二月十六日 瞑想
四十七日目、後半です。
図書館を出た所で二人と別れ、メグ、アルファとメンバースクラブに向かおうとしたらメグが止める。
「わたし達、やる事が特にないから其の儘帰って良いってー。さっき確認しといたよ」
「おぉぅ。有り難う」
お礼を言って、行き先を校門へ変更。
三人並んで手を繋ぐ。アルファが真ん中。右にメグ、左にわたし。
わたし達にすればのんびり。端から見れば異常な早さで公園を突っ切って帰宅。
いつもの声掛け日課も当然こなす。
[ツイッギー]は相変わらずアルファを弄りに来るよ。何が気に入ったのかな?
「鹿乃子の反応が面白いんじゃ無いかしら?」
と言うのがアルファの感想。
うん。確かに、アルファを抱えてオーバーに逃げ回ってる気はする。わたしも楽しいんですよ。絡まれるのが。
「そのうち周りのスイーパーに伝染したりして?」
え? 伝染するの? メグ。しないよね? しないと良いな。ちょっと、お祈りしておこう。
帰宅、玄関開けて中に入る。
部屋で着替えてリビングへ。メグとアルファもやってきた。
「鹿乃子ちゃん、記憶と違う所って見つかったの?」
メグに訊かれて思い返す。結構歴史は違ってたけどこれは今さら。
「重力加速度とか、太陽系惑星の公転周期とかで小数点以下何桁か、から違ってるよ。原子量も記憶と違うのがあったかなぁ」
「それ、物理法則が微妙に違うって事かな」
メグ。それは無茶ぶりだ
「わたしの知識でそこまで判らないね」
「あー。そりゃそーだ。ごめんねー。無茶言った」
「ああ、鹿乃子は実質十六歳なんだった」
アルファの言う通りわたしは十六年分の経験しかありませんよ。専門知識なんて無いからね。
そこへバタバタと誰かが帰宅してきた気配。
「ただ今!」
さつきだ、何を慌ててるのかな?
「あれ?まだ三人だけなの?」
「サリーちゃんが地下の自室に居るよー」
メグが答える。居たんだ。サリー。
「あー、急いで帰ってきたのに! まだ余裕有ったかー。着替えてくるね!」
と、又バタバタと走り去る。
「さつきちゃん、結構 騒がしいね」
「同意同意」
メグとアルファに言われてるぞー。ちょっと落ち着けー。
あれ?アルファが何かクスクスしてる。
「鹿乃子の反応が面白い」
ありゃ。又ダダ漏れしてるかい。まぁ面白いなら、其の儘で良いか。
二人して口元押さえてうずくまっちゃったよ。やれやれ。
「二人ともどうした?」
二人が復帰するのを待ってたらさつきが先に降りてきた。
「わたしの垂れ流し電波で決壊した」
正直に自己申告。うずくまった二人の肩の震えが大きくなった気がする。
「ほどほどにね!」
爆笑した二人が床に転げた。
「今の、とどめはさつきだからね」
「悪かった!」
一層笑う声が大きくなった気がする。
さつきと二人、ソファに座って、メグとアルファが落ち着くのを待つ現在。
笑いが収まってきたかな?
「「「「「「ただ今」」」」帰りました」」
玄関で大勢の声。
「全員揃ったね! 夕飯の準備だー!」
バタバタとキッチンへ向かうさつき。やっと起き上がってきたメグとアルファ。
「ありゃ、お顔真っ赤にしてどうしたのー? 何かいかがわしい事してたー?」
自分の部屋に向かう途中でリビングを覗き、二人の顔を見たユリカがこの台詞。
二人とも薄ら汗ばんで、上気して赤い顔してるんだよね。
「わたしの毒電波で決壊した」
と、端的に説明。
「直撃かー。被害は酷いぞー。諦めろー」
言うだけ言い放って去って行くユリカ。
せっかく復活したのに…。
再び床で丸くなった二人を眺める。
やれやれ
めくれちゃって見えちゃいけない物が見えそうなアルファのスカートを直したら、又声と震えが大きくなった。
あれー?
あぁ。メグが床をバンバンし出しちゃったよ。やばいやばい。
そうだった。こういう時は瞑想瞑想。
しばらくして静かになったので目を開けた。
はぁはぁと息を荒げ、汗まみれでぐったり伸びきったメグとアルファ。
そしてそんな二人とわたしに呆れ果てた視線を向けている残りのメンバー。
「ごめんなさい」
深々と頭を下げてお詫びを言ったら大爆笑。 おかしいな。最後の、ユリカが原因だよね?
夕飯の三十分遅れが決定した瞬間でした。
「いやー。久しぶりに鹿乃子の大量爆撃だったねー」
夕飯が終わって、お腹を休めながらお茶を頂いておりますよ。酷い事を言ってるのはユリカ。
「せっかく復帰した二人を突き落としたのはユリカ」
そう言って睨んでみる。
「延焼させちゃったのは鹿乃子じゃんー」
そうなのか?
