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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
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二月七日 油虫

三十八日目 前半です

 星暦二千百十一年二月七日 土曜日


 お早うございます。


 ただ今、瞬間移動、テレポーテーションの練習をしたいので、公園に隣接した林に行こうと思って、動きやすい服でお出かけしようと部屋から出てきた所。


「あんまり一般の人に見られる可能性がある場所は、止めた方がよろしいかと思いますよ?鹿乃子(かのこ)ちゃん」


 かおりにやんわり止められた。


「でも、今日はクラブルームの練習場使えないでしょ?」


「カミーラちゃんかユウジ君が(ひま)なら平気だと思いますけど…()いてみます?」


 ミュラ姫は昨夜からお仕事中。ユリア、ミュウ、サリーも一緒。寝てないみたいです。


 一度リビングに移動して携帯端末を取り出し、まずカミーラに連絡してみる。かおりが。


『わり、今日は本業で無理だわ』


 とのことで、ユウジ君に連絡…が取れない。


「おはよー。どうしたのー?」


 ユリカが起きてきた。


「「お早う」ございます」


「テレポートの練習がしたいと言って林に行こうとしてたんで止めたんですけど、学園のクラブルームが使えないんですよ。カミーラちゃんはお仕事で、ユウジ君は連絡付かなくって」


「ユウは今日なんかお掃除してるー。地下に広いスペース有るからそこ使えばー?」


 かおりの説明にざくっとしたユリカの答え。地下にそんなスペース有るの?


「ミュウ達の部屋があるの、地下三階層以下だからその上に色々あるよー。元々は宇宙船の事故に備えた緩衝(かんしょう)スペースだから特に重要な物は無くって空き部屋ばっかしー」


 隕石やデブリの衝突時にシールドで防ぎきれなかった場合の衝撃を吸収し、排除しやすいように設けられた空間なのだとか。現在照明と簡単な空調、生命維持に最低限必要な物以外設定してないので結構広いとのこと。 広いスペースがあるって事は(わか)った。


