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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
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二月二十一日 [ハウスキーパー]様

五十二日目 三分の一です

 星暦二千百十一年二月二十一日 土曜日


 お早うございます。


 地下一階で人工島全島走破目指して爆走中。


 時刻は五時半。


 日の出が待ちきれなくて起きちゃった。


 ランニングマシンに(つな)いだVRゴーグルの画像もまだ夜空です。


 地下に降りる前に、ゲーム好き集団の様子をこっそり(のぞ)いたら、ユリユリコンビと元受付コンビがキャアキャアやってた。


 NINJAなコンビはお休みしたらしい。


 ちゃっかりサリーが参加してたけどな。


 わたしはと言えば、スタート地点に島中央の本部ビルを選んで、時計回りに外周に向けてぐるぐる周回しております。


 一周する(ごと)に一本外側の道へと移って又一周。


 新鮮です。


 何せ、一部を除いてほぼほぼ来た事のない場所ばかりなので。


 相変わらず、[タウンスイーパー]を見かけると挨拶(あいさつ)しつつ。向こうもちゃんと手を振ってくれてるし。


 時々進路を猫やら犬やら狸やらが横切っていきます。


 二輪(スクーター)に乗ったおばちゃんが横道から飛び出してきた時はさすがに(きも)が冷えたけど。


 買い物(かご)を腕に引っ掛けて、こんなオフィスビルとか展示館みたいな建物しかない所で何してるんだろう?


 どこもかしこも、明かりが消えてて、営業もしてないんだよ?


 土曜日だし。


 全部上を飛び越えてスルーしました。


 おばちゃんって、討伐(とうばつ)しちゃっても良かったんだろうか? 駄目(だめ)だよね?


 ケイの感性がよく分からない…


「あはははははははははははははははははははは」


 突然聞こえた爆笑に慌てて急停止。ゴーグルを外せば、ミュウが床の上で(もだ)えていたよ。


 早いな。って、もう七時なのか! 時間が経つのが早かった。


 これはあれだ。朝ご飯に呼びに来てくれたんだけどわたしの独り言に決壊しちゃった奴に違いない。


 落ち着くのを待って確認したら予想通りだった。


 ミュウと連れ立ってダイニングルームへ戻ります。


 どの辺から聞いてたのって訪ねると、ちょうどスクーターを飛び越えた当たり…てことは映像も見ていた。と。


 おばちゃんを討伐ってフレーズに耐えられなかったらしい。今も思い出してプルプルと。


 我ながら(ひど)い事を言ってるよな。うん。


 知らない間にゲーム脳に変わってきてるらしい。(まず)い拙い。


 ダイニングに到着したら、[ハウスキーパー]様が近づいてきた。いつも顔を表示してる端末画面に写真がいくつか…


「もしかして、朝食のメニュー? ここから選べと?」


 ピンポーンと言うよく聞くクイズに正解した時の音が…。


 ミュウ、お目々(こぼ)れそうだから。吃驚(びつくり)お目々を戻そうよ。


 じゃ、トーストとコーヒーとベーコンエッグのセットで。ミュウは?


「お…同じの」


 OK、と画面に表示した後いつもの顔の映像にも出る。


「「よろしくお願いします」」


 二人でお願いすると手をフリフリ、キッチンへ消える[ハウスキーパー]様。


 ややあって、二人分の朝食を持って来てくれた。


「「有り難うございます」」


 またまた、二人でお礼。()れた時のきょどった動き。画面の顔に赤みが差してた様な?


 どんどん芸が細かくなってくな。


 ミュウは頭を左右にフリフリ。考えをとりあえず放棄(ほうき)した模様(もよう)


 食べようか? 縦にフリフリ。


「「(いただ)きます」」


 二人で(そろ)って戴いております。


 なんか美味(おい)しい。今までに無く美味しいんですけど?


