二月十五日 トレーニングルーム
四十六日目の前半です。
星暦二千百十一年二月十五日 日曜日
お早うございます。
ようやく辺りが明るくなった。
夕べ寝る時間が早かったのか目が覚めるのが早かった。まだ日が昇る前だったよ。
二度寝も良いけど、眠れる気がしないんで起き出した。
現在家の周囲をジョギング中。
わたし基準で。
おっと、携帯端末に着信。ユリカだ。
「お早う。どうかした?」
『鹿乃子何処まで行くのさー』
「気の向くまま走ってるから不明だね」
『あたし朝食にするよー? 戻ってくる気有るー?』
「おー。戻る戻る。五分かかんないと思う」
『十キロは離れてるよ…? まあいいや。用意しとくねー』
「有り難う。よろしくね」
と言う訳で戻ろう。ちょっと急いで。
歩道は危ないんで車道を走ってますが、何か?
予定通り五分で帰宅。
「ホントに帰って来た」
ユリカに驚かれた。みんな普通に出来るだろ?
「あたしとサリーちゃん以外無理だよー。時速百二十キロだよー。判ってるー? 道交法違反なのー」
「そっちかよ。てか、わたしは車両じゃ無い!」
「あはははははははははははははははははははは。そうだったー」
特に汗ばんでる訳でも無いんで、手を洗ったらダイニングへ。
「鹿乃子ちゃん特別法が必要?」
「一般道七十キロ、高速道二百キロで制定しようか?」
さつきとユリアが酷い事相談してるな。
「いくら鹿乃子ちゃんでも、時速二百キロは無理なんじゃ無いですか?」
あ。かおり。庇ってくれて有り難う。でも、今なら三百キロ位出せそう。
「えー!?」
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
ユリカ、さつき、メグ。覚えとけ。
で、みんな揃ってるな。何かあるのかね。
「そおゆーとこ、やたら察しが良いよねー。鹿乃子」
又だよ。やれやれ…。
「嘘だよ。起きたら鹿乃子がいないってユリカが騒いで みんなたたき起こされたんだよ」
「ユリアーっ 言っちゃ駄目ー!」
「調べれば町の中爆走してる鹿乃子ちゃん直ぐ見つかるのに探す前に騒ぎ出しちゃったんですよ。ユリカちゃん」
「かおりー…」
「惰眠をむさぼってたのに」
「ミュウ?」
「非常ベルならしてたたき起こされましたー」
「メグー」
「超過保護」
「ルミ…」
「待ってれば帰ってくるって言ったんだけどね!」
「さつきー」
「子猫を捕られた親猫みたいにあっち行ったりこっち覗いたり。面白かったわよ」
「姫ー…」
「心配なら端末に連絡入れれば?って言われて初めて携帯端末の存在に気が付いてたわね」
「サリーちゃーん」
「鹿乃子がドア開けるまで玄関に張り付いてたの。見物でした」
「ア…アルファまで…」
ユリカ、ボコボコ。そんなに心配させちゃったのかい。
「わたし、もしかすると、ユリカと一緒でないと何処にも行けない?」
「鹿乃子ちゃん可哀想」×九人。
「ごめんなさい。過保護すぎました」
ユリカが土下座。
「あはははははははははははははははははははは」×九人。
「わたしもごめんなさい。行き先メモしてけば良かったね」
わたしも土下座。
「じゃあ、玄関にメッセージボード置こうか? 行き先や用事書いておけるように」
「ユリア。ナイス。用意するねー」
バタバタと納戸に走っていくユリカ。
「有るの?」×十人
「玄関脇に置いてきたー」
ドタドタと戻ってくるなり宣うユリカ。
「最初から置いといて!」×十人
「はい。ごめんなさい」
再びユリカ土下座。
「あはははははははははははははははははははは」×十一人。
朝からえらい騒ぎだよ。そんな心配されるような事、昨日したかなー。謎だ。
やっと始まった朝食は、思った通り、すっかり冷め切ってた。
みんなから攻撃されて、ユリカ、平謝り状態。珍しい。
「冷めても美味しいからまあ良いじゃん?」
と言ったら…
「ありがとー」
と半泣きのユリカ。
「鹿乃子、優しい」
と、さつき、ミュラ姫、かおり、ミュウ、アルファ。
「甘やかさない!」
厳しいのはユリア、メグ、ルミ、サリー。
この差は…普段のユリカの行い?
