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【100】婚約者



「外の皮がモチっとしてカリッとして、中からお肉の旨み飛び出してきますわ!美味しい~」

「この鶏肉もカリッとしていて、お肉は柔らかくとても美味しい~!いくらでも食べれそうだわ」

初めての料理に目を輝かせながら、次から次へと口に運んでいるケイトとローズ。

団員達も初めての塩むすびに「餃子と唐揚げに合う~!」ともりもり食べていた。


大人達は餃子と唐揚げのおかげか、酒を飲むペースが上がっているようだ。ヴァルテスとそんな雰囲気を羨ましそうに眺めていると、少しお酒が入りほろ酔いのアルフ兄が私とヴァルテスのもとにやってきた。


「ねぇ、この合宿中にルキアは来ないの?」

「うん、さすがに騎士団の本拠地にはあまり近づきたくないみたいだよ」


なるほど、と言うように頷いたアルフ兄が更に話を続ける。

「エルはさ、ルキアの事どう思っているの?」


ニヤニヤしながら聞いてきた。

もしかして酔ってるのか?!アルフ兄!


「ど、どうって言われてもなぁ」

「あんなにエルの事を大切に思っているって事が、周りにも分かるほどなのに?」

「あれは凄いっすよね。俺最初は殺されるかと思ったくらいだし」


ヴァルテスは最初に対面した時のことを思い出したようで、自分の体を両腕で抱きしめるように摩り震え上がった。


ディスは気づくといつも近くに居て、ディスが居なくてもトゥスが居たり。でも学園入学前に、少しの間どちらも居ない時には寂しさを感じたのは確かだ。でもそれが恋心故かと言われたらそれはまた違う気もする・・・もしくは違うと思いたいだけなのか。


視線を上に向け一人色々と思考していると、ヴァルテスがブハッと吹き出した。

「お嬢は恋愛スキルがほぼほぼゼロだからな」

その言葉を聞いた瞬間に、私の手がヴァルテスの頭を目掛けてバコッーンと引っぱたいた。

それを目の前で見ていたアルフ兄は爆笑である。

アルコールの入った人間は、何でも大笑いしたくなるのは、どの世界でも一緒なのね。


「コホンっ、私の事よりアルフ兄の方こそ、そろそろお相手を考えないといけないんじゃ?」


もう来年は18歳になる兄二人は、そろそろ真剣に結婚の事を考えないといけないはずだ。この世界では学園卒業と共に結婚する人も多い。


「ん?僕?僕は婚姻する気はないから。ここの正式な跡継ぎはアデレだし、アデレはちゃんと考えているはずだよ」


アルフ兄が結婚する気ないって知らなかったなぁ。

結婚せずに魔法の研究に没頭とか、そのうちギネス2号になるのか・・・

ギネス師団長も華麗な独身貴族だ。ギネス師団長も黙っていればなかなかイケメンなのにな・・・あくまで『黙っていれば』だが。


「何の話をしているの?」

将来、アルフ兄がギネス師団長みたいになった所を想像し複雑な気分になっていると、マリアが塩むすびを片手に現れた。


「マリアは王族だし、やはり沢山の見合いや婚姻の話が来てるんでしょ?」

「来てるみたいよ。全部断っているけどね」


いかにも嫌そうな顔で言うマリア。


「見たことも、会ったこともない人となんて無理よ。そんなの嫌に決まってるじゃない」

「でも王宮内で周りがうるさそうよね」

ケイトの言葉に頷くローズと私。

「もう既にうるさいわよ~。絶対に学園在籍中に良い人見つけるわ、他国とか行きたくないし」

眉を寄せて心底嫌そうな顔しているマリアの話を、近くで酒を飲みながら聞いていたアデレ兄が笑顔でひと言。


「マリア、万が一の時は僕が貰って上げるよ」


ニッと笑うアデレ兄のひと言に、マリアの眼光が鋭くなった。

「いま言ったわよね?皆も聞きましたよね?アデレイド、証人がこれだけいれば、酔っていたからと言い逃れはできませんよ?!」

「え、あ、うん?構わないけど?」

「キャッー!エル!私の婚約者が決まりましたわー!しかもエルと姉妹になれるなんて!」


は?アデレ兄は万が一って言わなかった?

