二月二十日 運営討伐
五十一日目 三分の三です
ぴこん、と音がして目の前に画面が出た。
『バンビ様。運営代表のロイと申します。先ほどのあなた様のご発言に運営の一部が嵌まってしまい、急遽、発言者表示マークの対策を致しました。尚、あなた様のプレイヤースキルを確認致したく、モニターさせて頂いておりました失礼をお許し下さい』
《なんか、運営さんからメール来た》
《読んでくれたから聞こえたよー》×十六人
《大丈夫なの?これ》
《鹿乃子の異常なプレイヤースキル、素の能力の事ね、を確認しただけだから平気よ》
サリーの言葉にほっとする。
僅か二日でユーザー削除はやっぱり悲しい。
《運営からお知らせ致します。諸般の事情により、会話中の発言者表示マークの形、並びに表示位置を修正致しました。又お好みで表示、非表示に切替が出来る様にいたしました》
《うわ、ワールドアナウンス来ちゃったよ?》
《諸般の事情だってー》
《鹿乃子ちゃんの破壊力最高!運営さんまで倒しちゃったよ》
《《《あはははははははははは》》》
《運営からお知らせ致します。確実に[CRITICAL]ヒットを発現する症状が発見されました
《あ!見つけたのばれちゃった!!》
途中で叫んだのジーナか?
ゲームバランスに深刻な障害と考えられるため、修正致しました、尚発見者の六名様に限り、当面の間、発見報酬といたしまして使用可能といたします。》
《良かったー、しばらく使えるってー》
《運営さん。ありがとー》
《無茶な使い方すると直ぐ止められるから気をつけなよ?》
《はーい》×六人
サリーの忠告に素直な六人。
《運営からお知らせ致します。プレイヤースキルのみで[CRITICAL]ヒットを確実に出す事が可能なユーザーを確認致しました。連続四回目の[CRITICAL]ヒットから後、経験値の[CRITICAL]補正を無くす様対処させて頂きます。通常の攻撃判定が三回続くか、一度ログアウトして頂く事で解除致します。ご了承お願い致します》
《三つ目のワールドアナウンスだー》
ジーナが興奮気味に叫んでる。
《鹿乃子ちゃん経験値減っちゃうね》
《いや、魔物との戦闘回数は変わんないんだし、ほとんど影響無いんじゃないかな?》
聡美が慰めてくれたんだろうけど、全然気にしてないよ。
ぴこん。って又メールだ。
『バンビ様。運営代表のロイと申します。プログラムの不具合並びに対策不足でご迷惑をおかけいたします。今後とも引き続き、当ゲームをお楽しみ頂けますよう、運営委一同努力して参る所存です。今回の不具合に、何卒ご容赦下さいます様お願い致します。』
《わたし達にも来たよー》
《中身ほぼ一緒ー》
《名前以外一緒とも言うー》
《コピペだ。コピペー》
《定型文だと思いますよ?》
《後、鹿乃子ちゃん。メール読む時消音ボタン押してねー》
《中身全部ばれちゃうよー》
最初のジーナと五番目のステフ以外誰が誰か順番判んなかった。
けど、多分聡美?から教えてもらっても、ミュートなるボタンがどのボタンなのか判らない罠。
《ミュートボタンって何?》
「此のボタンの事だよ」
隣のアルファが椅子から身を乗り出して教えてくれた。
《「有り難う。アルファ」》
《今みたいな時も使ってね?》
《判った》
その後は十七人の団体さんでゾロゾロあちこちを歩き回る。
画面の中がキャラだらけ。
パーティー制限の六人以上で一緒にいると、経験値がペナルティで減るそうなんだけど、まあ今さら?
順当にレベルも上げて、夕飯時かな? 始めに聡美が、続いてステフとなばちゃんがログアウト。
一旦みんなでログアウトになっての別れ際。
《やー、仲間内最初のワールドアナウンスが運営討伐だったよー》
《火曜日、みんなに自慢しようねー》
と言い残していったジーナと麗華だよ。
ユリカとさつきの爆笑が止まんなくなっちゃったじゃないか。
どうしてくれる。
次にゲームで会ったら文句言ってやる。
食事の後、いつものリビングでお休みタイム。
インターホンの呼び出し音が響く。
「はいはーい」
家主が応対に。誰だろう?
「鹿乃子ー。ランニングマシン届いたー」
「早!」
思わず叫んじゃう。
「弄りに行く」
「ミュウも行く」
二人でエレベーターに乗って地下一階。
さつきとミュラ姫もご同行。
「なんで二台?」
何故か二台鎮座してます。目の前で。
普通のランニングマシンと上手い事並べてくれてありますな。
さすがプロのお仕事。
ミュウがエネルギーラインをごそごそと繋いでくれる。エネルギーパックでも使用可能らしい。
電気じゃ配線が焼けるッぽい。エアコン三台分位食らうそうですよ?
