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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
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二月二十六日 ゾンビ

五十七日目の後半です

 一部、(にぎ)やかな昼食が終わり、重役二人とミュラ姫、サリーは一休みしてくると自室に引っ込んだ。


 まあ、予想はしてたけども大分お疲れだった模様(もよう)。ご苦労様です。


 わたし達はアルファに誘われて…? 強制されてなかったかな? まあ、いいや。ゲームルームに連行されました。


 ログインしたら、ジーナ達も居たんで話せる所は話して安心して(もら)った。


 なばちゃんは、他の生徒達のグループにも伝えてくると言って、どこかへ走って消えた。


 あの先生、他のグループともゲーム一緒にやってんの? 何処にそんな時間が? ちゃんと寝てるのか? 一昨日(おとつい)居眠(いねむ)りしてたけどさ。


 その後は夕飯までみんなで冒険。三時間位でなばちゃんも再び合流してきてた。


 何時(いつ)寝てるんだ? って()いてみた。


 一緒にゲームしてるわけじゃなくて、連絡を取れるようにリスト登録してるだけだって言い張ってたよ。なばちゃん。


 食事前、夜はミュウとわたしは抜ける(むね)伝えてログアウト。


 夕食には休んでいた四人もやってきてみんなで(いただ)く。


 少し休んでミュウとトレーニングルームへ。ユリカも付いて来た。


 重役ペアとミュラ姫はオシゴトの続きがあると言って姫のお部屋へ。


 残りはゲーム部屋。


 わたし達はユリカと二人でミュウが作っているランニングマシン用プログラムの確認と修正をお手伝い。


 バグ取り(デバツグ)って呼ぶんだって。


 意味はって訊いたら[虫取り]だそうで。


 プログラムのミスを虫に例えるんだねって言ったら、


「初期のコンピューターは稼働中に虫が飛び込んでエラーを起こすことがあったそうで、虫を退治して修正したのが語源という説が割と有名」


 だって… 虫が入り込んでエラーを起こすコンピューター? それ、どれだけ大きいの?


 体育館(なみ)。だそうです。


 開発してるのはルミが言ってたゲーム系。


 ゴーストタウンでゾンビをやっつけるシューティングゲームと野球のチームに交じってプレイするスポーツ系。


「ユリカちゃんは一切能力禁止の一般人(わく)鹿乃子(かのこ)ちゃんは、いつも通りでひじょ…超人枠でお願い」


 ミュウ。今、非常識って言い掛けなかったか? 非常識って。


 ユリカは爆笑禁止!


 野球の方は事も無くチェック終了。まあ、センターの守備(しゆび)に入ったわたしがホームに返球したらキャッチャーとバックアップのピッチャーを(まと)めてバックネットに吹き飛ばしちゃったり、ユリカの特大ホームランを三十メートルジャンプして捕球したのに其の儘(そのまま)ホームラン判定になっちゃったりしたけども。


 問題はゾンビ討伐ゲームで、予定していたショットガンでは何発あてても倒れなかったり。


 結局周りのゾンビ集団を蹴りや殴打(おうだ)で吹っ飛ばしている現在。


 能力禁止のユリカはわたしの後ろで丸くなって頭を抱え込んでいる。


 パンチがあたった時のビチャッて言う()れた感触とか、蹴り飛ばした時のまき散らされた色々がなんとも言えずリアルで中々に気持ち悪い。


 これで(にお)いがあったら、さすがに泣くよ。わたし。ゲーム開始直後に臭覚は切断して貰ったもん。あのお肉が腐敗(ふはい)した時のいやーな匂いが…ですね。


 ゲームがスタートした途端どこからともなく(かお)ってきたわけですよ。 あの匂いが。


 あの匂いはいかん!


 思い出したら気分悪くなってきた。


 リアルすぎるのも考え物だと思うんだ。ミュウちゃんや。


 特に匂いは。


「ごめんなさい」


「もーやだ!!おわりにするーっ!!」


 ユリカが切れちゃった。


 身体にべっちゃりくっついていたいろいろが消え去って元のトレーニングルームに戻った。


 グロかったー。又、感触がリアルで…


「なんで鹿乃子はそれで済んじゃうのさー!」


 なんでと言われましても…自分で有る程度体験してたから? 体が壊れるの。


「「ごめんなさい!!」」


 即行(そつこう)(あやま)られた? なんで?


