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帰り道と雑貨屋  作者: 春夏 秋冬
4/7

【そして朝、通いなれた道】

昨夜は泣き明かした後、僕は寝てしまった。

気づくと朝になっていて、少し開いたカーテンから太陽の光が僕を照らす。

「よし」

僕は決めていた。

僕が悪くても、どんなに意地悪を言われても、どんなに嫌がらせをされても、

たとえ友達になってもらえなくても。

僕は皆と友達になりたいと伝えよう。

だって僕は一人じゃないから。

お父さんにも、お母さんにも、チョロにも、先生たちにも、雑貨屋さんも、皆僕を愛してくれているから。

僕は頑張れる。


「おはよう」

「おっ起きたか、おはよう」

「おはよう、今日は早く帰って来られるから家で待っているからね。」

「うん!」


父と途中まで一緒に歩き、最初の曲がり角で別れる。

僕はそこからいつものように石畳の線を踏まないように歩く。

だけど今日は、今日からは違う。目線を上げ、石畳から目線を外し歩く。

いつもの通学路が違う景色に代わる、慣れたはずのこの道がまるで違う新しい道のような、そんな感覚になる。

太陽が眩しく目を少し細める。その先にいつも前を歩く三人がいる。

少し緊張するけど、心がキュッとすることは無い。

歩く速度がさほど変わらないから学校の入り口まで追いつくことは無かった。

下駄箱に向かう、先に上履きに履き替えた三人が僕を見て笑う。

僕は先に三人に向かって言葉を発する。

「おはよう!」

驚いた顔で僕を見る三人を横切り先に教室へ向かう。

教室に入ると数人のクラスメイトが着席していた。

僕は皆に向かって挨拶をする「おはよう!」

さきほどの三人と同じように戸惑った表情で僕を見る。

彼らの視線を感じながら僕は自分の席へ向かい鞄を置き、教科書を取り出して引き出しにしまう。

着席してあと数分で来るであろう先生を待つ。


いつもと違う朝を迎えた僕と、いつもと違う朝を迎えた同級生達。少しだけざわついた教室に先生が入ってくる。いつもは誰よりも小さい声の僕だけど今日は違う。

先生のあいさつに合わせてその教室の誰よりも大きな声で挨拶を返す。

「先生おはよう!」

先生は驚いた顔を見せて少し固まり、ふと我に返り僕を少し涙ぐんだような瞳で僕を見つめ、優しく微笑む。

「おはよう、元気いっぱいだな。先生うれしいよ」

また少しざわざわした教室。

そこで僕は挙手をして先生に見せる。

「どうした?」

「僕、皆に伝えたいことがあります。」

立ち上がり言葉を続ける。

「僕は、皆と友達になりたいです!僕と友達になってください!」


僕は着席し顔を俯かせる。

ちょっと涙がでそうだったけどちゃんと我慢した。

少しして顔を上げる、すると先生が僕に駆け寄る。

「先生が友達1号になっても良いか?」

涙を流しながらそう僕に伝えてくれた。


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