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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
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二月十八日 錬金の勇者

四十九日目、三分の二です。

「これがパワースイッチ。こうやって一秒位押してると動き出すの」


 実践(じつせん)するから同じように扱えという事ですよね? 了解。


 [POWER ON] と画面中央に緑の文字が次々に表示されて二回ほど点滅し頭から消えていく。


 次に、同じ位置にバーゲージが表示された後、左から右へとゲージが伸びて画面が白く輝き、軽快な音楽と共に[WELCOME]と言うデザイン文字が表示され、何やら文字が沢山表示された後、[確認]と[拒否]のタッチスイッチが表示された。


 今の音、耳から聞こえてたか?


 何かの技術で直接脳へ? 騒音対策? 話すのも考えれば伝わるの?


 設定でふつーにスピーカーからも音は出せるですか。


 なまらすげー技術ですな。


 ああ、そうじゃなくって、画面画面。


「これは無条件で[確認]をタッチ」


「拒否を触るとどうなるの?」


「パワーが切れてお(しま)い」


 どーゆーこと?


「著作権保護に同意して、遊びすぎに注意しましょうって感じの文が書いてあるんだよ。拒否するって事は色々同意してくれないなら使わないで下さいねって電源が切れちゃうんだよ」


 意味を考えてたら、テーブルを(はさ)んで反対に陣取(じんど)ったメグが、(すで)に何やらゲームを始めながら教えてくれた。


 よく分かりました。


 [確認]にタッチすると個人情報の登録画面になった。


此所(ここ)にアイデンティティナンバーを入れるか、登録証の三次元コードを読み込ませます」


 アルファ。待っててくれた。個人番号だよね。


 四桁四ブロックにアルファベットを含めた三十六進数を、画面の文字入力用のキーで入れていく。


 全部[Z]になると十進数で二十五桁じゃなかったかな?銀河連邦で登録されている住民の数ってまだ[(けい)]から出ていないらしいし、当分大丈夫ってユリアのお姉さん。レマが入国時に手続きで言ってた記憶がある。


 入力を終えて、確定させると、今度はパスワード。


 これは登録時に、自由に決めた文字列。


 サクッと入力して確定。


 名前と生年月日が出てきて確認せよとの事。


[(まき) 鹿乃子(かのこ)  十六歳   星歴二千九十五年(西暦二千九十八年)一月十四日 生れ]


 うん。合ってるって…西暦の方の年まで出てる!?


「あー。生体認証で本人が触ってる時しか見えない情報だから平気だよ」


 あたふたしていたらメグが声を掛けてくれた。


 良かった。ゲーム機で身バレは避けたいよね!


 確認にタッチするとメニュー選択らしき画面に変わった。


()のミニゲームって所には最初からいくつか簡単なゲームが入ってるよ」


 アルファの指示で、ミニゲームフォルダを開けば、カードゲームやボードゲームらしいものが並んでいる。


 わたし、此の手のビデオゲームって言うの? 十歳位の時何度か触った事があるだけなんだよな。


 トランプや将棋、双六みたいなのも正月に親戚の従姉妹が集まったときくらいだし。


「後、此所のスロットに一緒に買ったパッケージソフトをセットすればそれがプレイ出来るの」


 本体の下方に隙間(すきま)があって、そこにカード型のパッケージソフトを差し込めば良いらしい。


「始めにこれが良いと思う。ネット使わない個人プレイ用なの。ゲーム始めると色々教えてくれるからとりあえずスタートをお勧め」


 と、一枚のカードが差し出されたので、スロットに差し込んだらなんか音楽が鳴り出した。


「マニュアル「そんなものは無い」は……メグちゃんが酷い…」


 ゲームの業界ではマニュアル添付(てんぷ)しないのが標準らしいよ。


「プレイヤーの名前を入力するの。キャラの名前になるから本名じゃ無くてきとうなのが良いと思う」


 もう、マニュアルの件には触れてもくれないらしい。


「わたしがよく使うの『ああああ』だよ」


 メグもか。後でネットから探そう。


「メグはてきとう具合が(ひど)い。ぼくは「ナナ」が多いかな」


 アルファ・セブンの七かい?


