二月十四日 お仲間お仲間
四十五日目 四分の四です
その後、学園に来たついでと食堂で昼食を摂って聡美、ジーナと分かれる。
「思わぬ経過になっちゃったけど、任務完了だねー」
とは、メグのお言葉。
「やっぱり、法律からして知らない人が増えちゃってるねー」
「わかりにくくしてるんだから当然」
ユリカとアルファの台詞で確信。あえて放置して置いて晒し者にするんだ。なかなかに鬼畜な事を。
「ちゃんとね、始めにヒントは与えられてるはずなのよ? 学園設立だって無許可でできないでしょ? 申請したときそれとなく注意されてるはずなんだけどねぇ」
「そーそー。だいたい九割くらいはそこで気付いて軌道修正するのよねー」
「気付かず、確認もせず突っ走るからひどい目に遭う。自業自得」
メグもユリカもアルファも容赦ないな。
「「「社会人だもの」」」
まあ、異存はありませんよ。責任の大きさは未成年の比じゃないよね。
「ちゃんと一回目は執行猶予付くんだから。かなりの待遇だよ」
「前科持ちになっちゃうのは一緒だけどねー」
アルファの温情発言をユリカが即座に落としてくるよ。
「そー言えばさ、税率が百パーセントとか行ってなかった?」
「だよ。諸経費除いた残り全部持ってかれるんだよー。なかなかに悲惨ー」
ユリカ、それ悲惨じゃ済むまいに…。
「更にグループ会社だと上の会社まで巻き添えにー」
「連邦軍の諜報部が出張って調べるから言い逃れは不可」
メグ?アルファ?どんどん酷いことになってくんですが? それ、立ち直れないんじゃないですか?
「そんなお馬鹿は必要ないって言うのが連邦政府の見解だねー」
ユリカ。救いがないじゃん。
「更正してやり直せる見込みの有る企業なら、救済措置の存在に気がつくかもしれないよ」
あ。とことん鬼畜仕様って訳でもないのか。アルファ、情報ありがとう。
お昼も過ぎたし一辺、帰りたいな。
「まだどっか回る予定あるの?」
と切り出す。
「なんで?特に予定は無いけども?」
「布団を干してあるから一辺返りたい。あんまり長時間日に当てると中の綿が痛んじゃう」
メグの問いに答える。
「あ。脂分が飛んじゃうんだっけ? じゃあ、[ハウスキーパー]にお願いしとくよ」
ユリカが端末を弄る。解決しちゃいました。[ハウスキーパー]様、大概万能だな? おい!
「もう、[ハウスキーパー]様が万能過ぎて一般家庭に人間必要ないね」
思った事を口にした。
「いやいや。人間の居ない一般家庭って何よ。超不気味ー」
…
一瞬呆けた。
「その通りだね、メグ。無人なのに[ハウスキーパー]様だけが仕事してる家って。お化け屋敷?」
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
自分で言っといてなんだけど…無いわー。あはははは。
その様な馬鹿な話も交えつつ、日課の[タウンスイーパー]への声掛けもこなしつつ ぶらぶらと当てもなく歩く。
当てもなく? じっと三人を見る。
「何かな?」
やや引き攣りながらユリカが問い掛けてくる。
「何処へ向かってるの?」
「当てはありませんー。マジでー」
本当らしいのでジト目をやめる。
「結構内緒で引っ張り回してくれるからな? お前さん達。そこら辺は信用出来ない」
「ごめんねー。突発事態にどう反応するか見てるんだよー」
内緒にするなよってユリカに言ったらこの答え。結構正直だな。
「ああ。なら良し」
「「良いのかよ!」」
メグ、アルファの元受付コンビに驚かれたよ。
「いや、突発事態への対処能力。確認は必要でしょ? メンバーズのお仕事に集団戦闘があるんだし」
「ユリカちゃん!この娘の考え方、結構怖いです」
メグ? 君主制の影響がまるまる残った社会で育ってるんですよ。わたし。しかも、筆頭家臣団四家に含まれる貴族階級の家です。わたしの生家。
民主政治とは言いつつ、君主や貴族が存在してたしね。軍事的な教練が学習項目に入ってたんだよ。わたしが受けたの、上級士官用の入門編当たりだけど。
「「ああ。巫女さんって、神社の神職じゃ無くって[巫]。諜報や政策策定の方なんだ」」
メグとアルファが納得してくれた様子。でも、神社の巫女さんにしても結構位が高いと思うんだけど…あ。こっちの巫女さんは神主さん達の補佐的な職業だった。
「もうちょっとの間続くねー」
「まだ続くのかよ!」
暢気なユリカの台詞に怒鳴り返しちゃったよ。
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
笑い事じゃ無いんだよ! 三人とも。
まあ、結局学園周辺に固まっている学生相手のお店を冷やかしつつ帰宅する事になった訳で。
