【11】訓練所、再び(2)
ギネス師団長が先程の水晶玉を片付け、また違う水晶玉を運んできた。魔力量を測った水晶玉より一回り大きいようだ。
「この水晶玉はさっきのとは違うのですか?」
「えぇ、こちらの水晶玉は属性判定用です。先程の水晶玉と同じように魔力を流すと、流した人の魔法の属性が分かります」
「属性・・・魔力量の話と一緒に先程少しアルフ兄から聞きました」
「なるほど。では簡単に説明を終わらせましょう。属性は要は向き不向きみたいなものですね。例えば火の属性を持っていない者は火の魔法が使えません。属性を持っていれば使える。と言うことです」
なるほど。とギネス師団長に頷いた。
「エルファミア嬢が先程訓練所で放たれた魔法は風と雷でしたから、その二つは確実ですね。ですが他にも属性を持っている可能性がありますからね。しっかり確認するための属性判定検査です」
「エルの属性、楽しみだな~!何が出るかな~」
アルフ兄はとても楽しそうだ。
ちなみに属性は火水土風雷が基本で、氷光闇植物もあるが、それらはレアのようだ。
その他にも補助系の身体強化魔法、魔力感知魔法、検索魔法、空間魔法、錬金魔法、付与魔法などがあるらしい。
補助系は水晶玉で判別難しいため、自分で何が出来るか色々試してみるしかないという事だ。
「一つ質問なのですが、身体強化を覚えたらどのように使えますか?」
「要は身体能力の強化だから、脚に強化を施せば脚力が上がり速く走れるとか、飛躍力が上がるとかかな?腕なら腕力?騎士団員はみんな体を鍛える時は強化してるね。そうした方が楽に実際の筋力が上がるらしいよ」
アルフ兄が説明してくれた。
おぉ、それは是が非でも覚えたい!
身体強化魔法が使えれば、筋トレもかなり楽にこなせるのでは?夢のような魔法だ!
普通の魔法より何よりも、まず身体強化魔法が優先だ!と自分の中で勝手に優先順位を決めた。
「さ、エルファミア嬢どうぞ。掌を翳してみてください」
ギネス師団長が水晶玉をずいっと私の目の前に置いたので、水晶玉の上に掌を翳し、魔力量測定の時と同じように魔力を放出した。
水晶玉がポワッと光りを放った。
今回はすぐに光りがおさまり、水晶玉の中に何か浮かんできたので三人で覗き込む。
水晶玉の中には赤色と薄い緑色と黄色の光りがポワンと浮かんでいる。
「なるほど。エルファミア嬢の属性は火と風と雷のようですね」
ギネス師団長が水晶玉に浮かんだ色を見て属性を教えてくれた。
「属性は普通で安心したよ~」
と笑いながら言うアルフ兄に、ひと言多いよ!と言う気持ちを込めて視線を送ったが、逆に笑顔でかわされた。アルフ兄に心の中で舌打ちした。
「では属性の確認も終えたので、お茶にしましょう。ひと息入れたら訓練所の方に移動しましょうか」
と立ち上がったギネス師団長。
「お茶、賛成です」ビシっと挙手する。
「お茶いいね~。色々驚きすぎて喉が乾いてることにも気づかなかったよ」
喉を擦りながら笑うアルフ兄に、すぐに持ってきますね。とギネス師団長は隣りの部屋に移動した。
お茶を待つ間
「基本の属性は分かったけど、まだ分からない補助系の魔法の確認もしていかないとだね。少しずつやって行こうね」
ニッコリと目を細め、私の頭を撫でたアルフ兄の笑顔を見て、少し罪悪感が湧き上がる。
前世の記憶を思い出したせいで、私は元の可愛い『エルファミア』ではない・・・騙してる訳ではないけど、少し気が重くなるなぁ
ギネス師団長がティーカップを乗せたトレイを持って戻り、テーブルに紅茶が注がれたティーカップを置いた。
「ささ、どうぞ」
目の前に置かれた紅茶に、砂糖を入れ一口飲むと、紅茶の良い香りが口いっぱいに広がり、少し沈んでいた心に染み渡っていく気がした。
三人でまったり紅茶の香りに包まれていると、扉をコンコンと叩く音がし、ギネス師団長が「どうぞ」と言うと扉が開き魔導師団員が一人入室してくる。
「ギネス師団長、失礼致します。ただいま帰還致しました」
団員は胸に手を置き礼をした。
どうやら今朝、兄達が話していた結界の外への偵察部隊が帰還し、報告に来たようだ。
アルフ兄が空気を読み「じゃぁ僕達は先に訓練所に行ってるから。師団長も手が空いたら来てね」
「エル行くよ~」と私の手を取り立ち上がり執務室を後にした。
偵察部隊の人が戻ってきたってことは、アデレ兄も無事に帰ってきのか?
「あの様子ならアデレも無事だね。きっと一息入れたらアデレも訓練所に来るよ」
無事なら良かった。
まだ本人に会って確認していないのに、双子のアルフが言うなら間違いないだろうと少しホッとした。
アルフ兄に手を引かれ訓練所に向かった。
訓練所に入り的がある方へ移動しながら、アルフ兄が魔法について説明を始めた。
「魔法にはそれぞれ基本として初級、中級、上級とあるんだ。魔法の上級者になると自己流の魔法を開発したりも出来るんだよ」
と言った後、アルフ兄が私を見て一拍置いて
「初心者でいきなり自己流魔法を発動しちゃった強者がここにいるけどねぇ」
と私の顔を覗き込みプハッ!と笑い出した。
私、上級者じゃないのに開発したってことか!
暫くすると笑いもおさまり、落ち着いたアルフ兄。
「まぁ、今はそこは置いといて、何でも基本は大事だからね。まず基本の初級から始めてみようか」
やっと本題に入るようだ。