なんだかボタンが増えてるんだけど?
[ノーマル][町中][トラック][砂浜][トランポリン][床運動][平均台][剣道]
モードがボタンで選べる様にしてくれたのか。んで、床運動とか剣道?平均台?
トランポリンは面白そう。
上に上がってトランポリンを押してみる。
「おわ?」
足元がふわふわになったぞ?バランス取りにく。
ゴーグル付けて足元を見たら、布。[ベッド]って、名前?
身体を弾ませる様に動かすと、上下運動が段々大きくなる。
「おぉ?危ない?」
こけた。
よし、今度にしよう。やり方調べないとよく分からん。フレームのパイプが痛そうなんですよ。
剣道、を押してみた。床が木製に変わり、感触もそのまんま木。
踏み込むと、タンッと小気味よい音まで出るね。
相手が出てきた? 練習相手してくれるんですかね?
向き合ってみた。あ、一回しゃがむんだ。なんて言ったっけ?
蹲踞しますってガイドが出た。
その状態で竹刀を合わせるのかな?
竹刀持ってるつもりで構えてみたら、手の中に竹刀が現れた。
ちゃんと手に持ってる感触と重さが…。
「おわあ?」
立ち上がってから自分の手元を見ていたら打ち込んできたよ。吃驚だ。そういや始まってるんだっけ。
慌てて受けて押し返す。相手が下がるのに合わせて其の儘踏み込んで面!
あ。弱いや。面が決まって一本だって。
力を入れ過ぎちゃったみたいで、練習相手が壁まで吹き飛んでったけど。
竹刀で打ち込んだ感触も、面を打つ音もリアル。
でもわたし、剣道よく分からないんだ。ごめん。
やっぱジョギングで。
ノーマルは?って、ベルトになった。普通のランニングマシンだよ。これ。
砂浜はまんま砂浜。見える景色も一面砂浜…違うだろ!これ。砂漠だよ!砂以外何にもないよ!! 海が見えない砂浜って、浜じゃないじゃん!
「あはははははははははははははははははははは」
ミュウに馬鹿受けした。思いっきり叫んでたみたい。
なんかテープ持って来たのはさつき。砂浜の上に貼ってマジックで砂漠。
OKです。
親指と人差し指でまるのサイン。
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
又受けた?何故に??
まあいいや。砂は負荷がでっかいからパス。
トラックは…陸上トラックそのまんま。
ぐるぐる回るのも趣味じゃないのでパス。
やっぱ町中ですね。
町中を押したらメニューが現れた?
えーと[ユリカ宅][本部ビル][工業区画][中等部校舎][高等部校舎(普通科)]
スタート場所かいな?
ユリカ宅で。
ユリカん家の庭に出た。
良く出来てるな。まんま此所の庭だよ?。
ちょいと門に向かって走ってみれば違和感なし。
学園に向かって走ってみる。 公園の横にはツイッギーまでおるね。
いつもの様に駆け寄ってきて握手。
ここまで再現せんでも…
公園を其の儘突っ切る…直前で何か出てきた? 眼前を横切っていく物体が!!
ジャンプして避ける。空中から下を見たら猪!! なんで猪? 公園に猪? メッチャ危険じゃね?
よし。追いかけて倒す。
着地と同時に猪が走り去った方へ向けて全力ダーッシュ。
いた!? 林の奥へ向かって全力逃走中!?
走り寄って横から蹴り飛ばしてみる。
「ピギャー!?」
と叫び声を残して飛んでった。
此所、林の中です。
木の幹にぶつかって地面に落ちた。
其の儘沢山の細かい光の粒になって消えてったよ。まんまゲームの魔物やモンスターだった件。
立ち止まってゴーグルを外したらさつきもミュラ姫もミュウも床に転げて痙攣しておりました。
三人共、ゴーグル手にしたり掛けたりだから見てたんだよね?