 行ってみようとエレベーターに三人で乗り込む。


 ルミがいつの間にか参加して四人になってた。


「さすがNINJA。気が付かなかった」


 ポロリと(こぼ)したらユリカが食いつく。


「鹿乃子、気配察知(さっち)出来てたよね?普段使ってないの?」


「? 何故(なぜ)普段から使う必要が?」


「こういった不意打ちを防ぐため。自然に使えるように慣れといた方が良いよ?この島を出たときとか結構危険度上がるよー」


 ルミを指差して怖いことを(おっしゃ)る。闇討ちの可能性があるのかー。 やだな。


 あと、ユリカ。他人を指差すな。


「今は特に例の提督(ていとく)さんの件もありますから、念を入れておいた方が良いんじゃ無いかしら?直ぐ慣れちゃいますよ?」


 そうですね。やっかい事が寄ってくる前に逃げちゃう方が良いよね。


 という事で、気配を探る練習を、始めた途端(とたん)に色々引っかかる。


 現在、地下一階層。宇宙船の外壁の直ぐ内側の層を移動中。迷路みたいに通路がある。


「なんか色々なとこに小さいのが潜んでるけど、これは放置で良いの?」


「「「え?」」」


 真顔になったユリカが目を閉じる。


「うわ。なんじゃいこれは。昆虫型のドローンかな?いっぱいいるねー」


 ユリカが、(すご)く嫌そうな顔で。


「人間だけ対象にして警戒してたから全然気付きませんでしたね。鹿乃子ちゃん凄いです」


 そう言った後、ふいっとかおりが消える。


 人間にだけ対象を絞るなんて事が出来るのか。やってみたら小さな反応が消える。なるほど。気配察知の負荷がかなり軽くなるね。


「「「ぎゃーっ!!!」」」


 そんな実験をしていたら、戻ってきたかおりの手には油虫(ゴキブリ)が一匹。 よく(つか)めるな!そんなもん。


「これはロボットですよ。私、昆虫のこれもわりかし平気ですよ。何をするためのロボットなんでしょうね」


 しげしげと(なが)めるかおりの視線の先にはもごもごうごめく羽をつままれた油虫。


 私はだめ。見るだけで気持ち悪い。どっかやって。


「とりあえず、戻ろうか?」


「お城行った方が早くない?」


 一度戻ろうというユリカに、姫野(ひめの)グループ本社に行くべきでは?とルミの提案。


「採用」


 ビシッとルミを指差してユリカが同意する。だから、人を指差すなと言うに。


 エレベーターに戻って更に地下へ。リニアチューブで本社ビルへと向かうことになりました。


「カミーラー。こんなの見つけたよー」


 カミーラの研究室に直行してユリカの言葉に合わせ、ハイっと()まんだそれを差し出すかおり。


「ぅぎゃっ!?」


 顔色を変えるカミーラ。普通そうなるよねえ?こんなの目の前に突き出されれば。


「うえええ。よく素手で掴めるなお前、尊敬しちゃうよ」


「そうですか?(ただ)の虫ですよ?ってゆうか、これ虫どころか只のロボットですよ?」


 カミーラの心底嫌そうな言葉にキョトンとして(こた)えるかおりが凄い。


「こいつ、この前の宙賊(ちゅうぞく)が持ち込んだんだよ。捕獲した戦艦の荷物の中に仕込まれてて、一昨日ばらまかれたんだ」


 カミーラが溜息(ためいき)をつきつつ教えてくれる。


「時限装置で(ふた)の開くコンテナに入っててな。調べる前に作動してまんまとばらまかれちまったんだ」


 そう言いながら、部屋の奥を指差すカミーラ。


 みんなでそっちを見ると、透明なガラスケースみたいな一メートル角ぐらいの箱の中に大量の奴が。


 かおりを除く全員の表情がゆがむ。


「やっとこれだけ捕まえたらしいんだけど、監視カメラの映像で五百十二匹ばらまかれたことが(わか)ってる。で、此所(ここ)に三百二十一。かおりのが三百二十二匹目」


 カミーラの所には昨夜連絡があって、それから色々調べていたらしい。


「あれ?ユウがやってる仕事ってもしかしてこれ?」


 ぽんと手を打ち合わせてカミーラに問い掛けるユリカ。(うなづ)きが返ってきた。


「しかし、ユリカん所まで行ってるとなると、残り(つか)まえるの相当大変だよなぁ」


 頭をポリポリしながらぼやくカミーラ。


「あちこち撮影しながら徘徊(はいかい)してるんだよ。メモリーがいっぱいになると特定の場所に離脱するようになってるぽい。直接送信してないから助かってるけど、時間的にそろそろ逃げ出す頃なんだよなあ。早いとこ捕まえないと」


 てことは、


「虫取りのお手伝いですかー」


 ユリカの言葉に、はぁーと一斉に深い溜息。


 本日休暇、待機のアルファとメグ、まだ家にいるさつきに連絡して捜索開始。


 まず気配察知の得意なメグが全島探索を掛ける。


 あっさりやってるけど、この人工島の大きさ、ほぼ四国ぐらいあるんだよな。 すげーな。


「やっぱマスターシステム納めた部屋の周りが多いよー。百五十ぐらい居る。あとはなぜかユリカちゃんち周辺にいるだけだね。良かったねー。あっちこっち散らばって無くて」


 メグの探索結果から、さつきには其の儘(そのまま)ユリカ宅周辺の捕獲に取りかかってもらい、応援に私とかおり。


 マスターシステム周りを残りで当たることになって行動開始。


 リニアチューブでかおりと共にユリカの家に戻る。


 家の地下に到着して直ぐ探索掛けて探し始めるとやっぱりあっちこっちにおりますな。


 どうやって捕まえようか…。


 (りゅう)さん、念動ってこういったことに使えますかね?押さえつけて持ち上げて引き寄せてとすればOK?有り難うございます。 手近の一匹でやってみる。


 動き回っているのでなかなか押さえつけが出来ないんだけど…六回目で捕まえた!。其の儘持ち上げて、手元まで持って来る。で、捕獲(ほかく)用に預かってきた箱に放り込み一匹終了。


 (つか)れる。これは良い練習になるかもしれない。頑張ろう、


 と意気込んでいる間に、かおりがぽいぽいと五匹ほど箱に放り込んでいる。早!


