二月二十一日 もこふわ
五十二日目 三分の二です
二人が食べ終わってから一休み。で、戻って来ました、トレーニングルーム。
六人揃ってやって参りまして。
ミュウがケイに連絡を入れたらあっさり繋がって、おばちゃんの事を訊いてみた。
『一つの町に何人か必ず現れるのよね。スクーターおばちゃん。セールとかバーゲンって幟や広告が有ると急に数が増えるのよ。きっとそーゆー妖怪か何かなんじゃないかと思って入れてみました。討伐しちゃうと一定期間増殖するので止めた方がよろしいんじゃないかと。公園の猪は、倒した後しばらく数が増えて瓜坊になります』
事実が判明した四人は揃って床に手と膝を着いてがっくりしてます。
何故そうなった?
予想の斜め遙か上方をかすめていったお答えに訊いた四人の意識がやばい。
NINJAなコンビは丸くなってプルプルしてますが、何か?
『後、隠しキャラもいるから探してみて?攻撃入れると戦闘モードが起動するはずよ』
「これランニングマシンですよね? 何故そんな機能が必要だと思うの? お馬鹿なの?」
ミュラ姫の声が響きます。
『障害物競走みたいで楽しいかな?って』
確かに楽しいかも…
「鹿乃子ちゃん?その気にならないで!? 間違ってるからね!!?」
でも、楽しいのは正義だと思うのですよ? ミュラ姫。
『おー。意見が合う様で嬉しいね。レポート楽しみにしてるからね!』
そのお言葉を最後に通話が終了したよ。
「ミュウ? ミュウちゃん? あなたはあんな開発者にならないでね?」
「え!? 楽しいのは駄目?」
ミュラ姫が崩れ落ちた。
ミュウのお返事がとどめになった模様。
NINJAな二人と取締役と思われる金髪さんは隠しキャラのとこから大爆笑中です。
気を取り直して。
一台はルミがトランポリン選んで弾んでる。
そのまんま見ると、台の上でせいぜい一メートル飛び上がるかどうかなんだけど、VRゴーグル付けてみると五メートル位飛び上がってる。
違和感が半端ない。
自分は普通に立ってるだけなのに壁や床が上下に移動して…気持ち悪。
「ミュウ…これ周りで見学すると酔う…」
「激しく同意。調整してみる…」
とりあえずゴーグル外してみているんだけど、ろくに飛び上がっていないのに異常に長い滞空時間が酷い違和感。
なんだっけ?特殊撮影のワイヤーアクション?
天井から吊り下げておいて、前転や後転の宙返りする奴。
そのワイヤーが無い状態の様な…動きが気持ち悪いというか。
あ、ゴーグル掛けっぱなしで見ているさつきが倒れた。
ミュラ姫が慌てて支えてくれている。
「気持ち悪いー!」
ゴーグル、外せば良いじゃんよ。
かおりは指さし爆笑開始。割かし酷い性格してるよな。
「出来た。これでどうかな?」
ミュウの声を聞いてもう一度ゴーグル掛けてみる。
今度は床や壁が固定されて、実際のジャンプ同様ルミの体が高く飛び上がっている。様に見える。
これなら自然だ。
「ミュウちゃーん。わたしのは未だにジェットコースター!」
座り込んでるのにふらふらのさつきが声を上げる。
「一度外して付け直す。リセットされるよ」
と言う答えにVRゴーグルを一回外してかけ直すさつき。
「あ。普通だー! でもまだ地面がぐるぐるぐるぐる…」
それは君の目が回ってるせいだ。何故に気持ち悪いと言いながらゴーグル着けっぱだったのかな?
相変わらず座り込んだまま上体がゆらゆらのさつきとそれを指さし爆笑続行中のかおり。ミュラ姫が座り込んで肩をふるわせている。いつの間に参加したんだろう。
「鹿乃子ちゃんの解説が受けてるっぽいです」
クスクスしながらミュウが指摘してくる。
わたしが犯人か。そりゃすまんかった。
「おわぁあ!?」
そこへ突然、ルミの大声に驚いて彼女の方へと視線を戻せば、猪と一緒にジャンプしている。
此所にも出てくるか!?
