二月二十三日 ツンデレ
五十四日目です
星暦二千百十一年二月二十三日 月曜日
お早うございます。
今朝も例によって地下一階。トレーニングルームにて走ってますよ。
今朝はミュウとユリカ、NINJAコンビが一緒に。
相変わらずNINJAコンビは自由気まま。
ミュウは飛行訓練中。
妖怪スクーターおばちゃんは見かける度に討伐中。
猪は瓜坊に分解してる。
あと、時々ゴリラ。ライオン。パンダ兎。
兎はいかん。時間を忘れてモフっちゃうから。
かおりがビルの屋上にプテラノドン居たとか言ってたし。
邪魔だから蹴り飛ばしたらしい。
なんか、音が聞こえた気がするな。
こっちもちょうどおばちゃん蹴り飛ばしたとこだったみたいなんでよく分からんかった。
しかし。実際の町中で蹴り飛ばさないように気をつけないと。
傷害事件になっちゃうし。
「あはははははははははははははははははははは。スクーターおばちゃんは此の島に居ないから平気だよー」
ホントか?
何処の町にも出没するって訊いたんだけど?
「あのサイズのスクーター、この島での登録台数ゼロだもん。本家の地球にはまだ居るかもしれないけどねー」
「それと、スクーターおばちゃん道交法に違反してるから間違いなく[タウンキーパー]が捕縛するよ」
ユリカとミュウがお答えを。
そっか。速度規制も停止義務も歩行者保護義務も全部無視してるな。
さすが妖怪。
「映像も作り物って感じが残ってるでしょ? だから間違えたりしないわ。敢えてそうしてるのよ。現実と混じっちゃったりしないようにって」
視界の外から声が?
VRゴーグルの映像を透過させたら隣にミュラ姫。
何となく作り物っぽいのって態とだったの?
「その気になれば見分け付かないレベルで表示出来るわよ?弄ってみましょうか?」
「お願いします」
言った途端風景が変わった。
全く自然な風景に。
やばい。これ完全に現実と混じる。混乱する。
視覚に対する他の感覚と微妙にズレがあって気持ち悪い。
リアルなら良いってものじゃないんだな。驚いた。
吃驚して走るの止めちゃったら元の画像に戻った。
「凄かった。逆になんだか気持ち悪いんだね」
「リアルなのと自然すぎるのって違うから。五感が受ける現実との微妙な違いが気持ち悪く感じるのよ。今位の作り物だよっていう映像なら平気なのは視覚が現実じゃないって認識出来るからなのよね。きっと」
色々と気を使うんだな。市販製品を作るのって。
「何を変えてるの?荒っぽい映像になるわけでもないのに此の作り物感たっぷりなのって」
「主に空気が反射する光と、影に回り込みを起こす光かな。それと色の数」
空気が光を反射?
「空気の分子とかでも光の反射が起こるからね。それに大気中には埃や塵も大量にあるでしょ?それと、単純な言い方だけど、影の境で起こる光の屈折。航空機の影がなかったりぼやけたりするのがその実例かな」
影? あー。妙にハッキリ見える建物の影とかの事かな?
言われてみれば、確かに違和感を感じてる。
「繊細なんですねぇ」
「人間の視覚って案外凄いのよ? 脳の処理が追いついてないけど」
吃驚知識でした。かなり簡略化した説明っぽいけど。
そんな知識まで必要とするんだなー。
「あ、知らなくても開発に支障ないから平気よ? 感覚頼りでどうとでも為るし、知ってる方が考えやすいだけだから」
…落ちが…落ちが酷い。感心したのに。
トリビア知識でしたか。
「鹿乃子ちゃん、説明聞く前から違和感に気付いてたじゃない。感覚で調整ってそれの事だよ?」
ミュウに言われて気が付いた。
話を聞かなくても違和感は感じてたし、映像が作り物だって事も認識出来てたね。
自分の身体なのに気付けない、不思議だねぇ。
そんなお話をしていたら朝食の時間になったので一階に戻る事に。
で、ダイニングのテーブルにて。
「ウイー? ウイーちゃん? ちょっと待ってー? あたしー。あたしの注文もお願いー」
と言うユリカの悲鳴が。
時間に合わせて揃ったメンバーから、最早、当たり前に朝食の注文を受けたウイーが、ユリカだけ華麗にスルー。
慌てて注文をお願い。とユリカが悲鳴を上げた所です。
渋々という感じを滲ませつつユリカの注文を受け、キッチンへと向かうウイー。
見事な弄り方。
しょんぼりと萎みきったユリカがウザかわいい。
さつきを除いた全員揃ってるんですけどね。
サリーがニヤニヤ…いや笑いを必死にこらえてる感じ?
