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帰り道と雑貨屋  作者: 春夏 秋冬
6/7

【給食】

4時間目の授業も佳境に差し掛かっている。あと10分もすれば終わるのにここからが長い。今にも鳴りそうなお腹がご飯を急かすように騒がしい。




実は僕は給食が嫌いだ。給食がではなくて給食の時間が嫌い。


グループでご飯を食べるのだけど僕の机だけくっつかに用に距離を取られる。


もちろん会話なんかない。


給食当番の時に僕がよそったおかずだけ誰も手を付けなかった事もある。


その日以降僕は牛乳を配る係。ただ立って持っていくのを見るだけの係だった。


だから僕は給食の時間が嫌いだった。


でも今日は、今日からは。




皆と同じように机をくっつける。


話しかける、話しかけてくれる。


同じグループの田中君と喋りすぎて先生に注意されてしまった。


注意する先生は笑ってて、少し目が潤んでいるように見えた。




「てかさ、田中君じゃなくて、こうきって読んでよ。友達なんだからさ」


「へ・・・」


「あたしも名前で呼んでよー」


「あたしもー」


「俺のことも小柳じゃくて、るいって呼んでくれよ!」


隣のグループの小柳君まで話に参加し名前で呼ぶように言ってくれた。


「うん、ありがとう」


涙を堪えながらそう返事をした。


するとまた、別のグループからも声がかかる。




「おい!」


周りの皆が一斉にその声がした方向に顔を向ける。


「なんでだよ!なんで急にそんな風になれるんだよ!」


酒井君だった。阿部君と伊藤君が同じ思いだと言わんばかりに首を縦に振っている。


周りの友達は心配そうに僕を見つめる。


先生も身を乗り出しそうになるのを必死にこらえているようにこちらを見ている。


僕は酒井君たちに向けて話す、精いっぱいの言葉で。




「僕は、友達がいなくて寂しかった。でも自分のせいだから、仕方ないって思ってた。それに味方になってくれる人がいるなんて、思ってもみなかった。でも、僕の周りには沢山の味方がいて、思ってくれる人たちがいて、一人じゃない、愛されているんだってわかったんだ。お父さんも、お母さんも、チョロも、先生達も、雑貨屋さんも皆、僕のことを思ってくれいてるってわかったんだ。」




皆が僕の声に耳を傾けてくれている。心で聞いてくれいてる。うれしかった。


ありがたかった。僕は我慢しきれずに溢れてくる涙で途切れ途切れになりながらも続けた。


「だから僕は、友達を作ることを、皆と友達になりたいって気持ちをちゃんと伝えようと思ったんだ。たとえ友達になってもらえなくても。僕の気持ちをしっかりと伝えようと思ったんだよ。」




酒井君たちは僕の顔をじっと見つめていた。

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