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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
91/252

二月二十五日 大気圏外

五十六日目の三分の二です



 まあ、結局お城まで来たわけですよ。


 皆さん大層お忙しいんで、部屋を一つお借りしてメンバーズが集まってるわけですね。


鹿乃子(かのこ)ちゃん?なんでそんなに不機嫌なんですか?」


 道中、何にも説明してくれなかったからだよ! かおり。


「ごめんなさい。私の説明だと、鹿乃子ちゃん理解して頂けなくって…」


 かおりだけじゃなくってね?


「ユリアが適任」


 ルミが一言で終わらせたよ。その通りだよね。


 わたしへの説明担当なユリアだよね。うん。


「いつの間にか専属扱いになってるな」


 憮然(ぶぜん)としたお顔のユリア。よろしく!


「扱いが軽すぎないかな? かな?」


 まあまあ、先ずは落ち着け? それでですね…


「あー。はいはい」


 そんな(あきら)めきった表情をなさらなくても…


 何故か、ユリアと二人で隔離(かくり)されて色々教えて頂きました。


 何となーく、いや、もう明らかに、扱いが(ひど)いんじゃないかなーと思う。


 んで、カラージュエルシリーズって言うのは大戦艦並みの火力と防御力を備えた(けい)巡洋艦(じゆんようかん)なんだと。


 大戦艦てのは、全長が十キロ以上の戦闘艦で、主砲は北海道の渡島半島(おしまはんとう)位は吹き飛ばせるし、その主砲で撃たれても、数発なら沈没はしないんだとか。


 軽巡洋艦て言うのは、普通は全長五百メートルから千メートル位の戦闘艦。普通の軽巡(軽巡洋艦)が大戦艦に特攻しても小破(しようは)するかどうかなんだとか。


 カラージュエルの主砲は、そんな大戦艦を大破(たいは)出来て、装甲(そうこう)なんかは普通の大戦艦の主砲は()ね返すそうで…


 ばけもんじゃん。


 (ただ)、艦内狭いし、全力機動(きどう)すると、燃費がすこぶる悪いんだよねー。だそうです。


 あと、カラージュエルって呼び方は、試作機のコードネームがグリーンパールとかブルーダイヤとか、色と宝石の組み合わせだったから。


 なんか、金、銀、真珠(しんじゆ)がもらえそうな名前だね!


 カーマインエメラルドって機体を持ってきたっていってた。


 赤いのかな?


「かなり綺麗(きれい)な赤だね。部分的に」


 と言うユリア情報。目立ちそう。


「すっごく目立つよ。目立てば抑止(よくし)力になるよ」


 なるほどー。


 とりあえずラスト。お届け物の威力(いりよく)って?


「一発でオーストラリア大陸(仮)が群島になるかな。」


 (わか)ったー。


 一旦隔離解除してみんなと合流。


「で。わたし達ってやることあるの?」


「最悪、鹿乃子とあたしと香歩(かほ)ちゃん。後、紗耶香(さやか)の四人で、防御スクリーン展開かな?」


 ユリカからの予定を聞いて思ったのは…


「えーっと?、此所(ここ)の人工島を守る?」


「んにゃ、大気圏外で受け止めて跳ね返すー」


 違ったらしい。


「えー?」


 大気圏外って、窒息(ちつそく)しちゃうじゃん。


「そっちー? 心配なのはそっちなのー?」


 他に何が?


「さつきー。此所って、壁、頑丈(がんじよう)ー?」


「ほどほど、まあ外までは行かないよ!」


 と、謎の会話に続いて、


「鹿乃子ー。直径五十センチでなるべく頑丈なシールド作ってみてー?」


 えーっと、このくらい?


 よく分からないんでかなりガッチガチのシールドを。


「みんなー。()けといてー」


 と言った後、パキッと、いきなりシールドが割れた。


 直後、ガーンという馬鹿でっかい重低音が!


 耳痛いー!