じっと見てたら決壊した。
「ユリカちゃん。あれ多分ツンデレモード…」
「なにそれ!?」×九人
「二番目に気に入ってる人を邪険に扱うモードなの。ごめんねー。内緒で入れてたのが発動しちゃった」
「サリーちゃん!?」×九人
てへぺろーって顔で宣うサリーに全員から悲鳴が。
悪戯するにも程があるんじゃないかい?
ま…まあ、ユリカが弄られるだけなら実害はないから良いとするか。
「鹿乃子もなにげに酷いー?」
ユリカが涙目で叫ぶ。
「まあまあ、ツンデレって言ってたから、しばらくすればデレるわよ。弄られてるだけなんだから。ね?」
ミュラ姫があやす…もとい。慰める。
かおりとメグは視線逸らしたまま肩がぷるぷる…
至って平和です。
八時半回った頃さつきが起きてきて朝食。
待ち合わせ時刻の九時に合わせてゲーム部屋に集合し、みんなでログイン。
なぜだろう、居てはいけないはずの なばちゃん先生がいる。
《なばちゃん? お仕事は?》
《昨夜の内に済ませましたー》
質問したらこれがお答え。
いや、それおかしい。
《答案用紙、金庫みたいなとこに保管したんですよね?》
《そうですよー》
だからさ…
《夜学校に行っても、金庫開かないですよね?》
《学園長を約一名様ほど用意すれば開きますよー》
いや、学園長は一人しか居ないよ?
《学園長は合鍵扱いですか?》
《大丈夫ー ちょっと脅せばー 大抵は言うこと聞いてくれますからー》
脅した? 脅したって言ったぞ? この人。
《失礼ー お願いですー 懇切丁寧に 昔話しながらお願いしたんですよー》
………
もうね、周りの全員が大爆笑。
ユリカやさつきなんかゲームシートから落っこちちゃってるし。
クラスメイト達も決壊したらしく、なばちゃんとわたしのキャラ以外、全員地面でのたうってます。
ゲーム機の画面。
《あららー 何か拙かったですかねぇ》
等と言いながら辺りを見回すなばちゃんのエルフ幼女。
これが教師で大丈夫なのか?姫野学園高等部。
みんなが復帰するのに十五分ほど必要でした。
その後は順調に。三パーティーで攻略を進め、夕方六時から一時間の休憩。
七時から続きを深夜まで。
次回以降はログイン時間が重なった人で組みましょうと別れてログアウト。
平和だ。
おかしい。平和すぎて不安になるよ?
ここ数日、行動する度に何かしら騒ぎが発生してたはず。
何か大騒動の前の静けさなのではなかろうか?
なんだかぐるぐる疑問が湧いてきて…
「ユリカちゃーん。鹿乃子ちゃんが何か疑心暗鬼に陥ってますよー」
「鹿乃子ー。たまにはこんな日も在るよー。ていうかー。これでも結構騒がしかったと思うんだー」
「ですよね?プテラノドン出てきたし、ウイーちゃんはユリカちゃん弄ってたし、なばちゃん先生は学園長脅迫してたし」
言われてみれば…色々あったような気がする。
かおりの言葉で我に返った。
「かおり、助かった。有り難う。考えてみれば充分以上にトラブル発生してるね」
「はい。ふつーの人生はもっとずーっと平和だと思いますよ?」
良かった。天変地異でも起こるんじゃないかと心配になったよ。
「みんなでお風呂入って休もー?」
ユリカの言葉にみんな頷いて、着替えを用意してお風呂。
ゆったり温まってお休みを言って夫々自室へ。
明日からまたふつーに授業だよ。
それでは、おやすみなさい。
五十五日目に続きます