邪魔だよ? トランポリン競技に障害物競走はないと思うんだ。わたし。
「ちぇやっ」
ルミが猪を蹴り飛ばす。
「ピギャー!?」
と悲鳴を残し、壁まで吹き飛んで光の粒になる。
「吃驚したー。吃驚したー」
頭にでっかい汗を浮かべて胸を押さえたルミが飛ぶのを止めて降りてきた。
吃驚するよね? あんなのが出てくるなんて思わないよね?
公園だったらまだしもさ。体育館の中に出すなよ!あんなもん。
しかし、被害経験者二名以外は床で悶えてます。
なにげに酷い性格してるよね? 君たちってさ。
四人の笑いが収まるのを待ってる現在。
トランポリンの上では瓜坊が四匹跳ね回ってますよ。
なんだこれ。
「抗議!断固抗議!!」
ルミは相当お怒りの様子。
「ミュウ。これ消して?」
なんとか笑いが収まってきたミュウにお願い。
「町中のモードも消しちゃう?」
「それはいいや。他のは封印して」
「了解」
町中ジョギングモード以外では出現しない様に設定を変えてもらう。
トランポリンを楽しんでいた瓜坊たちが消えていく。
ルミと二人で溜息を一つずつ。
「犯人絞めて良い?締めて良いよね?絞めよう?絞めに行こう?」
かおりー。ルミが壊れかけてるよー。
「ルミちゃん、どうどう。吃驚しただけだよー。落ち着きましょうねー」
声を掛けつつ背中を撫でるかおり。犬や猫じゃないんだからさ…って、落ち着いてきたのか?
それにしても危険な罠がてんこ盛りだな! おい!!
そこの責任者? 何かご意見は?
「面白ければ良いじゃん!」
さつきの言葉に反応したルミが飛びかかる。逃げるさつき。
「キャー!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
あーあ。全力鬼ごっこ。
まあアレはほっておこう。
手持ち無沙汰になったかおりがマシンに上がる。
どのモード?と思ったら町中のランニングモードを選んで走り出す。
これは工業区画?大きな建物やぶっといパイプ。塔やら塀やら色々混み合っているんだが、いきなり登り出したよ?
近くのパイプに飛び移ってその上を建物の屋上まで走って行く。
屋上から配管やらケーブルやらを収めたラックに飛び移って其の儘境界の塀を走る。
これはあれだ。えーっと…[フリーランニング]とか言うNINJA養成スポーツ。
「違います。これ、[パルクール]ですよ? NINJAは養成しませんよ? 元は軍事訓練らしいですよ?」
走りながら文句が来た。
それにしても、ほぼ真っ直ぐ中央の一番大きな建物に向かってる模様。無駄な動きはしないみたい。
「ミュウちゃん。これ重力設定変える事って出来ませんか?」
「出来るよ? 上げる?下げる?」
「一点五G位にしてもらえますか?」
「はーい。どうぞ」
「有り難うございます…って、効きますね。これ、良い訓練が出来そうですよ」
ああ、重力設定が変えられるんだ。それは良いな。
「ミュウ。その重力設定ってパネルで変更できるように変えられる?」
「出来る。ちょっと待って」
何やら弄ってくれる。
「こんな感じでどうかな?」
マシンの端末パネルに設定画面が追加された。
「判りやすくて良い感じ。有り難う」
「ミュウもちょっと走ってみて良い?」
どうぞどうぞと場所を空ければ、ミュウがマシンに上がって町の中を走り始める。
一般の人と比べたらかなり早いんだろうけれど、学園の登下校時、わたし達が引っ張ってる事から判る通り、そこそこの速度。
しばらく走ると、レビテーションで浮かび上がる。其の儘移動を始めた。
「ああああ!ミュウちゃんが自力でー!」
ミュラ姫が悲鳴を上げる。
「あれ?ミュウ浮いたまま移動出来るじゃん」
わたしも思わず声を上げた。
「最近出来る様になったの。まだ練習中」
なるほど。あ。龍神の加護が影響したかな?
