二月十四日 マニュアル
四十五日目 多分四分の一 です
星暦二千百十一年二月十四日 土曜日
お早うございます。
全身汗でベタベタですが。
ミュウ。ユリカ。二人とも体温が高いよ。
未だに両方の腕に抱き付かれて身動きが取れないの。
二人とも絶対眠ったフリ。
「二人とも起きろー。朝だぞー」
自由になる手首から先で二人をくすぐる。
「「あはははははははははははははははははははは」」
「お早う」
「「お早う」ー」
「シャワー浴びないと酷い事になってるぞ」
「「ホントだ」ー」
シャワー浴びて着替えてこいと部屋から追い出し、わたしもシャワーで汗を流す。
布団を干すにはまだ早いよな。夜露で湿った地面の湿気がまだ上がってくる時間だし。
先ずは朝食だ。と言う訳でキッチンへ。何を食べようか。
「あら、お早う。昨夜はよく眠れた?」
ユリアがいた。
「お早う。ユリカとミュウが暑くてジャングルで寝てるみたいだった」
「あはははははははははははははははははははは」
「朝食何作る予定?」
冗談で流したら軽ーく笑い飛ばしてくれたんで話題を変える。
「パンと目玉焼きにサラダとソーセージ。後コーヒー」
「わたしの分も追加で」
「はいはーい」
手間が省けて助かった。あれ?今四セット設定しなかったか?
「「お早う」ー」
「お早う。私と同じ朝食で良いでしょ?」
二人が来たのか。挨拶ついでにそう宣うユリア。
「「よろしく」ー」
反射で答えてるだろう?ミュウ。ユリカ。
「「食べられれば何でも良い」ー」
「よし。じゃあ二人は満貫全席で」
「「ごめんなさい」」
「あはははははははははははははははははははは」
ユリアの爆笑と共に調理完了のチャイムが鳴った。
自分の分を夫々持ってダイニングへと移動。
「「「「戴きます」」」」
「あれ、パンが美味しい」
「サリーに教わってから弄ってみた」
一口囓って思わず零したらユリアのお答え。パンの出来上がり具合まで調整出来るのかい。
「「「ユリカ」」」
「ごめんなさいってー。梱包材に紛れてたみたいで気が付かなかったんだもんー」
改めてジト目を送ったら謝ってきたけど、まあ良いか。
「普通、設置した業者さんが手渡ししてくれると思うんだけど?」
「……」
「あぁ!」
ユリアの言葉にしばし考えた後ぽんと手を打って声を上げるユリカ。
バタバターっとキッチンに走って行って直ぐ戻ってくる。
「色々纏めて引き出しに放り込んでたよー」
マニュアルの束らしい物を持っている。
「お・ば・か」
「まるっと忘れてたー。あはははははははははははは」
ユリアにデコピンされつつ爆笑するユリカ。
「「やれやれ」」
ミュウと二人顔を見合わせ首を振る。もちろん左右に。
後でじっくり読ませてもらおう。
今日一日分の予定が出来たな。
「どっか出掛けようよ。鹿乃子」
「「あはははははははははははははははははははは」」
マニュアルを読んで一日過ごそうとしたらだめらしい。ユリアに否定されるし、ユリカとミュウに爆笑されるし。
「えー?」
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
わたしの抗議の声は爆笑で無視された。酷い!
食事を終えて後片付けも終了。 ユリカが引っ張り出してきたマニュアルを掴んでリビングに移動する。
「ホントに読むんだ?」
ユリアに呆れられたが、いいじゃないかよー。マニュアルって結構好きなんだ。誤字・脱字・誤記を探すのが特に。
「すっごく性格悪いよ。鹿乃子」
「「あはははははははははははははははははははは」」
ユリアの指摘に爆笑するユリカとミュウ。君らもなにげに付き合い良いね。
「わたしも好きだよ。マニュアル」
そう言いつつマニュアルの山から一冊抜き出すミュウ。
「読んだ事が無いねー」
「「「だろうね」」」
「あはははははははははははははははははははは。酷いー」
ユリカの返事はお約束? 三人の突っ込みが一つになった。
「ねえ、ユリカ」
「はいー?」
マニュアルの山を崩しながらユリアが声を掛ける。
「自動調理器無くても全然問題ないくらいいろんな調理器具揃ってるね」
「頑張ってそろえてみたー。わたしは使い方すら知らないけどねー」
「「「だめじゃん」」」
「あはははははははははははははははははははは。確かにー」
納得してないで努力ぐらいせい。ユリカ!
「普通に調理すれば美味しい物作るのにねえ。ユリカって」
「「そうなの?」」
ユリアの言葉に吃驚のわたしとミュウ
「包丁ー、まな板ー、コンロにお鍋ー、があれば大抵はー?」
ユリカ、お料理得意なの?