「美味しい…」


 ミュウも同意見でした。


 食べ終わって食器を片付けようかとするタイミングでやってくる[ハウスキーパー]様。


 なんかもう(いた)れり()くせりで申し訳ない。


「有り難う。朝食(すご)く美味しかったけど何か特別なの?」


 聞いてみたら、両手でハートマークを作って振りかける様な仕草。


「愛情がいっぱいって事?」


 またピンポーンって音。


「「ごちそうさまでした」」


 二人でお辞儀(じぎ)してお礼。


 お皿やカップの()ったお盆二つを両手で持ち上げてくるくる回転しながらキッチンへ戻っていった。


「どっかで動き方学習してる?」


 疑問を口にしたら、ミュウがぽんと手を打ち合わせる。


「ネットワークで情報検索してるのかも!」


 なるほどー。わたし、宿題で判らない言葉調べるだけだよー。凄いな。[ハウスキーパー]様。


「「お早う」ございます」


 と、そこへNINJAなコンビが起きてきた。


「寝不足じゃん」


「「えへへ」」


 指摘(してき)すれば二人揃ってホッペをポリポリ。


 目の下に(くま)がですね。


 キッチンから此方(こちら)(のぞ)き込んでいる[ハウスキーパー]様を見つけて声を掛ける。


()の二人の分もお願い出来る?」


 すると両手でまるを作って引っ込んだ。


 おいでおいでと二人を呼んでとりあえず席に着かせる。


 其の儘(そのまま)後ろから軽く抱き込んで治癒(ちゆ)の気を(めぐ)らせる。


 なかなか巡りません。どんだけ()め込んでるんだよ。


 ようやく気が巡って回復終了。


「「有り難う」ございます。楽になりましたー」


 お礼が二つ帰ってきた。


「お仕事が大変なの?」


 終わったよという報告を聞かないこの前からごそごそやってるお仕事が大変なんだろうと思って訊いてみた。


「あ。ごめんなさい、伝えてなかった。あれ、メンバーズの本体が動いたんで引き継いで終了しました」


 なんですと?


「まさか、ホントにゲームやりすぎなのか?」


 ジトっとした視線を向けるわたし。


「「えーと」」


 視線を()らす二人。


 ペシッペシッとな。


「「痛ーい」」


 おでこを押さえて悶絶(もんぜつ)するNINJAコンビ。


 わたしのデコピンは痛いぞー。ユリカを討伐した実績があります。


 そこへ[ハウスキーパー]様が朝食を運んできてくれる。


 痛みを忘れて、それをガン見するNINJA二人。


今朝(けさ)から給仕モードが発動しました」


 ミュウが解説。


「[ハウスキーパー]様。有り難う」


 わたしのお礼に右腕を上げてフリフリしながらキッチンへ消える[ハウスキーパー]様。


「「あ、有り難うございます?」」


 遅れて二人が慌ててお礼。


 恐る恐る朝食を取り始める二人。


「「なんか美味しい?」」


 あ。やっぱそういう反応になりますか。


 その後は黙々と食事が進む二人。


 おでこは赤いまんまなんだが、もう気にならない模様。


 二人同時に食べ終わってほうっと一息。


 [ハウスキーパー]様がお片付けに来てくれる。


「有り難うございます。ごちそうさまでした」


「美味しかった」


 かおりの感謝とルミの感想。くるくる回りながらキッチンへ戻っていく[ハウスキーパー]様。


 じっと見送った後で何故わたしを見つめますかね?お二人とも。


 そして何故目を逸らして溜息(ためいき)をつきますか?


「鹿乃子ちゃん。今さら今さら」


 ミュウは肩をポンポンしないで欲しいかな。首をフリフリ(横)も止めてもらえると嬉しいです。悲しくなるから。


「それで、メンバーズの本体って何?」


 と、問い掛ける。


「あれ?聞き流してくれたんじゃなかったんですね?残念です」


「良いからさっさと」


 誤魔化(ごまか)そうとするので急かしてみる。


「私たちが今の様に指導係をしていない時に常駐している場所 でしょうか。簡単に言えばやっかい事(よろず)対処受付所みたいな感じですかね?」


 ん? 此所(ここ)でやってる事をもっと大規模にした感じなのかな?


大雑把(おおざつぱ)にそんな感じ」


「此所は姫野グループ出張所みたいな扱いですよ」


 ルミとかおりの補足が続いた。専門に対応出来る人が居るって事かな?


「いろんな技能持ってる方が大勢いいらっしゃいますからね。適任者に割り当てられますよ」


 わたしが将来そっちに行く選択肢もあるって事であってる?


「職業選択は自由」


「強制される事はないですよ」


 それ、懇願(こんがん)される可能性は否定しないの?


「鹿乃子、高確率」


 ですよねー。


「ミュウはメンバーズ登録だけ。正式メンバーじゃないよ」


 自分を指さしながらミュウが補足してくれた。


「いやいや、ミュウちゃんいないと大変困りますからね?」


「お手伝いするだけです」


 まあ、割と自由なんだって事は判ったよ。


「じゃあ、しばらくは忙しい用事は無いって事で良いの?」


「今のところ不安な要素もなさそうですから平気でしょうね」


「鹿乃子は開発業務」


 かおりに持ち上げられた所をルミにたたき落とされるという…


 しまったー。ランニングマシンの件があったよ。報酬(ほうしゆう)先に受け取っちゃったよ。のんびり出来ないみたいだよ。


「二、三年かかると思うよ?週に一度テストする位だと思う」


 ホントですか?ミュウ。良かったー。安心したよ。


「当分の間は」


 なんですか? そのわたしが安心した瞬間に付け足した台詞(せりふ)は!


 当分が過ぎたらどうなるの? 不安! すっごく不安なんですが?


 ミュウ!?


「開発のお仕事って、そんな物なのー」


 ミュウの両肩を捕まえて()すりながら問い掛ければ、えへへーっと笑いながらこのようなお返事が。


 ミュウのお目々、焦点(しようてん)が合ってないんですが? ものすごーく不安しかないんですが?


