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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
48/252

二月八日 二十一世紀

三十九日目 前半です。

 星暦二千百十一年二月八日 日曜日


 お早うございます。


 隣を見たら、ミュラ姫が寝てるんで大層 吃驚(びっくり)しております。


 いつから私の部屋が合宿所になったんだ?


 ミュウと交代するために起こしに来て其の儘(そのまま)寝ちゃったんだろうけど…。


 まあ良いか、と出来るだけ静かに自分の寝ていた布団を上げて、着替えて部屋を出る。


 リビングは無人。ダイニングには朝食中のNINJAな二人。


「おはよ。他のみんなは?」


「「お早う」ございます」


「サリーちゃん、ユリアちゃんミュウちゃんはさっき朝食とってまたお仕事。ユリカちゃん、さつきちゃんはまだお休み、ミュラちゃんは…知ってますよね?」


 (うなづ)いて、自分用に朝食セットを用意してテーブルに。


「今日は静かに過ごしたい…」


 昨日を思い出してぼやきが出た。


「本当に…」


 頷きつつ同意したかおりと、その隣で高速で頷いているルミ。


「あぁ、そう言えば、昨夜の内に、例のロボット持ち帰った船が近くの第三艦隊駐留所に入ったって確認取れたそうですよ。とは言っても百五十光年離れた恒星系ですけど」


「あー」


 やっかい事は避けられない模様。


鹿乃子(かのこ)ちゃん、今日のご予定は何かありますか?」


「昨日の訓練場借りて、テレポートなんかの練習しようかと思ってる」


「…まだ頑張るんですか? ユリアちゃんより早くテレポート完了してたし、次のテレポートに入るのも凄く速かったし」


「あと、距離の訓練」


「一万キロ超えてテレポートしてたじゃないですか。充分じゃないですか?」


「何処まで行けるか試したい」


「いや、それはユリアちゃんか誰か、フォロー出来る方に居てもらわないと。いきなりじゃぁ」


 かおりと話してたら、勝手に距離を伸ばすのは(まず)いらしい。


 過保護な気がするんだけどなぁ。


「ユリカちゃんがまた泣いちゃますよ?」


「分かった…」


 それはさすがにきつい。


「鹿乃子ちゃん、ユリカちゃんにはなんだか遠慮する所がありますよね?」


 かおりが結構痛いとこ付いて来た。まぁ…


「うん、…もう良いかなぁ。私、三年前に保護されたじゃん?」


「そう(うかが)ってますね」


 ルミも隣で頷いている。


「私を見つけて保護してくれたのって、ユリカなんだよ」


 二人とも初耳っぽい?


 かおりが、何度か口をパクパクさせたあと、


「初めて伺います」


 やっと()れだけを言う。


「当時は、完全に感情が死んでて、周りの状況って只テレビやスクリーンに流れる映像みたいにしか覚えてないんだけど、あの場所で最後に見たのはユリカの顔なんだよね」


「それは…どちらで?…と、伺っても良いですか?」


「うん。地球の公転軌道上のどこか。太陽系の惑星軌道上だね」


 まあ、(にわか)に信じられないよな。意識がなかった状態で見た夢なら良かったんだけどねえ。


「私の周り、地面がなかったし、岩の欠片(かけら)と遠くの星しか見えなかったし。私の中に居る龍神様が守ってくれて、薄らと視覚と聴覚だけ有る仮死に近い微妙な状態だったんだよねぇ」


