二月二十五日 大気圏外
五十六日目の三分の二です
まあ、結局お城まで来たわけですよ。
皆さん大層お忙しいんで、部屋を一つお借りしてメンバーズが集まってるわけですね。
「鹿乃子ちゃん?なんでそんなに不機嫌なんですか?」
道中、何にも説明してくれなかったからだよ! かおり。
「ごめんなさい。私の説明だと、鹿乃子ちゃん理解して頂けなくって…」
かおりだけじゃなくってね?
「ユリアが適任」
ルミが一言で終わらせたよ。その通りだよね。
わたしへの説明担当なユリアだよね。うん。
「いつの間にか専属扱いになってるな」
憮然としたお顔のユリア。よろしく!
「扱いが軽すぎないかな? かな?」
まあまあ、先ずは落ち着け? それでですね…
「あー。はいはい」
そんな諦めきった表情をなさらなくても…
何故か、ユリアと二人で隔離されて色々教えて頂きました。
何となーく、いや、もう明らかに、扱いが酷いんじゃないかなーと思う。
んで、カラージュエルシリーズって言うのは大戦艦並みの火力と防御力を備えた軽巡洋艦なんだと。
大戦艦てのは、全長が十キロ以上の戦闘艦で、主砲は北海道の渡島半島位は吹き飛ばせるし、その主砲で撃たれても、数発なら沈没はしないんだとか。
軽巡洋艦て言うのは、普通は全長五百メートルから千メートル位の戦闘艦。普通の軽巡が大戦艦に特攻しても小破するかどうかなんだとか。
カラージュエルの主砲は、そんな大戦艦を大破出来て、装甲なんかは普通の大戦艦の主砲は跳ね返すそうで…
ばけもんじゃん。
只、艦内狭いし、全力機動すると、燃費がすこぶる悪いんだよねー。だそうです。
あと、カラージュエルって呼び方は、試作機のコードネームがグリーンパールとかブルーダイヤとか、色と宝石の組み合わせだったから。
なんか、金、銀、真珠がもらえそうな名前だね!
カーマインエメラルドって機体を持ってきたっていってた。
赤いのかな?
「かなり綺麗な赤だね。部分的に」
と言うユリア情報。目立ちそう。
「すっごく目立つよ。目立てば抑止力になるよ」
なるほどー。
とりあえずラスト。お届け物の威力って?
「一発でオーストラリア大陸(仮)が群島になるかな。」
判ったー。
一旦隔離解除してみんなと合流。
「で。わたし達ってやることあるの?」
「最悪、鹿乃子とあたしと香歩ちゃん。後、紗耶香の四人で、防御スクリーン展開かな?」
ユリカからの予定を聞いて思ったのは…
「えーっと?、此所の人工島を守る?」
「んにゃ、大気圏外で受け止めて跳ね返すー」
違ったらしい。
「えー?」
大気圏外って、窒息しちゃうじゃん。
「そっちー? 心配なのはそっちなのー?」
他に何が?
「さつきー。此所って、壁、頑丈ー?」
「ほどほど、まあ外までは行かないよ!」
と、謎の会話に続いて、
「鹿乃子ー。直径五十センチでなるべく頑丈なシールド作ってみてー?」
えーっと、このくらい?
よく分からないんでかなりガッチガチのシールドを。
「みんなー。避けといてー」
と言った後、パキッと、いきなりシールドが割れた。
直後、ガーンという馬鹿でっかい重低音が!
耳痛いー!
なんか辺りがほこりっぽい…と思ったら、わたしが作ったシールドに平行に、床、壁、天井、と、裂け目がぐるっと一周。
「かったーい…手が痛いよ鹿乃子。其れだけ強度が有れば一人で平気じゃないかなー」
何したの?ユリカ。
「殴ったー。一点集中でー。多分単位面積で言えばお届け物の破壊力よか強い力でー」
えー? 龍神の言うには、隕石でも受け止めるっていってたんだけど…
うん、大昔、龍神が直径五千メートルの隕石を跳ね返した時より強かったみたいだよ?
「そのまんま直径十キロ位に広げること、出来るー?」
「そのくらいなら多分平気」
だよね? 龍神? OK。良かった。
「じゃ、最悪、あたしと二人で宇宙遊泳ね。よろしくー」
だー! 待て。ちょっと待て。窒息しちゃう問題が片付いてないよ!
「あたしが受け持つよー」
判ったよ。
ところでな? ユリカ。あっちで、さつきがなんか騒いでる。
「あー! 部屋の強化フレームまでゆがんじゃったー!! ユリカちゃんのあほー!!!!」
あーあ。
壊れちゃった部屋から綺麗な部屋へと大移動。
壊しちゃった人は正座で反省中。
ソファの上じゃ、お仕置きになら無いと思うんだ。
絨毯の上も似た様なものじゃないかな?
