表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
49/252

二月八日 平穏な一日

三十九日目 後半です

 玄関を(くぐ)った所で、何となく雰囲気が違う? ユリカを見る。


「おうちの中身が避難してるね」


 何を(おっしゃ)いますか? 中身が避難…そのまんまの意味か!今夜何事か有りそうって事?


 こくりと(うなづ)いて奥に進むユリカ。


「なんつー仕掛けなんだか。なんかきっちりブロック分けされた部屋割りだと思ったらこんな仕掛けがあったんだ」


「今部屋の中にある家具類、安物の見せ掛け用だから。 下に行くよ。」


 エレベーターの有った所が壁になっている。その横の通路を奥に進むと元は納戸(なんど)だった部屋。


 部屋に入って明かりを付けると、部屋ごと下に降りていく。


 下降が止まった正面に沢山のディスぷりやパイロットランプを明滅させる機械の小山。


 周りは二十メートル四方ぐらいの壁で仕切られている。天井までは七メートル位。


 二メートル位の高さで止まっている部屋から移動式の階段を使って床に降りる。


 部屋自体はでっかいジャッキみたいな装置で上下する仕掛けらしい。


 部屋から出てしばらくすると勝手に上昇していった。


「これがメインシステムとか言う機械のダミー?」


「そーみたいだね。中古の端末寄せ集めてでっち上げたんじゃないかなー」


此所(ここ)で行き止まりみたいだけど?」


「うん。テレポートすりゃいーんだよ。あたし達は」


「行き先が分からんよ」


「だから最初はあたしが飛ぶよ」


 そう言って手を(つな)いだ途端いつものリビング。


「もう来たのー? 随分早かったねー」


「この前の宙賊騒ぎの(あた)りで旅行者(よそお)って来てたみたい。宇宙港の出入り見たら怪しいのが見つかって、第三艦隊の駐屯地が騒がしくなるのと同時にホテル出てこの辺をうろうろし出したよ。EMP兵器(電磁パルス兵器)持ってるからもう襲撃実行させちゃおうって話になってね」


 ユリカの質問にユリアが答える。内容はちんぷんかんぷんだけど、わざと襲われるって事だね。


 …あれ?ユリア上にいたよね?さつきもNINJA二人も此所にいるけど、いつ降りてきた?


鹿乃子(かのこ)。上にいるのダミーのロボット」


「いつも通りみんな(そろ)ってるように見せてるだけですよ。みんなが寝静まってから侵入するつもりじゃないかと思いますから」


 ルミとかおりがわたしの疑問を解消してくれた。


「鹿乃子ちゃん達の部屋ももう明かり点けてロボットがごそごそやってるよ!」


 さつき。分かったからそんな得意げにしなくても…。


「あ…こいつ、馬鹿だ。もう侵入してきた」


「え!?こんな早い時間に?」


 ユリアが侵入者の報告をしてモニターに映像を映すと、その早過ぎる行動に吃驚(びっくり)したらしいミュラ姫が声を上げる。


「でも、外はもう薄暗い。」


「ユリカたちが戻ったからみんな揃ったと思ってる? それと野次馬集めて(まぎ)れるつもりかな?」


 ルミとミュウが予測を立てる。


 家の裏手に回り込む様子が鮮明に写ってるんだけど…


「街灯に監視カメラ付いてるの知らないのかなー」


 ユリカがなんだか可愛そうな者を見るような顔で疑問を口にする。


「いやー。一応ジャミング(妨害)装置は作動させてるみたいだよ? 此所じゃ役に立たないけど」


 ユリアが侵入者のズームアップ画像を映したモニターを指差す。腰の辺りの四角い箱を黄色い○が囲んで点滅してる。アラートって表示されてるからあれがその装置かな?


