二月七日 シャトルシップ
三十八日目 後半です
そして、現在。
「カミーラだってかおりが持って来たの見ていやがってたじゃん。なんでへーきな顔で居られるのさー」
「自分で用意したんだし、ふつーじゃね? 他人が持ち込んだ自分が与り知らない物はやっぱ気持ち悪いっしょ」
手ぶらで戻ったカミーラに食ってかかるユリカと何言ってんだこいつなカミーラの漫才が。
「これが研究者」
したり顔で納得しているルミ。
「さつきも嫌がってたよね?ユリアも アレ 平気なんだ?」
さっき大笑いしてた二人に訊いてみる。
「「ロボットじゃん」」
なんで?と言う顔で返された。
こいつらもか。外見はどう在れ自分で用意した人工物だと判ってれば平気な奴らか。
「盗撮用でしょ?アレって。どんな情報というか、どんな画像を記録してあるんですか?」
「[メインシステム]が狙われたでしょ?だから慌てて設置場所を変更したっていう下りをでっち上げて記録しといた!」
「変更先がユリカの自宅地下ってことになってるからよろしくな」
かおりの軌道修正的な質問に答えるさつきと酷い現実を告げるカミーラ。
私ら、囮なんだ。
「ひどいーっ!事前に説明ぐらいしてよーっ!!!」
「ごめんごめん。いや、全部回収出来ない可能性があったから黙ってたみたいだよ?。私もさっき聞いたばかりなんだわ」
哮るユリカをなだめてる、のか? 疑問が残るが、ユリアが説明。
多分こいつ、話を聞いたその場で賛成したな。
「偽情報の映像はメグちゃんとアルファちゃんが作ってくれました!」
そして、何故かさつきがエッヘンとばかりに胸を張って爆弾投下。
「「「ああぁ…」」」
がっくりと項垂れたかおり、ルミ、ユリカの三人。
「まあ、二人の暴走とも言うね!」
「おいーっ!」
さつきの追加爆撃が酷い。あの二人ってそんな感じだったの?メグはともかく、アルファもなの?
「二人で悪乗り始めると大暴走するね! よくあることだよ!」
だめな奴じゃん。それ、絶対止めなきゃだめな奴じゃん。ちゃんと監督しろよ責任者。
「と言う訳だから! みんなで囮になろうね!」
「「「「拒否権がお留守だよ!?」」」」
かおり、ルミ、ユリカ、わたし、四人の叫びがむなしく重なった。
とりあえず、相手の出方を見ながら対処するしかない関係上、お役御免となった現在、私は、テレポートに慣れるべく、訓練場を借りて一人、練習中。
ユリアが別れ際、時間短縮のこつ、と言うか裏技を教えてくれた。
目標位置の設定をアバウトにする。だそうな。
私は、目標位置を安全確実にはっきりと決めてから転移していたんだよね。
龍さんがアドバイスしてくれた[初めは目視可能な範囲]って言うのもその一部で、移動先に既に他の人や物などが有ると、融合しちゃうから。
分厚い壁なんて在った日には、全く身動き出来ずに詰んでしまう。
それでも、行った先の障害物を無意識下で排除しちゃうとのことで、自分自身はとりあえず即死はしないらしいけど。
尚、そんな事態になったとき、排除されちゃった部分がどうなるかというと、テレポート前に居た私の場所に置き換わって移動するそうです。 それで、テレポートしたあとの空間が真空になって周りに影響が、とか言う現象が起きない模様。納得しました。
だから、飛んだ先に人が居て、重なって、部分的に排除されちゃったらどうなるか、と言えば…。スプラッタ!