 二人は無言。


「ある日、突然ユリカの顔が近づいてきて、次の瞬間には地上に居たな。ユリカもテレポート出来るんでしょ?それも 衛星軌道なんて目じゃない距離で」


「あの時のこと、ホントに覚えてるんだね」


 声もなく聞いている二人とは別の声が背後から。ユリカ、起きてきたんだ。


「おかげで助かったよ。(りゅう)さんが言うには、もう、私の状態維持するのが限界に来てて、万に一つの可能性に賭けて救難信号みたいなのばら()いたって」


「ちょうど、あたしの波長と合致したんだよね。『助けて』って大声みたいで、でも小さくて聞き取れない位で」


「で、久しぶりの重力を感じた所で気を失ったんだ。次に気が付いたら病院だった」


「そうなんだ。私は意識がないと思ってたから」


「この前、意識失ったあとで徐々に思い出したんだけどね。ついこの間まですっかり忘れてた。 ついでに言うと、私、生まれたの二十一世紀の終わりなんだけど。分かる?」


 …


「「ええー?」」


 かおりとルミが大声を上げた。


「そんな年上だったんですかー?三千年超えてますよ?それー」


 あ、やっぱそんなに時間過ぎてたんだ。変だと思ったよ。宇宙旅行どころかテラフォーミングして移住までしてるんだもん。


「年上ってのは違うと思うなー。カミーラと同じだよ?彼女も一般生活してる年数はまだ五百年位だしー。鹿乃子なんて、実年齢通りの経験しかないでしょ?」


 かおりの言葉をやんわり否定するユリカ。その通りですね。それでもカミーラは五百年か。(すご)いな。


「それが、三年で社会復帰出来て学園に入学可能になったって聞いたからー。もう吃驚するやら楽しみやらでねー」


「それであんなにはしゃいでたんですか。でも、お友達になれるとは限らなかったでしょ」


「波長が合ってたもん」


 私が此所(ここ)に来るのが決まった頃の話か?波長が合ってたって、えらく単純な?


 まあ、確かに妙に相性が良いんだが、うーん。かおりの疑問の方が同意出来るなあ。 何だユリカのその自信。


「あたしのお友達認定技能は一級だよー」


「何だよその無駄技能。何処で検定やってるんだよ。 よし。わたしも取るぞ」


「あはははははははははははははははははははは」


 あほい事言うユリカに突っ込んだら爆笑しやがった。


「後なー。これ言って良いのかなー。え? この際 言っちゃえ?って、龍さんね。…… 私の学んだ歴史だと、全国統一したのは信長で、江戸幕府も織田家が開いてるし、太平洋戦争では日本がアメリカを占領してるんだけど」


「「「はい??」」」


 三人が固まりましたな。歴史書が違うんだよー。


「時間軸が違う世界から来たみたい」


 ユリカー。そこで突っ伏してどうするよ。


「そんなに違ってるの?」


 ゆっくり顔を上げて訊ねてくるユリカ。


「だって、地球の歴史終わってるじゃん。私の世界」


「それも知ってるのー?」


 叫ぶユリカ。頷くわたし。龍さんが力解放しちゃったの見ちゃったんだー。


 わたしのために泣いてくれて、怒ってくれて、力を解放しちゃった龍神様。その結果に、只ひたすらわたしを保護しながら謝り続けてくれた龍さん。三年前まで、感情が仕事してなかったんで怒りも悲しみもまるっと他人事になっちゃってるんだけどな。


「日本列島を中心に、北半球の四分の一が爆散してね? その勢いでわたしは惑星軌道に放り出されて、龍さんが壁をはって守ってくれたんだよ。そんな穴の開いた星が形を保てる訳 無いからさぁ。段々崩れてバラバラになって、最後は岩の欠片が帯になってたな。なんか、ビデオの早送りみたいに映像が記憶に残ってる」


 君たちが顔色悪くしてどうする。わたしは本気で覚えてるだけ(・・)なんだよ。気にすんな?


「重すぎますよー。そんな話聞いちゃったら私…」


 おわ、かおり泣き出しちゃった?


 平気。ホントに平気だから。まるっと感情がないんだよ。その辺の記憶。その前の所で感情切れちゃってるからだいじょーぶー。


「大丈夫な訳ないじゃないですかー。ごめんなさい。ちょっとわたしの感情を整理しないとだめみたい」


 そう言うと食器を持ってダイニングから出て行く かおり。


「鹿乃子、ホントに割り切れてる?」


 心配そうなルミに頷き返す。


「分かった」


 ニコッと笑ってくれた。ちょっと引きつってるけど、でも 有り難う。


「鹿乃子ー」


 くいくいとわたしの服の袖を引っ張るユリカ。


辻褄(つじつま)合わない所もそういうもんかで納得してるでしょ?ユリカたちの事情があるのは理解してるよ?ゆっくり教えてくれれば良いよ。いっぺんに覚えられないもん」


「それは有り難う。そうじゃなくてさー。まだ悲しいって感情がお仕事してないだけじゃないの?」


 そうかもしれない。けど、現状困ってないからそれでいいんだけどな?


