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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
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二月十四日 ノックを忘れずに

四十五日目 四分の三です。

 出掛けるのにわざわざ制服着用の理由は分かった。でさ、二人はなんで制服なの?


「わたし達、ずっと能力を(おさ)える訓練してきてたんだけどね」


 と、聡美(さとみ)が話し出した。


鹿乃子(かのこ)ちゃん、高等部から入学してまだ一月半にもならないのに大活躍してるでしょ? それ見てて、今のまま訓練続けて良いのかなって…」


「わたし達も、出来る事くらいするべきじゃなって思い始めたら色々考え過ぎちゃって…」


 と、ルジーナも続ける。


美姫(みき)先生に相談しようかなって… 今日学園お休みでゆっくりお話し出来そうだったから」


 ごめんね! わたし流されてるだけなんだよ。立派な考え持ってる訳じゃ無いんだ! ユリカに引っ張り回されてるだけなの。


「「それ、見たまんまじゃん」」


「まんまなの。なんなら君らも一緒に引っ張り回されてみるかい? 良い迷惑だよ」


「鹿乃子ー? それ(ひど)い評価だよー?」


 (あき)れたらしい声を上げる二人に誘いを掛けてみたらユリカが抗議してきたよ。


「事実じゃん」


 言い切った。


「えー?」


「「「あはははははははははははははははははははは」」」


 悲鳴を上げるユリカ。メグ、アルファと一緒に笑っちゃったよ。


「それじゃ、学園まで一緒に行こうか? また変なのに付き(まと)われるのも嫌だろうから」


「「有り難う」」


 そう提案すればほっとした様子で(うなづ)いた。


「あの連中、三人だけ?」


「いやー?二十人くらいいたって聞いたよー? まあ、違法性が確定したから警備の人が抑えてくれるでしょー」


「なら良し」


 確認のため聞いてみたらユリカのお答えが。さっさと全員捕まえてね。


「時間掛かるかと思ってたんだけどあっさり終わっちゃった。聡美とジーナのおかげかな」


「お役に立てたなら何よりよ」


 メグの言葉に軽く返すジーナ。すっかり落ち着いたらしいね。


「でも、あんな難しい事知ってるなんて、さすが飛び級で大学まで卒業した経歴持ちだね。メグ」


 聡美が感心したようにメグを()める。


「昨夜頑張って暗記しましたー」


「あっさりバラすなよ! せっかく感心してくれてるのに!」


「「あはははははははははははははははははははは」」


 まったく。褒めて良いんだかけなすべきなのか。二人は笑ってるから良いのかね。


 二人を加えてみんなで学園に向かう事に。


「でも、そんな法律が有ると自由に仕事が選べないんだよね? 強引な法律なのはその方が違法な事をする人がでにくいのを(ねら)ってるんだろうけどさ」


 そうユリカに()いてみる。


「そうでも無いよ? 本人が希望すれば限定免許が発行されるから。それがあれば何処でも行けるよ」


「でも、わざわざ限定免許取ってまで[姫野(ひめの)]や[羽根(はね)]や[ノースウエイブ]以外に就職したい人っている?」


 ユリカの答えに聡美が待ったを掛ける。


「羽根?ノースウエイブ?何?それ」


「「え? 鹿乃子ちゃん? 知らないの?」」


 ジーナと聡美が驚いている。ごめんよ。知らないんだな。これが。


「さっき言った、最初に免許受けた企業五社のウチの三社だよ。今、最初の五社の中で残ってるのはその三社だけー」


 メグが教えてくれた。有り難う。


「連邦内でトップテンに名を連ねる企業だよ? 鹿乃子ちゃん。此所(ここ)の学園にいるだけでそのうちの一社に就職出来る切符を手にしてるんだよ。手放す訳無いじゃん」


「成績が酷くなければだけどね」


「「それね」」


 ジーナが力強く宣言してアルファに落とされる。肩を落とすジーナと聡美。


「二人とも、成績酷いの?」


 不思議に思って訊いてみた。


「「ソンナコトナイヨー」」


 何故(なぜ)にカタカナ? 数字が憎いと(つぶや)くジーナと反応式が、化学反応式さえ無くなればとうめく聡美。


「時間ある時一緒に勉強するかい?」


 溜息(ためいき)をはきつつそう提案してみる。


「「お願いします」」


 即座に頭を下げてきた。二人ともわたしの成績知らないよね?まだ中間試験前だし。たいしたことないぞ?


「中等部上がったらメグに教わる予定だったのよ」


 ジーナが何か語り出した?


「なのに高等部に飛び級しましたとかさ! 酷いよね?」


 聡美もかい。自分の力でとは思わなかったのかな? 二人とも?


