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【118】二つ目の贈り物



食後にお喋りをした後、アルフ兄とヴァルテスはそれぞれ自室へと戻って行き、食事の後片付けを終え、ソファで寛いでいるディスの隣りに腰を掛けると、おもむろに空間から昼間購入した石が入った巾着袋と一緒に、魔鉱石と魔石を取り出した。


「今から何か始めるのですか?」

「今のうちにやっておこうかなって」


自分の目の前のテーブルの上に小さめの魔鉱石を一つ置き、魔力を流し、出来上がった物をすぐにディスが手に取った。


「指輪ですか?それにしては大きい気がしますが」


大きさはそれくらいで合ってる。

指輪じゃないから。


続けて目の前に、今作ったリングと魔石、そして小粒なグレーと透明の石をいくつかジャラジャラと置いた。


「魔鉱石で作った物を、更に錬金で別の物にすると言う事ですか?その思いつきが流石ですねぇ」


魔鉱石は金属系の物を創るのに必要な石。

魔石は金属系以外の物を創る石だ。

魔鉱石で創った物を、また魔石を使って別の物にしようと考える人はいないらしいが、でも私が創りたい物は、どうしてもこの方法でないと創れない。


「どの位の魔力持っていかれるかな」

「大丈夫ですよ、私が傍にいますから。万が一の時はすぐに私が魔力を分けて差し上げます」


え、ちょっと待って。

前に、交われば魔力を注げるとか言ってたよね?

私が気を失っている間に・・・って事?!

驚いて見開いた目でディスをじっと見る。


「くくっ、心配いりませんよ他にも方法はありますから。出来れば成人するまでの楽しみにしておきたかったのですが、万が一の時は仕方がないので」


そ、それはまさかこの間、ディスがデカい声で言ってた独り言の事か?口なのか?しかもチュッとか可愛いやつじゃなくて、本気のやつって事よね・・・


思わず手に汗を握った。

だがやるしかない、やったる~!


覚悟を決め、頭に出来上がりを思い浮かべて、テーブルに一纏めに置いたリングと魔石、グレーと透明の石の全体に魔力を流した。


ビカッッ!!


物凄い光りを放った瞬間に、ディスが横からギュッと私を抱きしめ、私の顔を自分の胸に押し当てた。


・・・あ、意識ある、大丈夫っぽい


「大丈夫ですか?」

抱きしめた力を緩め、上から私の様子を伺うディスに頷いて返事をした。

「魔力、空にはならなかったみたい。少しダルいけど何とか大丈夫そうだよ」

ディスは私に微笑むと同時に、安堵のため息ををついた。


ディスの腕に支えられ姿勢を戻して、テーブルの上を見ると

「で、出来たー!ちゃんと完成してる」

リングを手に取り、良く見えるように顔の前へと持ち上げた。


幅1センチ、直径2センチ程のシルバーリングの全体に、リングを螺旋のように一周する鎖のトライバル模様が彫り描かれている。その中央の横一直線にはグレーの石と透明な石が交互に埋まっている、完璧だ!


ディスにむき出しでごめんねと言いながら手渡した。


私からの贈り物に、頬を紅潮させ喜んではいるが、微妙にテンションが上がりきっていない様子に、指には絶対大きくて合わないし。何に使うのか分からないのだろうと推測した。


「これは、今日注文した卒業式の服のタイに着ける装飾品なの。着ける時は私がやるから任せて」


途端に顔を破顔させ抱きついてきたディス。

「貴方から、貴方の色の服を頂けるだけでも嬉しいのに、貴方と私の色の装飾品まで用意して頂き、貴方自ら装着までしてもらえるとは、はぁ~もう本当に可愛い過ぎて食べてしまいたい」


ま、ただタイ用のリングだから、普段全く役に立たないけどね。と言うと、「チェーンに通して常に身に着けたいので、チェーンに通した際には私の首に掛けて下さい」と言われたが、首に掛けるのは自分でやればいいような気もするが?



翌日にはリングのチェーンを用意してきたディスは、私に手渡すとニッコリと笑顔を浮かべながら、少し前屈みになり頭をこちらに向けてきたので仕方なく首に掛けてあげると、顔上げ私の頬を両手で包んだ。


「大事にしますね」と目の前で、少し頬染めて微笑むディスの笑顔が可愛いくて胸がキュンとした。


この人たまにめちゃくちゃ可愛いよねぇ


後日、タイ用のリングを贈ったんだと話す私の横で、マリアに見せびらかすように、首に掛かったリングをチラつかせるディス。

そのリングを見た途端に、マリアもアデレイドに贈りたいわと目を輝かせた。


だが石を埋め込むのは大変な作業と分かると、諦めたようにシュンとしたマリアに

「石を埋め込むのは無理かもだけど、金属だけで格好いいの創ったらいいのよ」

どういう事?と首を傾げたマリアに、紙に図案を書いて見せた。リングはマリアの色の金色で、少し幅を広くし、その広くなった幅の所に透かし模様を入れる。と説明すると目を再び輝かせた。


透かし模様を、お互いの服に施す刺繍と同じ模様にしたら良いよとアドバイスすると、急に鼻息を荒くして元気になったマリア。


それから数日後「出来たわー!」と大喜びしながら私の部屋に来たマリア。透かし模様が綺麗な金色のリングは、お見事!と言う仕上がりだった。

そしてタイの結び方とリングの装着の仕方を、練習用に用意したタイで何度も練習し、マリアもタイが結べるようになった。


一生懸命にアデレ兄の為にリングを作ったり、タイ結びの練習をするマリア。

そのアデレ兄に対するマリアの思いに、私まで幸せな気分になり自然と笑顔になる。


そんな私とマリアの様子をディスも嬉しそうに眺めていた。











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