更に、強制テレポートと言って、移動先にある物に本当に重なってしまうテレポートの場合、核融合が起きちゃうそうです。
ユリアの知り合いのテレポーターさんが、攻撃手段として使うことがあるそうで、小石一個有れば高層ビルを消し飛ばすことが出来るとか。
まあ、そんな大惨事を避けるためにも、目標にする場所をきっちり認識してからテレポートしてたんだけれど、私が移動する所をじっくり確認した上で、わたしの飛び方なら大雑把で大丈夫と一言。
曰く
「無意識下で、重なると危険な物を勝手に回避して位置を調整してくれるから平気だよ」
だそうで。
「試しにあの椅子がある場所に飛んでご覧よ」
と言われてやってみたら、見事椅子の横に出た。 無意識さん。マジ有能。
そんな訳で、現在、訓練場のあちらこちらに障害物を配置した上で、連続してテレポートを発動し続けている所。
効果は覿面。 ユリアのテレポート速度に負けてないんじゃないかな。 楽しい。すっごく楽しい。
「鹿乃子。鹿乃子ー。ー鹿ー乃ー子ー。」
呼ばれて我に返る。
すっかり夢中になってたよ。
入り口に さつき、ユリユリ、NINJAコンビが揃ってた。
「ごめん。夢中になってたよ。みんな集まって何?」
「いや、帰るよ?もう夕方五時回ったよ」
え?そんなに時間過ぎてたのか? ユリカの言葉にびっくりだ。
「吃驚なのはこっちだよ。まさか休み無しでずっとあれ続けてたとか…?」
信じられんと言う顔でユリアが呟く。
「気が付いたらみんないたね」
正直に答える。
「嘘だ!あんな連続テレポート。一時間どころか三十分ですら続かないよ」
ユリアが信じてくれない。 どんどん速くなっていくから面白くなって続けていただけなんだけどな。
「早さで追いつかれちゃうし、スタミナ無限お化けだし。鹿乃子おかしい! 昨日今日にテレポート出来るようになった人じゃない!!」
ビシッとわたしを指差しながら宣言するユリア。
いや、さすがに疲労感はあるんだけどな?
「ユリア、人を指差しちゃいけないらしいよー?」
「うわー! ユリカにそれ言われた? 私だめ人間?」
「あはははははははははははははははははははは」
ユリアの肩をぽんとして指摘するユリカ。はっとして頭を抱えて悶絶するユリア。そして爆笑するユリカ。なんだか大混乱してるな。
さつきは目がまん丸になって口がぱかってなってるし、NINJAな二人はお腹抱えてうずくまってぷるぷるしてるし。
何だこのカオス空間。 …引っ張り出した障害物片付けよう。
やがて、再起動出来た順に手伝ってくれたので、片付け終了。 今回はユリカが一番早かった。
リニアチューブで帰宅。テレポートじゃだめ?と訊いたら、移動の記録が変になるから、非常時だけにして。と言われて納得。 メンバーズのカードやら、携帯端末やらで、持ち主の位置が記録されているそうです。
ためしに、カードや携帯置いてったら大丈夫?と重ねて訊いたら、防犯カメラとかが混乱するからだめ。普段は一般人のフリしてろとのこと。色々面倒なんだね。一般人とは言いがたいこと結構平気でやってる気がするんだけどなぁ。登下校とか、登下校とか。
「「「「「「ただ今」」」」」帰りました」
「お帰り。ご飯出来た所だよ」
玄関を開けて挨拶したらサリーが夕飯準備して待っててくれた。
みんなでお礼を言って、洗面所で手を洗いダイニングへ。
ミュラ姫とミュウも揃ってみんなで「いただきます」。
食べ終わった順に流しに食器を片付け、リビングに移動する。
「ついさっき、例のアレ、回収されたの確認したよ。宇宙港からシャトルで上がって火星(仮)軌道で母艦に合流したあとジャンプしてった。まだハイパーレーンに居るから行き先は確認出来てないけど、一、二時間後には判るんじゃないかしら」
お茶のワゴンを引いてリビングに入ってきたサリーが経過の報告をしてくれた。
で、シャトル?ジャンプ?ハイパーレーン?何それ。
教えて?プリーズ。とユリアを見る。
自分を指差して小首を傾げ、周りをぐるりと見回し、頭をポリポリしながら溜息を一つ。その後立ち上がって私が座ってる三人掛けソファの空いてる位置に座り直すユリア。
「人工衛星位とか、衛星軌道は判るよね?」
それくらいなら、なんとか知ってます。
「そこと地上を行き来する手段の一つに[スペースシャトル]って言うのが昔使われてた時期があるんだ」
初耳ですが、宇宙船の一種という認識で良い?