 そんなことを話している間に、侵入者さん。勝手口の辺りで持っていたトランクみたいなケースを開いて何かやっている。


「あー。あれ高性能な指向性爆薬使って床ぶち抜いた後で電磁波出す奴だ。使ってるの、連邦軍だけなんだけど、もう隠す気無いのかな」


 さつきが、呆れ果てたって声を上げる。なにげに詳しいよね。わたしにゃゴテゴテした端末にしか見えないよ。


「さつきちゃん。多分、使用すれば破片も残さず蒸発しちゃうからばれないと思ってるんじゃないですかね」


「でも、使った痕跡は調べたら分かるよね。爆発物の成分が特殊だし、分子レベルでなら色々残ってるはずだし」


 かおりが使うに至った理由を知ってるみたいだけど、調べること出来るんだね。


「調べることが出来る装置持ってるの連邦軍だけなんでしょ?表向きにはですけど」


「あー…」


 ああ。自分たちで調べるんだから、ごまかせると思っていると。


「あれ?そうすると、第三艦隊(自分たち)で事件起こしておいて、テロ事件が起きたから調べに来たとか言って乗り込んでくる気でいる?」


「その予定でいると思うよ?臨検(りんけん)艦隊の出港準備終わってるし」


 わたしの質問にはユリアが答えてくれた。


「拒否することって出来るの?」


「テロの疑いが有ると拒否出来ないね!」


 それじゃ誤魔化されて終わっちゃうじゃん。


「だから、今この映像第一艦隊にそのまんま中継してる!」


 あー。さつき。了解です。


「わたし達のお喋りも聞いてもらってるわよ。黙っててごめんね?鹿乃子ちゃん」


 ミュラ姫。それは平気なの?


「平気平気。そうゆう事判ってる人たちにだけ送ってるから」


 なら全然OKです。


 モニタでは、危険物を設置し終えた侵入者が敷地から出ていく所が映っている。


「起爆するみたい。シールド展開するね」


 ミュウがそう言って手元の装置を(いじ)る。


 敷地全体を映しているモニタに壁のような薄い光が出現し、敷地を覆うのが映る。


 次の瞬間爆発が起き、続いて激しい放電が発生、地上のユリカの家だけ、各部屋が激しく明滅する。 しかし、光の壁で覆われて、周りの家に被害はない。


 爆発の煙や土埃が収まってくると共に、驚いた周辺の人たちが集まってくる。


 地上にあった家は、照明が全て消え、勝手口の辺りには直径数メートルの穴が開いている。 穴の周辺は外壁が(ひど)いことになっているし。


 件の侵入者さんが、人混みに紛れてコミューターを拾い立ち去る所も映っている。


「犯人確保しましたー。このまま警備部に直行していただきましょう」


 ミュラ姫?何かしました?


「コミューターロックして警備部に直送するだけよ。後はレイナちゃんが捕まえてくれるわね。窓のシールドガラスはもちろん、車内も暴漢対策で拳銃程度じゃ壊れないから逃げるのは無理です」


 そんなことが出来るんだ。…あぁ。中央で制御して無人で運転してるんだから外部から操作出来て当たり前か。見つかってはいないと思い込んでるから一般人の振りをしてコミューターに乗っちゃった訳ね。はぁ。


「とりあえず、集まっちゃった人たちには解散してもらわなくっちゃ」


 ぽんと手を打ってそう言った後ユリカが消える。


 モニターに映る家の玄関が開いてユリカが出てくる。集まっていた近所の皆さんにお辞儀をして二言、三言会話すると皆さん、それぞれ戻っていった。


 その直後、ユリカの家の敷地全体が地下に潜り始めた。えー?となってモニターの映像を眺めていると、完全に地下に降りきった家が横にずれていく、同時に、部屋に横揺れが起きた。


 画面では壊れた家が見えなくなる代わりに新しい家が見えてくる。縦揺れの小さな振動と同時に、其の儘地上にせり上がってきて固定されると、元通りのユリカの家になった。


 完全にぽかーんと見いていたら背後からユリカの声が。


「驚いてる驚いてるー。凄いでしょー」


 驚いたって言うよりあっけにとられてたんだけどな。


「後は姫野(ひめの)グループ本部の役員に任せましょう。ご苦労様でした」


 沢山有ったモニター画面を壁やら天井やらに収納しながらミュラ姫が言う。


 やっと普段通りに戻ったリビングで落ち着くことが出来そうだ。


 キッチンから、今夜長丁場になりそうだと予想して準備していたと言うサンドイッチやホットドッグ、ハンバーガー等、手軽に食べられる食料を運んできてリビングで夕食になった。


 予想外に早い襲撃だったので、準備が無駄になったと怒るかおりとルミを(なだ)めつつノンビリと食事。


 隣に座ったユリカに、さっき見た家のことを訊ねたら、元々宇宙船だったこの人工島の構造を利用しているんだそうで。


 宇宙船の外壁の上に土地を作って街が出来ているのは以前にも聞いたことだが、宇宙船(ゆえ)に、外壁が壊れた場合の船内の保護と、修理の為に、外壁から二層分は重要な構造物が存在していない。


 代わりに、修理が簡単にできるよう、破損した外壁を船内に引っ張り込んで、入れ替えに新しい外壁をはめ込む装置があちこちに設置してあるとのこと。


 今回、それを利用して、始めに家の外壁だけを残し、家の地上部分から、家の中身、部屋部分を地下に引き込んだ。その後、外壁だけの家の抜け殻にはダミーの中身をはめこみ、地下に納めた本来の家の中身にはそこで外壁を新しく取り付けて準備しておいたんだとか。