 わたしとかおりが到着するまでに集めたらしい、[奴]がいっぱい入った空き(びん)を持って…いや摘まんで合流して来たさつきも、瓶(ごと)ぽいっと。


 その後、数が減ると共にどんどん捕まえにくくなり、ひぃひぃ言いながら三人で捕まえて回ること三時間。


 やっと反応が無くなった。


 げっそりした顔で三人(そろ)って再び本部ビルのカミーラの元へ。


 到着したら、此方(こちら)も捕獲は終わったらしく、一つずつ確実に壊しながら数の確認中だった。


 捕獲作業に加わったメグ、アルファ、ユウジ君、香歩(かほ)ちゃん、(かおる)君も揃っている。


 わたし達が持ち帰った分まで数え終わって、五百十二匹。捕獲、退治完了。 やれやれ。


 龍さんがとっても嬉しそうに[昨夜のフラグ回収完了]と告げてくる。 五月蠅(うるさ)いよ。 大笑いされた。(くや)しいっ。


 そして、時刻は既にお昼時ですよ。


 近くの社員食堂に移動してみんなでお昼の食事中。


 さつきとメグちゃんとアルファは呼び出されて別れた。


「それにしてもー、嫌がらせレベルの仕掛けが続くよねー」


 と、香歩ちゃんがぼやきを(こぼ)す。 まだ顔色が良くないね。 食欲もないらしくメニューはサンドイッチとジュースのみ。


「香歩ちゃん。彼らは嫌がらせをしている訳じゃないと思うよ?多分」


 そう反論を返したのは薫君だった。


「ここが姫野グループのホームグラウンドだから嫌がらせで済んでるけど、他の恒星系だったら大規模テロ事件になって大惨事間違い無しだからね?」


 更に続けて追加の説明が。


「そうなんだー? 確かにバタバタしたけどそんな深刻な事態には思えなかったよー?」


 ちょっと手間取ったよねーって感じの香歩ちゃん


「そりゃ、此所(ここ)にメンバーズってイレギュラー的存在が居るからだよ。今日の一件だって、メンバーズがいなかったらまだ事件自体発覚してないぞ。きっと」


 そう答えてるのはユウジ君。これは忠告かな?


「あのちっちゃなロボット、能力無しで捕まえる自信ないでしょ?」


「確かにー。頑張ってたんだねーナントカ大佐さん。努力が報われる気配が無いけどー」


「ディーアモント小将さんな。階級すら合ってないから」


 昨日聞いた話、やっぱ、先輩方にもきっちり伝わってるんだね。


 そして、ユウジ君に色々指摘されながら[あーそっかー]で済ます香歩ちゃん。こーゆー性格だったのか。軽いなー。


「それにしても、此所に集まってたのは分かるけど、なんでユリカん所にあんなにいたんだろうね?」


 誰か答えてくれるかなって思って、疑問を口にしてみる。


「データー通信量の多いとこに集まってたんだよ。ミュラやミュウが引っ越してから色々やってたし、昨夜なんかユリアとサリーまで加わったんだろ?一時的に回線の半分以上使ってたぞ」


 カミーラが教えてくれた。でもいまいち判りが悪い。


「回線って、この人工島の?凄い通信量ですね」


 かおりが驚いた声を上げる。


「いや、この星系の。人工島に星系外とのメインのハブがあるからそこの記録で最高六十五パーセント行ってたかな?確か。何件か通信速度が遅くなったって苦情が来たんで調べたらそんなだった」


