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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年一月
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一月七日 タウンキーパー

七日目です

 星暦二千百十一年一月七日 水曜日


 新しい朝です。恐怖の朝です。不安がMAXです。何が起きるんだろう。


 約束通り(むか)えに来たユリカとコミューターで移動。居住区と学園区の間、の緑地帯に到着。かなり大きな木が密生している森林地区みたい。


「昨日写真見たでしょ?あの子がこの中に隠れてるので捕まえて下さいって言ってた」


 いや、止めるか捕まえるかって()いたとき止めるって言ってなかったか?確か。


 んで、止めるってどゆこと?止めるって。


「一 、動いているものを動かないようにする。二、 継続しているものを続かなくさせる。って、辞書に書いてあった」


 そーゆー事で無くてな?だいたい それを実行したら相手の人大変なことになっちゃうよ?動きを止めたり息を止めたり心臓止めたりって大事件じゃん。


 どんどん森の中に入っていくユリカを追いかける。一キロ位進んだかな?人を探してる雰囲気が無いけど、探さなくていいのか?


鹿乃子(かのこ)!じゃんぷっ!!」


 突然振り返ってユリカが叫ぶ。びっくりして言われるままにジャンプって!しまった!!跳びすぎた?


「ドカン!」という、自動車同士がぶつかった時のような音が鳴り響く。


 音の(みなもと)に目を向けると。ユリカが此方(こちら)に向けて手を振っている。その足下一面に何か機械の破片やらオイルやらよくわからない何かやらが散乱して…


「パンツ見えてるよー?」


「見るなっ!」


 慌てて飛び降りる。スカートの裾を押さえながら。


 ジャンプしすぎたんだよ!ちょっとだけ!五メートルくらい!手近な木の枝に乗ってたら下から見られた!


「だからこっちのタイプ使ってるんだよ?」


 そう言って自分の制服のスカートをまくってみせるユリカ。


「ヤメロ!」


 手を叩いてスカートを下ろさせる。


「で、これは何?」


 足下を指さして(たず)ねる。


 無言で端末に表示して見せてくる昨日の女の子の写真。


 やっぱりかー!止めちゃいました。息の根を。但し、呼吸はしていなかった模様。


「ロボットなの?暴走でもした?」


「なんか手違いで暗殺任務、インストールしちゃったらしいんだー」


 かる!。そんな軽く言っていいことなの?


 あ!それよりも!!どうやったらこんなバラバラ以上な状態になるんだ?粉々?それも一瞬だったよね?


「混乱してる 混乱してる」


 するだろ。普通。それと指をさすな!お腹抱えて笑うな!!



 一時間後、あっちへこっちへと横道にそれようとするユリカの話を軌道修正しつつ聞き出したところ、軍事用アンドロイドの起動試験で新人がミスをして暗殺指令の実行プログラムをインストール。


 そのまま起動しちゃったため暗殺対象のいる市街へ逃走し潜伏しているのを機能停止(破壊…いや、粉砕が正しい)させたと。


 なんて言うか、ほんとーに人騒がせな…どうやって停止(正しくは粉砕)させたのかと聞けば


「こうやって(なぐ)って?」


 と、正拳突きの形。なぜ疑問形?空手の達人でも絶対無理だと思う。


「授業初日から遅刻までして何やってるんだか…」


 額を押さえて思わずぼやく。


「出席扱いになってるから大丈夫だよ?」


 そう言いながら肩をポンポンと。顔をのぞき込むんじゃ無い。


「今度は普通に暮らしたかったんだけどなー」


 ついこの間までの、割と波瀾万丈な生活がふと頭をよぎる。


 顔を両手で覆い、指の隙間からユリカを見ると、


「無理だと思うな。ちゃんと前の生活、報告書が来てるからね?」


 なんですと?


「わざとか!知っていてわざと近づいたのか!」


 思わず詰め寄る。


「偶然。ほんとに偶然。タウンキーパーとお話しする人が珍しくて近づいたら鹿乃子だったの。これホント」


 どうやら、わたしに近づく打ち合わせを終えた帰り道で偶然出会ってしまったと。


 始めからクラブに勧誘する気満々じゃ無いか。


「ラッキーだった」

 じゃ無いっ。


「おおきなおとがしたんだよー。こっちのほうだったんだよー。なにがあったのかなー?」


 唐突に何か聞き覚えのある声が近づいてきた。


「あーっ!ごみのふほーとーきのげんこうはんだよ。しかもはんにんはゆりかちゃんだー。たいへんたいへん。みんなをよばないとー。」


 タウンキーパーのアリスちゃんですね。ポケットから何やら取り出すと口元の持って行って…


「ぴりりりりりりりー!!」


 大音量の笛でした。音 すごっ!


 すぐに妖精やらドワーフやらエルフやらの様々な見た目のタウンキーパーが集まってくる。行動早!


「さあ、ごくあくはんざいしゃのゆりかちゃんをとりおさえるんだよ。」


 両手を挙げて降参ポーズのユリカ。


「はんにんのゆりかちゃん。あなたにはごみひろいのばつをいいつけるよ。」


 ズビシッと指さして宣言するアリスちゃん。


「ぜんいん かかれー」


 アリスちゃんの号令と同時に、大きなゴミ袋やちり取り、ホウキ、大きなトング、手袋、等など、お掃除道具を取り出して一斉に掃除を始めるタウンキーパーたち。どこから出したんだろう?集まってくるときは手ぶらに見えたんだけどなぁ


 なぜかハタキを片手にユリカにゴミ拾いをさせているのはアリスちゃん。時折 教育的指導が飛んでいますね。


 …わたしもお掃除 始めますか。


 ものの三〇分ほどで綺麗(きれい)さっぱり片付いた。大量に飛び散っていた油らしき液体はどこへ行ったんだろう。


 そして、なぜか全員でわたしに敬礼をしながら、アリスちゃんが代表して


「おてつだいありがとうです。かのこさん。われわれは この ごくあくにんを れんこうするので これでしつれいするですよ。」


 言い終わるや、全員くるりと回れ右。そのまま大きなゴミ袋とユリカを引きずって去って行った。


 引きずられながら此方(こちら)に手を振っているユリカ。バイバイじゃ無いよ!


 一人取り残されてしまった。


 どうしようもないので、()めっぱなしのコミューターまで戻ってそのまま登校。


 ルミと かおりにその話をすると ばっと横を向いて声を漏らさぬよう口元を押さえるルミ。思いっきり肩が震えてるんですが。


「相変わらずですねー」


 乾いた笑いをこぼす かおり。



 その後、残りの時間は平和に過ごすことが出来ました。


 結局、その日は ユリカの姿を見ることは無かった と言っておきましょう。


 めでたし。


 それでは、おやすみなさい

八日目に続きます

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