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【101】ヴァルテスと二人



朝、目が覚めるといつも通り隣りに感じる温もりに思わず「フフ」と声を漏らした。


・・・は?いま自分の中で、ディスの温もりに幸せ感じる~みたいな雰囲気になってなかった?!と焦り、思わずガバッと起き上がると「まだ早いですよ」と腕を引かれディスの胸元にポスンと倒れこみ、そこをすかさず両腕でがっちりとホールドされ身動きが取れない状態に。


けどディスの刻む鼓動と温もりの心地良さに「まぁいいか」と思考を手放し、再び夢の中へ・・・


皆が朝食を食べに来る前に、調理場へと行きサンドイッチを作る。今日はゆで卵のマヨネーズ和えのタマゴサンドとポテサラサンドと野菜サンド。カスタードクリームとフルーツを挟んだフルーツサンド。


ディスの分だけ、こっそりと空間にしまった。


一旦部屋へ戻りディスに朝食を渡すと、セシルが来る前にとサンドイッチを片手に部屋から一瞬で消えたディス。


身支度を終え食堂に戻ると、すでに食堂に来ていたケイト・ローズ・マリア。よく見るとケイトとローズのスカートが短い?もっとよく見るとスカートではなくガウチョパンツだ。


「マリアから頂いたの。どうかしら」

「少し恥ずかしいけど、気にせず動けて楽でいいわ」


二人に似合ってるよと親指を立てると、二人も笑顔でありがとうと親指を立てた。そんなほっこりな雰囲気を見てドヤ顔をするマリアに、思わず心の中で吹き出した。


父と母は早くに食事を済ませて、もう出掛けてしまったらしい。相変わらず忙しいのね。

食堂には兄二人とヴァルテスも加わり、皆で食事を始めた。


タマゴサンドとポテサラサンド、そしてカスタードクリームのフルーツサンドは、前日の昼と夜の食事に続き、ケイトとローズに衝撃を与えたようだ。


食事を終え向かった訓練所。

昨日と同じように、アルフ兄とケイトとローズはギネス師団長の方へ、アデレ兄とマリアはエドガー騎士団長の方へと、それぞれが向かって行った。


残った私とヴァルディスは、目立たないように騎士団の寄宿舎の裏手に敷き詰めてある芝に、二人で腰をおろし魔法付与の事を話し始めた。


「そうだな~、武器を本気で構えた時に、掌に何か違和感を感じたことない?」

「違和感?」と掌を見るヴァルテス。

「そう、何かちょっとチリチリするような」

「チリチリはないけど、少し熱い気がした事はあるかな?でも刀を握って気合いを入れ過ぎたとか、有りそう」

「なるほど、ちょっと刀出して構えてみてよ」


アイテムバッグから黒塗りの刀を出し構えるヴァルテスに、自分も空間から刀を取り出すと、すぐに抜刀して即座にヴァルテスに刃を向け飛びかかった。


「うわぁっ!」と驚きながらもしっかりと刀で受け止めたヴァルテスに「いま、どう?」と聞くと、ハッとして自分の掌を見つめた。


「言われてみれば、何か変な感じするかも」

「よし、ヴァルテスは何の魔法が一番得意?」

「得意か、魔法あんま使わないし、強いて言うなら火かな」

「じゃぁ刀の刃に炎を纏わすイメージして見て」

「刀に炎を纏わす?」

「そう、例えば刀の刃に螺旋状に炎が渦巻いてるとか?」

「なるほどな」


口を閉じて静かに何かを想像している風なヴァルテス。

「想像出来たら、刀を握った掌から魔法を放出」

「え、刀燃えない?!」

「燃えたら創ってあげるから。いいからやってみて」

ヴァルテスは渋々といった表情になりながらも、掌に集中している様子を見せ、ヴァルテスの魔力の流れを感知した瞬間


ボワッ!!


「うおっ!何だこりゃ!」

一瞬にして炎が刀の刃に螺旋状に巻きついていった。

「ほら出来たじゃん」

「マジか!すげぇな俺。魔法って何かネーミングが恥ずかしいからあまり使いたくなくて、今まで避けてたんだが」

「ブフッ、それ分かる~。でも魔法の名前を口に出して言うって案外意味ないの知ってた?」


ヴァルテスは目を丸くし、嘘だろ?!と叫んでいた。


そこからは他の魔法付与も試し、武器を持ち替えて色々試して見ようと、ヴァルテスはクローで、私は鞭で。


クローには風を纏わせ、試しに近くの樹に斬りつけてみると、通常のクローより軽く斬りつけることが出来ただけでなく、クローの鉤爪三本から放った風魔法はザシュッ!と斬れ味の良い、まるでカマイタチのような鋭さだった。

二人で「おぉー」と思わず歓声をあげる。


続いて鞭は、全体に雷を纏わせ、思いっきり地面に叩きつけると、バチバチバチッ!と凄い音と閃光と共に、深さ10センチ程の溝が、鞭と同じ長さの分だけ地面に出来た。


「「これヤバ~!」」

二人で出来た溝の凄さに興奮していると、寄宿舎の建物の脇からすっ飛んで来るエドガー騎士団長が目に入った。


「そこの二人っ!何しとるんだっ!」


あ、見つかった。て言うか、音でバレたか。


「お嬢様達はコソコソとこんな所で何を!?と言うか、その武器はまだ見た事がないぞ?いつの間に創ったんだ?」


ヴァルテスの手に嵌っているクローと、私の手に握られている鞭を見て、目を輝かせたエドガー騎士団長は、見せろと言わんばかりに私達の腕を掴みグラウンドの方へと連行された。


どうやら、マリアはアデレ兄と模擬戦をしているので、エドガー騎士団長は一人で暇だったようだ。

前日に創った武器を出して、一通り使い方を見せるとニヤニヤととても楽しそうにしているエドガー騎士団長。


その後は大人しく寄宿舎の食堂で、ヴァルテスが前日創ったクナイがきっちり三本収められるレッグホルスターヴァルテス仕様を創り上げ、出来上がったクナイ用レッグホルスターをヴァルテスが装着したとこを見ると、ナイフもいいけどクナイもいいなぁとニマニマしながらヴァルテスの太腿を眺めていた。


暫くすると調理場から美味しそうな匂いが漂い始め、マルセルさんにメニューを聞くと「今日はハンバーガーですよ」と聞き、ヴァルテスと二人で思わず無言で交わすハイタッチ。


昼近くなると団員達が徐々に集まり始めた食堂に、ギネス師団長に連れられた疲れた表情のケイトとローズだったが、初めて食べるハンバーガーの味に疲れも吹っ飛んだようだ。


「二人共、頑張ってるね。来週末は東の森に実戦にでも出て、四人で連携してみようか」

「それは良い提案ですねぇ。私もご一緒しますので是非行きましょう」


ギネス師団長が一緒なら、その都度どういう時にどんなサポートや攻撃をするか確実にケイトとローズに指示してくれるだろう。


俺も行きたいと言うヴァルテス。

「一応、レクの為の実践だから邪魔しないなら来てもいいよ」


「行く行く。邪魔しないしない」


全く信用できないような返答が返ってきた。









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