二月十三日 ファイアーボール
四十四日目 きっと 四分の二です。
朝からいろいろ騒いだけれど、普通に授業は一日終わった。
クラブルームから更にトレーニングルームへ移動中。
とりあえず、能力測定だけど、困ったことに限界が見えない。まあ、わたしの神気出せるだけ出し切ったところが限界なんだけど、今現在、順調に増加中。信仰心とかいうのが元になってるらしいんだけど、今朝クラスのみんなに角見せてから増加スピードが上がった気がするんだよね。え? 好感度でいいの? 信仰心じゃなくって?
待って、待って。角見せただけで好感度上がるって何? クラスのみんな角フェチかなんかだったの? 何それ。怖いわー。
「鹿乃子ちゃん、落ち着いて? 身体的な特徴を隠そうともしないで披露したからみんなが好感持ってくれただけだと思いますよ?」
あら? 又お喋りしてましたか? 考え事するとき独り言言っちゃうのって癖になっちゃってるんだねー。
それよか、隠すも何も、それが今のわたしなので、普段伸ばしてたら邪魔になるから引っ込めてるけど見たかったらいつでも出しますが?
「ほら、テラ星系人っていうか地球人って、他人と違ってるところ、隠そうとすることが多いでしょ? 超能力とか、手足の欠損とか、一般になじみのない趣味嗜好とか」
その三つが同列に出てくるとは思わなかったよ! 一つは隠しとけ。表に出す方が問題だ。けど、まあそういったとこはあるね。何かしら目立つと迫害しがちな人種かもね。
「クラスのみんなも経験者が多いんですよ。中等部までに転入してきた人ばかりですから。Eクラスの方たち」
それは、迫害を受けたって意味で?
「そうです。鹿乃子ちゃんみたいに、極端な特徴を平然と晒せる方は少ないですから尊敬されちゃったんじゃないかと」
むー。誰かのトラウマ抉ってなきゃいいんだけど…それは念頭になかったな。失敗失敗。
「ああ。クラスのみんなは一通り済んでますから大丈夫ですよ?」
あー…。あぁ、そうですか。皆さんいろいろ抱えてらっしゃいますか。それなら、まあ この場はホッとしても良いのかな?
それで、この増え続ける神気は一体どうすれば… どっかで頭打ちになるのかな?
え? わたしの受け取れるキャパシティ満たせば止まる? それってどのくらい?
龍神のキャパと比べれば十分の一くらいですか? 具体的には? あっちで最後に神罰下したときその半分ぐらい使ったと? じゃ、わたしがキャパいっぱいで同じ事すると地球の半球の半分はなくなりますな。
だめじゃん。いらないよ?そんなパワー。 何に使えっての?
「カミーラちゃーん。ミュラちゃーん。鹿乃子ちゃんって、地球の四分の一破壊できるくらいのパワーがすでにあるそうですよー? テスト必要ですかー?」
「訓練だけで良いわ。測っても測定器壊れるだけだからやめましょう」
かおりとミュラ姫の会話が心に刺さる。ぐっさりと。
取り合えず運動服に着替えてきた。上は半袖、下はジャージ。
「鹿乃子、パワーはもう良いから 離れた場所に対して力を作用させる事覚えれば?」
と言うユリアの提案で、定番のファイアーボールを覚える事に。定番なんだ?
わたしとユリユリコンビとカミーラの四人が射的場みたいな所に移動。他のみんなは二メートルくらい離れたガラスみたいなしきりに向こう。話はふつーに出来るみたい。
「簡単に言うとー、テキトーな大きさで 圧力と熱を外に逃がさないようにしたボールみたいなシールドを作ってー、ボールの中のエネルギー高めて加熱してー、ぽいっと投げ飛ばせば良いんだけどねー」
「待て。光の透過も押さえないと、温度によって偉い事になるぞ」
ユリカの説明にユリアの補足が付いた。 やってみて良い?
二人が頷いたのでやってみる。
まず、圧力と熱を通さなくて、光も有る程度遮るボール型のシールド… 黒っぽいボールが出来た…。
で、このボールの中の温度を上げる… 何度まで上げれば良いんだ? こんなもん?
「あっつ! なんかあっついよ?」
ボールが熱い。青白く光り輝いててとっても熱い! 熱は出てきてないはずなのに何でー? お手玉状態だよ。
「赤外線が相当でてるな。赤外線だけ遮断出来るかい?」
「えー? あち。あち。こう?」
ユリアの指示に従ってみる。あ、かなり収まった。これなら持てる。 で、次は飛ばすんだっけ?
「何処に飛ばせば良いの?」
「あっちー。壁際に的があるでしょー?あれに向けて飛ばしてー」
三十メートルくらい離れた壁際に棒が立ってて、その上にまあるい赤白の同心円が書かれた如何にもな的。
飛ばす… 飛ばす? 投げちゃえ。
「ていっ」
パカーンと言ういい音が響き渡った。 その後、コンコンとボールが跳ねる音に続いてコロコロと転がる音。
「「「「あはははははははははははははははははははは」」」」
ユリカ、さつき、メグ、かおりが大爆笑。ルミ、アルファ、ミュウは座り込んでプルップル。
「鹿乃子…。シールド硬すぎ。 てかね、一方通行で良いのよ。外に漏れなきゃ。そうしたら的にぶつかれば壊れて爆発するでしょ?」
と、ユリア。
「あぁ!!」
ぽんと掌に拳を打ち付けて納得した。
全員が決壊した。
いやー。的に向かって投げたファイアーボールもどき。的にぶつかっていい音で跳ね返った後、床に弾んでコロコロこっちまで転がってきましてね?
