二月二十二日 別腹
五十三日目です
星暦二千百十一年二月二十二日 日曜日
お早うございます。
地下のトレーニングルームです。
時刻は六時ちょうど。
ミュウも一緒。
例の新型マシンですが、全部で十二台に増殖してました。
仕事が早すぎませんかね?
しかも、なんで十二台?
全員で使っても余るんですが?
「三掛ける四でちょうど綺麗に並ぶからだって」
ケイに確認したミュウからの報告。
研究者のくせに早起きだな。此れから寝るのか?
……まあいいいや。
昨日の続きから島内一周の続きだー。
と言う訳で、マシンに乗って起動させる。
いっくぞー。
と、横を見たらミュウが浮かんで付いてくる。
「一緒に練習」
「了解」
あんまり無茶な機動は控えよう。
二人で一時間ほどトレーニング。
七時になったので朝食を摂る事に。
因みに、ミュウ、今日は大分上達して、ショーウインドウには一度飛び込んだだけで済みました。
一階へ戻り、着替えてダイニングへ。
ウイーがウキウキしながらメニューを表示して待っている現在。
「ミュウが来るからちょっと待ってね?」
「ゴユックリ ドウゾ」
そこへミュウが、直後にユリカがやってきた。
「お早う。鹿乃子、昨夜有り難う」
「お早う。無茶すんなよー」
「ユリカちゃん、お早う」
と、わたしとミュウが挨拶を返し、
「ミナサマ、オハヨウゴザイマス」
続いたウイーの台詞にユリカが固まる。
「あ!パンケーキセット。ミュウ、これが良い」
さっくり無視ですか? ミュウさんや。
「んじゃ、わたしも。ユリカは?…一緒でいいや。三人分お願いね?」
「オマチクダサイ」
昨日実際目撃していた面子以外、まだ話はしてないんだよね。
実際見てもらった方が判りやすいだろうし。
と言う訳で、ユリカの解凍待ち。
ややあって、がっくりと膝と両手を床に付けたユリカが一言。
「喋っちゃったよー」
ミュウがそんなユリカの肩をポンポン。
「大丈夫。鹿乃子ちゃんが居る時限定」
それ、なんの慰めにもならないと思う。
「なんか、凄く美味しい」
その後、ウイーが作ってくれたパンケーキセット。一口食べたユリカの台詞。
「自動調理器の微調整でこうなるっぽい」
「そうなんだー。マニュアルって必要なんだねー」
ミュウの台詞にユリカの返事。
こっそり溜息を一つ。
そして、おもむろにユリカの頭を掴む。
「ユリカ。マニュアルに謝れ! 全力で!!」
「痛い痛い痛い。ごめんなさいー」
「あはははははははははははははははははははは」
ミュウが決壊した。
その後、食べ終えた食器を纏めた所へ、受け取りに来たウイーが胸に名札を付けているのに気が付いて、ユリカが爆笑していたり。
食べて直ぐ動くのもいやなのでしばし休憩。
ミュラ姫とNINJAコンビが起きてきて朝食。
此方もウイーが作ってくれた。
他のメンバーは起きてきませんね。
ミュラ姫達が食べ終えて三十分ほど待ってたんだけどね。
「ユリカ。ランニングマシンのテスト、参加して?」
「いいよー」
と、軽いノリでトレーニングルームへ。
「何これー」
お口をパカーっとしたユリカ。
ミュラ姫とNINJAコンビも唖然。
「ほら、昨日もう少し増やしてって、ケイにお願いしたじゃん? したらこうなってた」
「ケイ…なんて極端な娘…」
がっくりと肩を落とす姫。
「これ、もう一人一台にプラスして予備一台って感じですねー」
とかおりが呆れれば、
「ケイ。GJ]
と親指を突き出すルミ。
「鹿乃子ちゃん。さっきの続き。今度はショーウインドウには突っ込まない」
いそいそとゴーグル付けてマシンへと上がるミュウ。
わたしもマシンに上がって準備。
「そう言えば、さっきの一緒に走る奴。どうやったの? ミュウ」
「ユニオンモードって言うのがあるの。機械の番号を指定すると同期出来るの」
メニューを見たら、有るね。なるほど。
現在の設定はわたしが乗ってるマシンが親機でミュウが子機。
増えた。
かおりとルミとユリカ。
ミュラ姫は見学らしい。
ニヤニヤとユリカを見る姫がいやらしい。
まあ、期待してる事は判るんだ。判るんだけどさぁ…ユリカだぞ?
