二月十九日 照れてるの?
五十日目 四分の二です。
「お城に行けば当時のが残ってるよ! やってみる?」
此所で、さつきが乱入して来た。
「遠慮する。やってみたい訳では無い。同情してただけだよ」
「鹿乃子達はVRゲームの世界でしか出来ないようなことリアルでやってるしね!」
ん?
「ああ!。昨日のゲームを仮想世界の自分の身体で体験出来るって事か」
「その通り!一般の人には夢の世界でしょ?」
それは嵌まるのも判る気がする。
おっと。キッチンでチャイムが鳴り出した。
「あ。お昼が出来たんだ」
「三人を呼んでくるねー」
そう言ってメグがリビングへ向かう。
わたしは丼を運ぶためにキッチンへ。
さつきとアルファも来てくれた。
「わたしとアルファで二つずつ持ってくから、鹿乃子ちゃんなんとか三つお願いね!」
いや、ワゴンで運ぶつもりだったんだけど…
味噌汁お新香付きのお盆が三枚。どうしよう…。
ハウスキーパー様が見かねて手伝って下さいました。
有り難うございます!
「それじゃ「「「「「「戴きます」」」」」」」
「大盛り欲しい人は自分で追加してー」
「「「了解」」」
返事したのは、本日自宅待機組の三人だった。
元気が戻って何よりだよ。NINJAな二人。
三人揃ってふつーにお代わりしてました。
丼飯なんですが…
その後リビングへ突撃していったよ。
本日登校四人組はダイニングでほけーっと食休み中。
食器類は、何故かハウスキーパー様がワゴンを押して取りに来てくれた。
いつもはキッチンでみんなが持って行くのをまってるんだけど。
お盆毎食器を下げると、テーブルの上を綺麗に拭いて食後のお茶を並べてくれる。
有り難うございます。
初めて見たよ。そこまでしてくれるんだね。
「防災、防犯、掃除、洗濯、食器洗い、留守番、位しかプログラムされてないはずなんだけどなぁ。此の型式。給仕まで始めちゃったかー。しかもお茶美味しいし」
いや、現実にやってくれてるじゃん。認めようよ。さつき。
「鹿乃子現象」
ちょっと? アルファ?
「「それだ」」
いや違うから。何でもわたしの所為にしないで下さいな?
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
結局わたしに対する好感度が高いのが原因だと認定された。
タウンスイーパーの情報が一部流れてきてるらしい。
酷い話だよ。
三十分ほどゆっくりした後、地下のトレーニングルームに来ている。
昼間の時間帯に外を走るのは止めてくれと三人から懇願されたからなんだけど。
ちょっとコミューターを抜き去って走る位良いじゃ無いかと言いッたら勘弁して下さいと土下座をされてしまった。
やるんなら早朝の一時間ぐらいにしてくれとの事。
で、此所のランニングマシンを利用する事になりまして。
市販の機械をメンバーズ用に改造してあるそうな。
スピード設定はーと…時速三百キロまでいけるみたい。
とりあえず、六十キロからかな。
コンベアの上に乗って普通に走り出す、
ありゃ。人工重力とか言うの使ってるのかな? 加速する感じがあるよ?
