを他所に、タルトを二切れ食べ満足したディスは「さ、部屋に戻ってゴロゴロの続きをしましょう」と、私の手を取ると、その場から消えた。


「ちょ、エルー!待ってー!パイって何ー!」と叫ぶマリアの声が聞こえたが・・・いやいや、目の前から消えても、普通に同じ屋根の下にいるから。



「明日はどちらに出掛けましょうかね、エルファミアは何処か行きたい所はありますか?」


ベッドの上でうつ伏せになりながら、肘をついて本を読んでいると、隣りから寝そべった状態で、開いた本の上に顔を出してきたディス。


うおっ!と、いきなり目の前に現れた顔に仰け反るように驚くと、くくっと笑っている。


いやいや、仰向けの状態で仰け反るとか、腰をゴキっとやっちゃうからやめてー!


どこに行きましょうか、と楽しそうに思案しているディスに「じゃあ海は?暑いし海水浴とかしちゃう?」


『海水浴』が分からなかったディスに、海で泳ぐ事だよと説明すると「海の中は魔物が出るかもしれませんが、面白そうですねぇ」と海に行く事が決定となった。


と、なれば弁当だ!

その後二人で弁当に何を入れるか、メニューを決めながら、夕方までひたすらゴロゴロした。










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