二月十五日 バイク
四十六日目の後半です
それは置いといて、メグが動画見るらしい。準備を始めた。
で、流れてきたのは女子高生の、のんびりキャンプアニメ。
四人でまったり鑑賞中。何となく自動二輪に興味が湧いた。有るのかな?
取り合えずメグに訊いてみよう。
「こういうスクーター?とかって存在するの?」
「有るよ。コミューターみたいに公共交通じゃ無くて個人所有になるけどね」
「興味湧いたー? 乗ってみるー?」
「自転車にも乗った事無い」
ユリカが訊いてきたんで答える。
「「「えぇー!?」」」
吃驚された。
「よし。自転車の練習をしようー」
と、ユリカが騒ぎ出す。
「やだよ。必要ないよ」
とりあえず断る。
「とりあえずで断るなよー」
「「あはははははははははははははははははははは」」
ユリカの反応にメグとアルファが爆笑。
動画が終わった所で結局自転車の練習になった。
で、
「一発で乗れるってなんだよー! つーまーんーなーいー!」
いや、バランス取って走り出せば安定するじゃん? 簡単じゃんか。
やってみたらあっさり乗れたよ。割と便利そうだな。これ。
地面に転がってて足をバタバタするユリカは放置で庭をぐるぐる。割と面白い。
アルファが手招きするので近寄ると、なんかアクロバティックな乗り方をする動画が表示された端末を見せられた。
まねしてみる。前輪を持ち上げて後輪だけで? うーん。上手く持ち上がらないんだが、と五分ほどやってたら何となく判ってきた。
重心を後輪側へ持っていって前輪を持ち上げつつ後輪の中心の真上に重心が来るように…少し前にずらしつつ前進して…と。とりあえずこんなかい?
アルファが拍手してくれてる。
ブレーキを強く掛けつつ前輪の上に重心を移動、後輪を持ち上げてその場で百八十度ターン。
走りながらサドルの上に立ち上がってみる。
壁を駆け上がる…のは、タイヤの跡が残りそうだから止めよう。
「なかなか良い運動になるね」
と三人の所に戻る。
アルファとメグは拍手してくれた。
ユリカは絶賛不貞腐れ中。
「なんだろうねー。この完ぺき超人様はー。わたしなんか乗るだけで一週間もかかったのにさー」
そうなんだ…
「わたしもアルファも乗れるだけだからね? 鹿乃子ちゃんみたいな乗り方出来ないからね?」
アルファも頭をぶんぶんと、絶賛縦方向。
三人とも、なんかごめん。
と、突如立ち上がったユリカが自転車が置いてあった物置に向かってダッシュする。
そこから引っ張り出してきたのは自動二輪車。動画で女の子のおじいちゃんが乗ってたみたいなでっかいの。
ユリカがハンドルからぶら下がってる様にしか見えないんだが?
「鹿乃子ならきっとあっさり乗れるだろー。やってみー?」
なんか かなり投げやりだな。
で受け取ったら重!
