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【10】訓練所、再び(1)



室内訓練所の魔導師団長の執務室の前で「ギネス師団長~入ります」と扉をコンコンと叩き返事を待たずに勝手に扉を開ける。


ソファに腰掛けていたであろうギネス師団長が、待ってましたとばかりに「来ましたね」と、笑顔で即座に立ち上がり迎え入れてくれた。


そんなギネス師団長を見てアルフ兄がフフっと笑い「師団長、楽しそうだな~」とひと言。


「楽しいに決まっているではないですか。そんな当たり前の事を仰らないでください。そう言うアルフ様も同様とお見受けしておりますが?」

「そりゃそうだよ~。エルがこれからどれだけ楽しませてくれるのかと、考えるだけで心が躍るよ」


大の大人と見目麗しい少年がキャッキャしている。

傍から見れば微笑ましい光景だが、当事者として見れば、面倒くさそうな臭いがプンプンとしている。

鼻を摘むかと考えていたら、ギネス師団長とアルフ兄がこちらに顔を向け、満面の笑みで私を見た。


・・・怖っ!


二人の笑顔に内心怯えた私を他所に、アルフ兄が仕切り直しと言わんばかりに告げる。


「とりあえず測定から始めようね」

「そうですね。まずはそちらからと思い、用意しておきましたよ」


ギネス師団長が用意した物を、自分の机からソファの前のテーブルに移動させた。


目の前に置かれたのは、ソフトボールくらいの大きさの綺麗な水晶玉だ。

灯りの反射で神秘的な輝きを見せている。


その輝きに一瞬目を奪われたが、水晶玉から兄と師団長に目線を移し、これは何?と言うように首を傾げて二人をじっと見つめる。


先にギネス師団長が口を開いた。


「これは魔力を測定するための水晶玉です。この水晶玉で今からエルファミア嬢の魔力測定を行います」


・・・怪しい占い師みたいだ。


「邸に戻る途中でも少し話たけど、魔法を行使するには自分の魔力量をちゃんと知っていないと危険なんだよ」

「・・・危険なんですか?」

「そうだよ~、魔力を使い過ぎて魔力枯渇を起こしたら、下手したら命に関わるからね」

「・・・そうなんですね」


今きっと驚きで目が見開いているだろう。

まさか命に関わるとは思わなかった。

せっかく転生したのだ。出来れば長生きしたい。


魔法のこと、ちゃんと覚えられるかな・・・

少し不安に駆られた。


アルフ兄は私の顔色を瞬時に感じ取ったようで、慌てたように声を掛けてくる。


「あ、驚かせちゃったかな。でもそうならないように僕らがしっかり教えるんだから大丈夫だよ」


「エルファミア嬢、私達がしっかり教育して差し上げますからね」


ニッコリ笑ったギネス師団長の顔がマジ怖いです。

二人の今の顔を見たら、大丈夫なようで大丈夫じゃない気がしてくるのは気のせいか?!


「ささ、エルファミア嬢。この水晶玉に掌を翳してみて下さい。そして魔力を流してみることは出来ますか?」

「魔力を流す・・・ですか?」

「掌に魔力を集めて、水晶玉に放出する感じかな?」


アルフ兄が説明してくれたが、分かるような分からないような微妙な説明に、思わず口が半開きだ。


口を半開きにし眉間に皺を寄せながらも、とりあえず水晶玉に掌を翳してみようと、右手の掌を水晶玉の上に置き下っ腹に集中した。


集中を始めてすぐにふと気づいた。

前日に部屋で初めて体に巡らせた時より、魔力の感知が格段に速くなったようだ。


下っ腹から掌へ・・・とイメージするとすぐさま、熱い何かが下っ腹から胸の辺りを通り、水晶玉を翳している右手の掌に集まっていく。


それを掌から放出するイメージだ。


掌から何か出て行くような感覚がある。

と感じたと同時に水晶玉が目を開けていられないほど輝き始めた。


「な、何が起きたの?!」


「こ、これは!!?」


二人が目元を腕で隠しながらも、驚愕しているのが様子で分かった。

私も眩し過ぎる水晶玉から、目を逸らしながらも驚きすぎてアワアワしていると、水晶玉の輝きが徐々に落ち着いていき、中に何か見えてきた。


「な、中に何か見えてきました」


私の声に二人が我に返り反応した。


「そこに現れるのは魔力量の数値です。幾つと出ましたか?!」


ギネス師団長が目を擦りながら、慌てて近寄り水晶玉を覗きむ。アルフ兄も同じように慌てて水晶玉に近寄った。


私も改めて水晶玉を覗きこんだ。


【魔力・・・25800】


「「はぁ?!」」


師団長とアルフ兄が同時に声を上げ、水晶玉を二度見している。


「25800・・・あの、基準を知らないので多いのか少ないのかも分からないのですが」


どっちでもいいから基準を教えて欲しいのだが、二人の意識はまたどこかへ旅立ってしまったようだ。


早く戻ってこーい!


私の心の声が聞こえたのか、ハッと我に返ったギネス師団長が説明を始めてくれた。


「えっとですね、魔力は貴族・平民関係なく誰もが持っています。ですが魔力量は個人差があるのです」


ギネス師団長は一度ふぅ~と息を吐いてから話を進めた。


「一般的な平均として3000~4000と言われています。魔導師団に合格する者は8000~10000程度の者が多いです。私とアルフ様でも16000強という所です・・・鍛錬すれば多少上がってはいきますが・・・」


ギネス師団長の言葉の語尾がかなり小さくなっていき、遠くを見つめたままだ。


ギネス師団長の頭の中は、また何処かへ旅に出た様子だ。


「・・・あ、この水晶玉は壊れていたのですね」


とりあえず水晶玉のせいにしてみる。


「そんな訳ないよ。ほらっ!」


いつの間にか我に返っていたアルフ兄が、少しムキになって反論し、水晶玉に自分の掌を翳すと、すぐにピカッと輝き中に数値が現れた。


あれ?光り方が違くない?


水晶玉を覗き込むと数値が見える。


【魔力・・・16600】


・・・水晶玉は壊れていなかった。


旅に出ていた意識が戻ったギネス師団長とアルフ兄は、かなり興奮しているようで、私に詰め寄り何か二人同時に言っている。


・・・もう何を言っているのか分からないうえに、かなりウザい


興奮している二人を相手するのは至極面倒なので、この場はいつも以上に無表情を極め、無の境地を目指すことに・・・


いつか悟りも開けそうな気分だ。


私が悟りを開く前に、ギネス師団長とアルフ兄が少し・・・本当に少しだけ落ち着きを取り戻してきたようだ。


「ゴホッゴホン!えっと少々はしゃぎすぎましたね。数値に驚き過ぎてしまって言い忘れましたが、魔力の操作の鍛錬をしていない者が初見で水晶玉に魔力を放出させるなんて、今までの経験上見たこともないですから」


そんなこと言われてもな・・・

とりあえず無言、無表情で見つめ返した。


「今日は朝から驚きすぎて寿命が縮んだ気がしますよ・・・ゴホン!では、気を取り直して次に行きましょうか」


「そ、そうだね!次は属性判定だね」


アルフ兄も師団長の言葉に頷き、事を次に進めることにしたみたいだ。




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