「とっても悲しいー」
へにゃっと萎れるユリカ。
「あはははははははははははははははははははは」×十人
笑い飛ばされて、結局 不貞腐れてた。
朝食が済んでお腹を休めて、現在。地下です。地下一階。
いつの間にか、トレーニングルームとか、試射場とか、格技場とか出来てた。
「鹿乃子の要望に応えましたー」
とか、ユリカが宣ってた。訳判らん。
まあ、あるものは利用させてもらうんだけどね。
「鹿乃子の、その現実的なとこが好きー」
使わなきゃもったいなかろうに。作っちゃったんだからさ。
ユリカとトレーニング中だよ。アルファも参加。
基礎トレーニングを一通り終えた後、格技場でユリカ、アルファと組み手。ユリカの流派は何?と訊いたら
「ごちゃ混ぜー」
空手、ボクシングに始まって、レスリング、テコンドー、太極拳、サンボ、ムエタイ、少林寺…
気の向くまま覚えてたら全部混じって何が何だか判らないんだと。
剣や弓、ナイフ、槍、銃、等も一通り習得済みとの事。
わたしの護身術はじいちゃん直伝で流派は不明。ユリカによると、小林拳と合気道と柔術当たりが混じってるらしい。
意外なのが、アルファがクンフー使い。小林拳や八極拳の混じったもの。気を使わない状態なら良い勝負が出来る。
「真気を巡らせるのがよく判らない」
と本人が言う通り、瞬間瞬間には発動するけど持続しないみたい。
五分から十分位宛、交代交代でトレーニング。
アルファの息が上がった所で一旦休憩。隅のベンチに並んで腰を下ろし、水分補給中。
「ユリカ、昨日の話の中に出てきた[羽根]と[ノースウエイブ]って会社、姫野と関連あり?」
「無い。とは言えないかなー。羽根グループの親企業は二年の薫君の実家だしー」
「人材の面では結構交流があります」
ユリカに続いてアルファのお答え。薫君、御曹司だったか。
「運営面ではお互いノータッチのはずー。技術交流はやってるー」
と、ユリカが続ける。
「羽根グループの親企業は羽根重工って言う公共交通機関やー旅客船なんかの製造がメインだよー」
「ノースウエイブインダストリアルは軍艦や人工惑星建設が主体です」
「姫野が一般家庭向けの商品主体だから棲み分けは出来てるねー」
ユリカとアアルファが交互に教えてくれる。
「まあ、何処もグループ化してるからー、結局、三社とも何でもやってるんだけどねー」
まあ、長いこと会社やってるとなあ。一つの事業だけじゃ無理がでるだろうねぇ。
「大雑把に、[精度の姫野][技術の羽根][パワーのノースウエイブ]で通ってます」
覚えとこ。
「その二社にも[メンバーズ]って有るの?」
「有るよー。続けてくれるならいずれは行くことがあると思うよー」
なるほど。卒業したら考えよう。
あれ? 何か呆れたような目を向けられてる気がする。
「鹿乃子って…先を見据えた考え方、あんまりしないよねー…」
「刹那的?」
失礼な。明日がどうなるかわかんないのに先のこと気にしても始まんないと思ってるだけだよ。ここに来て一層そう思うようになったよ。誰かさんに振り回されてさ。
「ユリカちゃんが原因なのね」
アルファの言う通り。
「ひーどーいー」
「「あはははははははははははははははははははは」」
アルファと二人で大笑い。
「お昼までもう一度、ユリカ。一度、本気で良い?」
「良いよー」
と言う訳で、ユリカと本気で組み手。気は使わない。周りを壊しちゃう。
向かい合って礼。アルファの合図でお互いに接近。構えはどちらも取らない。
右の膝蹴り。一瞬おくれて下から左手の裏拳をすくい上げ。
止められたタイミングで右足を踏み込みながら右の突き。ユリカの蹴りを躱しつつ右の肘。
右で止められると同時に来る左の払いを避けつつ左膝蹴り。流されると同時に掌底で突かれ受け流しながら一旦距離を取る。一瞬置いて互いに踏み込みながらの突き。拳同士がぶつかる。きつっ。しびれる。が無視して反対から手刀、おくれて膝蹴り、突きを躱しつつ掌底、膝蹴りを流して更に突き、肘打ち。
互いに位置が入れ替わり時に離れ、再び接近。ユリカが私に合わせてくれているとは言え、かなりきつい。
やや強引に突きから蹴りを入れて、止められた反動を利用して肘を落としてみたけれど見事に止められた上、ぽんっと胸元に掌底が決められた。
はーと息を吐いて座り込む。手も足も痺れてるし痛いし。
「最後強引だったねー」
「痛いし痺れるし、で動けなくなった」
指摘されて素直に答えつつ、息を整える。
「でも、結構動き回らされたよー。動きが速くなってるよねー」
ユリカ、少し汗ばんでる?
「ぼく、時々動きが見えなかったよ」
とはアルファの感想。
おお。龍神のおかげで応力が上がってるっぽい。
「でもあちこち痛い。痺れも収まんない」
「神の気を巡らせるイメージと壊れた細胞を治すイメージをすると良いよー。治りが早くなるよー」
同時にかー。うーん。神気が体内を巡るのはー、と。うん。廻り出した。で、壊れた細胞を治すのか…
痛みや痺れの有る所がポカポカし出す。おお、痛みが引いていく。しびれも取れる。
「治った」
「「早っ」」
「習得するの、早過ぎです」
「上手くいかないのを笑って、龍神様に治してもらえって言うつもりだったのにー」
おい! ユリカは酷いこと考えてるな。
ああ。龍神が直してくれてたのを体が覚えてるんだ。それであっさり出来たのね。
「だってさ。残念だったね。ユリカ」
「つまんないー!」
「おい!」
「あはははははははははははははははははははは」
二人の漫才にアルファが爆笑。
つられてわたしとユリカも笑い出す。
ひとしきり笑って時刻を見るともうすぐお昼。
シャワーを浴びて着替えることにして地上へ戻る。
リビングを覗くとメグ一人。昨日見始めて直ぐ中断した歴代の少女戦士が一緒になって戦うアニメ第三作を見ている。
全員揃って大技発動中だからもう終わりみたい。
とりあえず部屋に戻ってシャワーと着替え。
お昼は何を食べようかとキッチンに向かったらユリカがダイニングに用意してた。パスタ?ソースは何?和風のキノコ?
メグとアルファもやってきた。
四人揃った所で
「「「「戴きます」」」」
サクッと戴いたら例によって[ハウスキーパー]様に後を任せる。
「みんなは何処?又お城?」
「昨日の続きだって言ってたよ」
アルファに訊ねるとその様なお答え。みんなして何やってるんだろうね。
「わたし達に降りかからないならそれで良いです」
まあ、アルファの言う通りではあるな。
「アルファ。鹿乃子。それはフラグでは?」
「「そんなことは無いよ?」」
メグの言葉にアルファとシンクロして答えたらユリカが毛玉に化けた。何がおかしいんだろう?
後半に続きます