「「納得いかない!」」
「いや、何年生きてきたと思ってるのよ。一昨日バラしたよね? ミュウは知ってるよね?」
「「見た目的に!」」
ユリアの突っ込みにもユニゾンで反応出来ました。
「あはははははははははははははははははははは」
「そう言われちゃうとねぇ」
ユリアもこっちに傾いたし。ミュウ。息ぴったりだったね。
「一心同体だった」
「「なんか違う?」ー?」
最後はユリユリに突っ込まれてしまった。無念。
「お早う。あら、マニュアル見つかったのね」
「「「「サリーお早う」」」ー」
「業者さんから受け取ってー 仕舞い込んでー 忘れてたー」
「やっぱりねぇ。プリントアウト、しばらく待って正解だったかな」
予想的中されたようで。紙が無駄にならなくて良かったよ。
「ミュウちゃん。わたしこの後マスターシステム弄りに行くけどあなたどうする?」
「あ。行きます。見学したい」
「お手伝いでも良いんだけど?」
「是非」
サリーとミュウはお城行き。と。
「何か気になる事でもあった?」
「んー。ちょっとしつこい不正アクセスが増えたみたいでね」
「私も行こっか?」
「逆探知か。お願いしちゃおうかな」
「了解」
ユリアもお城。
これはひょっとして…ミュラ姫、強制参加?
「あ。ナイス。それ採用だよ。鹿乃子」
ごめんなさい姫。ユリアにばれた。採用された。
そして、朝食を摂りに出てきたミュラ姫を捕まえたサリーとユリアは姫野グループ本社ビルへと出掛けていった。
ほんっとにごめんね。ミュラ姫。朝ご飯食べる暇が無くなって。
「言葉だけでずーっとマニュアル読みふけってるよねー。鹿乃子ー。しかも連行された事じゃなくってー 朝食抜きな件にしか謝ってないしー」
「わたしに出来る事なんて無いしな。ホントに悪いとは思ってるんだよ? 思うだけだけど」
「あはははははははははははははははははははは。酷い奴ー。」
「おはよー。楽しそうね」
ユリカと戯れていたらさつきがやってきた。
「「おはよ」ー。姫がユリアとサリーちゃんに拉致られたんでー犯人を揶揄ってたー」
「酷い言い草だな。おい」
「早いね! もうお城に行ったの? 勤勉だなーサリーちゃんは」
「さつきが遅いんじゃんー。もう八時過ぎてるよー?」
「…普通だよね? 土曜日だよ!」
「「遅いと思う」ー」
「えぇー??」
「「あはははははははははははははははははははは」」
さつき。いくら土曜日だって言っても、朝ご飯八時過ぎ?
「えーと、NINJAコンビと元受付コンビは?」
さつきの後ろを指差す。
「え? あら! お早う」
「「「「お早う」」ございます」」
四人が首を傾げたまま返事を返す。 まあ、何を話していたか判んないだろうしな。
「鹿乃子ちゃん達、朝食は?」
「わたしとユリカは済んだ。さつきはまだ」
メグの問い掛けに答える。
「さつき、何か怒られてた?」
「土曜日とは言ってもこの時間に朝食は遅いんじゃ無いかーって!」
アルファの心配にさつきが自分で答える。
「昨夜のお話が衝撃過ぎて眠れなかったんですよ。ちょっと寝坊しちゃいましたね」
「魘れた」
悪夢に魘されたって事かい? ルミ。それは悪い事をした。
「夜する話じゃ無かったね。ごめんなさい」
「いえ! 私が振ったお話ですから悪いのは私です。大変な事思い出させてしまってごめんなさい」
「かおり。真面目すぎ」
ルミの言うとおりだ。気にしすぎだよ。かおり。
「わたし、本気で痛みを無視出来るようになるための訓練ぐらいにしか思ってないんだけど?」
手にしてたマニュアルを一度置いて、かおりの側に立って軽く頭を撫でながら告げる。本音なんだがな。
「有り難うございます」
ちょっと頬を赤く染めながら俯いた。大丈夫そうかな。
「かおり。ご飯」
「あ。ごめんなさい。遅くなっちゃったし、急いで行きましょうか」
ルミが話を変えてくれた。
「えー?そんなに遅いかな。わたし休日いつもこんな感じだけど」
「さつきちゃん。ご飯は毎日なるべく同じ時刻にした方が良いと思うよー?」
話を蒸し返されたさつきがぼやくのをメグがたしなめる。
「ご飯食べて来る」
メグの後を追いながら手を振ってくるアルファに手を振り替えしてお見送り。
そしてわたしは、さっきまで座っていた椅子に座り直してマニュアルに手を伸ばす。
四分の二に続きます