ミュラ姫とさつきは相当暴れたのかな?スカートまくれて太股まる見せ。
大事なとこはぎりぎりセーフ。
ミュウはGパンで良かったね。
「さつきー。これちょっと自由すぎなんじゃないですかねー?」
と声を掛ければ、更にジタバタと。
見えちゃう見えちゃう。
マシンから飛び降りてミュラ姫とさつきのスカートを押さえた。今度はミュウが悶絶。
繰り返す事数回。すっかりやつれた三人が床に伸びていたり。
ややあってもぞもぞと起き出す三人。
但し、立ち上がる元気はない模様。
「鹿乃子ちゃん? 猪さん、飛び越えるだけで良かったと思うんですけど、何故追いかけて蹴り飛ばします?」
やっと口を開いたミュラ姫がこのような質問を下さった。
「え? いや、猪の放し飼いは危険だと思って?」
「多分、単なる障害物として配置しただけなんじゃないかな!? 色々障害物が有る方が楽しいって言ってたよね!? 鹿乃子ちゃん!」
正直の答えたらさつきからこのようなご指摘が。
「その通りだね。実際に居るわけじゃなかったね」
左掌に右拳をポンッと。
三人が又寝転んじゃった。
そこへ、扉が開いてやってきたのはサリー。
「なかなか酷い有様ね。何があったの?」
「えーっと、町中のモードで試運転。公園で猪に遭遇したんで捕獲。そしたらこうなってた」
聞かれたので簡潔にお答えしたら腕を組んで首を傾げる。
あれ? 視線が焦点会ってないな。
時々瞳の奥が光ってる様に見えるのは気のせい?
ややあって、
「大体判った。鹿乃子ってランニングマシンでも色々討伐しちゃうんだねぇ」
等と仰る。
確かに猪討伐してるな。
「町中なのに障害物に猪はないわねぇ。後でケイ、叱っておくわね」
いや、実害はないし、意表を突かれただけなんでかまわないんですけどね?
「多分、クマとかライオンとかも出てくるわよ?きっと」
討伐します。
「なら良いかー。市販の時には削除させよう」
それには激しく同意いたします。
「で、この娘達どうしようか?」
放って置く、に一票。
「それ、採用!」
と言う訳で、二人で地上へ。
「「「放置、反対」」!」
慌てて起き上がって追いかけてくる三人。
動けるじゃんか。
で、いつものリビング。
いつものではない部屋は大白熱中なので近付くのを止めました。
きっと朝まで寝らんないパターンが確定する。
他三名様も同意見らしく、現在五人でまったりコーヒーブレイク中。
もちろん、[ハウスキーパー]様のコーヒーです。
美味しいよ。
で、時計が結構良い時間を指してまして。
「ミュウ、お風呂入って寝ませんか?」
と、お隣でコーヒーを飲み終えたミュウに声を掛ける。
こくんと頷いたので、二人で着替えを取りに、夫々の部屋へ一旦戻る。
お風呂に到着。
ミュラ姫がいた。やっぱりな。来ると思ったよ。
「鹿乃子ちゃん、なにげに酷いですね。最近あたしの取り扱いが雑になってませか?」
アレ?ばれてる?
「鹿乃子ちゃーん!?」
「其れだけ親密度が上がったんだよ!ミュラちゃん!」
さつきも居たか。
ミュラ姫はさつきの言葉で喜んじゃってるけど、多分違うと思うんだ。わたし。
あ。サリーも来た。
なんかデレデレした儘のミュラ姫はほっといて、ミュウと二人さっさと中へ。
汗を流して湯船に浮かぶ。
あー。暖かくて気持ちいいー。
ミュウに行儀悪いよとぺしぺしされたんで起きて普通に。
並んで座って足を伸ばしてます。
「あの機械、二台繋げたら乱取り稽古とかも出来るんじゃないかな? 離れてても練習になるんじゃない?」
という、ふとした思いつきをそのまんま口にしてみた。
「可能…かも。 市販するとなると、過保護な人が妙な使い方しそうだけど…」
あぁ、怪我しない様に普段からアレ使って稽古、とかかな? ありそう…
「それ、練習にならないと思う」
激しく同意。
技術は伸びても人を相手にした試合に慣れる事が出来ないんじゃないかな?
遠隔地でのみ接続可能、とかにするしかないかもね。
まあその前に、商品になるのかという問題があるんだが。
「大丈夫。絶対に売れる」
凄い自信です。
「確定事項です」
ミュウ? ちょっと引いちゃうぞ?
「商機は逃しません」
ああ。ミュウがあっちの方へ行っちゃったよ。
まだ試作機があるだけだからね? 戻ってきてね?
頭をなでなで。
「は! わたしは何を言ってましたか?」
大丈夫だよー、と肩を抱いてまったり。
「わたしも仲間に入れてー」
ミュラ姫が乱入してきたー。
団子状態でまったり。
なんか、さつきとサリーは妙に距離を取ってた気がする。
サンドイッチの具にされたミュウが、むいむい暴れてたけどな。
お風呂を上がって自室へ。
明日からは、気兼ねする事無くあちこち走り回れるぞ!
目指せ、全島周回。
それでは、おやすみなさい。
五十二日目に続きます。




