二月十日 退職
四十一日目 三分の一 です
星暦二千百十一年二月十日 火曜日
お早うございます。
起き出して、身支度を調えたら朝食の準備をしているミュウのお手伝い。
みんなを起こして集合する頃に朝食を並べる。
食べ終えて片付けをして、食後の口腔ケア。ホントは食後三十分ぐらい待って、口の中が中和され、普段の状態に戻ってから歯磨きするのが良いらしいが、まあぶっちゃけ時間がない。そこは お薬で誤魔化して。
玄関に五人で集まったら学園に向けて出発。 例によってふんわり浮いたミュウをユリカと引っ張りながらランニング。
周囲の注目を集めながらの登校です。 デフォルト仕様です。
登校時にも、[タウンスイーパー]に声を掛ける学生や一般の人が増えたっぽい。
順調順調。信者増殖中。
「あー。ねえねえ。お正月って言うか、一月一日に[アリス]ちゃん達が街のお掃除してたじゃん?」
例によって、ふと思い出した疑問を口に出してみる。
「ほんほん?」
「あの時[タウンスイーパー]のみんなが働いてなかったのは何で?」
「働きすぎてお休みだったからだよー」
相手してくれたのは有り難いんだが意味不明だよ。ユリカ。
「えーと、十二月三十一日の大晦日って、日付が変わるまで騒いで過ごすんですけど…」
はいはい。
「午前零時を過ぎて大騒ぎしたら一時になる前位には皆さん自宅にお帰りになるんですよ」
あぁ。そんな感じなんだ。初詣とか行かないのかな?
「初詣?ですか。存じませんが…まあそんな訳で、[タウンスイーパー]の皆さんは、そこからお掃除を始めるんです」
もしかして、大忙し?
「はい。で、日が昇る頃にはボディ内に有るゴミの収納BOXが満杯になってしまうのと、新しい年の初めなんでメンテナンスが始まるんです。それで、明け方から以降は[タウンキーパー]の皆さんが引き継いでお掃除をしてるんですよ。そうやってお掃除してくれるのは一月一日だけですけどね」
おお。見事な連携作業な訳ですな。 説明、有り難う。かおり。
それでこの街に越してきた日には[タウンスイーパー]の存在に気付かなかったのか。
[ツイッギー]がゴミを拾う為に動き出すのを見るまでは、道案内の公衆固定端末だと思ってたもんな。わたし。
それにしても、どの子も挨拶の時反応が派手になってきたな。両手を振ってくれるのが当たり前になってるよ?
そのうちみんなが[ツイッギー]みたいに近寄ってきて握手とか、ない…よね?
あれは特別だと思いたい。 誰か。そうだと保証して?
登校途中、生徒達からもあちこちから挨拶が飛んでくる。 大抵は何かと有名らしいユリカに向けてだけれど、わたしやかおり、ルミ、ミュウに向けての挨拶も増えてきた?
「確実に増えてるねー」
さいですかー。
「鹿乃子、人気急上昇」
理由がわかんないよ?
「まあ、校庭であれだけ派手なパフォーマンス繰り広げちゃったら、当然かと思いますが…」
あれが原因でしたかー。 ユリカ、ルミ、かおりの順でわたしの心をえぐってくるなー。
ぼちぼちと声を掛けられつつ学園に到着。
「お早う」とホームルームに入っていけば、全員から声が返ってくるのが嬉しい。
…けど。自分の席に座ろうとして固まる。
廊下側最後尾に一人飛び出していたわたしの席の横に二つ。さつきとユリカの後ろに新しい席がある。
うーん。
「何か聞いてる?」
ユリカに訊ねる。
「特に何も?」
「私も伺ってません」
ユリカに続いてかおりも知らないそう。ミュウとルミも同じく、とコクコク頷いている。
まあ、想像は付くが。
「「おはよー」」
始業チャイム直前になって、さつきとユリアが飛び込んで来た。
チャイムが鳴って、なばちゃん先生がよく見かける二人を連れてやってくる。
メグ。お前大学まで終わってたよな? アルファもお仕事はどうなった?
