二月十三日 痛い痛い
四十四日目 四分の三です。
やや短めです。
次に発展技を練習するとの事。
「それじゃあね、始めは…」
細長く引っ張り伸ばして貫通力を上げる。直径一センチ、長さ五十センチくらいに変形させて飛ばしてみる。
的に突き刺さるように一点に炎が集中する。なかなか良い感じ。
「あっさり成功させるなー。じゃあ…」
今度は、今の状態から全長も一センチくらいまで縮めろと。こんな感じで、発射。
圧縮されているせいか、パンとはじけるように炎が上がる。
「ふつーに出来てるねー。それじゃ次は…」
細長いのを複数作って束ねる。んじゃ五本ほど束ねて… どうだ?
おお。派手! 盛大に炎が。 まあ、炎が上がるだけで的がどうこう変化はないんですけどね。元の火力が弱いしな。
「ユリアせんせー。全部一発で出来ちゃうからつまんないー」
「ユリカはな。…鹿乃子。アローを連続で放つ事は出来そう?」
アロー?
「最初の細長い奴。次の短いのがブリット、最後のがランスって呼んでるよ」
了解。アローを連発かー。どうイメージすれば簡単だろうか?
ふと、昨日の研究所に転がして有った大型の武器を思い出した。飛行機やヘリに乗っける機関銃とか言ってたな。銃身が沢山付いてて回転しながら順番に弾込して発射、空になったケースを排出。また弾込する。とか。
何となく、イメージしやすそう。
まず右手を前に向けて、掌の右横で良いかな?ボールを作る。掌、右下あたりを中心に時計回りに巡らせながらアローに変形させていって真下に来た辺りで完成。掌の前に持って来て発射。
これを順番に数を増やして繋げて行けば…
「あはははははははははははははははははははは」
「速。え? 速くない? 秒当たり幾つ飛んでる?」
「毎秒、三十本飛んでますよ。ユリアちゃん」
「毎秒?毎分の間違い…な訳ないわね。見る限り繋がって見えるもんね」
「鹿乃子ー。そろそろストップー」
あれ? 速かった? ユリカの馬鹿笑いも、ユリアの戸惑い声も、かおりの呆れ声も一応聞こえてたけど。
的がえらい事になってるな。加熱しちゃって真っ赤っか。陽炎でゆがんで見えてるし。
「今の様子じゃブリットもランスも出来そうだよね?」
「工程が増えるだけだしね。最もランスは纏める本数分の一になるけどな」
掌の下九十度位置でランスだから左横まで移動すればブリットに圧縮する余裕が出来るし、ランスはアローを何本か纏めるだけ。一秒間ぐらい撃ってみた。問題ない。
ユリアと確かめながら話してたらさつきがやってきた。
残り二個有る無事な的の、一個に向かって右手を差し出すと 掌の周りにブリットくらいの光るプラズマの球を作ってわたしがやったように回転させながら半分くらいまで圧縮しつつ指先に移動してから発射し続ける。
「楽だ! これ楽ちんだよ鹿乃子ちゃん。今まで発射しちゃうまで次の弾準備出来ないから圧縮時間が厳しかったんだけど!周りに空間があるんだからそこでやれば良いんだよね!画期的だよ!!」
あはははははと笑いながら撃ちまくってる。大丈夫かー?
「さつきみたいな指先は無理だけど、鹿乃子のまねなら出来た。楽しい!」
いつの間に来た? ルミ。珍しく饒舌? 嬉々として残りの的に撃ち放ってるな。
かおり。どうした? 何か言いたそうじゃん?
その後、代わる代わる三つの的に向かって射撃大会が開催されました。
ミュウとアルファも出来るんだね。毎秒一発が限界だって言ってたけど。
ミュラ姫も毎秒五発くらい撃ててた。
ユリカはな。もうビームだったよ。数えるの嫌になったから数えてません。
流石にサリーは参加してなかったよ。
「私はレーザーとビームの発射装置が付いてるからね。狙えば当たるし、似たようなことはできるけど効率悪いし」
そうですか…。それ、曲がったりしませんよね?