こらこら。ユリカ! ローテーブルの上に移動するんじゃないよ。
ほらー。メグとかおりが大爆笑…
「ほんっと、良いコンビだな。此の二人」
高評価な判定を有り難う。カミーラ。
「褒めてねーよ!」
香歩ちゃんとミュラ姫まで笑い出しちゃった。
なんだかんだ騒いでいる内に、件の軽巡洋艦の準備が完了して出発していった。
ユリアが言ってたとおり、赤と白で塗り分けた船体が、とっても綺麗だったよ。
これで、お届け物の到着する三時間手前に第一回目の防衛線。
失敗したらワープで戻って一時間手前の場所で二回目の防衛線。
それでも駄目だったらわたしとユリカの出番なんだと。
上手くいけ~、上手くいってくれ~。わたしにお仕事が回ってこないようにー。
空気がない所へなんて、行ってられるかーい。
「鹿乃子ちゃん正直すぎでしょ…」
ミュラ姫が呆れ顔。聞かれていた模様。
やがて一回目の防衛線で防衛戦。
目視で照準して撃てる速度ではない、秒速十数万キロって事なので、ハイパーレーダーという、特殊なレーダーと進路予測から目標の未来位置を設定して撃ち落とすそうです。
巡洋艦が発砲。同時に彼方にキラリと標的の輝きが五つ。
ややあって、オレンジの火球が拡がった。
「当たった?」
「一発だけ。次弾は無理かな?」
と言ってる内に、巡洋艦の横を何かが一瞬かすめて通過。
「無理か、第二ラインまで戻って二回目。今度は超ロングレンジで一回とさっきよりかなり近くでもう一回」
結果の報告に続いてユリアから解説。
第二地点で巡洋艦を空間に固定、何か複雑な計算をしているらしい。
予定よりやや早い時刻に第二射。
さっきに比べ、かなり遠くで火球が拡がる。
「上手くいった。二本破壊」
そして、予定時刻から僅かに遅れて第三射。
かなり近くで大きな爆発。巡洋艦は緊急回避。
あ。一本残ってる。
「一本通した。追いかけても…無理かな?」
ユリアがぼやく。
「鹿乃子ー。準備してー」
ユリカから呼出しが。
あー。やっぱ行くのかー。
巡洋艦でも、継続して追いかけているみたいなんだけど、飛行しながら撃ってもなかなか当たらないそうで。
しかも、腕の良いメンバーズ所属の操艦手が配属されるのを待ってる状態で、一般隊員の操艦手さんが操艦中なんだって。
その操艦手さん曰く「出力デカすぎて扱いきれねー」なのだそうで。
それ、戦闘艦としてでっかい欠陥商品じゃないか?
あと、なんか微妙に進路を変更していないかな? あのお届け物のミサイル。
「レーダー波受けて回避行動を取ってるね。追いついちゃえばなんとか為ると思うけど」
まあ、わたしとユリカはいかなきゃ駄目なわけで、着替えとかはいらないかい?
「シールドで覆っちゃうから大丈夫ー」
状況確認用のヘッドセットだけ付けたら、後はユリカにお任せだ。
ふっとテレポート、空中に出た? あ、此所でシールドを張って空気を確保。再度テレポートしたら宇宙空間。
足元に地球(仮)が浮かんでるよ。すげー。
「回転するよー。地球を背負う向きにするからねー」
くるっと九十度回転。
「真正面から来るはず。タイミング合わせて展開してね? 早過ぎると避けられちゃうかも知れないから」
「了解。遅れちゃったらごめんね?」
「そしたらさつきとかおりとユリアと香歩ちゃんが頑張ってくれる…と思う」
「それなら安心」
《こらー! 失敗したら罰ゲームだからね!!》
バッチリ聞かれてました。
ヘッドセットのタイマーカウントがどんどん減って行く。
ヘッドセットに映し出された中継映像ではもう少しで同じ速度に追いつけそうな巡洋艦と、くるくる進路を変え始めたミサイル。
だけど、巡洋艦の全長って五百メートルとか言ってたよね?
ミサイル、倍位有るんだけど… でかー。これ、もう、質量兵器で良いんじゃないかな。
《追いつけないから離脱するって連絡来た。ミサイルの回避行動が止まると思うからユリカちゃん、正面に…》
突然、ミサイルが火球になった。
ユリアからの指示を聞いてる途中で。
ヘッドセットの画面が真っ白に。眩しいーっ!!
何があった?
直後に、ドーンという大音響。
…何故宇宙空間で爆発音が聞こえる?
「ああ、今の音はー、ハイパージャンプから通常空間に戻った時に出る衝撃波だよー」
どっかに宇宙船が出てきたって事?爆発の音じゃぁ無いんだね?
等と考えてたら頭上からライトで照らされた。
見上げるとでっかい宇宙船の舳先部分が見える。ってか、そこしか見えない。
デカすぎてぐるっと見回さないと全体が判らない。
「一番小型の恒星間宇宙艦なんだけどー?」
いや、規格じゃそうかもしんないけどさあ。実際見たらデカいじゃんよ。
「否定はしないー」
《なんとか間に合ったかな? 遅れてごめんねー》
頭上の宇宙艦から? 通信がはいったよ。
今の声がまゆちゃんって人?
「いやー、別の人。そっち行っても良いー?」
《どうぞどうぞー。おいでませー》
別の人なんだ? どちら様なんだろう? と考えてる間に三度目のテレポート。
「ルーちゃん達、おひさー」
と言うユリカの挨拶に、
「「一纏めにするの禁止!」」
と言うお怒りの言葉。
メンバーズのお仲間らしい。
周りを見回せば、なんか、スクリーンが一面に沢山貼り付けてあるような部屋だった。
ひときわでっかい奴を正面に配置。小劇場のスクリーン位有りそう…
ユリカん家のリビングよりかなり広い。
で、なんかごっついシートが二つ。沢山のスイッチやレバーの並んだパネルが周りを取り囲んでいる。
そこに女性が二人。一人は鮮やかな緑が差したブルーの髪とでっかい目、とんがった耳が目立つ面長の美人さん。
もう一人は、ユリカより赤みが強いブロンドの長髪を、頭の後ろで尻尾にした少女。
で、どちら様?
三分の三に続きます