危うくひっくり返すとこだった。やれやれ。
「で?どうやんの?」
「えーとね、この左のレバーがクラッチと言ってー…」
と延々使い方のレクチャー。動力付きの乗り物はめんどくさいな。まあ、こいつはエンジンじゃ無くてモーターで動くらしいんだが。
イグニッションをオンにしてギヤを一速に入れ、クラッチを繋ぐ。で、アクセルを回してモーターを起動したら思いっきりこけた。
ユリカが指差して大爆笑。
吃驚したよー。いきなり後輪が高速で空転。慌ててアクセル戻したら空転が収まると同時に車体が急発進。付いて行けずに飛ばされた。
「鹿乃子ちゃん。順番が違うよ。イグニッション入れたら一階軽くアクセル開いてでも良いんだけど、こっちのスターターボタンを押してモーターを回すの。一度回り出すとアクセルオフでもゆっくり回ってるから、クラッチ握ってギヤ入れて、回転少し上げたらゆっくりクラッチを繋ぐんだよ」
メグが説明してくれた。モーター起動するタイミング間違えたみたい。
「モーターの回転始める時ってすっごい力が強いから気をつけないと今みたいになるの」
アルファ、先に教えて欲しかったよ。まあ聞いてたとしても意味が判らなかったと思うけどな。
「でもさ、ユリカちゃん。今みたいな時ってモーター回転しないように安全装置が付いてたよね?」
「ユリアが邪魔くさいからって外したー」
「あぁ。ロケットダッシュしてたっけね…」
メグとユリカの話からするにユリアが強力な加速をしたくて安全装置を外したと? 結構危険人物なんだな。
まあ理由が分かればなんとか為るだろう。という事で再挑戦。
倒れた車体を起こす…って結構重い。
戦っている時の状態ならどってこと無いだろうけれど、普通の状態だとなかなかに…
「ハンドルを車体下側に曲げてー、反対の手は此所のレール持ってー、腰を入れたら起こす方に向かって押すと起きるよー」
こんな感じかい? おお、あんまり力要らないな。
で、教えてもらった通りにやってみたらあっさり走ることが出来まして。
ターンがなかなか難しいけど、後輪ブレーキとアクセル、クラッチを上手く使えばなんとか為った。かなりシビアだけどな。
なるべく低速でなるべく小さな半径でぐるぐる回る。なるべくゆっくり八の字を描く。ユリカとメグの指示で繰り返す。
慣れてきたらかなり楽しい。けど、両手両足に体重移動と全身使うな。これ。
段々早くしていって良いよと言われて速度を上げていく。
足を乗っけるステップが地面をガリガリし出した。
「鹿乃子ちゃん。速度速すぎ」
「若しくは旋回半径小さすぎー」
了解。
ん? アルファがおいでおいで? 何か良い動画がありますか?
車体を倒す量を減らして身体だけ内側に乗り出すようにすれば速度を上げても小さく回れるらしいのでやってみる。
さっきより早くもステップこすらなくなったよ。膝が時々地面に当たるから気をつけないと。
あ。後輪を空転させるともっと小さく回れる。
「鹿乃子ー。タイヤ無くなっちゃうよー」
ユリカの声に気が付けば当たりに煙が立ちこめていた。ゴムの焦げた匂いが酷い。地面が真っ黒。タイヤがボロボロ。ごめん。
「この人のバランス感覚。異常だよね?」
「絶対おかしいと思うー」
「激しく同意です」
三人でなんか悪口言ってる。
「結構楽しかったよ。何に使えば良いのか判らないけど」
「いや、高速で遠距離を移動するための手段なんだけどね? 普通に」
メグがそう言うけど、
「走った方が速いしなー」
「「「えー」」」
三人とも微妙な表情
「あぁ。タイヤの交換、頼んどこー」
ユリカが携帯端末でどこかに連絡。
「取りに来てくれるからそこに置いといてー」
「判った。有り難う」
答えてスタンドを立ててイグニッションを切る。
「キーは付けといてねー」
「了解」
答えて四人で家の中へ。少し汗ばんでるな。
「ちょっと汗かいたから着替えるよ」
「はーい」
ユリカに声を掛けて自室へ。
タオルを濡らして汗を拭き着替える。
リビングに戻った所へ誰か帰ってきたな。玄関が開いた。
「ただいまー」
ユリアの声だ。
「わたしのバイク何かしたの? 今持ってったよね?」
と、言いながらリビングにやってくる。
「ごめんね。わたしが色々やらかした」
と手を上げて謝る。
ユリアがわたしをみた後ユリカに視線を向ける。わかりやすく説明しろ? と視線が怖い。
「アニメみてたらー、鹿乃子がバイクに興味持ったんでー、練習してたー。一回こけてータイヤがなくなったからー修理に出したのー」
「よし。判らん。メグ、説明」
「鹿乃子ちゃんがバイクに興味持ったの。自転車にすら乗ったことが無いって言うからそこから練習初めてバイクの練習に移ったの。クラッチ操作ミスって一回転倒した後は順調に乗りこなしていって、最終的にアクセルターンが楽しいってぐるぐる回り出しちゃったの。気が付いたらタイヤが無くなっちゃったんで修理依頼してさっき持って行った所」
困ったような顔でわたしをみるんじゃ無い。ユリア。今ユリカとメグが言った通りだよ。
「あのでっかいバイクに初めて乗ってアクセルターンが出来るようになったの?」
アクセルターンがなんだかよく分からないけど、あのタイヤがやたら減る廻り方のことならその通りなのでこくりと頷く。
「はぁー」
溜息を一つ。
「この娘、何かおかしくない?」
わたしを指差して酷いことを宣うユリア。
三人とも頷いてるし!
