苗泥棒に鉄槌を
韓国がCPTPPへの加入を決定したとか。
正確には加入の申請を出す方針である事を決定した、でしょうが。
何故ならCPTPPに加入するには、事前に国内法を整備する作業が必要だからです。
加入してから国内法を整えれば良いとなると、反対派の存在を口実にしていつまで経っても必要な法律を作らず、CPTPPの美味しい部分(工業国ならば輸出に有利)だけを受け取って、必要な義務(関税の引き下げなど)を果たさない国が出るからです。
韓国の場合は農業団体が強硬に反対しているみたいなので、加入の申請をするにはまず彼らを説得しなければなりません。
なので、それが出来てから加盟がどうとか言えと。
まあ、仮に国内法を整え、加入の申請をしたところでそれが受理される可能性はありませんが。
理由は、韓国という国の実態がCPTPPの理念とそぐわないからです。
具体的には知的財産権の保護への姿勢が挙げられます。
韓国を見ていると、知的財産権を守る気など皆無に見えるからです。
例を挙げればブドウの一品種であるシャインマスカットです。
皆さんはシャインマスカットを食べた事はあるでしょうか?
皮ごと食べられる種なしブドウ(種なし処理はしています)で、さわやかなマスカット香がする甘くて人気のある品種です。
私は岡山県のブドウ農家で働いていた事があり、シーズン中は毎日のように食べていましたが、毎日食べても飽きない美味しさでした。
作業的には摘果をしっかりとやらないと房が大きくなりすぎる品種で、熟しても皮が緑のままなので収穫適期が分かりづらいブドウでもあります。
そんなシャインマスカットが韓国や中国で広く栽培され、東南アジアに安く輸出されて人気となっているそうです。
日本の苗木を正規のルートで輸入して行っているのでしょうか?
いえ、違います。
無断で栽培しているらしいのです。
恐らくは日本で苗木を購入し、勝手に持ち帰って広めたのでしょう。
立派な苗泥棒です。
WTOに訴えるべきだ、でしょうか?
実はルール上、彼らの行いを糺す事は出来ません。
植物の新品種を保護する国際条約において、国外における品種登録は国内で登録されてから一定の期限が設けられており、ブドウの場合は6年です。
シャインマスカットが品種登録されたのは2006年で、国外での登録の期限は2012年に切れました。
つまり、国外においてシャインマスカットは新品種保護の対象外なので、両国の行いはお咎めなしとなります。
ここで品種登録された農作物において、保護される権利はどのような物か見てみましょう。
まず、開発者はその品種の利用に関する権利を占有します。
苗を増やして販売する事が出来るのは開発者だけです。
それに関連し、品種の権利はそのままに、種を増やして販売する権利を種苗会社に与え、代わりに利用料を得る事が出来ます。
また、仮に登録品種を利用したい農家がいたとしても、開発者の許可なく栽培する事は出来ません。
加えて、登録品種を開発者の許可なく輸出する事は出来ません。
登録品種の権利はそのようにして守られています。
しかし、それも全て登録して初めて得られる権利です。
同じように国外でも守りたければ、面倒であろうが国外においても登録しなければなりません。
シャインマスカットはそれをしていませんでした。
開発者である農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)によると、当初は輸出する事を考えていなかったそうです。
その輸出とは商品の輸出なのか苗の輸出なのか疑問が残りますが、どちらにせよ今更ですね。
はっきり言ってそんなしょうもない理由で、シャインマスカットの輸出で得られたであろう利益を損ない続けています。
それはブドウとしてもそうですし、苗木の輸出もですし、利用料にしてもそうです。
農研機構は国立の研究開発法人なので、言ってみれば国家公務員の怠慢で国民が損害を受けている事になります。
輸出する予定はないとして登録を見送った当時の担当者は誰なのでしょう?
とはいえルール上は問題ないからといって、韓国や中国のやっている事を黙認しなければならないのでしょうか?
違う筈です。
いくら国外で登録されていない品種であっても国内では登録されている以上、その輸出には開発者の許可が必要だからです。
両国で栽培されているシャインマスカットは許可を得て輸入した物なのでしょうか?
その辺りは農研機構に聞かなければ本当の事はわかりませんが、伝え聞くところでは無断で栽培されているようです。
正規のルートで輸入した訳でもない品種を栽培し、第三国へ輸出までしてしまう。
売れる商品を求める市井の農家を糾弾するつもりまではありませんが、法治国家としてはどうなのかと思います。
少なくとも知的財産権の保護を掲げているCPTPPに加入しようという国がそんな事ではいけません。
外国人に苗を売るのを禁止すればいいじゃん、でしょうか?
残念ながら不可能です。
そこいらのホームセンターでシャインマスカットの苗木を買う事が出来るからです。
PVP苗といって外国に持ち出す事は出来ない旨は明記されている筈ですが、悪意のある者をそんな事で止める事など出来る筈がありません。
空港の荷物検査で止める方法はありそうですが、コツメカワウソ等、動物の密輸さえも止められないのですから、植物の密輸を阻止するのは更に難しいと思います。
向こうの検疫は更にザルそうですし。
前置きが長くなりました。
ここからが本題です。
そんな苗泥棒国家がCPTPPに加入したいようです。
馬鹿かと。
検討の余地もなく却下だろと。
しかし、却下くらいで鉄槌になるでしょうか?
まだまだ足りません。
そこでCPTPPのISDS条項です。
これは投資家の利益を守る為の取り決めで、投資を受け入れた国が協定に違反し、投資家へ損害を与えた場合、その損害を賠償する為の手続を定めた条項となります。
苗泥棒である韓国と中国はCPTPPに加入していませんが、盗んだ品種で育てた農作物を輸出したい先はどこでしょう?
既にCPTPPに加入している、シンガポールやベトナムといったアジア諸国です。
両国のやっている事は、新品種の開発に投資している投資家にとり、その利益を棄損する不当な行為に当たる筈です。
日本の知的財産権が不当に侵害されている状況だと、CPTPP加盟国に訴えるのです。
ISDS条項が発動される案件ではないでしょうか。
農研機構は国の機関ですので投資家はいないのかもしれませんが、納税者である国民が損害を受けたとして提訴すればあるいは……
それともISDS条項は関係なく、単純に知的財産権の侵害で攻めればいいのでしょうか?
その辺りは素人なので分かりません、ごめんなさい。
シャインマスカットは知的財産権の保護においては国外で対象外ですが、期待の新星が続々と登場しつつあります。
新品種の開発は日夜続けられていますから、いずれシャインマスカットを越えるルーキーが現れてくれるでしょう。
その際、確実に国外でも品種登録をしなければならない事は言うまでもありません。
シャインマスカットの件は時すでに遅しですが、これを教訓として二度と泥棒行為をさせないようにすべきです。
しかしながら前にも書いた通り、泥棒行為を防ぐ事は困難です。
日本国内では普通に苗木を買えますし、何となれば剪定された枝を一本でも持ち帰って接ぎ木すれば品種の更新が出来るからです。
広大な圃場をくまなく監視する事など出来る筈がありません。
なので、彼らが輸出出来ない仕組みを作り上げる必要があります。
彼らが加入しようがすまいが、CPTPPがそれに当たります。
苗泥棒に鉄槌を。
今までの分と、他に盗まれた苗木まで含めた断固とした物を。
両国に直接は難しいので、輸入する側が二度と御免だと思うくらいの罰を。