「なんで?じゃなくてー!。鹿乃子まだ精神的障害の(なお)って無いとこあるんじゃないのー!?」


 叫ぶユリカ。


 うーん、痛感(つうかん)とかグロ系の感覚が鈍いかも?


「「かもじゃなくてー」」


 二人してなんだか疲れ切ったような表情に。


「ミュウの選択ミスでした。作り直します。台所を舞台にしたゴ「止めてー!!」キ…駄目(だめ)?」


 ユリカが必死でミュウの台詞を(さえぎ)った。わたしも、それ(・・)は止めて欲しいかなー。


「なんでミュウちゃんはそうゆーチョイスばかりなのー!? 恐竜とか猛獣(もうじゆう)とかロボットとかで良いじゃんかー!」


 涙目で叫ぶユリカ。


「ああ。そういう選択肢(せんたくし)があった」


「ミュウー」


 がっくりと崩れ落ちるユリカ。


「鹿乃子ー。今夜一緒に寝ようよー」


 泣きながらユリカがすがってきた。


 よしよしと頭を()でる。


 確かに夢に出てきそうな光景だったなー。


「失敗失敗…」


 頭をポリポリしているミュウ。 (ひど)い対比だな。


 ユリカの落ち着くのを待って、三人(そろ)ってリビングへ向かう。


 ウイーにお茶を入れて貰いやっと一息。


「あー…酷い目に()ったー」


「ごめんなさい」


 ぼやくユリカに謝るミュウ。


「良いよー。あたしのグロ耐性が思ったより低かっただけだからー」


 ユリカも怒ってるわけじゃないみたいだし。


 話題を変えるか。


「ユリカ、昨日のルーちゃんコンビはもう帰ったの?」


「帰ったよー。報告書が山になってるらしいー」


 昨日初顔合わせの二人が気になったんだけど、もうちょっと話を聞きたかったような。


「海賊を制圧出来たから念の為(ねんのため)来てくれたらしいんだけどねー。手間を掛けさせて悪かったーって言ってたよー」


「いや、悪いのは変なもの宅配依頼した人たちでしょうに。助けて貰って有り難うだよね?」


 わたしの意見に賛成するようにミュウが(うなず)いている。


「うん。伝えとくよー」


 ニシシって感じの笑顔で答えるユリカ。


「解決はしたんだよね?」


 お騒がせした下手人。捕まえたんだよね?って、質問。


「関係者全員確保出来てるって話だよー。問題もあるみたいだけどねー」


 連邦宇宙軍の艦船を最も多く供給していた大メーカーの経営者が揃って拘束(こうそく)されてしまったため、企業自体の今後をどうするのか? って事になったらしい。


 倒産されては、大量の艦船のメンテナンスや修理、改修が出来なくなってしまうし、一般経済にまで大打撃なんだと。


 なんで、現状、経営者拘束の事実は秘匿(ひとく)したまま、今後の方策(ほうさく)を急遽検討中。って事らしい。


 熟々(つくづく)、迷惑なお馬鹿さん達なんだな。


「まあまあ、本人達は、ばれるなんて思ってなかったみたいだから」


 んなわけあるかい。


「「だよねー」」


「月末までには方針決定出来るんじゃないかなー」


 ユリカ、あと四日で?


「そのくらい急務なのー」


 大変だな。色々考えなきゃいけない人たちは…


 そこへ、ゲーム部屋からガヤガヤと此方(こちら)へ賑やかに戻ってくる一団。


「あ、戻ってるー。テストプレイどうだった?」


 とメグが声を掛けてくる。


 せっかく別の話題に持ってったのに。


「もー散々(さんざん)ー」


「だからごめんなさいって」


 と言う、涙目のユリカと、苦笑(にがわら)いのミュウ、夫々(それぞれ)の反応。


 わたしは結構楽しかったけどなあ。気持ちは悪かったけど。


「えー!?」


 ユリカはものすっごくいやな顔。


 かおりとメグが興味津々(きようみしんしん)


「ミュウ」


 声を掛けて手を差し出す。


「大丈夫かな?」


 と言いつつもメモリーカードを手渡してくれるミュウ。


「試す?」


 と言いながら立ち上がれば、


「「「「「行く行く」」」」


 メグ、かおりはもとより、ルミとサリーも乗り気な模様。


「ぼくは遠慮しとく」


 アルファ。それが正解だと思うよ。


 声には出してません。今回は気をつけた。


 一応、見学には付いて来るんだね。大丈夫かな?


