二月二十五日 宇宙海賊さん
五十六日目の三分の一です
星暦二千百十一年二月二十五日 水曜日
お早うございます。
今日はちょっと寝坊した。
身支度を調えた所で朝食時刻のちょっと前。
今朝のランニングマシンはお預けの模様。
今日、学園に持って行くものはとりあえず準備してしまおう。
朝食にはちょっと早いけど、部屋を出る。
リビングを覗いたら、ユリカとミュウが居た。
「お早う」
声を掛けると勢いよく振り向いたユリカ。
「おはよー。寝過ごしたのー?」
「お早う」
ミュウも挨拶を返してくれた。
「寝坊した。ちょっと寝不足かも」
正直に答える。
「ちょっと時間の割り振り、考えておくよー」
ユリカの返事。
ゲームが毎晩深夜まで。ってのは、正直つらいので助かる。
「ありがと、よろしく」
お礼と共に頼んでおく。
「ミュウからも開発の時間が取れないーって言われてた所なんだー」
「ミュウも寝不足。やりたいことが沢山出来ちゃったから」
ランニングマシンか。
わたしもどっちかと言えば、ゲームよりマシンの方を優先したい。
身体を動かしている方が楽しいし。
外で走ると怒られるし。
「ねー。鹿乃子ー。普通の人が、かおりのパルクール移動を町中で見たらどう感じると思うー?」
「……危ないなー。とか。他人の家に勝手に入って何してんだ?とかかなぁ」
「鹿乃子がコミューター追い越して車道を走ってるのはー?」
「……判った」
お説教だった。
一般の常識から外れているらしい。残念。
そこへバタバタと慌てた様子で降りてきたのは重役コンビ。
同時に、ユリカの携帯端末が警報のような呼び出し音を響かせる。
ミュウは、あー…と言う表情を見せた後、片手で顔を覆う。
「まゆちゃんおひさー。 うん。 うん。 良いよー。こっちで対応するー。 了解。頑張ってねー」
と、通話していたユリカが端末をしまい、さつきに向き直る。
「お城、先に行ってて? とりあえず緊急放送でしょ?」
「判ったよ。さつき」
ユリアとさつきがテレポートして消える。
直後に他のメンバーも集合した。
「ユリカ、質問」
「はいー?」
「まゆちゃん、って、誰?」
ゴチンと音がして、ユリカがローテーブルに突っ伏した。
「そっちかー」
額を押さえながら身体を起こすユリカ。
「何事が起きてるのかって所は気にならないのかねー? 君はー」
「今から説明するんじゃないの?」
気になるに決まってるじゃん。
でも聞くまでもないよね? みんなに説明するんでしょ?
「反論の余地がないねー。姫野まゆちゃん。学園長の従姉妹でメンバーズ。第一艦隊勤務の軍属だよー」
また姫野… 多いなー。
で、軍属って何?
「軍人扱いの民間人って意味で使ってますね。まゆちゃんは確か、大将待遇ぐらいになってませんでしたっけ?」
かおりの言葉に、ユリカが頷いている。
大将…? すっごく偉い人じゃなかった? それ
「元帥職が設定されてませんから後は上級大将しか居ませんね。その上は連邦大統領ですよ」
何それ凄い。重役じゃん!
「ちな。姫野大将と呼ぶと拗ねる。要注意」
えぇー? なんかがっかりな情報なんだけど?ルミ。
「それより状況。状況確認大事」
ルミの言うことが尤もなんで、ユリカ。よろしく。
「思いっきり引っかき回したよねー? よろしくって何さー。よろしくってー」
「ごめんなさい」
「許す」
あっさりだな。
そんな戯れ合いをしていたら、例の[ピンポンピンポン…]と、何となく引きつけられるんだけど、微妙に間の抜けた感じのチャイム音が。
『緊急のお知らせをします!現在夜間の地域の皆さん。お騒がせしてごめんなさい! 星系外からの違法侵入者情報が入ってきました。安全確保のため、今日、明日の二日間、都市間及び惑星間の移動を自粛して下さい。急用の場合は転送ポートの使用を許可いたしますので、行政窓口までお越し下い。 以上、姫野グループ広報専用総会長、姫野さつきでした!』
前も聞いたけど、緊張感のない緊急放送でした。
無駄に緊張するよりはマシだけどなぁ。何か違う気がする。
「それじゃー、鹿乃子にも判るように状況説明をー。って、難問だな?」
ユリカ!? 失礼な!