「分かったー。でも悲しくなったら我慢(がまん)しちゃだめだよー?」


「じいちゃんのこと思い出した時には、ちゃんと泣けたよ? だから大丈夫だよ。今、毎日がすっごく楽しいし」


 ユリカが右(てのひら)を向けてきたんで、わたしの掌をパチンと合わせる。


 ルミも、両手を差し出すんで両手でパチパチと。


「かおりの所、行ってくる」


 そう言ってルミが出て行く。


「んで?今日何するのー?」


 いつもの調子で聞いてくるユリカ。


「テレポートの訓練したかったんだけどな?速度と距離」


 そう答えると、


「量はー?重い物とか人数とかー」


 と、思ってもいない言葉が返ってきた。


「あーっ。それもあるのかー」


「あたしが付き合いましょうー。どうせテレポート出来るのばれちゃったしなー」


「よろしくー」


 話が決まってユリカの朝食が終わるまでお茶して付き合う。


 食器を片付け、(洗うのは[ホームキーパー]さんだけどな)二人でお出かけ。しようとしたら、玄関を出た所でユリカの携帯端末から呼び出し音が。


「はぃー?……さつき、(やかま)しいー。…分かった分かった。鹿乃子保護したときの記録開示しとくから。…うん。本人は先月倒れたときに全部思い出してたんだって。だからへ・い・き。…はいはい、じゃーねー」


 話し終えて何やら端末を(いじ)るユリカ。


 その後振り返れば二階のバルコニーから此方(こちら)に手を振っている さつき。と、かおりにルミ。


 心配有り難う。苦笑しながら手を振って二人で歩き出す。


何処(どこ)に行くの?」


 ユリカに問い掛ける。


「昨日鹿乃子が練習してた部屋。緊急じゃないからできるだけ普通の移動手段でね。」


 なるほど、了解。


 コミューターを拾ってチューブウエイのステーションへ、そこからチューブウエイで中央区。お城(姫野グループ本部ビル)の地下訓練場へ到着。


 先ずはユリカと二人でテレポートの訓練。問題ないのを確認したら、本日お休みのセラちゃんと待機のアルファの都合を聞いて、暇だというので手伝ってもらい四人でのテレポート訓練。


 これが結構きつかった。障害物なしでも疲労感があるんだけど、障害物を設置してからその度合いが跳ね上がる。


()れだよー」


 と、ユリカはすまし顔。 まあ、確かに慣れる為にやってるんだしな。


 三十分ごと休憩を挟んで、お昼になる頃には二人が吃驚する程度にはスピードも上がり、疲れなくもなった。


 其の儘四人で昼食。もちろんお礼をかねてわたしの(おご)りで。


 お礼を言ってセラちゃんとアルファと別れ、次は重量物の練習。


 百キロ位のコンテナから初めて段々重量を増やしていく。十トンの大型コミューターでさすがに疲労が強くなり、その重量でしばらく慣らす。


 これも、三十分ごと休みを入れて、夕方近くにはほとんど平気になってきた。


 十七時になった所で終わりにしようとユリカに止められる。


 食堂でわたしが紅茶、ユリカがコーラで一休み。


 三十分ほど休んで来た時と逆の手順で帰宅する。


 コミューターを降りると、二階の二部屋に明かりが灯っている。さつきとユリアだね。時々カーテンに影が映る。


 一階もかおりの部屋が明るい。ルミはかおりの部屋だな。


「「ただ今」」


 声を掛けて玄関を(くぐ)る。

後半に続きます

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