「鹿乃子、今度サーキットで走る練習してもらおう」
サーキットってなんだ? 練習場か何か?
「まあ、そんなようなものー?」
ユリカ、疑問形になってるよ。
お仕事終わったのはユリアだけ?
「終わってないよ。とりあえず自動化プログラム組んでテスト中。一晩位掛かりそうだから放ってきた」
NINJAペアとか姫とか帰ってきそう?
「夕方には戻るんじゃないかな? 何か用事?」
夕飯当番誰だろうと思ってね? 当番該当者、居ない人ばかりなのよね。
「…。OK。私がやるよ」
よろしくお願い致します。… そっちの三人は何故に固まって震えてるのかな? お顔が真っ赤ですよ? 涙まで滲んでませんかね?
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
何がおかしかったんだろう?
ユリアと顔を見合わせて小首を傾げる。何がツボだったのか判らない。ユリアも思案顔。
「えー? バイク振り回してた時とギャップが酷い?そりゃ見てないから判らないわねー」
ユリアがアルファから聞き出してた。
わたしには分からない理由でしたよ。楽しそうなら良いんだけれど。
特にするべき事も無いんで、騒動の原因となった動画の続編を鑑賞しようと思う。
ユリアと並んで鑑賞していたら、笑いが収まった順に一緒に鑑賞。ユリカが最後だったよ。
動画が終わるまでには全員帰宅。帰ってきたみんなが一息入れている間にユリアがおさんどん。
揃って夕飯を戴いた後、わたしはお腹を休めつつ課題を片付ける。
再びリビングに向かったら、動画鑑賞会が続いていた。みんな好きなんだね。
どこか未来っぽいベネツィアみたいな街でゴンドラの漕ぎ手修行する奴。カンツォーネとか観光ゴンドラとか、男性の職業だった気がしてならないんだが?
まぁ。まったり系だし面白いから良しとしよう。
結局一シーズン視てしまう。気が付けば日付が変わる寸前だった。みんなで慌ててお風呂。
何故かミュウとアルファが劇中のカンツォーネを歌い出す。
お風呂で壁が固いからよく響く。二人ともめっぽう上手だったのは吃驚。
周りを見ればみんな癒やされてるよ。歌で食べていけるんじゃないかい?
歌が終わる頃、寝落ちしたユリカがお湯に沈んで溺れかかる騒ぎで落ちが付いた。
みんなでお休みの挨拶をして自分の部屋へ。
今のところお呼びが掛からないけれど、やっかい事が起きてるっぽい事だし、いずれはお手伝いする事も出てくるだろう。
一応、頭の隅っこには置いて於こう。
しかし、ユリアが自動二輪に乗るってのは意外だったな。仕事に必要になるのだろうか?
まあ、何でも出来た方がいろんな意味で役立つんだろうなぁ。
まだまだ覚えなきゃ行けない事が多そうだ。
混乱しないように気をつけよう。
それでは、おやすみなさい。
四十七日目に続きます