 なんか辺りがほこりっぽい…と思ったら、わたしが作ったシールドに平行に、床、壁、天井、と、裂け目がぐるっと一周。


「かったーい…手が痛いよ鹿乃子。()れだけ強度が有れば一人で平気じゃないかなー」


 何したの?ユリカ。


(なぐ)ったー。一点集中でー。多分単位面積で言えばお届け物の破壊力よか強い力でー」


 えー? 龍神(りゅうさん)の言うには、隕石(いんせき)でも受け止めるっていってたんだけど…


 うん、大昔、龍神(りゅうさん)が直径五千メートルの隕石を跳ね返した時より強かったみたいだよ?


「そのまんま直径十キロ位に広げること、出来るー?」


「そのくらいなら多分平気」


 だよね? 龍神(りゅうさん)? OK。良かった。


「じゃ、最悪、あたしと二人で宇宙遊泳ね。よろしくー」


 だー! 待て。ちょっと待て。窒息しちゃう問題が片付いてないよ!


「あたしが受け持つよー」


 判ったよ。


 ところでな? ユリカ。あっちで、さつきがなんか騒いでる。


「あー! 部屋の強化フレームまでゆがんじゃったー!! ユリカちゃんのあほー!!!!」


 あーあ。


 壊れちゃった部屋から綺麗な部屋へと大移動。


 壊しちゃった人は正座で反省中。


 ソファの上じゃ、お仕置きになら無いと思うんだ。


 絨毯(じゆうたん)の上も似た様なものじゃないかな?


 こらこら。ユリカ! ローテーブルの上に移動するんじゃないよ。


 ほらー。メグとかおりが大爆笑…


「ほんっと、良いコンビだな。此の二人」


 高評価な判定を有り難う。カミーラ。


()めてねーよ!」


 香歩ちゃんとミュラ姫まで笑い出しちゃった。


 なんだかんだ騒いでいる内に、(くだん)の軽巡洋艦の準備が完了して出発していった。


 ユリアが言ってたとおり、赤と白で塗り分けた船体が、とっても綺麗だったよ。


 これで、お届け物の到着する三時間手前に第一回目の防衛線。


 失敗したらワープで戻って一時間手前の場所で二回目の防衛線。


 それでも駄目(だめ)だったらわたしとユリカの出番なんだと。


 上手くいけ~、上手くいってくれ~。わたしにお仕事が回ってこないようにー。


 空気がない所へなんて、行ってられるかーい。


「鹿乃子ちゃん正直(しようじき)すぎでしょ…」


 ミュラ姫が(あき)れ顔。聞かれていた模様(もよう)


 やがて一回目の防衛線で防衛戦。


 目視(もくし)で照準して撃てる速度ではない、秒速十数万キロって事なので、ハイパーレーダーという、特殊なレーダーと進路予測から目標の未来位置を設定して撃ち落とすそうです。


 巡洋艦が発砲。同時に彼方にキラリと標的の輝きが五つ。


 ややあって、オレンジの火球が拡がった。


「当たった?」


「一発だけ。次弾は無理かな?」


 と言ってる内に、巡洋艦の横を何かが一瞬かすめて通過。


「無理か、第二ラインまで戻って二回目。今度は超ロングレンジで一回とさっきよりかなり近くでもう一回」


 結果の報告に続いてユリアから解説。


 第二地点で巡洋艦を空間に固定、何か複雑な計算をしているらしい。


 予定よりやや早い時刻に第二射。


 さっきに比べ、かなり遠くで火球が拡がる。


「上手くいった。二本破壊」


 そして、予定時刻から(わず)かに遅れて第三射。


 かなり近くで大きな爆発。巡洋艦は緊急回避。


 あ。一本残ってる。


「一本通した。追いかけても…無理かな?」


 ユリアがぼやく。


「鹿乃子ー。準備してー」


 ユリカから呼出しが。


 あー。やっぱ行くのかー。


 巡洋艦でも、継続(けいぞく)して追いかけているみたいなんだけど、飛行しながら撃ってもなかなか当たらないそうで。


 しかも、腕の良いメンバーズ所属の操艦手が配属されるのを待ってる状態で、一般隊員の操艦手さんが操艦中なんだって。


 その操艦手さん曰く「出力デカすぎて扱いきれねー」なのだそうで。


 それ、戦闘艦としてでっかい欠陥(けつかん)商品じゃないか?