酷い前置きの後で聞いた説明の概要は…
今月八日の爆破事件でとっ捕まった連中の処分が決定。
第三艦隊のトップが主犯なんで反逆罪が適用されちゃったそうで。
関係していた積極的だった一派が軒並み南無阿弥陀仏。
で、実家の方に影響出ないようにしてたのに一族揃って逆恨み。
更に、連邦では使っちゃいけないはずの兵器を用意しちゃったらしい。
そして、辺境でかなり勢力の大きな宇宙海賊さんに、宅配依頼をしちゃった模様。
お届け先が地球(仮)。
直前に状況を確認した連邦軍第一艦隊が緊急発進で対応中らしいんだけど、ストップを掛けたのが太陽系(仮)の最外縁からちょっと外。
第一艦隊の、速度の速い一団が足止め、その後本体が到着して海賊は片付きつつあるらしいんだけど、本体到着直前にお届け物を放出されちゃったと。
三十個ほど放出されたほとんどは破壊したんだけれど五個が間に合わなくってお届け中なので、ごめん。なんとかして?ってさっきの連絡だそうです。
「バタバタやってる所までってどの位離れてるの?」
と、ユリカに訊いてみたら、
「だいたい七十六億キロ位かなあー」
って? 光の速度で七時間位? むっちゃ遠いじゃん。
「お届け物が届くのは?」
「多分、夕方位だと思うわ。警備部の防衛隊が軽巡洋艦クラス引っ張り出してるから迎撃出来ると思うんだけどねぇ」
此の答えはミュラ姫から。
なんか、装備が良くなってませんか?
「この前色々ねじ込んで拡充したから。もう一回抗議出来そうよね。しめしめだわね」
いや、巡洋艦って一週間やそこらで用意出来るもの?
「試作した戦艦なら艦隊組める位有るわよ? 重工部門とか開発部門とかに。重巡位、翌日には届くわよ」
翌日配達の通信販売じゃないんだし…
それ、死蔵品とか、滞留在庫とか言いません?
「試乗用と展示用よ。元々試作機ってゼロ号機で稼働チェックしたら量産確認しながら十機ぐらい作るから結構残るのよ」
「残る?」
「限界テストまでしちゃうから大抵五、六機は壊れるわね」
「この間、ケイの所でテストした飛行機みたいな感じ」
ミュウから追加で情報が来ました。
「残った試作機を整備して展示したり、試乗してもらったりするのよ」
そこから引っ張って来ちゃった、と。
「ねえねえ、ミュラちゃん。今、軽巡クラスって言いました?クラスって」
なにやら、かおりが食いついたんだけど?
「あら。さすがはかおりちゃん。気が付いちゃった?」
なんでしょう?
なんか、ひらめいたって顔したユリカも食いつく。
「ミュラちゃん、もしかして[カラージュエル]シリーズ持って来たー!?」
「正解ー」
と、嬉しそうなミュラ姫。
「カラージュエルって、軽巡のフリした大戦艦じゃないですか!完成してたんですか?」
かおりもノリノリ? そろそろ付いて行けないぞ?
「あー、説明が面倒からお城行こー? ユリアにぶん投げよー?」
ユリカ? ぶっちゃけた? 酷すぎる!? わたしの扱い酷すぎるんじゃないかい??
ほら!ユリカ以外は呆れた顔してるし!
三分の二に続きます