的にぶつかった所でシールドが壊れなかったら石ぶっつけるのと変わんないよねー。
二メートルくらいの所まで転がって戻ってきたボールを取りに行く。
元の位置まで戻ってきて、シールドの強度を変更変更。 ぶつかって壊れれば良いんだからガラス瓶をもう少し弱めた感じで良いかな?
で、再度投擲。
弱めすぎた? 投げてる途中でシールドが壊れる感触が!
投げ終わった瞬間。二十メートルくらいの炎の帯が拡がった。
直後にヘアバンドのシールドが展開したけど突破されちゃった?温度高すぎた?
「うわっちゃーっ!」
熱い…やけどした。うえー。腕の皮でろんでろん。髪の毛もかなり焦げたっぽい。服もかなり焦げた。
「あー。派手にやったなー」
カミーラが来て治してくれる。
「有り難う」
「練習中なんだ。よくある事だよ。それにしてもシールド発生器、三千度くらいならナントカ耐えるはずなんだがな」
カミーラの治癒能力。便利だなー。服まで直ってる…。
「すっごい温度だったね。何度まで上げたのよ。鹿乃子」
ユリアが訊いてきた。何度だろう? 具体的に意識しなかったしなー。
「どんなイメージで作ったの?」
「ぶつかったら、鉄がドローンって溶ける感じ?」
「それで青白かったのかー。上げすぎ。ぶつかった瞬間に鉄が溶けるって、六千とか七千とかになっちゃうから」
とりあえずオレンジ色の二千度くらいにしておけとの事。
「後は、作ったボール。掌の上に浮かして保持する事は出来る?」
「んー?」
とりあえず、さっきのボールで、オレンジに光るくらいのを作ってみる。で、掌の上に浮いてて固定される感じ。
「おお。触ってないのに落っこちない」
掌を逆さにしたり振り回したりするけどイメージした位置で一緒に振り回されている。
「器用ねー」
あれー? 呆れられた? なんだ、ここまでしなくて良いのか。
「まあ、投げちゃっても良いんだけどさ。こう、後ろから押し出す感じで発射出来ないかな?」
押し出す… 速度はさっきぐらいで良いかな? こんな感じ?
ひゅん。て感じで飛んでった。的にぶつかって破裂。盛大に炎が巻き上がる。
「おお?ヘアバンドが作動した?」
シールド発生器が作動したよ? 隣を見たらユリアとカミーラがいない。あ。ガラスみたいな壁の向こうにいた。いつの間に? ユリカは反対側でシールド張って爆笑してる。
十秒くらい掛かって炎が収まったら的がない。床や後ろの壁も溶けている? 穴が空いてるな。
「笑えるー。なんていう馬鹿威力ー。あはははははははははは」
指さし爆笑中のユリカ。
後頭部をペシッとはたかれた。振り返ったらユリアが戻ってた。
「どんだけ力込めたのよ。練習なんだから押さえなさいよね」
「あー。多すぎたんだ? さっきのと込めた力は一緒だね。温度低い分大量に詰め込んじゃった感じ?」
注意されたんで素直に答える。
「二千度くらいで溶ける壁や的じゃないんだけどなー」
えー? なんで溶けちゃったんでしょーね?
「爆発した後なんか変な感じで渦巻いてたわよ? 中心部分が再圧縮されて温度上がっちゃったんじゃないかしら」
後方からミュラ姫が報告してくる。
「あ。熱って言うか、炎が散らばっちゃ拙いかなって思ってまとまるようにしたかも」
「「「「それだ」」」」
ユリユリとカミーラ、ミュラ姫が声をそろえた。
ユリカは相変わらず指差してるな。あ。ユリアに手をはたき落とされた。
「「「あはははははははははははははははははははは」」」
かおりとメグ、さつきが爆笑。
「鹿乃子ちゃん、ココ学園の施設じゃないんで、悪いけど口座から修理費。良いかしら? 一般の家二件分くらいになっちゃうけど…」
ミュラ姫が言いにくそうに切り出したけど、
「あ。全然OK。わたしが失敗したんだし、多分残高の一割にもなんないし」
むしろもっと減らしたい。
「有り難う。監督責任でユリユリペアからも徴収しようかしら」
「「勘弁して下さい」」
二人揃って頭を下げた。壁の向こうで大爆笑。二人ともわたしより残高多かろうに。
「色々入り用なんだー」
「そのうち判るわよ」
二人から何か恐ろしい呟きが聞こえたぞ。
「鹿乃子は威力を押さえて訓練続行だね」
「ちょっと大きめのたき火くらいの火力に調整出来るー?」
ユリアの方針宣言に続いてユリカの質問。
たき火ねえ。
このくらいじゃないかな? という辺りで無事な的に放ってみる。
一瞬だけ炎が的を包み込んだ後消える。良い感じ?
「それくらいで良いよー」
了解。的の残りはあと三つだから気を付けよ。
四分の三に続きます