 がっくりと項垂(うなだ)れてミュウになでなでされてるわたしです。


 報酬につられて踏み込んじゃいけない所に入っちゃったらしい。


「後からやってくるのが後悔(こうかい)


 その通りだね? 追い打ち掛けなくても、今十分味わってるんだけどね? ルミ。


 やれやれ。


 四人でいつものリビングに移動ですよ。


 食堂(ダイニング)に居座ってても邪魔(じやま)になるし。


 今は、ミュウの膝枕(ひざまくら)で三人掛けソファに転がってるわたし。


「あのスクーターおばちゃん討伐するとどうなると思う?」


 気になってたんでミュウに問い掛けたら、口元を押さえてガバッと横を向く。


 おお? 頭にバイブレーター的な振動が。


 ミュウの全身がぷるっぷるに。


 そんなにツボっちゃってたのか。ごめん。


「なんですか?そのスクーターおばちゃんって…」


 かおりが不思議そうに(たず)ねてくる。ルミも興味(きようみ)有りな様子。


 順を追って今朝のお話をしてみた。


 ソファの座面で背もたれに向かって正座して其の儘背もたれにうずくまる様な感じで全身プルプル状態のかおりとルミが出来上がった。


 結構破壊力がデカかった模様。


 ミュウはわたしのおでこをペシペシしながら爆笑中。ちょっと力を弱めて下さい。お願いします。


「あぁー」


 と言う声と共に、脱力してソファの背もたれに()けたミュウ。笑い疲れた様子。


 わたしはミュウの膝からおでこを押さえて起き上がる。これ、絶対に赤くなってる奴。


「鹿乃子ちゃーん」


 そこへ、ダイニングから唐突(とうとつ)に大きなお声。ミュラ姫かな?


 だだだーっと足音が近付いてきて入り口から顔を出したのは姫。


「ハウスキーパーがね? ハウスキーパーがね?…」


「朝食の用意してくれましたか?」


「何したの??」


 落ち着いてー。わたしが何かしたわけじゃねーですよ。


 よっこらしょっと起き上がって姫を引っ張ってダイニングへ。


 さつきがもきゅもきゅお食事中。


「姫もこのくらい図太くならないと」


 指差されたさつきは(うなず)いてる。


「[ハウスキーパー]様。有り難うねー」


 キッチンの入り口からこっちを(うかが)ってる[ハウスキーパー]様に手を振ってお礼を。


 テレテレモードの動きの後引っ込んだ。


「もう、名前付けてあげたら良いんじゃないかな!?」


 さつきが唐突に爆弾投下。


 シュパッと言う勢いで[ハウスキーパー]様がすっ飛んできた。


「ね!?」


 ね!? じゃねーよ。唐突にそんな話振られて良い名前が出てくるわけ無いだろー?


 うがーっと頭をかきむしるわたし。


 余計(よけい)な事を言いおってー。


 端末画面の顔がつぶらな(ひとみ)になってるよ…画面が斜めにかしいでるよ…


 小首を傾げて「駄目なの?」って状況だよね!?きっと!!


 しばし考える。


「さつきー。ホームメイドとキッチンッメイドを兼ねたメイドさんんていたよね?なんて言ったっけ?」


 お嬢様(じようさま)()いてみる事にした。


「えー? ビットゥ…えーと、トゥイーニー…じゃなかったかな?」


 姫?合ってる?


「あたしは詳しく知らないので…」


 申し訳なさそうな、でも、なんでそんな事まで知ってるの?と言う顔のミュラ姫。


 いえ、ちょっと前に読んだ本に少し。わたしが無茶(むちや)ぶりです。ごめんなさい。


「其の儘でも語感は良さそうなんだけど、ウイー トゥーン ウィンとか、どう?」


 なんとか三つひねり出す。


 [ハウスキーパー]様が、指一本ビシッと突き出す。


「一番? ウイーが良いの?」


 ピンポンピンポンピンポーンと鳴り響いてわたしの手を(つか)んで上下にぶんぶんと。


 両手を広げて、バレーでも(おど)る様にくるくる回りながらキッチンへと去って行った。


「ウイーに決まりました」


 パチパチパチと拍手(はくしゆ)の音が沢山(たくさん)


 NINJAコンビとミュウも見ていた模様。


 そして、ミュラ姫が食事を始めた頃、ウイーが胸の部分に[ウイー]と名札を付けて戻ってきた。


 コーヒーを飲みかけていたミュラ姫が盛大(せいだい)()せ返ったのはちょっと悲惨(ひさん)だった。


 さつき。爆笑は止めて? さすがに可哀想だよ?


 まあ、当の本人も爆笑だったんだけどね。咽せながら…


 姫の背中をトントンしながら、器用だなーと思ったのは内緒(ないしよ)

三分の二に続きます

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