居ないと思ってた制服姿の学園生徒が結構歩いてるのには吃驚した。
「二年生からはー。個人的な自由研究とかも出来るからねー。取り組んでる子達じゃ無いかなー?」
「だねー、一年生はほぼいないでしょ?」
ユリカとメグの解説に、改めて制服を見れば、確かに二年生、三年生だね。セーラーカラーのラインが二本か三本だ。
「あれ? あの子、グリーンの制服って何?」
数人の、制服の形はわたし達のと同じだけど色違い。やや濃いめのグリーンを着ている娘達が居る。
「あれは商業科の娘達だよ」
「芸術科が茶色でー、科学科が青だったかな」
アルファとメグが教えてくれる。
「初めて見たよ。あの色も綺麗だね」
「科ごとに校舎が別だからねー。他の校舎と間隔十キロ位離れてるから普段は見かけないねー」
ああ。其れだけ離れてると見かけないね。ユリカ。
「後、工業科のグレーと、調理科のオレンジ、農産科の藍、体育科の紫に医学科の白があるね」
結構沢山の専門科が有るんだね。よく色まで覚えてるね。アルファ。
「一般科の校舎周辺ってアクセ類のお店が充実してるからそれを見に来てるんじゃ無いかなー。専門科の周辺、専門店が集中するからそっちのお店が少なめなんだよ」
なるほど。メグの説明で納得出来た。それで離れた商店街に来てるんだね。
「他の科にもメンバーズクラブって有るんでしょ?」
「無いー」
ちょっと疑問に思って訊いたらこれだよ。
「なんで?」
「専門科だとー、おべんきょーに付いて行けなくなっちゃうからー」
あ、結構欠席するもんなー。専門教科じゃ置いてかれるかー。わたしがそっち希望してたらどうなってたのかね。
「鹿乃子が専門科選択したら基礎訓練だけやってもらってたかなー。メンバーズへは勧誘しなかったよー」
了解だよ、ユリカ。 いや、新たに疑問。
「基礎訓練って何?」
「週に一回訓練時間が有るのー。クラブ時間なんだけどねー。月から金の何処でも良いんだけど一時間。特異能力者登録されてる人は強制参加ー」
「能力に慣れる事と持ってる事の意味を学習してもらうんだよ。自分で管理出来るようになる為に」
ユリカに続いてメグの補足。そうか。そのためにわざわざ専門の学校作ってるんだった。
「思うんだけど…」
「うん?」
「学園の運営。相当なコスト掛かってるよね?」
とユリカに確認。
「たいしたことないんじゃ無いかなー? 純益の一パーセントも掛かってないとか聞いたよー」
「え!?」
ちょっと待て? 売り上げじゃ無くて純利益のか? それは無いだろ? 国家予算の何パーセントとかのレベルじゃ無いのか?
「金額はそうだけどね? 姫野グループ自体の年商が凄いからねー。天の川銀河連邦のほとんどの国に販路が有って、連邦に参加してる国家の数って十桁超えてるよ?」
ごめん、ユリカ。聞こえた言葉が飲み込めない。まだ世界の規模が惑星単位なの。わたし。
「あはは。まあゆっくり消化して? あと、市場が其れだけ有って、いろんな所で使われてるエネルギーパックの供給メーカーって姫野だけなのよー」
なんですと? 独占? 独占商品なのか? 何でもかんでもエネルギー源として利用してるのに?
「製造方法も材料も全て無償公開してるし、生産は出来るはずなんだけどねー。何故か販売に至るメーカーが出てこないんだなー。これが」
不思議だよねー。と顔を見合わせて首を傾げるユリカとメグ。
「原料コストと生産コストが掛かりすぎるのが原因だよ。羽根とノースウエイブが過去に生産した事が有るけど、販売価格の十倍コストが掛かったって言ってたもの」
それは、姫野の販売価格が異常に安いって事かい? アルファ。
「販売価格は適正。でなきゃ政府から指導が来る。姫野の生産コストが異常なの」
「あー。そっか。確か価格の十パーセントしか掛かってないって言ってたね。さつきちゃん」
後は流通コストとか中間マージンとかが引かれるだけって事かい? メグ
「いやいや。卸価格の。卸した先のコストは販売価格に乗ってるはずよ」
それ、おかしい。何故百倍もコスト差が出ちゃうのさ。
「詳しい事は知らなーい。世間様には儲けが十パーセントだって通してるし、連邦政府への納税は正しい金額でしてるんだから良いんじゃないー?」
「えー??」
メグ? 良いのか? ホントに?
「カミーラかユリアに訊いて? ぼくたちじゃ詳しいとこは判んない」
そうするよ。アルファ。すっごくもやっとする。
で、あちこち冷やかし捲ったあげく帰宅。 妙につやつやしたユリアが居たのでもやもやを解消するべく質問してみた。
「先ず、[エネルギーパック]のコストについては単純にプラントの規模と従業員数と原料費の問題」
?