 その後、地下部分もダミー空間としてでっち上げて破壊工作を実行させ、後はまるごと入れ替えて現在に至るとのこと。 何となくだがイメージは出来た。


「それであってるよね?」


 とは、わたしのテレポートの訓練に付き合ってくれている間に勝手に話を進められたユリカが、説明し終わってから、事の実行犯に確認を取った言葉。


「その通りです!勝手に進めてごめんね!」


 右手を高く上げて、元気よく謝罪するさつきに苦笑いを返すユリカ。何かしらは思うことがあるらしい。


 ミュラ姫やミュウの部屋が地下三階って言うのもそういった構造上の理由があるからなんだそうです。


 それから、意味がわかんなかったEMP兵器って言うのはかおりが教えてくれた。


 爆薬を使って瞬間的に膨大(ぼうだい)な電力をつくり、強烈な電磁波を発生させて、周辺の電子機器を破壊する兵器だと(おっしゃ)る。が、よく判らん。


「雷が落ちた時、家中の家電品が壊れちゃう現象を武器にしたような物だよ」


 と言うユリアの補足であっさり納得。かおりが落ち込んでいたのは内緒です。


「後、ダミーの家、あんなに色々作る必要って有ったの?」


 と問い掛けたら、


「夜中に地下まで潜入してデーター盗もうとすると思ってたんだよ。そこで罠に誘い込もうかと思ってたんだけど、いきなり破壊するとは予想しなかったわ」


 と言うユリアのお答えでした。


 そうこうしていたら、出港した第三艦隊の臨検艦隊を、第一艦隊がインターセプト。その後第三艦隊全体の活動が凍結され、当面の指揮権が第一艦隊に移されたとの連絡が入った。


 …


 よし。今日のわたしはテレポートの練習以外何にもしてない! 平穏な一日だった! 異議は認めない!!


「「「「「「「「異議しかないよ?」」」」」」」」


 全員からダメ出しでした。


「えー?」


 口をとがらせたら全員が爆笑した。 (りゅう)さんも爆笑している。 何故だ?


 笑いが収まって、お腹もこなれた頃、みんなでお風呂となりまして。


 やっぱり広いよ、このお風呂。現在九人、湯船に浸かってるけど まだ余裕。


 目を閉じてまったりと。色々と思いが巡る。


 帰宅してから大騒ぎだったから忘れてたけど、かおりもさつきも、朝 わたしが暴露した件の動揺が収まっていつも通りだったな。


 納得していないかもしれないけど飲み込んでくれたみたい。感謝。


 それにしても、ぽやーっとして気持ちが良いような…


 …


「ふごっ?」


 鼻の奥。痛い。寝落ちた? お湯を思い切り吸い込んだ?


「ゴホッゴホッ!うえー。鼻に吸い込んだ」


「「あはははははははははははははははははははは」」


「こんな時でも鹿乃子の無表情鉄壁」


「大丈夫ですか?鹿乃子ちゃん。やっぱりどこか調子が悪いんじゃ…?」


「鹿乃子、それ寝落ちじゃなくて失神だから。もう上がって休みな。疲れてるんだよ」


「立てるかい?ゆっくり立ち上がってね」


「ミュウ、そっち支えてあげて」


「判った」


 ユリカとさつきが酷い。ルミの悲しい報告は聞きたくなかったよ。かおり、ユリア。心配有り難う。サリー、姫、ミュウ、お手間を掛けます。


 ゆっくり立ち上がったんだけど若干ふらつく。


「部屋に寝かしてくるわね」


「ん。捕まって」


 姫とミュウが支えてくれるので脱衣所へ向かう。


 二人とサリーの手を借りて体を拭いてパジャマを着る。なんだかぽーっとしたままだな。そんなに疲労が()まってたのかな?充分動けてたんだけどなぁ。


 遠く聞こえるユリカたちの声。一応、心配はしてくれているらしい。内容は分からないけど。


「ここに来てまだ一月とちょっとなんだから、急激に成長しすぎなのよ。龍神様も保護してあげて下さい」


 [今朝色々白状して心の緊張が(ゆる)んだ]んですか?言われればそんな感じもする。


 サリー。有り難う。龍さんも調子に乗ってごめんなさい。


 部屋まで付いて来てくれた。布団に入るまで世話を焼かれちゃったよ。お礼を。


「三人とも有り難う。お手間を掛けました」


「「「お休みなさい。」」ゆっくりね」


 ドアが閉じて一人になる。また意識が遠のいてきた。本当に疲れてるんだな…


 おやすみなさい。

四十日目に続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