みんなが頷いている。味方がいない。悲しい。
「ほらー。アルファが又決壊し掛かってるよー」
横を向いて肩をふるわせているアルファ。
「えー?」
抗議の声を上げる。アルファは決壊した。ごめん。
「アルファ、お腹割れちゃう?」
ルミ。それは禁句だ。
「きゃーっお腹割れるのはいやー」
かおりまで決壊しちゃったよ。
「あはははははははははははははははははははは」
ユリカも毛玉、
「あーあ」
呆れたら再び大決壊。みんな食べたばかりだろ?大丈夫なのか?
「「だいじょぶじゃないよ。あはははははははははははははははははは」」
ユリアとサリーはまだ余裕っぽい?
…駄目だった。瞑想してよ。
なんとか収まった時には一時間ほど経過していたね。
罰として全員の背中を流すよう仰せつかったよ。現在、お風呂で最後のアルファを磨いている所。
背中流すの十人分。なかなか大変だった。
「鹿乃子の爆弾は防御無効属性なのでつらいです」
未だ涙目のアルファがぼやく。そんなつもりは欠片も無いんだけどなぁ。不思議だ。
「せめてそうゆうの押さえて下さい」
クスクスしながら文句が来た。これも駄目なのか。厳しいなぁ。
「慣れるしか無いんだよねぇー。難しいけどー」
そう言いながら湯船に浮いてるのは、アルファの前に背中を流したユリカ。
その前までに背中流したみんなはもう上がっているよ。
アルファの泡を流して終了。自分の身体を洗おう。
泡立てたタオルで身体を洗おうとしたらそれをアルファが奪い取りわたしの後ろに回る。
「鹿乃子の背中、ぼくが流すね」
「有り難う」
お礼を言って任せる事にする。
お湯が掛けられて泡が流される。
隣に座ってタオルを返してくれるので受け取って前側を時分で流す。隣ではアルファが同様に。
流しおわって、二人揃って湯船に浸かる。浮かんでるユリカが邪魔。
足で湯船の反対へ押しやったら文句を言ってきた。
「酷いー。足蹴にされたー。訴えるー」
「邪魔なんだよ。風呂に浮かぶんじゃ無い」
「あはははははははははははははははははははは」
アルファが爆笑してしまった。
そして、リビングのソファに埋もれるわたし。あの後ユリカまで笑い出しちゃって収拾が付かず。
二人が収まるのを待ってやっとお風呂から戻った所だよ。
茹だっちゃった。
すでに、アルファ始め、みんな自室に戻っている。
「はーい、お水ー」
ユリカが冷たい水を持って来てくれた。一気に飲み干す。
はー。気持ちいい。
「有り難う」
フーと息を吐き出した後、隣に座ったユリカに訊ねる。
「何かきっつい系のお仕事中?」
「ははは… ばれたかー」
今日のみんなのはしゃぎ方がちょっと普通じゃ無かったしなぁ。
「わたしにはまだ無理そうなんだ?」
「鹿乃子はまだ未成年だからね。いくら自己責任の教育がしっかりしてたからって、精神が若いかなって」
ユリカの口調が変わったね。こっちが本来だろうなぁ。
「でも、地球が崩壊してくのをずっと見てたし、人類が滅びるのも経験してるけど?」
「それって、局地を見てた訳じゃ無いでしょ。今の現場はなかなかに酷いよ? 生き死にが絡んでくる案件じゃ無いけど、精神的に疲労がきつい。まださすがに無理かな。十八過ぎたら考える」
「過保護じゃ無い?」
「いやいや。鹿乃子じゃなきゃ二十五歳過ぎるまで関わらせる気は無いな」
「お。結構高評価だった?」
「本気できついんだよ。後で来る。精神が幼いと壊れる」
「判ったよ。指導、よろしく」
「任されたー」
ユリカの口調が戻った。実際、龍神に保護されてユリカに見つけてもらえるまでの三千年近くあったらしい時間が、わたしには一月ぐらいの感覚なんだ。龍神が時間の引き延ばし、みたいな事をしてくれていたんだろう。生物が絶滅する所は見えていない。見る間に地球の形が崩れていったから、その前の段階で既に滅んでいたはず。
自分で思うほどには、まだ強くはなっていないんだろうな。自分では平気なつもりでも、何がトリガーになるか判らないし。何より前科がある。平気になったと判断すればいつもの調子で引っ張り回されるに違いないし。
人生の大先輩が大勢いるんだから頼らせてもらおう。
「十六歳になったばかりの子供の考え方じゃ無いなぁ。もっと甘えて?」
頭を抱き込むようにしてユリカの膝の上に寝かされた。頭を撫でられて気持ちいい。
拙い。急速に眠くなってきた。
これも甘えちゃって良いとこかな?
…駄目だ。抗えない…… おやすみなさい……。
四十八日目に続きます。