「羽根とノースウエイブが試作したときの装置の大きさじゃ元が取れなくて、その五十倍でぎりぎり儲けが出るかなってとこ。姫野は更にその千倍の規模で稼働させてるんで余裕で儲けが出てる」
??
「ここじゃないけど、工業惑星でオーストラリア大陸規模の工場が稼働してるのよ」
想像が追いつきませんが…
「で、更に従業員がね? 姫野って工場ラインに人をほとんど配置してないのよ。単純作業が好きだって人なら良いんだけど、たいていの人はすぐ飽きちゃうからね。だから人件費がほぼ掛かりません」
自動化で対応できちゃってるって事?
「そうね。最後に原料だけど、ゴミの再処理工程で出来ちゃうんで実質只です」
え? 訳わからんよ?
「元々はゴミ処理後に出てくる処理に手間の掛かる危険な廃棄物だったんだけどね? エネルギーの塊みたいなものだから取り出したら使えないかなって色々やったら出来ちゃった的な」
出来ちゃったって、えー?
「まあ、ゴミ処理っても惑星サイズ規模の処理施設だからこれが残ってるらしいんだけどね。普通は熱になって放出されちゃうらしいよ? 姫野のゴミ処理惑星特有の廃棄物だったし」
残ってるものは何かに使おうって事?
「そう。姫野は各分野の開発にはコストかけてるよ? たぶん他社の百倍以上。利益の三分の一がそれで消えるわね」
それ、もう国家予算規模?
「大国の国家予算を超えてるんじゃない? それに、パックの販売価格は連邦政府と相談して決めてる。平均的なエネルギー販売価格、電気料金やガス料金、汎用型エネルギーとかね。それを元にしてるから数年毎の見直しが有って、たいていどんどん値上がりしてくわね」
それ、どんどん儲けが増えてるよね?
「うん。更にゴミの回収で儲けて回収したゴミを処理すれば工業材料が手に入って、加えておまけ付きなんだから笑いが止まらない状態かな」
わっ。悪い顔。
「でも、初期投資はすさまじく掛かってるよ。連邦政府の予算数十年分掛けてるはず」
「それが出せる企業体って事なのか。そりゃ力が強い訳だわ」
「おかげさまで」
にんまりと笑うユリア。ちょっと、予測してたのと規模の乖離が激しすぎて考えがまとまんない。
なんだか超危険な企業とつながりが出来ちゃった気がする。
「ちなみに、法律、規制に関しては真っ白だよ。さすがに諜報部だけはグレーゾーンだけど。黒いとこは有りません」
「言い切れるんだ」
「もちろん」
……
あー。あれだ…連邦政府は隠れ蓑…
何か、手遅れな気がする…
「ちょーっと違うかな」
ちょーっとだけですか?
「連邦政府に口は出せないよ? この会社設立した集団の一部が政治の方向がぶれないように監視業務に就いてるだけ。姫野グループは関与していません。役員だから報酬は支払うけどスポンサーって訳じゃないしね」
「ユリア」
「はい?」
「そこまで話しちゃって平気?」
「鹿乃子なら良いんじゃないかな?」
肩にずっしり何かが乗った気がする。とってもつらい。
「今すぐ関わる訳じゃ無し。気にすんな?」
「あのな…」
「お仲間お仲間」×八人。
いつの間にか全員集合でしたよ。 一人数が合わない? ユリカなら床で毛玉になってる。やれやれ…
なんだかいろんな爆弾で集中攻撃された感じ。地味にしんどい。
色々詰め込まれて頭が重い。夕飯が済んだ所で自室に引っ込む。
大きな企業体だとは思っていたけど規模が桁違いだった。違法行為は無いって言い切ったからそこは安心しよう。
後は技術的な問題? なんだかお金掛ければどうにかなるレベルじゃない気がする。
まあ、今訊いても理解出来ないから教えてくれるまで待てば良いか。タイミングを見てくれるんじゃ無いかな? …ユリカは判んないけど
色々考えてたら眠気が酷い。頭使いすぎたかな? 今日は部屋のお風呂で済ませよう。
みんなと入る時と違った安らぎ感。一人でのんびりと。たまにはこの感じも必要かも。
…
あ! 寝落ちしてた。やばいやばい。寝てるんじゃ無くって意識が飛んでる所謂気絶。溺れる前に上がって寝よう。
慌てて飛び出し就寝の支度。
今日訊いた事は理解出来ないから覚えておくだけにしよう。ユリユリもそこまで求めてはいないみたいだし。
明日は久しぶりに身体を動かしたいな。起きたらユリカに相談しよう。
それでは、おやすみなさい。
四十六日目に続きます。