当たり。ですか。そうですか。
「ああああああ」
「ミュウちゃん!?」
慌てたミュウと姫の声。ガラスの割れる音が続いた。
「失敗しちゃった」
ショーウインドウに突っ込んで逆さまになってました。
うん。まだお外で使わない方が良いかもね。
ミュラ姫は助けに言った方が良いのか、装置に二人入っても平気なのかとか考えてるらしくてオロオロと。
それにしても、此の装置。ものすごく応用範囲が広いな。
ミュウが絶対売れるって言い切ったのも理解出来た。
再び飛行を始めたミュウを見守る。
さつきとルミ?
部屋の隅で寝転んでる。汗にまみれて。
ハアハアと荒い呼吸が喧しい。
あらら?…反論する元気も残ってない模様。
いつもなら文句の一つ位帰ってくるのに。
「ひやあぁぁぁ?」
そんな事を考えていたらかおりの悲鳴が。
ミュウが吃驚してまたショーウインドウへ一直線。
「ミュウちゃーん!?」
姫の悲鳴が上がります。
かおりは何が?と視線を向ければ歩道に仰向けに倒れて両手両足を上に上げたまま固まっていた。
二人同時に入って大丈夫かな?と思ったけど、倒れてるのをほっておく訳にもいかずかおりに近づいて抱き起こす。
「た…建物の中からゴリラが見てました…」
三人目の被害者発生ですよ。
吃驚しましたー。と涙目のかおり。
被害甚大だね。
よし。ゲーム三昧の連中にも経験させよう。
「ミュウー。これもう二、三台増やせない?」
「訊いてみる」
飛行しながら端末を取り出した連絡を取るミュウ。
『良いよ。機械自体はそんなに高価な物じゃないから大丈夫。まだコッチに何台かベースがあるから用意して送るね』
ケイからあっさり許可が下りまして、ついでに猪とゴリラの件。文句言ったら返ってきた答えがこれ。
『メンバーズ足る者、どんなときでもどんな事にも対応出来なきゃ駄目っしょ?』
かおりもルミも反論出来ず。
「「「ユリカ(ちゃん)達にも経験させよう」」」
被害者三人の心は一つになりましたが、何か?
「うきゃあ?」
四人目の被害者はミュウ。予想はしてた。
「可愛い…」
ウサギさんでした。
白黒パンダ模様の可愛い子。
ミュウだけずるくない?
「「「「「「もこもこふわふわー」」」」」」
みんなでなでなでしましたとも!
因みに、六人で機械に上がっても平気だった。
激しい運動してる時でなければ充分処理出来るそうです。ケイに訊いてみたらそう言ってたよ。
これ、アニマルセラピーとか触れ合える動物園とかも可能じゃね?
「小型化して、病院とかでも、ペット飼育とか出来そう」
と言う姫の発案をミュウが早速メモメモ。
良かったな?さつき。また大儲け出来そうだよ?
「鹿乃子ちゃん! 儲かるのは会社!」
そだね。
正しいんだけどさぁ。
少しは喜べよ。と思ったわたしは悪く無い。多分。
そこでチャイム。壁の時計から。
時間を忘れてトレーニングに集中する人が居るんで取り付けられたそうな。
誰とは言われなかった。
ジトっとした目で見られてたけどな。
いつの間にやらお昼前です。
三十分前に鳴るように設定してある様子。
戻ってシャワー浴びましょうか。ほぼ全員汗だくだから。
わたしと姫は動いてなかったんだけどなあ。
汗まみれの四人と並んでウサギをなでなでしてたらいつの間にやら汗まみれ。
体温が上がった連中に囲まれて暑かったみたい。
ミュラ姫も顔を赤くして暑そうだし…あれ?この人の場合、理由が違う気がする…ぞ?
まあいいや。追求するとやばそうだし。
三分の三に続きます




