二月二十一日 ダウン
五十二日目 三分の三です
地上に戻る。
ゲーム部屋(もう呼び方これでいいよね?)の連中は未だに出てくる気配無し。
とりあえず、各自部屋に戻って着替え。
ダイニングを通ってキッチンへ。
お昼、何にしよ?
「醤油ラーメン大盛りで」
ミュウの注文入りました。
「「「「以下同文」」」」
何がだよ。言いたい事は判るけどさあ。
まあ、全部同じで良いか。
そこへ走り込んできたのは[ハウスキーパー]様のウイー。
自動調理器の前で両手を広げて通せんぼって、手に持ってるの、ホウキだよね?
お掃除続けてくれて良いんだよ?
胸を叩く動作って事は任せなさいって事?
「よろしくお願いします」
もう、この際やってもらう事にする。
なんでここまで好かれちゃったのかな?
不思議だ…
その後提供してくれたラーメンがいつもより美味しい件。
「やっぱり自動調理器の調整、かなり細かくやってくれてるんだよね?」
「これ、もうタイプⅠの機能ほぼ解禁されてるね」
ミュウに訊いたら正解らしい。
「ほぼって事は後何が残ってるの?」
「会話機能」
「話が出来る?ツイッギーみたいに?」
こくりと頷く。
ツイッギーが一日中家の中に?
「凄く喧しそう…」
さつきが呟く。同じ事を想像した模様。
あの子、テンション高いもんなー。
「ウイーは平気でしょ?結構控え目な性格っぽいし」
ミュラ姫の意見には同意。なんかこそっとやってくれてる印象が…
いや、わたしに対しては結構ぐいぐい来るよ?
「そこは諦めて?」
酷い。ミュラ姫が酷い。
あれぇ?まだお昼だよねぇ。なんだか一日過ぎたように疲れてる気がする。
食べ終わったタイミングでウイーが片付けに来てくれる。
「ウイー、有り難う」
「ドウイタシマシテ」
……
六人が固まりました。
「喋っちゃった」
「タイプⅠとタイプⅢの価格差二倍が酷い詐欺に思えてきた!」
ミュウとさつきが突っ伏した。
「今さら」
「鹿乃子ちゃん現象の前ではその程度の差は問題じゃないですよ」
NINJAコンビがなかなかひどい感想を。
「ユリカちゃんが丸儲けですね」
ミュラ姫…それは言っちゃいけない気がする。
[ハウスキーパー]タイプⅢってお掃除と洗い物機能に限定した廉価版って売り込みだったらしいよ。
好感度さえ上げられれば最上位機種並みの働きになるなら廉価版で良いじゃんって為りそう。
「上がんないから大丈夫よ。この前チェックして確信したもの」
ミュラ姫、此所に実例が…
「鹿乃子ちゃんは特別枠だからだいじょーぶ」
さいですか…
サリーのおいたの所為でわたしの評価が酷い事に。
爆笑を始めたさつきに、拳骨をプレゼントしたわたしは悪くない。と思う。多分。
「そう言えば、ユリカちゃん達お昼は食べないのかしらね」
ミュラ姫のお言葉。
もうじき十三時だね。
「時々笑い声が聞こえるし、ゲーム続行中なのは間違いないんじゃないですかね」
「多分携帯食料。非常食の在庫が減ってた」
「中等部時代は泊まり込みでよくやりましたもんね」
NINJAコンビからのご報告。非常食なんて用意してたの?知らなかったよ。
「階段脇の奥の部屋にある。この前聞いた」
ミュウが教えてくれたよ。
「ゲーム中はとっても便利」
使い方が激しく間違ってる模様。
それよりも、
「携帯食ってカロリー依存じゃなかったっけ?」
「現代の携帯食は栄養バランス整ってるから下手なお食事よりバランス良いよ!」
涙目だけど、さつきが復活。
「あたしも残業用に用意しようかしら」
ミュラ姫も、間違った方向に突撃を始めた模様。
「鹿乃子ちゃん、午後はゲーム参加しませんか?」
ミュウがお誘いコール発動。
かまって?かまって?と言う子犬のお目々が凶暴です。
「行きますか」
抵抗は無理でした。
立ち上がれば、他全員起立したんだが…
「みんなやりたかったのね?」
上下運動のお顔が四個。
「携帯食と飲み物取ってくる」
とミュウが走り出そうとするので慌てて声を掛ける。
「飲み物だけで良いよ。食事はきちんと取りましょうね?」
ピタリ。と止まってゆっくり振り返る。
悲しそうなお目々で見つめても駄目です。きちんと休憩。絶対必要。
「…判った」
とぼとぼと取りに行くミュウ。
「生活年齢一番年下な筈なのに、すっかりお母さんだね!」
さつき。五月蠅いよ。
君たちの精神年齢が低すぎると思うんだ。わたし。
「なんか、身体の年齢に引っ張られちゃうんだよね!不思議な事に!」
「そうなの?」
頷く一同。
事実らしい。まあ、そのうちいやでも経験しそうな予感…。
現実感が遙か彼方に逃走中。気にするの終了。
「ミュウ。有り難う」
ドリンクパックを抱えて戻ってきたミュウから夫々受け取ってゲーム部屋へ。
ゲーム中の何人かちらっと視線を向けた気配。
ユリカなんかは手を振ってるしな。
シートに座ってゲームに参戦。
まあ、アシスタントに専念するんですけどね。
…
そんなわけで、本日のゲーム中継はサクッと省略。ごめん。