「「どこから手を付けたら良いのかすら判りません」」


「はいはい。わたしの覚えてる内容と若干違うから()り合わせ兼ねて一緒にやろうか? 中等部の分から。」


「「ありがとうございます!」」


「面倒見が良いねー。鹿乃子って」


 メグが呆れてる。ユリカはさっきからずーっと爆笑中。ふと、アルファと目が合った。


「先生役 頼めるかい?」


「任せて」


 よし、天才を一人確保出来た。これで間違って覚えちゃう心配は無くなったね。


「ぼく、文系はだめだからそっちは(あきら)めて?」


「わたしも二人も駄目なのは理数系だから充分だよ? わたしが後困るのは歴史だけだし、そっちは丸暗記すれば良いよね」


「「記憶力がいい人はこれだから」」


 何か不満があるようです。記憶力は訓練すればなんとか()るよ。口、とんがらせてないで頑張れ。


「「見捨てないでよー」」


 泣きつくなよ、全く。(じゃ)れてる間に学園に着いたぞ?ほら。


 さっき、(すき)を見てメグがこそっと教えてくれたんだけど、学園の生徒って、人格に大きな問題が無ければ成績が酷い事になってても全員就職OKなんだそうですよ? 姫野の各企業。内緒(ないしょ)だよって言ってたけど。


 学園生活をずっと見てるんだから就職時の試験なんて対外的なポーズであって、本当なら必要ないんだって。


 なんなら性格は矯正(きょうせい)も出来るそうです。へー。そうなんだ。って。怖いよ。さらっと流しそうになっちゃったよ。


 正門を抜けて校舎へ向かう。そりゃそうと、サヤカせんせーいるのかね?


「保健室で待ってくれてるはず。朝連絡して確認したから」


 ジーナが連絡済みなのね。まあいきなり行っても居ないかもしれないんだから確認位するか。


 と言う訳で、其の儘(そのまま)保健室へ。


 しかし、土日はクラブ活動もお休みだから登校してるのって自主的に練習やら勉強やら取り組んでる人だけだよね。


 ほとんど人が居ない校舎ってなんか新鮮。


「サヤカちゃん今日(こんにち)はー」


 保健室に着くなり、ユリカが声を掛けながらではあるけどいきなりドアを開けて突撃した。


「ノック位してから入って来なさいよ」


 ベチッとサヤカに怒られて頭を(たた)かれている。なんでいきなり突撃しちゃうかな? こいつは。


「お約束の()り取り?」


()らないよ! そんなお約束」


 頭を押さえて涙目で首を傾げながら答えるユリカ。と、一言で片付けるサヤカ。


「「「「「あはははははははははははははははははははは」」」」」


 残りの五人が爆笑。


 聡美とジーナの緊張が良い感じで解けた。これが狙いか。身体張ってるなぁ。


「さて、ルジーナと聡美の悩み相談だったね。君らの言い分から聞きましょうか?」


 どうぞ、とソファを勧められて二人が掛ける。対面にサヤカが座ってわたし達おまけ組は周辺に適当に。


 話し始めた内容は先ほど訊いたとおり、これまでは能力の無い人と同じ生活を送りたくて能力自体を抑え、閉じ込める方向で努力していたけど、わたしが現れて少し考え方に揺らぎが生じたと。せっかく持っている能力なら生活の中で活かせる方が良いのでは無いかと考えるようになってきたとの事で。


「それじゃ、わたしの意見を言う前に、お話をしましょうか。 在る女の子のお話でね」


    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 昔、科学者と技術者の夫婦の元に女の子が生まれました。すくすくと成長した女の子はしかし、在る日事故に遭って命を落としかけました。手足は壊れ、お腹の一部も頭の一部も壊れかけてしまった女の子。其の儘では、確実に死を迎える女の子のために両親は、過去の大戦争の時に使われて、当時忘れ去られようとしていた技術を使って、人工の身体を作り上げ、女の子の命をつなぎ止めました。

看病とリハビリのかいあって、元気を取り戻した女の子は、今度はその身体に秘められた特別な力を引き出す訓練に(はげ)み、自由に使う事が出来るようになりました。

両親に(すす)められた女の子は、その力と、持ち前の正義感で、人に隠れてずるをしたり、お金や権力で自分勝手な事をする人たちを()らしめるお仕事を手伝うようになりました。

