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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
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二月十二日 融合

四十三日目 四分の四です

 大型のコミューターに みんなで乗り込んで帰宅です。


 帰着(きちゃく)して現在リビングでだらけている所。


「ユリカ。クラスの子達ってユリカたちのこと何処(どこ)まで知ってるの?」


 確認はしておいた方が良いよね。


「実はちょっと年上の高レベル能力者で、学園のガードを兼ねて能力者の訓練手伝ってくれる友達。位の認識じゃないかなー」


「じゃあ今はわたしの特訓中って認識かな?」


「多分そんな感じー」


「他の子の指導に()けるように早めに色々覚えた方が良いのかな」


「ダイジョブダイジョブ。あの子達能力伸ばす気は無いっぽいから。ふつーに社会生活出来るようにしたいだけらしいよー?」


 ふつーにかぁ。わたしにその選択肢は残ってないなー。


「そーなの?今からそっち方向に行っても良いんだけど?」


「今が楽しすぎる! ふつーに戻る気が()いてこない!!」


「あはははははははははははははははははははは」


 まだ選択肢に残してくれてるんだ。ありがと。


 今のはさすがに意識したから漏れてないはず。 しかし、ホントにガードする気が無くなってるなー。我ながら。


 そこへミュウとルミとかおりとさつき。プラス ミュラ姫。


 夕飯までこれを見たいとミュウが持ってきた昨日の続き。[歴代の少女戦士が一緒になって戦うアニメ第二作]。


 スクリーン引っ張り出して準備始めたら、更にゾロゾロ集まってくる辺り、皆さん毒されていらっしゃる?


「始祖様の一人だからねー。影響力はでっかいよー」


 リカさんのことかい? ユリカ。始祖様って何?()ぐそうゆう混乱ネタを投げ込んでくるな。お前。


「まあ、簡単に言えば地球人が銀河連邦に加入出来るように頑張った人たちの一人。とでも覚えといて」


 むー。確かに今それ以上()いても理解出来そうにないかー。


 夏休みに行くって言ってたっけ? そのとき訊けるかな?


「そだねー。鹿乃子(かのこ)覚醒(かくせい)早過ぎるし確認してもらいたいから行く予定だよー。いいんじゃないー?」


 早くも夏休みの予定が決まったよ。 … あれ?まだ五ヶ月も先のことだった?


「何なら、春休みに一辺行くかい?」


 それも良いかも。 いや、色々改めてお礼がしたい。行きたいな。お願い出来る?


(わか)った。春休みは三月の後半だから連絡しとくねー」


「有り難う」


「いえいえー」


「「便乗します」」


 突然ミュウとルミが割り込んできた。


「お前ら…」


「良いよー。いっそみんなで遊びに行くー?」


「ユリカ?さすがに今それはやばくないかい?」


 ユリアが心配してる。まあ状況がなぁ。


此所(ここ)の十一人だけなら大丈夫だよー。 てかユウ一人で問題ないと思いまーす」


「ユウジ君置いてくの? なら良いか。じゃ参加ー」


 軽?ユリアあっさり(てのひら)返し? ユウジ君恐るべし?


「と言うか、何でユウジ君一緒だと思ったの?ユリア」


「こいつの彼氏(だんな)


 ユリアが指差すのはユリカ。納得。 年齢考えりゃ世界中に子孫がはびこってて不思議はないのか。この連中って。


「「相手がいれば」ね」


 思いっきり()ねた表情でNINJAコンビ。失礼いたしました。


 此所で出てくる男女比率のアンバランス問題。世知辛(せちがら)い!


「「あはははははははははははははははははははは」」


「「ユリユリコンビ!(ひど)い」」


 爆笑するユリユリをポカポカ(なぐ)るNINJAな二人。


 ほんとーにごめん。(さわ)っちゃいけない所だったらしい。


 みんなで(一部引き()って)笑っていると夕飯の準備が出来たそうです。


 引き攣ってた理由に言及(げんきゅう)は禁止。 超危険。


 配膳(はいぜん)当番はサリー。お疲れ様です。


 もう料理当番じゃなくて良いよね。


 みんな(そろ)って


(いただ)きます」


 あれ? 目新しいメニューじゃないんだけど、何かひと味違う。


 サリー、何かした?


「鹿乃子ちゃん知らないの?味付けとか材料の配分とか色々調整出来るのよ?」


「えー?」


「知らなかった」×九人。


「みんな知らないの? 逆に吃驚(びっくり)…ちゃんとマニュアル読んだ?」


 え?マニュアルって有るの? ユリカ?