わいわい騒いでもうすぐ十八時。
さて、どうやってこいつら一旦休憩させるかな。
《ユリカ。デスペナルティって二時間ステータス半減で良かったっけ?》
《うん。後、所持金半減ー》
《プレイヤーキルすると、した方は町には入れなくなるんだったよね?》
…
《何を考えてるか思いついたんだけど…》
《もうじき夕飯時なんだ》
今使ってる武器はバスターソードとか言う奴なんだけど、ぶんぶん振り回してみる。
《おかーさんが夕飯食べないとぶっ殺すって仰ってますー》
現在連れ立ってプレイ中の十七人中、ユリカとわたし以外が固まった。
ユリカを攻撃目標にセットしてみる。
《夕飯食べて二時間休憩しまーす。近くの町まで戻るよー》
と宣言するユリカ。
《はーい》×十五人
残り全員、素直でよろしい。
《一辺顔洗ってくると良いよ。ご飯ちゃんと食べる事。後二十時までゲーム禁止。但しなばちゃんは除く》
《なんでなばちゃんだけ?》×多数。
《社会人にまでお世話する気は無いもん》
《納得》×多数。
町まで戻ってログアウトですよ。
作戦成功です。
「鹿乃子ー。物騒な説得、ありがとー」
「そうでもしないと中断しないだろうに。ほら、みんな部屋に戻って顔洗っといでー」
ユリカの不満げなお礼にこう返す。
「はーい」×六人
ふらふらしながら部屋へ向かった。
残った五人はそれを見て苦笑い。
「何人かは脱落すると思いますよ」
と、かおり。
そりゃ、一晩どころかほぼ丸一日以上集中してりゃ疲れるよ。楽しいから気付かないんだろうけどさ。
「ジーナや聡美達の健康気遣ってやらなきゃ駄目じゃん。年齢三桁以上が集まってんだからさあ」
「申し訳ありません」×四人
さて、夕飯の準備だね。
「ミュウが当番。鹿乃子ちゃんは一辺お部屋に戻って?」
「なんで?」
「鹿乃子ちゃんが居ると、きっとウイーが作っちゃうから」
納得。部屋で籠もってます。
「出来たら連絡するね」
お願いします。
そーすると、わたしの食事当番は、事実上なくなったって事かな?
絶対、ウイーが作ってくれるというか、わたし、作らせてもらえない気がひしひしと。
等と悶々してる内に、出来たよーとお呼びが掛かりまして。
食事を戴きながらミュウに確認したら、やっぱりウイーはお手伝いしてくれなかったとの事。
判らん。
ユリカはダウンした。
夕飯出来たよって呼んでも来ないんで見に行ったら、着替えもしないでベッドに寄りかかって眠ってた。
とりあえず、ちゃんとパジャマに着替えさせてベットに放り込む。
サイドテーブルにおにぎり他食事を置いて。
ユリアが言うに、能力使ってないと十三、四歳の体力しか無いんだって。
体ちっちゃいもんな。
ゲーム中は一切、能力使ってなかったんだそうです。
徹底してふつーに楽しんでるらしい。
時々見せる大人な態度と、ギャップが酷すぎる。
あいつ、普段は結構な無理をしているんじゃないかと予想。
で、二十時。ゲームにログインしてしばらく待機。
いやー。此所のメンバー以外でログインしてきたの、なばちゃんとジーナだけだったり。
家のメンバーも、アルファとメグはドロップです。
《あ。メールだ》
とジーナ。
しばし固まった後、
《他のみんなはおうちの人からゲーム機ぼっしゅーの刑が言い渡されたそうです。》
と、ご報告。
《なので、わたしも今夜は自主的にログアウトします》
《しっかり休めー。また明日ー》
と声を掛ければ、手を振りながら姿が消える。
《それじゃ後は鹿乃子ちゃん以外大人ばっかなんで、各自自己責任で》
おや?
「なばちゃん、君らの年齢知ってるの?」
ミュラ姫の台詞におやっと思ってオフラインで訊ねる。
「美來ちゃん、学園長の一年後輩なの。一緒に馬鹿やってた娘だから色々知ってるのよ」
と言うお答えはユリアから。
「一時期はメンバーズでも活動してたわよ!今はお仕事に専念だって!」
さつきの追加情報でなるほど、と。
メンバーズの寄せ集めクラス担任なんだからそのくらいでないと務まらないか。
それからわたし、ミュウ、NINJAペアの四人と残り五人で夫々パーティを組んで二十四時まで。
なばちゃんの狙撃スキルが凄かった。素のスキルで、ゲームのスキル補正や補助は受けてないそうで。
アーチェリー競技なら国際競技会トップクラスなんだとか。
《ターゲッティングとリリースのタイミングだけですから 実際の弓より遙かに簡単ですよー?》
と仰ってました。
その後、予定時刻で解散。
なばちゃんもあっさりログアウトした当たり、アレは教え子の様子を見るために一緒に遊んでたと推測。
何処まで無理が出来るのか経験させたかったとかかも?
なんにしても、思ったより良い先生らしい。
何処までが素なのか判らないのが怖いんだけど…
まあ、なんだかんだ、色々ありました。が、おおよそ平穏。
良い一日だったということにしておこう。
それでは、おやすみなさい。
五十三日目に続きます