アデレ兄も近くに居た周りの人も全員が目を丸くし、頭にハテナマークを浮かべている。


「あ、あれ?ぼ、僕、今って言ったか?少し酔ったのか?」

「アデレイド、今がまさに『万が一』だと思って下さい。はぁこれでもう煩わしい婚姻の申し込みの手紙を見なくて済むのね、一安心ですわ~」


万遍の笑みのマリアに、ケイトとローズが駆け寄り「おめでとう!」と言いキャッキャしている。

そんな喜ぶマリアの姿を見て、優しげな表情で微笑んだアデレ兄。

「まぁいいんだけどね。マリアとは良く知る仲だし、マリアとならって一応ずっと考えていた事だからな」


アデレ兄とマリアの婚約話に、ひときわ餃子祭りは盛り上がり、大人達の酔いが進んできた頃、未成年の私達だけがお開きとなり邸に戻り各々部屋へと戻っていった。


お風呂は一人で入るから気にせず休んでと、前もってセシルに言っておいたから部屋には誰もいないはず。


「今夜は随分と盛り上がっていましたねぇ」


誰もいないはずの部屋に入ると、すでにソファで寛いでいたディスが立ち上がりこちらへと近づき私の目の前に来た・・・瞬間に思わず両手をディスの胸にピンと伸ばすと動きを止めたディスは、途端に私を不満げに見つめ、眉を寄せ怪訝な表情となった。


「ご、ごめん。今日は揚げ物やら餃子でちょっと臭いが気になると言うか・・・お風呂もまだだし・・・」


私の言葉を聞くと、そんな事と言いニヤッとした表情となり、左手は自分の胸にある私の右手に重ねて置き、一歩近づき右手で私の髪を一束掬いあげ自分の口元へと運んだ。

「美味しそうな香りですねぇ。食べてしまいたい」


ニヤニヤ顔で言うディスに、またからかわれたと、伸ばしていた掴まれていない方の手で胸にパンチをお見舞した。


楽しそうにククッと笑うディスに呆れながらも「食事持って来たよ、食べる?」と聞くと「先にお風呂へどうぞ、なんなら一緒に・・・全部言い切る前に首元にチョップをかまし、大笑いしているディスを無視してお風呂に向かった。


お風呂から上がりソファの前のテーブルに料理を並べると、美味しそうに食べ始めるディスを見ながら、アルフ兄の言葉を思い出した。


『エルはさ、ルキアの事どう思っているの?』


ディスの彫刻のように綺麗で整った顔、細く見えるが均等の取れた筋肉質な体、スラッと高い身長、柔らかそうな毛質のウェーブのかかった黒髪、マジマジと眺めているとドキドキしてくる。

このドキドキは恋なのか、もしくはただ美形だからドキドキするのか?と思考を巡らせていると、綺麗な紫色の瞳と視線がぶつかった。


「どうしました?視線を感じるのですが」

「うーん、文句の付けようが無い位カッコいいよねぇと思っ・・・・・・あっ」

余計な事を口走ったと急いで両手で口を塞ぎ下を向いたが、そっとディスの顔をチラ見すると、ディスは予想外に頬を少し赤くさせ、私の方を見ながら固まっていたので、ディスの顔の前に手を振ってみる。


すぐにハッとした表情となり、顔の前で振られていた私の手を取り握りしめると、ずいっと顔を近ずけてきた。


「本当に食べてしまいたくなるので、不意打ちはやめてくださいね」


妖艶さを倍増させ言うディスに首を何度も縦に振って頷いた。








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