でも、お仕事を続ける内に、いけない事をしていた人たちだけでは無く、助けたはずの人たちからも、その特別な力に対して良くない事を言われるようになりました。

ある人は化け物と呼び、ある人は人間じゃ無いと言い、ある人は悪魔と叫びました。

沢山のそんな声を聞いた女の子は、とうとう、悲しくて、悔しくて、怖くて、(さみ)しくて動けなくなってしまいました。

そんな女の子の周りに、女の子のお仕事で笑顔を取り戻した人たちが集まってきて言いました。

あなたを怖がる人も居るけれど、その何倍もあなたの優しさを知っている人が居るよ。

あなたを嫌う人も居るけれど、あなたを大好きになった人がその何倍も居るよ。

あなたを悪魔と呼んだ人が居るけれど、あなたを大切に思っている人を大勢知っているよ。

あなたの事を自分勝手な偽善者(ぎぜんしゃ)と呼んだ人は、みんな自分の欲のための我が侭(わがまま)を言っていた人だよ。あなたの我が侭は他人を思う心から出た我が侭だから、それは(ほこ)って良いんだよ。

何より此所(ここ)にいるみんなは、あなたの事が大好きだよ。

女の子は元気になりました。でも、これまでのように、みんなの笑顔のために頑張るのは止めにしました。

それからは、みんなの笑顔を見たい、と言う、女の子自身のために働く事にしたのです。

そして、自分勝手な我が侭で女の子を非難する言葉は、もう女の子を苦しめる事は無くなったのです。


    ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「と言うお話。どう感じた?」


 そう質問したサヤカに対して、


「ユリカ、頑張ったんだねえって」


 と、答えるジーナ。


「何故ユリカと特定するのかな?ルジーナ」


 (あせ)りながら対応するサヤカ。


「ユリカの我が侭ってみんなへの愛情だよねって思うの」


 聡美が追撃を入れる。


「だから、なんでユリカの事になっちゃうのかな?聡美」


 なんとかごまかせないかと悪あがきをするサヤカ。


「「該当者がユリカしか思いつかないから」」


 だよね? わたしでさえそう思ったんだから。付き合い長い二人ならそうなると思う。


「サーヤーカー。この、おばかー!」


「「「あはははははははははははははははははははは」」」


 話し終えたサヤカの質問に答えたジーナと聡美の返事にユリカがキレた。笑っちゃ悪いけど笑える。


「いやいや。わたしは他人の為にって考えで選択すると後できついよって感じて欲しくてね?」


 まだごまかそうと必死のサヤカ。


「なんであたしって特定出来ちゃう話し方しちゃうのよー。他にもしてないでしょーねー?この話ー」


「あー、ここ数日このての悩み相談多くてね? 特に一年E組の子…」


 ついに誤魔化(ごまか)し切れなくなったかな?


「よーしサヤカー。訓練室に行こうかー。ゆっくり話をしようよー。主に(こぶし)でー」


「「「「「あはははははははははははははははははははは」」」」ユリカ怖いよー」


 ユリカとサヤカ以外は爆笑中。サヤカの話し下手が発覚した瞬間だね。


 やっとユリカが収まってからジーナが質問を発する。


「サヤカ先生、やらずに後悔(こうかい)するよりはやって後悔する方がーって言わないんですね」


 よく聞くね。それ、(あん)に悩むくらいならやれって言ってるんだよね。


「一緒でしょ? やって後悔もやらずに後悔もどっちも悔やんでるじゃん。やっとけば良かったーになるかやらなきゃ良かったーになるか。ほら、どっちも一緒(いっしょ)じゃん」


 激しく同意。わたしもそう思う。


「そういう考え方もあるんですねー。周りの大人、誰に訊いてもやって後悔の方が良いって言うんですよー」


 結構周りに相談してたんだね。一人で思い詰めるよりは良いのかもしれないけれど、なんだか余計混乱してるみたいなんだけど? それに、後悔するのって本人だけなんだよ? わたし、突き放してるとしか思えない。


「やるだけやって駄目だった。って吹っ切れる時は良いんだよ? それで。でもやるんじゃ無かったーになったらそれは駄目でしょ? 逆に言ったら、やれば何か違ったかもね。で済むならそれで良い。吹っ切れるのか落ち込んじゃうのかで正反対になっちゃうんだから。 わたしはね、どっちでも良いよ。自分が今やりたいようにしな。って言う。で、失敗して落ち込んだら愚痴(ぐち)を聞くぐらい何時(いつ)でも手伝うよ? 勧めた責任があるもの」


 しばらく(またた)きを繰り返してサヤカを見つめた後、ふにゃっと力が抜けて笑顔になるジーナと聡美。


「「ありがとうございます。」失敗したら愚痴に付き合って下さいね?」


 そう、二人で告げた。決心出来たみたいだね。


「何時でも良いよ? 但し、事前予約とドアを開ける前にはノックを忘れずにね?」


「しまったー。そう来るかー」


 ユリカが頭を抱える。


「「「「「「「あはははははははははははははははははははは」」」」」」」


 結局全員で大爆笑になった。

四分の四に続きます。

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