まあいいや。
四人揃って走り出す…て言うか、ミュウは飛行開始。
相変わらず、壁や塀がある所ではパルクール移動のかおり。
ルミは更にアクロバチックに宙返りとかしてるけど。
「ルミちゃんのはフリーランニングですね」
かおりから訂正が入りました。
よく分からん。
そんな話をしてたら、ミュウがショウウインドウに突っ込みそうになって悲鳴を上げつつなんとか回避。
「危なかった…」
段々コントロールが良くなってきたね。
現在の移動速度は時速五十キロ位で割とのんびり。
ルミとかおりも速くなったよね。始めの頃は六十キロでの移動嫌がってたのに。
今じゃ、余計な障害物競走してるのに追いついてるし。
龍神の加護、すげー。
「言われてみれば。全然気にしてませんでした」
「鹿乃子様のおかげ。南無南無」
ルミ。それ仏教。わたし神道。
「うひゃぁい」
後方から、突然ユリカの悲鳴。
わたしのやや後方を走っていたユリカの前を、一旦停止、及び歩行者保護義務無視のおばちゃん暴走族が横切った模様。
隣のマシンで走ってるはずなのに。
音声の聞こえてくる方向まで相対位置に合わせてくる。
ハイテク技術の無駄遣いが極まるね。
「何ー? 今の何ー?」
軽ーく障害を飛び越えたユリカが騒いでる。
気配とか無いから驚くよね。あれ。
「スクーターおばちゃん。一つの町に必ず何人か現れる妖怪かなんかだって、ケイが言ってた」
「あはははははははははははははははははははは」
器用にも爆笑しながら走り続けるユリカ。
「討伐すると増えるらしいよ」
と付け加えてみた。
「判ったー。見つけたら倒すー」
やっぱそう来るか。期待通りだぜ、相棒。
それから一時間ほど走り続けて、スクーターおばちゃんは結構蹴り飛ばした。
結果、わたし達の周囲に一、二台は必ず走ってる状態に。
増えたもんだ。
これ以上増えても邪魔なんで討伐は止めたんだけどね。
瓜坊も結構走り回ってます。
他には、飛んで来たムササビが顔面に張り付いて前が見えなくなったミュウが、バス型の大型コミューターに派手に突っ込んだり、壁を飛び越えた先にいたライオンさん達とルミが格闘戦になってみたり。
何故町中の緑地帯に腹ぺこのライオンさん一家が…
走る以外で疲れ果てて休憩になりました。
「ミュウ。ゲーム開発。切望」
「「「「あー」」」」
ルミの要望に一斉に納得。確かに楽しそう。良い運動にも為るし。
「ゲーム機にするにはお値段が凄いけどねー」
とは、ユリカのコメント。
「機能絞れば家電品並みにはなると思う」
ミュウの言葉に希望が見えるね。早速メモしてるし。
いや。アミューズメント施設の筐体なら有りなのかな?
色々アイデアが出て、ミュウがメモを取るのに大忙し。
おやつにしようという話に纏まって、って、何処からおやつに話が変わった?
まあ良いか。
揃って、ダイニングへ戻ってきた現在。
さつきが朝食中だった。
「お早う!」
「いやもう十時回ったよ?」
「お早うでも間違っちゃいないけどー」
「相変わらず休日はゆっくりですね。さつきちゃん」
「ねぼすけ」
「そんなに沢山朝食摂ってお昼は大丈夫?」
「散々だね。さつきちゃん」
さつき、わたし、ユリカ、かおり、ルミ、ミュラ姫、ミュウの順に発言。
結果、涙目になったさつき。
しばらく何か反論しようと悩んだ末、黙って食事を続ける事にした模様。
その哀愁漂う姿に思わず頭をなでなで。
「むーむー」
パンを加えたまま真っ赤なお顔になって、両手でポカポカされたのはなんでだろう?