なかなか面白い。前方からは送風機で風も送られてくる。
これで風景が動けば尚良かったんだけどな。
「VRゴーグル付ければ風景も変わるよ」
と隣から声が掛かる。
さつきがスポーツグラスみたいなのを持っているんで受け取って掛けてみた。
あ。町並みが見える。
地面や街路樹が後ろに動いていく。面白い。
「なんか楽しくなってきた」
「それは良かった」
おお。上り坂や下り坂も再現出来るんだ。凄いな。
曲がる事が出来れば最高だったね。
「それは今後の課題にして下さい」
まだ実現出来てませんでしたか。残念。
「いやー。作る事は出来るとは思うけどね?必要とされなかったから…」
……なるほど。
ランニングマシンで町の中を駆け巡りたいという酔狂な人はわたしが初めてでしたか。
「開発陣に依頼しておくよ!」
有り難うございます。
「どの方向にも自由に走るとなると…ベルトを止めてシールドか何か使えばいけると思うんだけどなあ…」
早速考え始めてくれた模様。お手間を掛けます。
身体も温まってきたのでスピードを上げていく。
前方からの風もどんどん強くなってくる。
最高速度到達。
時速三百キロ。
さすがに連続十分ぐらいかな。息が上がってきたよ。
今度は速度を落として行く。
時速百キロ当たりでしばらくキープ。
うーん。楽しい。んだけど。やっぱ横移動がなー。
ベルトの幅がやや広いんでいっぱいに使ってはいるけれど、曲がるのに比べると圧倒的に弱いんだ。
若干、いや、かなーり物足りない。
あと、障害物が無いんでひたすら走れてしまうのもマイナスだね。
実際町の中を走ると自転車が置いてあったり、看板がはみ出してたり、それを避けるのも楽しかったりするのよ。
「了解。色々組み入れてみるよ」
「え?」
さつきに隣から声を掛けられて驚いた。
「何か?」
さっき考え事しながら上に戻ったと思ってたんだよ。吃驚した。
「まだいたんだ。っていうか、わたし又零れてた?」
「うん!盛大に!」
「失礼いたしました」
「いやいや。面白い物が出来そうだからどんど要望出してくれると嬉しい!」
さつきが隣で色々聞きながら見ていた模様。
メモ帳片手に書き込んでいる。
そっか。
今考えてた部分が実現出来るなら町中でお騒がせしなくても済むかも。
「頑張ってもらうよ! 開発陣に!」
又零れていたみたい。
うん。治りそうも無いね。まあ、ほぼほぼ便利な癖なんだよ?
「あはははははははははははははははははははは」
はぁー…。
ランニングを終了。後若干のお腹や肩周り、背中などの運動をして切り上げる。
かおりじゃ無いけど、[ムキムキ]になるつもりはさすがに無いよ。
クールダウンして部屋に戻ったらシャワーを浴びて着替える。
お茶でももらおうとキッチンに向かう途中でリビングを覗くと、三人が黙々とゲーム中。
ユリカとかおりとルミ。
凄い集中度合い。
テーブルの上は…摘まみ菓子の空が山。
通りかかったついでだ。
お菓子を包んでいた紙やら小袋、缶ジュースの空き缶など、ゴミをサクッと纏める。
「わっ「「有り難う」」ございます」
吃驚した三人が慌てた様子でお礼を言ってくる。
「通り掛かって気になっただけだよ。集中しすぎじゃ無い?」
「イベント進行中なんだよー。クリアしたとこで切り上げる予定ー」
「意味はよくわかんないけどほどほどにな」
「「「はーい」」」
キッチンでお茶を入れてダイニングのテーブルで一服。
時刻は十六時過ぎた所。
トレーニングルームに三時間ほどこもってた模様。
集中が凄いとか他人に言えなかった件。
反省。
まあ、ゲームよりはマシかな?と思っておく事にした。
しばしほけっとしていたら玄関に人の気配。
「「「「ただ今」」」」
とお城に行った四人が帰宅。
「今日は君らかい」
リビングでユリアが呆れた声を上げている。
お茶でも入れて持って行こうか。
キッチンに行ったら[ハウスキーパー]様が四人分のお茶を用意してくれていた。
「有り難う。助かるよ」
お盆に載ったそれを受け取りダイニングへ。
何となく、お礼を言った時に[ハウスキーパー]様の挙動が変だった様な?
「照れてるの?」
と訊いてみたらはっとした様に動きが止まる。
正解だったらしい。
「お帰り。[ハウスキーパー]様が煎れてくれたお茶だよー」
と、四人に差し出す。
「「は?」」
ユリアとミュウが固まった。
「あはははははははははははははははははははは」
サリーが一人大爆笑。
「あらー?いつの間にアップデートされたのかしらー」
ミュラ姫は首をひねって悩んでいらっしゃる。
「「「ちょっと!今大事なとこ!面白ネタ禁止」」」
ゲームに夢中の三人から苦情発生。
サリーの笑いから声が消えた。
ちょっと苦しそうな様子がうかがえるんだけど…平気?
