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【110】激甘な休み



一晩経つと、全身筋肉痛のような痛みの他に結構な倦怠感もあったので、学園休みはとても有り難い。

さすが私の兄だ、どっちが手続きしてくれたのか分からないが後でお礼を言わないとだ。


だがしかし!このずっと離れないで纏わりついているこの男。よく飽きもせずくっついてるなと逆に感心したくなる。


「よく飽きないね?」


私の言葉に表情は変わらないけど、僅かに揺れた紫色の瞳。

「・・・貴方は飽きたのですか?」

「あ、ごめん、言い方が悪かったね。そうじゃない、よく飽きもせず私にくっついてるなと思ってね」

「なるほど、飽きるなど決して有り得ないですね。時間が許す限りずっと貴方とこうしていたいですよ、永遠に」


妙に艶のある微笑みを浮かべ自分の両腕で、後ろから私の体を優しく包み込み髪に口唇を這わし、恥ずかしげもなくそういう事を言う。

途端に顔が熱を持ち、あぁ、聞かなきゃ良かったと少し後悔したように顔を両手で覆った。


「・・・まさか嫌なのですか?」


ん?そう言えば嫌ではないな

ディスの腕の中は安心できるし心地よい。

そう言えば、前世で聞いた事のある言葉『美人は三日で飽きる』っていうのは嘘だな。とチラッと後ろのディスの顔を見上げると、少し険しい表情をし鋭い目つきで私を見た。


「嫌だと言っても必ず連れて行きます」

「え?別に嫌じゃないよ」


私の言葉を聞いた途端に、鋭かった目は一度大きく見開いたと思うとすぐに細められ、艶っぽい微笑みを浮かべた。


「では、何を考えていたのですか?」

「え!あ・・・えっと・・・」


早く言えと言わんばかりにジッーと射抜くような視線を向けられ、仕方なく口を割る。


「えっと、前世の言葉で『美人は三日で飽きる』って言葉があるんだけど、美人って美形って意味とほぼ同じなんだけど・・・」


それで?とディスの目が続きを促している。


「・・・ディスは美形だけど飽きないなってっ」


言い終わる前にギュウギュウ抱きしめられた。

「ちょっ、体痛いからっ」

「あ、そうでした。喜びのあまりつい力が入ってしまいました。あぁ可愛い」


力を緩めたが、腕は解かず顔を私の髪に埋めスリスリしながら悶えている様子だ。


何だかディスの方がちょっと可愛いよと思えてしまう私は、やはりディスに絆されてしまったのだろうか。


兎に角、この激甘な雰囲気の中で、今日一日私の心臓が持つのかが心配だ。

明日も休みだが、明日は今回の拉致事件の事で父様と兄達が来るそうだ。夕方になったら誰かお見舞いに来ないかな・・・


「あ、そうそう。今日は丸一日、誰も来ませんから。来たら殺すと脅しておきましたからね」とニッコリ笑顔で言うディス。


はあ?!貴様何しとんじゃっ!


その後は、私がお腹空いたと言えばディスがすぐにどこかから食べ物を調達して用意してくれ、きっと甘い物も欲しくなるでしょ?とお菓子まで購入してきて、至れり尽くせりの日中だった。


陽が傾き、窓の外の風景が赤く染まって来た頃

「ねぇ、散歩行かない?」

「それは駄目です。まだ動き回ってはいけませんよ」

「えぇー、少しだけでも?」

「少しでも駄目です」

「じゃぁディスが抱っこして行くのは?」


私の提案に目をギラッとさせると

「それは良い案ですねぇ。行きましょう」

すぐさまニヤっとしてOKが出た。

その瞬間、心の中でガッツポーズを決めた。


どこか行きたい所はあるかと聞かれ、夕陽を見に行きたいと言うと「良い場所があります」と薄手のショールを私に掛け、横向きに抱き上げられたので首に手を回すと、ニッコリと微笑んだ。


「さぁ行きますよ」


一瞬目の前が真っ暗になり目を瞑る。

「着きました」とディスの声で目を開けると、辺り一面真っ赤な風景。

どこかの山の頂上?!山の麓の樹海の先に、まるで海に溶け込んでいくかのように沈んでいく真っ赤な夕陽がよく見える。

ディスの顔も赤く温かみのある色に染まっている。


「すっごい!綺麗!」

「ふふっ、こんな事でそんなにも喜んで頂けるのならいつでもお連れしますよ」

「ディスはここに良く来るの?」

「えぇ、前は良く来ていましたねぇ。今はこの夕陽よりももっと美しい貴方を見つけましたからねぇ」


私の目を真っ直ぐに見ながら話すディスに、またサラッと臭いセリフ吐いたな、と思いつつ顔が熱を持った。けど夕陽のおかげで顔が赤くなった事はバレずに済むだろうとチラッとディスの顔を見上げると、慈しむような目で見ているディスの目と目が合った。


「大人になるのが待ち遠しいです」


そう言うと額に口唇を落とした。

夕陽に照らされたディスの紫色の瞳が、夕陽の赤と混ざりいつも以上に妖艶に見え、その瞳に釘付けになった。



その後部屋へ戻り、体を冷やしたらいけないからとお風呂に入らされ、出てくるとまた食事の準備がしてあり、食べ終わるとまた抱きしめられ眠りについた。


そうして激甘な一日は終わりを告げた。



・・・朝、目を覚ませば、また当たり前のように隣りに寝てるんだけどね。










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