コーヒーでも、とキッチンに向かえばウイーが期待に満ちた表情(端末表示)で。
「ナニニ イタシマ ショウ?」
ちょっと待ってと手で制して振り返り、
「コーヒー以外の人」
「緑茶ー」
「ココア」
ユリカとミュウ。
「緑茶とココアが一つずつ、コーヒー四つ。お願いして良い?」
「オマカセ アレ」
ダイニングのテーブルで待つ事少し。
コーヒー、ココア、緑茶が配膳されまして。
緑茶だけ、湯飲みごとぽいっと投げ渡してたのは何故?
まん丸お目々で慌ててキャッチしたユリカは、その後涙目でした。
「何か恨まれる事したんじゃないのかい?」
「否定しきれないー」
わたしとユリカの密かな会話。
全く溢れてないのは受け取る方が上手いのか投げ方なのか…
そこへメールの着信音。ユリカの端末かな?
「あー。ジーナ達が待ってるってー」
端末を見たユリカの台詞。
見計らったかのように元受付コンビとサリー、ユリアが起きてきた。
「聡美に起こされたよ」
「麗華からメール攻撃が…」
ユリアとメグ。
待ちきれなくなった同級生に起こされたのか。
「じゃ、早めにお昼にして始めない!?」
さつきの言葉にわたしとミュウ、姫、NINJAコンビが一斉に視線を向ける。
「あれ?」
キョトンとするさつき。
君は今、朝食食べ終えたとこだよな?
「お昼は別腹!?」
「「「「「「違うだろ((でしょ))?」」」」」」
ハモった!
それはもう、綺麗ーに。
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
ユリカ、かおり、ミュウが大爆笑。
後から来た四人も、さつきの手元にある朝食が載っていた空のトレーを見て理解したらしい。
盛大な溜息が三つ。プラス、頭を抱えたユリアの出来上がり。
先に早めのお昼を食べてからログインする旨を伝えれば、ジーナ他、同級生もそれに習うと返事が来る。
十一時半を待ち合わせ時間に決めて、早めのお昼。
和風キノコ山菜パスタ。
さつき、ホントにお昼を一緒に食べたのには吃驚だよ。お代わりまでしてたよ。
全員でゲーム部屋に移動してログイン。
おやつとドリンクはたっぷりと。
夕飯代わりの携帯食は却下しましたとも。
ジーナや麗華達も順次合流、十一時十五分には全員集合って…
学校でもこうなら教師の皆様が楽出来るだろうなあ。
《みんな集まりが早くて助かるよね? なばちゃん?》
《言いたい事は判りますー 思うように行かないのが人間ですからねー 特に成人以下の場合は出来ない方の割合がー》
先生らしい言葉に一瞬吃驚したり。
あと、サリー以外の全員がどっか向いて聞こえないふりしてる当たり…止めよう。
その後は、たっぷりゲーム三昧。
夕飯時には、みんな素直に一旦ログオフ。
一時間で再集合してたけど…
最終的に、日付が変わる前に今日の冒険はお開きとなりまして。
いやに聞き分けが良いな。
《さすがに、昨日の夜疲れが酷くて。反省しました》
聡美が理由を話してくれたよ。
なばちゃん曰く。全力で遊んで全力で休んで。
自分の限界を学習してるんだそうな。
大人になると出来なくなるってじいちゃんがよく言ってたな。
身近な約十名様を見てると疑問しか浮かんでこないんだけどな。
あれか。判ってて限界まで突っ込んで行ってるのか。
そう言えば、遊びには手を抜かない、って言ってたな。確か。
明日は九時集合で話がまとまり、ログアウト。
お風呂にゆっくり浸かって、固まった身体を溶かす。
使ってるのが目と肘から先だけなんで腰とか背中がガチガチなんだよね。
初日にソファーでやってた時と比べたら、ゲームシートのおかげでかなり楽にはなってるんだけどさぁ。
五時間も六時間も連続してやるもんじゃない気がする。
明後日からは課題もあるし、こんなに長い時間は出来なくなるだろうけれど。
でも、全力で遊んでるのって、なんか爽快。
こんなに他の事を考えず集中した経験が無いからかなぁ。
わたしも現在進行形で学習中ですよ。
今度は、自分の限界を超えるって事もやってみたいかな。
フォローしてくれる人が大勢居るし。
全てをお任せしちゃっても大丈夫そうだし。
そんな事をつらつらと考えて就寝準備が終わる。
それでは、おやすみなさい。
五十四日目に続きます