「そう。極初期の有人宇宙船。で、現在の大きな宇宙船って、地上まで降りて来ちゃうと宇宙に戻るとき燃料を大量に消費しちゃう物が多いんだ。鹿乃子が此所に来るとき乗ってきた船より大きなタイプなんだけどね」
え? かなりデカかったよ?ジャンボジェットの四、五倍有ったけど?三百メートル位。
「あれはかなり小型なんだよ。恒星間って判るよね?太陽みたいな星と星の間を移動出来る宇宙船としては小型な方」
えー? 吃驚ですな。
「それで、地上に降りてこない宇宙船と地上との間を行き来するための小型宇宙船をシャトルシップって呼ぶようになったって訳。ここまでは良い?」
シャトルに付いてはイメージ出来ました。
「で、さっき言った恒星間飛行なんだけど、ここから一番近い太陽系ってどのくらい離れてるか判る?」
想像も付きません。
「大体四から五光年。光年は判るよね?」
えーと、光の速さ、秒速約三十万キロメートルで一年かかる距離でしたかね?
「正解。だから、恒星から恒星に移動するの、光の速さで移動しても四年以上かかっちゃうのも理解出来るよね?」
あれー? 光の速さって、到達出来ないんじゃなかったかな?
「うん。だから、そんな距離を自由に移動することなんて出来ないんで、光の速度を超えて移動する方法が発明されました」
世紀の大発明ですね。
「当然ノーベル賞を受賞しました。で、その移動方法のことを[ハイパージャンプ]と言って、専用の通路みたいな所を[ハイパーレーン]って呼びます。それで良いかな?」
「有り難うございました」
ぺこりとお辞儀をして感謝。さっきのサリーの話が理解出来たよ。何故かサリーと姫が拍手してるし。
「で?今後も私がこの役目的な流れ?」
「「「「「「「「宜しくお願い致します」」」」」」」」
「ぁー…はいはい」
「あ、香歩ちゃんも結構上手に説明出来てましたよ?助教授に任命されてはいかがですか」
名案とばかりに かおりが提案。昼間のあれか。
「あー。うん。相談しとく。ありがと」
ユリアにも心当たりがある模様。私としては、教師が増えてありがたし。
とりあえずスペースシャトルとやらを写真検索。携帯端末で探してみたら飛行機みたいな三角翼の宇宙船。
見たことないなー。こんなんで何処まで行けたのかな。
「それ、衛星軌道までしか行けてないよ」
え?月すらも?それ、宇宙船って呼んで良いの?
「まぁ当時としては最先端だったみたいだし? 事故も多かった様だけど」
ユリア先生、レスポンス早い。物知りだなー。
「おだてても何も出ないよ?」
褒めれば何か出る?
「そうゆう意味じゃない」
痛て。おでこをペチっとされてしまった。
「さて、わたし 情報集めに戻るわね」
サリーが立ち上がってワゴンを片付けようとする。
「サリーちゃん、あたしがやるから置いといてー」
ユリカが声を掛ける。
「ありがと。お願いね」
「あたしも情報集め行きますね。ユリアちゃん、一眠りしたら変わって?」
「了解ー」
サリーに続き、ミュラ姫が立ち上がる。夜通し作業が続くらしい。
ミュウは…一人掛けのソファで丸くなってるな。
「ミュウ。お風呂入って一休みしよ?」
ちょんちょんとつついて声を掛けてみる。
「うい。おうおあいゆ(「お風呂入る」だと思われる)」
抱っこしてお風呂に向かおうか。
「鹿乃子ー。其の儘一緒に寝てあげてー。着替え持ってくからー」
「あーい」
ユリカに返事をしてお風呂。
確かこの娘、二百歳超えだったよね?体力は見たまんまなのかな。
服を脱がせてあちこち洗い、湯船につけたら自分を洗う。並んでお湯につかってほっと一息。
意外と疲れているのを感じて吃驚する。
ややあって、NINJAコンビが入ってきたのと入れ替えでミュウを抱いてお風呂から上がる。
体を拭いて髪を乾かし、着る物も着せて、自分もパジャマを着たらまたミュウを抱っこして部屋に移動。
歯磨きは無理そうなので液体歯磨きでうがいをさせて布団に寝かす。其の儘寝たのを確認したら自分の歯磨き。ミュウの隣に敷いた自分の布団に転がって掛け布団を被る。どっと眠気が襲ってきたー。
それでは、おやすみなさい。
三十九日目に続きます