「「「うわー。全滅!イベント失敗したー。あはははははははははははははははははははは」」」
ゲームの三人も決壊した。
「ちょっと鹿乃子、今度は何したの?」
ユリアが詰め寄ってくるけど、わたしは知らん。
「お昼の後の食休みの時からお茶の用意してくれる様になっただけだよ」
「そんな機能は無いよ!」
状況を説明したら即、断言されてしまった。
「ユリアちゃん。有るのよ。ちゃんと機能付いてる」
まだ半分笑った状態でサリーが声を掛けて否定してくれる。
「好感度九十パーセント超えると働く様にした隠し機能なの」
「聞いてないけど!!?」
叫ぶユリア。
「作動すると思ってなかったから言ってなかった。ごめんね」
未だ肩をふるわせつつ顔の前で手を合わせるサリー。
「あ!?ミュウが上位機種のプログラム一部止めただけで納品した所為!?」
ミュウが慌て出す。
「ちゃんと止まってたわよ。わたしがちょっと悪戯しただけ。ミュウちゃんの仕事は完璧よ」
はーっと息を吐いて安心するミュウ。
「鹿乃子ちゃんみたいに道具に対して毎回毎回有り難う、とか、お願いします、なんて声掛ける人が居るとも思わなかったからね。AIの好感度上がると上位機種の機能が解放されてく様に悪戯したのよ。ごめんなさい」
深く頭を下げて謝罪するサリー。
「サリーちゃん、時々そーゆー悪戯しかけてるよねー」
ユリカは経験者なのかな?
「良かったー。今さらでっかいバグ発生かと本気で焦ったわよ。あー心臓に悪いなー。もう」
ユリアがやっと安心した模様。
さすが、経営者様だね。
「タウンキーパーやタウンスイーパーの好感度も上がってる前提だからもうないと思うわよ?さすがに」
慰めなのか?サリーがそう言うけどなぁ。
「わたしの影響で学園の生徒中心にタウンスイーパーの好感度上昇中だけど?」
毎朝毎晩わたしに手を振るタウンスイーパーを見て真似する生徒が激増中なのを指摘してみた。
「………拙いかしら」
自信が無くなった模様。
「もー!修正プログラム作って!急いでオンライン・アップデート掛けるから」
「判りました。ホントに、ごめんなさい」
真顔で修正するためにお仕事に向かおうとするサリー。
「もうお茶煎れてくれなくなっちゃうのか…」
ぽつりと溢したらユリアが固まる。
「……開放されたら条件付きで開放されましたって説明する様に直して」
「了解」
ウキウキとした足取りで自室に向かうサリー。
「ユリア。有り難う」
「もう今さらだわ。他にもありそうだよねー」
それは同感。
「…否定して欲しかったのに…」
「あはははははははははははははははははははは」
しょぼんとしたユリアを指さし大爆笑のユリカ。
ほら差した指を掴まれた。
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
かおり、ミュウ、ミュラ姫が爆笑、ルミも口元を押さえてぷるぷるになった。
サリーの本気で吃驚な一面が明らかになりました。
大騒ぎだよ。
その後、夕飯前には改良型のプログラムをサリーが持って来た。
そこで初めて、昼間見た[ハウスキーパー]様の行動の原因を知ったさつきが大爆笑。
再び大騒ぎとなって夕飯の時間がずれ込んだ。やれやれ。
せっかく用意した夕飯が温め直しになって、メグがしばらくお冠でした。
さて、食事も終わり、リビングです。
さつき、ユリア、サリー、ミュウ、姫の五人はお城に行きました。
例のプログラムの件で。
ご苦労様です。
四分の三に続きます




