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【107】我慢だ、我慢だ



「様子はどう?」

見張り役として雑林に身を潜めていたアルフレッドとアデレイドに、雑林の近くまで隊を引き連れて来たクリスが声を掛けた。


屋敷の中にはエル以外に六人の人間の気配がある。


「あの屋敷の地下に部屋があるらしく、エルはどうやらそこに捕らわれてるみたいだよ」

「まだオスティナート公爵は現れてないのか」

「奴が現れるまで待機だな」


クリストファは頷くと「王国騎士団は雑林の少し離れた外側から、あの屋敷を囲むように待機だな」

「あの屋敷に転移魔法陣が設置されてない事は、王国魔導師に確認済だから、必ず馬か馬車で現れるはずだ」


王国内にある転移魔法陣の場所は、王国魔導師団の管轄の元で全て管理されている。




***************




『はぁ~、いつまでこうしてないといけないのかな。いい加減お腹空いてイライラしてきそうだわ~』


一人悶々と空腹と戦っていると、鉄格子の向こうから複数の足音が近づいて来た。

鉄格子の前に現れた二人の男。一人はやたらガタイがいいから、私を担いだのはこの男か。


「ようお嬢ちゃん、お嬢ちゃんは戦闘の女神の加護持ちなんだってなぁ?そんな加護聞いた事もねぇけどなぁ」

「そんな加護が本当にあったら、易々とこんな目に合わないんじゃないか?」


二人はガハガハッと私を馬鹿にしたような笑い方だ。


ふふん、笑えばいいさ。だって本当に加護なんかないんだから悔しくもないっつーの。


あんた達の言ってることは一部正しいよ

・・・一部だけね。



「戦闘の女神さまは随分と可愛らしい顔しているな、これは高く売れそうだな。グヘヘヘッ」

「公爵が手を付けちまったら半減してしまうから、このまま売っちまった方がいい値がつきそうですぜ。グフフフッ」

「それは仕方ない、この戦闘の女神さまは公爵の獲物だからなぁ。ガハハハッ」


いちいち語尾に笑い声が入るのが、やたら鼻につくな。


チッ!


口元を覆われた布の下で盛大に舌打ちをしたが、ガハガハッ笑っている自分達の声に気づかなかったようだ。


「公爵が来たらお前の身の振り方が決まるからな。公爵に手篭めにされてから売られるか、そのまま売られるかの二択だがな。それまでここで大人しくしていろ」


勝手に二択に決めるな。

私はあんたらが知らない三択目を選ぶから。





***************




陽が傾き、辺りが夕陽で赤く染まる頃


「失礼します!殿下ご報告します。馬車が一台こちらに向かっているようです」


一人の王国騎士団員の報告を聞き、その場にいた全員の目が鋭く光る。


「いよいよ来たか」

「オスティナート公爵が確実に屋敷の中に入ったと確認できたら行動開始だ」

「やっと殿が登場か。きっとお嬢は今頃腹空かしてイライラしてんぞ」


ヴァルテスの言葉に、エルファミアを良く知らない者は怪訝な顔付きとなったが、アデレイド・アルフレッド・クリストファの三人は引き攣った笑顔を浮かべた。



雑林の中、一本の畦道を走る一台の馬車が屋敷に向かって行き、門を潜った。


「雑林の外側に待機している全隊に伝令、速やかに雑林の内側へと移動し屋敷を囲めと伝えろ」

「御意!」




***************




天井近くの鉄格子の嵌った小窓から外の様子を見ると、すでに夕暮れだ。


ちょっとー!朝食べたっきり何も口にしてないんだけどっ!?あ、魔力増強剤は飲んだなぁ・・・

と不味い味を思い出し一人で渋い顔をしていると、足音と話し声が聞こえて来た。


「戦闘の女神の加護と聞いてましたが、簡単に捕獲できましたぜ」

「やはり噂はあくまで噂と言う事だな」

「そのようですな」

「公爵様、あの娘はかなりの上玉ですぜぇ」

「ほぅ、まだ13歳と聞いたがそんなに美しいのか?」

「へぇ、あれは間違いなく高く売れますな」

「ほほぅ」


聞こえた声は四人、私を攫った二人の他にもう二人。

一人は公爵だがもう一人は?

聞こえた公爵と呼ばれた男の声は、いやらしく含みのある物言いに聞こえた。


話し方がネットリしていてキモいっ

納豆でも食ったんかっ?!

いや、納豆なんてこの世界になかったな!


心の中で悪態をついていると、鉄格子の前に現れた私を攫った男二人と、見たからに貴族だと分かるフリルでフリフリのブラウスに装飾品が無駄に多い服を着て、指に嵌めた指輪ギラギラの男と、もう一人もフリフリブラウスだがボタンがはち切れそうなずんぐりむっくりした体型に、髪は何かつけているのか、ベットリと七三分けだ。


ぐはっ!ネットリは話し方だけじゃなく頭もだった。

頭はネットリを通り越してネッチョリって感じだ。


二人組みの男の一人が鉄格子の鍵を開け、公爵を先頭に中へと入って来ると、一人の男が私の口元の布を外した。


「ほうほう、これはこれは。可愛らしくもとても美しいではないか。やはり愚息には勿体ないな~」


舌なめずりをした公爵を思わず半目でじっーと見つめた。


「オスティナート公爵様に対してその目付きは何だ!」

そう言い、もう一人の貴族の男が腕を振りかぶった。


バシッ!


私の頬に貴族の平手がクリーンヒットした。


「まぁまぁアゼルファム伯爵、気が強い娘を従順にさせるのもまた一興だぞ?ワッハハハハ」


アゼルファム伯爵・・・名前覚えたからな。


「さぁさ、良く顔を見せてごらん」

その言葉と共に私の近くに寄り、下から覗き込むように顔を近づけて腕を掴まれた瞬間に、全身ゾワッと鳥肌立ったと同時に、頭が勝手に動いてしまった。


ガツッッ!!


「ガハッ!!」

「オスティナート公爵様っ!」


公爵の顔に見事に頭突きをかましてしまった。


「この小娘がっ!少し痛い目にあわせてやれっ!」


あー、やったわーこれ、自業自得のパターンだわ。

とりあえずボコられるしかないな。


伯爵の命令で私に殴りかかってきた男二人。

平手打ちを数発くらい、地面に叩き倒され蹴りでボコボコにされた。










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