 あと、なんか微妙に進路を変更していないかな? あのお届け物のミサイル。


「レーダー波受けて回避行動を取ってるね。追いついちゃえばなんとか()ると思うけど」


 まあ、わたしとユリカはいかなきゃ駄目なわけで、着替えとかはいらないかい?


「シールドで(おお)っちゃうから大丈夫ー」


 状況確認用のヘッドセットだけ付けたら、後はユリカにお任せだ。


 ふっとテレポート、空中に出た? あ、此所でシールドを張って空気を確保。再度テレポートしたら宇宙空間。


 足元に地球(仮)が浮かんでるよ。すげー。


「回転するよー。地球を背負う向きにするからねー」


 くるっと九十度回転。


「真正面から来るはず。タイミング合わせて展開してね? 早過ぎると避けられちゃうかも知れないから」


「了解。遅れちゃったらごめんね?」


「そしたらさつきとかおりとユリアと香歩ちゃんが頑張ってくれる…と思う」


「それなら安心」


《こらー! 失敗したら罰ゲームだからね!!》


 バッチリ聞かれてました。


 ヘッドセットのタイマーカウントがどんどん減って行く。


 ヘッドセットに映し出された中継(ちゆうけい)映像ではもう少しで同じ速度に追いつけそうな巡洋艦と、くるくる進路を変え始めたミサイル。


 だけど、巡洋艦の全長って五百メートルとか言ってたよね?


 ミサイル、倍位有るんだけど… でかー。これ、もう、質量兵器で良いんじゃないかな。


《追いつけないから離脱するって連絡来た。ミサイルの回避行動が止まると思うからユリカちゃん、正面に…》


 突然、ミサイルが火球になった。


 ユリアからの指示を聞いてる途中で。


 ヘッドセットの画面が真っ白に。(まぶ)しいーっ!!


 何があった?


 直後に、ドーンという大音響。


 …何故宇宙空間で爆発音が聞こえる?


「ああ、今の音はー、ハイパージャンプから通常空間に戻った時に出る衝撃波(しようげきは)だよー」


 どっかに宇宙船が出てきたって事?爆発の音じゃぁ無いんだね?


 等と考えてたら頭上からライトで照らされた。


 見上げるとでっかい宇宙船の舳先(へさき)部分が見える。ってか、そこしか見えない。


 デカすぎてぐるっと見回さないと全体が判らない。


「一番小型の恒星間宇宙艦なんだけどー?」


 いや、規格じゃそうかもしんないけどさあ。実際見たらデカいじゃんよ。


「否定はしないー」


《なんとか間に合ったかな? 遅れてごめんねー》


 頭上の宇宙艦から? 通信がはいったよ。


 今の声がまゆちゃんって人?


「いやー、別の人。そっち行っても良いー?」


《どうぞどうぞー。おいでませー》


 別の人なんだ? どちら様なんだろう? と考えてる間に三度目のテレポート。


「ルーちゃん()、おひさー」


 と言うユリカの挨拶に、


「「一纏(ひとまと)めにするの禁止!」」


 と言うお怒りの言葉。


 メンバーズのお仲間らしい。


 周りを見回せば、なんか、スクリーンが一面に沢山(たくさん)()り付けてあるような部屋だった。


 ひときわでっかい(やつ)を正面に配置。小劇場のスクリーン位有りそう…


 ユリカん家のリビングよりかなり広い。


 で、なんかごっついシートが二つ。沢山のスイッチやレバーの並んだパネルが周りを取り囲んでいる。


 そこに女性が二人。一人は(あざ)やかな緑が差したブルーの髪とでっかい目、とんがった耳が目立つ面長(おもなが)の美人さん。


 もう一人は、ユリカより赤みが強いブロンドの長髪を、頭の後ろで尻尾にした少女。


 で、どちら様?

三分の三に続きます

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