…笑顔が怖いです。
で、其れだけやればいくら頑丈とは言え的が全部壊れましてな。
壁もかなーり拙い事になってた。
「楽しかったからわたしが直しとく!」
さつき。有り難う。全部支払いしてくれるそうです。姫野グループが。
口座の残高減らしたいんだがな?
しかし、戦闘訓練だよな? 楽しくって良いのか?
「特異能力の訓練ですよー。異議は認めないー」
「目で見てわかりやすい方が訓練としては効率が良いんだよ。異議は認めない」
超能力の訓練してました。的当て訓練なのは目で見て修正するとこが判りやすくて効率的だからです。で良いのか?ユリユリ?
全員に頷かれたよ。確かに見えるから威力の調整も制御もわかりやすいんだけどね。絵面がな?
「あきらめて?」×十一人
「さて、閉門時間いっぱいだし、帰りましょうか」
ミュラ姫の一言で帰り支度開始。着替えてみんなで日課をこなしつつ帰宅する。
アルファはメグのシッポにぶら下がり、ミュウは私と今日はミュラ姫で引っ張る。
アルファがぐるんぐるんするのを見て、ミュラ姫がちょくちょく鼻を押さえて立ち止まるんで、合わせるのが結構大変だったよ。
ミュラ姫? 何か溢れちゃってなかった? 手にした白いハンカチが赤く見えたのって気のせい?
結構遅い時間なんで、アルファがそのままキッチンへぱたぱたと走って行く。
夕飯当番、アルファらしいよ。
メニューはレバニラ炒め? アサリと小松菜と金時豆の炒め物? 牡蛎のクリームシチュー?
もしかして貧血予防食品いろいろ? ミュラ姫、涙があふれておりますが。 よかったね。心配してもらえて。
食事が終わっていったん自室に引っ込む。今日は登校したので課題があるのだよ。
課題をやっつけたらリビングに移動。
ユリユリとNINJAな二人とさつきがいた。
「課題終わったー?」
「うん。みんなは?」
「ここに居る面子は終わってるねー」
と、ユリカとやりとりしつつソファに座る。
「鹿ノ子ちゃん。今日怪我したとき熱くなかったんですか? 何か、平然と自分の腕、見てましたけど…」
かおりが横から服の裾をちょいちょいと引きながら訊いてきた。
「熱いってより痛かった。普通は切断しなきゃ腐るんじゃないかな。あの火傷。骨まで行ってたし」
「痛い痛い痛い痛い」
ルミが両耳押さえて横を向く。
「それでも変わらない表情って…」
心配そうなかおりに答える。
「痛みには耐性できちゃってるから。かな? 骨折や部位欠損程度なら無視できちゃうくらいには」
五人にどん引きされた。まあ、そうなるな。
「じいちゃんが亡くなって守ってくれる人が居なくなってから、親父様の躾がどんどん過激になってねー」
当時を思い出す。じいちゃんが亡くなって、龍神が爆発するまでの約半年。
「始めは爪をはがすとか針を刺すとかだったけど…」
「「「イヤイヤイヤイヤ…」」」
「「それ。完全に虐待だからね?」」
「夜の間に龍神が治してくれるから良かったけど、だんだんエスカレートしてねー」
指を折る。腕を折る。足を折る。肋骨を折る。焼き鏝を当てる。バーナーで炙る。溺れるまで水につける。皮を剥ぐ。肉を削ぐ。
色々やられたなー。 などと思い出を語ってみた。
「龍神様ー! それ絶対治しちゃだめなやつー!」
「治しちゃうからエスカレートしちゃったのよ」
ユリカとルミが泣き叫ぶ。
「あぁ。そっか。治るなら平気と思われちゃったのか」
ぽんっと手を打ちながらつぶやく。龍神も、それは思いつかなかった。済まないと謝罪が。延々痛みが続くよりかなんぼかマシです。問題なしだよ龍神。
「「「「「鹿ノ子ー」」」ちゃーん」」
泣きながら五人が縋り付いてきて。
「おかげで痛いの無視できるようになったし。結果オーライだよ」
「「「「「違うから!慣れちゃダメだから!!」」」」」
抱きしめられた。ちょっ。苦しいよ? 誰か力入れすぎてない?
「ごめんー」
ユリカだったか。
四分の四に続きます