「二人の班の副班長が昇進した! 二人は一度 退職!」
メンバーズの活動を優先って事だね? さつき。
うんうんと頷くユリア。
それって、補強が必要って事だよね?
こそこそと話をしている内に紹介が終わっていたらしく、新しく用意された席に二人が座る。
ショートホームルームが終わると、女子三人が集まってきた。
「「「メグちゃん、おひさー」」」
「おひさーって、聡美にジーナに麗華?」
「「「当たり」」四年ぶり?」
メグが順番に指さしながら名前を呼べば、嬉しそうに答える三人。
「なんで出戻っちゃったの?」
「高等部すっ飛ばしちゃったからやり直しー的な?」
「「中等部も飛ばしてるじゃん」」
ジーナの質問に答えて聡美と麗華に突っ込まれているメグ。
まあ、その間、わたしの両膝それぞれに 何故かアルファとミュウが座っている訳なんですが…
「「「「仲いいねー」」」」
「「うん」」
何だろーね?この可愛い生き物たち。
やがて一時限の始業ベルが鳴りメグの元から三人が自分の席に戻っていき、わたしの膝も軽くなる。
そんなこんなでお昼です。
メグは旧友の三人と、アルファが混じってわたし達は八人で昼食中。
何だろう。もしかして、アルファ、淋しいんじゃないのか?メグを取られて。
「鹿乃子がいるから大丈夫」
ミュウがアルファの頭をなでなでしながら。本人も頷いてる。けど、ちょっとテンション低いような気がする。
お腹も落ち着いたのでホームルームに戻ると既にメグの席に大勢集まってわいわい中。
「そんな訳で、わたしの彼女のアルファでーす」
わたしたちを見つけたメグがいきなり話を振ってきた。 吃驚したアルファがわたしにしがみ付いて背後に隠れる。
「「「鹿乃子の彼女だね?」」」
ジーナ、聡美、麗華がその様子を見て聞き返す。
「ゑ?」
わたしの背後に隠れちゃったアルファを見て笑顔のまま固まるメグ。
そっと手を引いてわたしの前にアルファを引っ張り出す。
「わたしの可愛いアルファです。宜しくね」
アルファの両肩に手を掛けてみんなに改めて紹介。 ミュウ。脇腹抓らないで。
「「「「三角関係?」」」」
静香、桂那、ツムギ、ステフがわたしとメグを交互に見ながら。
あ。メグが涙目になってきた。
アルファが心配そうにわたしを見上げてくる。
久しぶりの同級生と楽しそうに話すメグを見て、置いてきぼりにされたように感じて寂しかったんだよね。きっと。
「ほら。転入初日なんだから常に二人でいないと。アルファ、凄く寂しがってたぞ」
そう言いながらアルファの背中をメグに向けて優しく押し出す。
「ごめんなさい」
一歩踏み出したアルファに抱き付いて謝るメグ。
「鹿乃子にはミュウがいる。メグは自分の彼女預けちゃだめ」
わたしにしがみ付いてミュウがメグに文句。なんか違わないか?それ。
「「「ミュウちゃん。鹿乃子の彼女だったんだ」」」
「だめだよー。鹿乃子はあたしのー!」
ユリカも抱き付いてきた。いつからそうなった?
「メグは親友だよ。鹿乃子はぼくの彼女なの」
抱き付いたメグを引きずってアルファも近寄ってくる。う? 拒否しづらいな?
「「「「「鹿乃子。やっぱり誑しさんだー」」」」」
ちゃうわっ。
三方から抱き付かれたわたし。わたしに抱き付いたアルファに抱き付くメグ。 あっついわ! 冬なんだけど、暖房効いた教室で大勢に囲まれた上、四人に密着されたら暑いんだよ。
周りの女子どもは黄色い声上げて大喜びしてるし。 何だこのカオス空間。 落ち着けお前ら。わたしから離れろー。
結局、午後の授業開始のチャイムまでそのまんま。おかげでわたしは汗が酷いことに…
下着を替えて、制服は家に帰んなきゃ替えがないから体操服とジャージに着替えて。 午後一の授業遅刻になっちゃったよ。 やれやれ。
三分の二 に続きます




