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【143】やはり夜会か



今夜のメニューは炊き込みご飯と鶏の唐揚げ、唐揚げは塩と醤油の二種類にして、あとは野菜たっぷりのコンソメスープとポテサラ。

メニューを聞いたディスは「素晴らしい」と呟いた。


炊き込みご飯と唐揚げは皆好きだからね。


調理場で仕込みを始めると、料理長達は私に指示を仰ぎ率先して手伝ってくれる。助かる~

料理長達のおかげで、早めに仕込みを終えると

「先程教えていただいたメレンゲクッキーと、あとプリンも作ってみたので宜しければ味見をしていただけますか?」


おお、早速プリンも作ってみたのね。

もちろん有り難く頂きます!

そしてもちろんディスもプリンを受け取り、二人で調理場の隅に腰掛けて、おやつタイムに突入した。


不安げな顔で、私達の食べてる様子を伺う料理長。そんな料理長にグッと親指を立てると、ん?って顔をした。

そんな料理長の顔見たディスが、すかさず真似して親指を立て「これは『凄く良い』って意味ですよ」と説明すると、料理長達は顔をパァッと明るくさせ、手を叩きあって喜んだあと、すぐにこちらに向かって親指を立てた。


こうして『親指でグー』が浸透していくのであった。


「明日から数日私達は留守にするので、明日の朝にこちらに伺った後は暫く来られなくなるかと思いますので」

「え!エルファミア様がお留守!何日程でお戻りになるのでしょうか?」

「四日か五日は留守です。ですが帰って来たら、私の邸に調理場が完成している予定ですので、こちらにはあまり頻繁には来られないかと」


ディスの言葉に料理長の顔は、途端に悲壮感を漂わせ、かなり落胆した様子だ。

「もっと料理を教えて欲しかった・・・」

「いやいや、来るよ?朝昼晩は流石に来ないけど、陛下に用もあるから普通に来るし」


私の言葉にパァッと顔を明るくさせ、喜んでいる様子の料理長に「米仕入れてくるから、米料理いっぱい教えてあげる」と言うと料理長は満面の笑みでビシっと親指を立ててきたので、それに答えるようにドヤ顔で親指を立てた。


「あー!またプリン食べてる~!」

突然、調理場に現れた青。

「青、休憩でもしに来たの?」

「そう、一息入れようと思って、何か甘い物ないかなと思ってね」と言いながら、メレンゲクッキーを見つけ目をキラっとさせた。


「このクッキー貰っていい?」

いいよ、と言う前に口に放り込んだ青。

「美味っ!何これ、初めての食感」

「それはエルファミアが考案したメレンゲクッキーと言うお菓子です、とても美味しいでしょう?」

説明しながら何故かドヤ顔のディス。


「料理長さんがいっぱい作ってくれたから、他の三色にも教えてあげたら?」


ブハッ!

私の言葉にディスが吹き出した。


「・・・本当に、いつか名を覚えてくれよな」

と、大量にクッキーを持ち、消えて行った青。


その後、料理長と明日の朝はサンドイッチにしようと話し、タマゴサンドとハムと野菜のサンド、あと今夜のメニューのポテサラを大量に作り置きして、ポテサラサンドにしようと決めた。

私が朝来るまでにマヨネーズを作り、卵は茹でておいてくれることになった。そしてスープはクラムチャウダー擬きを作ると言うと、指定した野菜を切っておいてくれるとか。流石です、料理長!


夕刻前に、ディスにまた邸に四人分を届けてもらい、夕刻時には城の食堂のテーブルに山盛りの二種類の唐揚げと、ポテサラとスープ、そして炊き込みご飯が並べられた。


「こんな美味い物ばっかり食べてたら、他の料理食べれなくなっちゃいそうだよな~」

そう言いながら、チラと私を見る赤の視線に気づいたディスが途端に不機嫌そうな顔になった。


「ん?大丈夫。ここの料理長がしっかり覚えて毎日作ってくれるから、安心して」

そう言うと、チッ!と舌打ちした赤に対してディスは勝ち誇ったようにニヤっとした。


「ヘンダーソンの邸と訓練所の食堂も、すっかりエルの考案した料理に変わったからね、ここもすぐだと思うよ」と言うアルフ兄の言葉に、そうかそうかと嬉しそうに頷く陛下。


ヘンダーソン邸の料理長とマルセルさんは、料理に対しての探究心大勢だから、私が教えた料理から更に派生させて、レパートリーを増やしている。素晴らしい料理人達だ。



「そうだ、その、なんだ、アメディスからエルは宴が苦手だと聞いたが・・・どうなんだ?」


なるほど、普通は来賓があればどこの国でも夜会が開かれるが、ここではそんな話が出なかったから、魔族には来賓=夜会の概念がないのかと思っていたが、そうではないらしい。ディスがストップを掛けてくれていたんだね。


「えぇ、好きではないですね」

「やはりそうなのか・・・他の臣下達が皆、君達に会いたいと言っていてだな、夜会を開けと五月蝿く言ってきてだな・・・」と、眉を下げ、肩をガックリと落とす陛下。


夜会か・・・変な女達からの不躾な視線を浴びたり、絡まれる未来しか見えない城の宴。ディスはそんなものに出る必要ありませんよと言っているが、陛下の立場を考えたらやはり断りにくい。


「俺らは男だからいいけど、お嬢はな~」

「そうだねぇ、エルは人目を引くからね。でもそういう時こそ、エルの臣下の出番なんじゃないの?」

「まぁそうなんだけどさ、女でも暗殺者みたいなやつなら躊躇なく手を出せるんだが、流石にただの男狙いの着飾った女はな・・・違った意味で怖いからな、女ってのは」

「それは分かるよ~」


ヴァルテスとアルフ兄は二人で女の怖さを、しみじみと語っているが、二人が女で酷い目にあった話とか、まるで聞いた事ないんだけどっ?!


「エルファミア嬢には、アメディスとその二人以外にも俺らが付いてるから大丈夫じゃない?」と緑が言うが、それが逆に目立つんだよっ!

「オリビン、分かってねぇな。俺らが付いてる方が悪目立ちするんだろうが」と青が言う。


本当それよ、と思わず青にうんうんと頷いた。


「まぁ私達が付かなくても、アメディスが付いてる時点で目立つのは確定でしょ」と言う黒。


まぁディスが傍に付いていなくても、マーキングだらけの時点で目立つ事は確定なんだけど。


絡んで来るのは確実にディス狙いの女達だ。

この美形が悪い!と思わずディスをジーッと見た。

「夜会なんて面倒なのでやらなきゃ良いだけです」


それ言っちゃ元も子もないっしょ、ディス。


「・・・出ますよ。とりあえず明日から数日はヘンダーソンに帰るし、暫く忙しいから10日後位で計画してくれます?」


私の返答に、一瞬にして顔をパァッとさせ喜びを見せた陛下は「10日後だな、そのように指示しよう」


と、10日後に夜会が開かれる事が決定した。









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