「そう」


「んじゃ、わたしは『バンビ』で」


「ザルテンさんの童話?』


「うん」


 フェーリクス・ザルテンさん作の童話の主人公で鹿の子供。オスだけど。


 名前と性別を決めたらスタートさせる。


 オープニングのアニメーションが流れて、話の概要(がいよう)が説明されていく。


「酷いお話だねぇ」


   ☆★☆★☆★


 魔法と剣術の世界。人と魔物が対立している。


 在る日、魔物の王、魔王が現れた。


 魔王は強かった。人の王は国の各地に勇者の称号を持つものを探した。


 やがて王都に七人の勇者が集まった。


 一人は剣の勇者


 一人は盾の勇者


 一人は格闘の勇者


 一人は魔術の勇者


 一人は聖術の勇者


 一人は狩人の勇者


 一人は錬金(れんきん)の勇者


 勇者のパーティーは六人までだった。


 錬金の勇者は戦う力が無いと見なされて王都から追い出された。


 追い出された錬金の勇者が主人公。勇者として王都に向かったため故郷には帰る場所が残っていなかった、


 さあ、あなたは此れから、どうやって生きて行きますか?


   ☆★☆★☆★


 主人公可哀想すぎる。


「頑張って強くなって王様を見返すのも良いし、勇者パーティーより先に魔王倒すのも良い。錬金術で色々作って商売をしても良いし、畑を耕してのんびり暮らしても良い。自由だよ」


「いやね、メグ。強制的に集めといて人数多いからポイって…まあいいや。そうゆうものなのね…。それで、この人、何が出来るのさ」


(きた)えれば全部」


「えー?」


「魔の森は国の外だから自由に使えるよ」


「そこを切り開いて農業やっても良いしおっきな家を建てても良い。(ただ)し魔物がいっぱいなの」


「冒険者になって働くのも良いよ」


「薬草集めや素材集め。魔物の駆除(くじよ)護衛(ごえい)なんかのお仕事があるの」


「海に行けば港があるし、山に行けば鉱山もあるよ」


漁師(りようし)さんになったり鉱山で鉱石や宝石を集めたり、鍛冶屋(かじや)さんになる事も出来るの」


「商業者登録してお店も出来るよ」


「お店を開いたり近くの町や村を回って商売が出来るの。自分で道具や武器防具を作って販売する事も出来るの」


盗賊(とうぞく)ギルドや(やみ)ギルドもあるよ」


「盗賊や海賊になって荒稼ぎ出来るの。スパイ活動や暗殺者になる事も出来るのよ。でも捕まるとゲームオーバーになっちゃうの」


 メグが出来る事を、アルファがその補足(ほそく)。ホントに選択肢(せんたくし)の自由度が高いんだね。


「それじゃぁ、森を切り開いて龍神(りゅうさん)の神社を建立(こんりゆう)しよう。でっかいの」


 二人の動きが止まった?


 ゲーム機が(ひざ)の上に落ちてますけど?


 変な事言ったかい?わたし。


 森に向かうと魔物がいっぱい。


 突然魔物と遭遇(そうぐう)。何か表示が出てきたぞ?


 戦い方の解説でした。


 大きな丸い方向スイッチで移動や姿勢の制御。中央のボタンが決定。


 右利き用と左利き用で、配置が左右替わるんだ。それで購入時に利き手を確認されたのね。


 ああ。実体のスイッチだから、()れれば見なくても操作ができるのか。


 小さな左右あちこちに付けられたスイッチが攻撃用。スイッチ(ごと)に斬る、()る、(なぐ)る、飛ぶ等の動作を選択する、と。


 見る、聞く、話す、調べる。なんてのもあるな。


 それから、画面に記号を入力すると魔法が発動するの? どんな記号? 縦線と横線?


 操作方法を読み終わって[OK]をタッチしたら、さあ戦ってみましょうと来たもんだ。


 おお。魔物が攻撃してきた。


 方向スイッチで避ける。若干遅れるけどなんとか()るか。


 蹴る殴る数回で戦闘終了。ダメージなし。


 倒して少し進むと又魔物。


 今度は魔法。縦線が火。横線が風だった。


 でもこれ、敵の攻撃を避けつつ真っ直ぐ画面に線を引くのが地味にきつい。


 倒したらファンファーレが鳴り響く。


「レベルアップとはなんぞ?」


 返事が無い? まだ固まってるな。


 画面に戻れば説明文が表示されていた。


 ヘルプ機能があるんだったか…ああ、経験を重ねて強くなる事なのね。


 戦いで使った攻撃が優先して強くなるのか。


 使える手段は満遍(まんべん)なく(きた)えた方が良いのかな? それとも特化する?


 始めは全部使っていこう。


 おや? 戦闘中で無ければ左上のボタンでメニューが開きます?


 怪我(けが)や減少した体力、魔力を回復するアイテムがあります。と?