「… ごめんなさーい。箱ごと捨てたー… かもー?」


「ユリカ…」×十人


「あはははははははははははははははははははは」×十一人


 みんなで大爆笑。 後でダウンロードしてプリントしてくれるそうです。 サリー有り難う。


 食事が済んで、食器をキッチンに運び、後片付けをサリーと[ハウスキーパー]様にお願いする。


 みんな珍しく夫々(それぞれ)個人的用事が。各々自室へ散ってゆく。


 わたしは特に用事が無いので、さっさとお風呂にでも、と思ったけど食べたばかりじゃ消化に悪い。何をして時間を潰そう。瞑想(めいそう)にでも入るか。ここのところ時間を取る事が無かった気がするし。


 目を閉じて身体(からだ)から余計な力を抜く。わたしのやり方は、特に姿勢(しせい)を正したり、特定のポーズを(たも)ったりする事はない。(ただ)自然に、考えないというのも(むつか)しいので、広く、浅く、とりとめの無い思考を(めぐ)らしていると、すっと落ち着いて、周りの音が遠ざかる。


 体を巡る血流や真気(しんき)神気(しんき)なんかも感じ取れる。所々、流れが(よど)んだり引っ掛かったり(うず)を巻いたり。これがなくなれば一人前なんだろうか? (りゅう)さんが、体の奥?心の奥?どこか、まだ少し遠い、手を伸ばしても届かない感じのところで笑って此方(こちら)を見ている感じがする。手が届けば一体になれるのかな? 融合出来た時ってどんな感じになるんだろうか。


 わたしがわたしでなくなる?龍さんと向かい合って話が出来なくなる?今の段階では融合が完了しなくても良いと思っている。今のままじゃだめなんだろうか?


 わたしが望むならそれでもいいの? そのとき、龍さんは今のままでいられる? 龍さん…龍神(りゅうじん)様は、わたしを守るために力のほとんどを使い切っていたよね? 龍神様の力の源は、人々の信仰心ではなかったの? 今では、力の回復が出来なくなっているんじゃないの?


 神としての力は回復していない。龍としての力は半分位まで戻っている。わたしとの融合をしなかった場合、龍の力が完全に回復したらわたしから離れて空を(めぐ)る事になる。融合した時は、わたしの体が滅びるまではわたしの(まま)で、記憶が混じって少しは混乱する可能性はあるが、体が有る限りはわたしの意識が優先するらしい。その後は龍と化して天を巡る。


 いずれにしろ、龍神様が滅びる事は無いという。良かった。それが唯一心配だった。龍神様。出来れば一緒にいたいです。わたしの体が滅びた後もずっと。


 そう安心した瞬間、渦を巻いていた流れが安定した。


 心が決まった瞬間、引っ掛かっていた流れがほぐれた。


 願った瞬間、真気と神気が体を満たした。


 思考が加速されていく。


 気力が満たされていく。


 体力が増強されていく。


 精神が安らいでゆく。


 ユリカが隣に来た。そう感じた。閉じていた(まぶた)を開く。


「大丈夫?」


 そう問い掛けられて、大丈夫と答える。


 タオルを差し出されたので受け取る。(ほほ)が濡れているのに気が付く。いつの間にか、涙がこぼれていたらしい。(もも)の上にもタオルを置いてくれてある。受け取ったタオルで顔を(おお)って下を向く。


 ほら、心配する事はなかっただろう? 龍さんの思考が流れる。自分の思考と区別は付くが、差が感じられない。自分で考え、自分に話しかけている感じ?不思議な感触。


 龍神様の記憶が判る。立体映像でも(なが)めるように様々な記憶が(よみがえ)ってくる。


 龍神様の力が判る。どう使えば良いのかも、何時(いつ)使えば良いのかも、使った結果がどうなるのかも。


 龍神様が大切にしていた物も判る。失ってしまった悲しみも。


 龍神様に残されたものも判る。それが…わたしである事も。


 自分の感情が乱れまくって判らない。龍神様の感情が混ざり込んで混乱する。


 徐々に、混乱した感情が落ち着いて、まとまってくる。今此所にいられる事が嬉しい。


 過去の感情は記憶にとどめておけば良い。既に過ぎ去った感情に(とら)われず、(まど)わされず、わたしはわたしで有れば良い。


 わたしは(まき)鹿乃子。龍神様と一つになった元龍神の巫女(みこ)。今では龍神の一柱(ひとはしら)


 フーッと大きく息を吐く。タオルで覆っていた顔を上げ、ユリカに向かう。


「龍神様と融合出来たよ。ユリカ」


「鹿乃子。今笑ってるよ」


「そうなの?」


「よく見れば。だけどね」


(ぬか)喜びさせるなよ」


「あはははははははははははははははははははは」


「タオルと心配、ありがと。洗って返すね」


(わか)ったー」


 時計を見て(あせ)った。もう二十二時回ってる? いつの間に?


 そりゃ心配するよなー。三時間以上じっと座って泣いてたらしい。


「みんなも心配させちゃったかな?」


「悲しい感情は感じなかったからそんなでもないよー。でなきゃみんな残ってるよー」


「そうだね。明日の朝お礼しよう。ユリカお風呂は?」


「待ってたー」


「着替え取ってくる」


「先に行ってるねー」


 急いで着替えを取りに部屋へ戻る。


 普通に接してくれるから助かる。過剰な心配をしないでくれるから有り難い。さりげなく支えてくれるから(うれ)しい。


 また涙が出てきた。


 待たせちゃ悪い。急ごう。


 そして、筋力が大幅に上がっているのを失念し、部屋のドアノブをもぎ取ってユリカに報告。大爆笑されたのだった。


 やれやれ…


 …それでは、おやすみなさい。

四十四日目に続きます

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