 どうなったかって?


 阿鼻叫喚(あびきようかん)の地獄図とはこのことだ。とのことです。見学者(ユリカとアルファ)の談。


「リ…リアルすぎて無理ですよー」


何故(なぜ)、感触までこんなリアルなの!?」


「トラウマもの…」


「わたし、機械生命体なのに凄い衝撃(しようげき)だったわ」


 かおり、メグ、ルミ、サリーの感想でした。


「あれ、匂いも付いてたんだよ」


 と暴露(ばくろ)してみる。


「「「「()めてー!!」」」」


 四人揃って頭を抱え、悲鳴を上げる。


 ミュウ、ホラー系のアミューズメント施設に売り込めば?


「良いかも…」


「「「「「「即日営業禁止になるよ!?」」」」」」


 ミュウとわたし以外大反対ですか。


「そうかなー?」


 ミュウも納得(なつとく)いかないみたい。


 ゾンビ映画を実体験出来て良いんじゃないのかなあ。


「ねー?」


「「「「「「もうちょっと手加減して下さい」」」」」」


 六人が涙目になっちゃった。


 もうケイの所送っちゃえば? 良い様にしてくれるんじゃない?


「そうする」


「「「「「「あの子は絶対悪乗りするから駄目ー!!」」」」」」


 またも大反対だった。


 良い出来なのにね。


「残念」


 げんなりとした六人とガッカリな二人がリビングに戻る。


 重役組三人も戻ってた。


「どしたの!?酷い顔してさ!」


 顔を合わすなりさつきの台詞。


 かおりとルミがわたしからメモリーカードを(うば)い取る。


 メグとサリーがさつきを捕獲(ほかく)


 エレベーターへ向かったよ。


 気を確かになー。


 爆笑するユリカと十字を切るミュウ、更に手を振って見送るわたしを見たユリアが姫を引き摺(ひきす)って追いかけた。


 「「「ナムナムナム」」」


 三人で手を合わせておくよ。


 しばらくして、真っ青な顔のユリアと真っ白に燃え尽きた姫とさつきが帰ってきた。


「ミュウ…」


 涙目で(にら)むような視線のユリア。声が低い。


「はい!」


 一気に緊張するミュウ。


「アミューズメントパークに売り込むから少し修正して」


 すげぇ!! 採用する気だ!


「了解」


 ぱあっと、一気に明るい表情になるミュウ。


需要(じゆよう)はある! 怖いけど! きっと売れる! 怖いけど!!」


 さつきも乗り気だー。


「ミュウ。良かったね」


 ちょっと予想外だったけどな。


「うん」


 ミュウ、すっごく嬉しそう。


「「「「「「「「ええええーーー!!??」」」」」」」


 残りのメンバーは絶叫した。


 ところで、三人の感想は?


「「「…怖かった…」」」


 揃ってテーブルに突っ伏した。


 ウイーにミルクココアを入れて貰ってみんなで一息。


 落ち着くのを待ってお風呂に入る。


 暖まって各自の部屋へ…と思ったら、かおりがルミの部屋へ、さつきはユリアの、ミュラ姫はなんとサリーの部屋で一緒に寝るんだと。


 ユリカはわたしのとこで寝るって言ってたしな。


 そんなに怖かったかね? そうかー。気持ちは悪かったけどなぁ。


 ミュウがちょっと淋しそう。


「ミュウも来る?」


「うん」


 嬉しそうに頷いたよ。かわいいなあ。


 と言う訳で、三人で川の字になってお休みです。


 それでは、おやすみなさい。

五十八日目に続きます

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