 ステータス、は自分の強さ。


 所持金? 魔物を倒せば手に入る? お金持って歩いてるんだ。魔物。


 それって、強盗? いや、向こうが襲ってくるんだから慰謝料(いしやりよう)でいっか。


 魔法の発動キー一覧って何ぞ? ああ。画面に入力する記号の一覧か。


 初級は縦線、横線、斜め線右、左。


 低級は+、×、△、○。


 強くなるほど複雑になると。使えるのは白い文字、まだ使えないのが灰色? 使うのに必要な魔力が違うんだね。


 回復魔法ってのもあるんだ。体力用が=、状態異常(じようたいいじよう)が÷。


 後はマップ? 周辺の地図…今は小さな町の近く。(うえ)に行くと魔の森。


 所持品の一覧。盾、ナイフ、革の鎧(かわのよろい)が各一個。薬草、魔力草、お弁当が各三個。さっき倒した魔物の素材。


 装備品? 此所にセットしないと防具や武器の効果が出ない? 今、旅人の服上下と帽子と革の手袋と革のブーツだけなんですが?


 所持品のナイフやら(たて)やらを装備しろってか。


 …


 まあいいや。其の(まま)行こう。


 あと、ヘルプがあった。此所で使い方とか調べる事が出来るらしい。


 何となく判ってきた。とりあえず、森に行ってみよう。


 上に向かって、ひたすら移動。


 二、三秒動くと魔物と遭遇。倒して進む。


 時々、レベルアップ。


 魔力が減ると、動きにくくなる。しばらく動かずじっとしていれば回復するみたい。


 ステータス画面を開いて回復するのを(なが)めながら待つ。


 待っている間、魔物が襲ってくる事は無い。んだけど。動き始めた途端(とたん)に魔物と遭遇。


 回復待ちしていた間に遭遇したはずって位の回数戦うまで延々続く。


 そして又、二、三秒間隔に。


 進んでは回復待ち。を来る返して、やっと森に到着。


 ここまでダメージなし。全部避けたよ。慣れた。


 森に入ると途端に遭遇率が倍位になった。


 魔物も強い。けどなんとか為るな。


 その後も時々回復待ちをしつつ森の真ん中を目指す。


 時々、レベルアップ。


 戦いが終わって、レベルが五十になった所でホッペに違和感(いわかん)が。


「珍しい事やってるねー。誰かに借りたのー?」


 ユリカが帰宅していたよ。


「今、何時?」


「十七時ー」


「えー?」


 三時間も経過している。単純作業なんで、のめり込んでしまったらしい。


「見せて見せてー」


 そう言いながらわたしの手からゲーム機を取り、操作するユリカ。


「鹿乃子ー。一回もセーブしてないんだけどー…」


「セーブって何?」


 その様な操作、わたしは知らぬ。


「…」


「…」


「セーブの仕方教えてないやー」


 ユリカと無言で見つめ合っていたらメグの声。


 いつの間にか回復していたらしい。


「だからセーブって、何?」


「ねえねえメグちゃん? 更にこの娘、初期装備のまんまー。しかもノーダメージでレベル五十ー。んでもってー、現在地が魔の森中央少し手前ー。ここまでスタート地点から一直線なんだけどー」


「何そのトンデモデータ。もうノーセーブ、ノーダメージクリア(ねら)えるんじゃ無いかな?」


「何をどうすればその様な高等技術が成立するの?」


 わたしの質問には答えてくれないで、ユリカとメグとアルファがお話中。


 そんなの()けて倒して魔力を回復すれば出来るよ。延々三時間。


「「「ただいまー」」」


 そこに新たに三人ほど帰宅の声。NINJAコンビとさつきかな?


「あれ? 珍しい事してるね! 誰のゲーム機?」


 リビングに顔を出すなり(のたま)うさつき。


聡美(さとみ)達のゲーム購入に付き合ったら、強制購入だったよ」


「「「あはははははははははははははははははははは」」そうだったんだー」


 答えたら、ユリカ、さつき、かおりが爆笑。


「ああ。今日発売のゲーム。大量」


 ぽんと手を打ってルミ。


「あ! 紗耶香(さやか)が言ってた中間考査週末にした原因!」


 さつきも気付く。


「見事、策に()まってるじゃん! 鹿乃子ちゃん!」


「いや、これは古いゲームみたいだよ?」


「予約してないんでわたし達は購入出来ません」


 さつきの台詞にわたしとアルファが訂正を入れる。


「何のゲーム?って、姫野(うち)のゲーム部門が出した奴じゃん! 冒頭の話が酷いって有名な!」


 やっぱ酷いよね? あの冒頭部分の話。


「いやそれ、このくらい酷ければ色々と吹っ切れて好き勝手な行動をしてもらえそう。って推奨(すいしよう)したのさつきだよね?」


「「「「お帰り」」」そうだっけ?」


 ユリアが割り込んできた。さつきはすっとぼけ。


 たった今帰宅のしたのに、話の内容が分かっている模様。


 他ミュウ、サリー、ミュラ姫もご帰還。


 これで全員(そろ)ったね。夕飯にしない?

三分の三に続きます。

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