「そんなに使ってたんですか?」


 カミーラの追加情報に、かおり、吃驚(びっくり)してるな。


 私には理解出来ないんで驚きようが無いんだが。ユリアがこの場に居ないのが残念だ。


「鹿乃子ちゃん。高速道路にたっくさんコミューターが走るとインターチェンジで混雑しちゃうでしょ?普通は沢山(たくさん)の車で通り道が減るから起きるんだけど、一台だけとんでもなくおっきな車が走っても似たようなことになっちゃうでしょ?そんな感じだよー。それが一本しか無い幹線で起きちゃったから困った人が居たんだねー。それでー。渋滞(じゅうたい)してる所を中継しようと集まってくる取材ヘリみたいにロボットが集まってたんだね。きっとー」


 ああ、そんな迷惑行為をしてたから、やたら目立って標的にされたのか。


 香歩ちゃん。イメージしやすい解説を有り難う。さっき性格が軽いなんて思ってごめんなさい。


「ダイジョブダイジョブ、お手軽なのは自覚してるしー」


 をい!(ひど)いぶっちゃけだな。


「カミーラ。このあと、何を(たくら)んでるのかまでは判ってない?」


「判ってるのはみんなで事前に全部潰してるからなぁ。特に対策が取れない事案は聞いてないぞ」


 ユウジ君の問い掛けに何言ってんだと答えるカミーラ。そりゃそうだよな。判ってりゃ事前に対応するよ。


「あはははははははははははははははははははは」


「うわぁ。反論の余地がない…」


 爆笑するユリカと縮こまったユウジ君。 ユリカ。人を指差すなってのに。


「あははは。ユウジ君、珍しいポカだねー」


 香歩さんは楽しそう。


 周りで食事中の社員の皆さんも、時々此方に目を向けては楽しそうな雰囲気。


 あれ? そう言えば此所で今の話しちゃって平気なの?機密事項じゃないの?


「平気。みんな内情を知ってる」


「此所で食事する方は皆さん社外秘案件に深く関わっている方達ですから。それなりに身元と性格がはっきりした方ばかりです」


「と言うか、部外者立ち入り禁止区域」


 今さらな疑問が湧いてきた所で、ルミとかおりに説明を受ける。 有り難う。二人ともマジで有能。


「まかせて」


「高い評価を有り難うございます」


 相変わらずな答えが返ってくる。


「ねえねえ、カミーラちゃん。わたし達、解散していいのー?」


 おおよそ食事も終わり、食後のコーヒーやらお茶やらも片付き始めた段階で香歩ちゃん。


「ちょい待ち」


 そう言ってから携帯端末を取り出して弄り始めるカミーラ。


「だいじょーぶだ。お疲れさん。解散で良いよ」


「了解ー。じゃ、またねー」


 返事を聞くなり立ち上がって手を振り去って行く香歩。


「じゃあ、僕らも行こうか」


 そう言いながら立ち上がる薫君とそれに続くユウジ君。


「「それじゃ」」


 二人で手を振って食堂から出て行く。


「さて、それじゃわたし達も…」


 と立ち上がって帰ろうとしたら四人揃ってカミーラに連行された。 なんでだよ。


 連行された場所はカミーラの研究室。


 朝来た時には気付かなかったんだけど、前にユリアがぶっ壊した定盤(じょうばん)とか言うのや測定器械が全部元通りに揃ってるね。


 さつきとユリアが待っていた。二人揃って手を振っている。 ユリアも引っ張り出されたんだ。


 で、午前中頑張って捕まえたあれが作業台の上で、ケースに入ってうごめいている。


「「ぎゃーっ」」


 先に部屋に入ったユリカとルミが悲鳴を上げた。 顔を(おお)って反対を向く。


 かおりは一人平然と。


「壊したよね?お昼前に全部壊しながら数を数えたよね?」


 なるべく視線を向けないようにカミーラに(たず)ねる。


 多分、凄く嫌そうな顔になってるはず、動かないはずの表情筋がそれでも頑張ってるはず。きっと。


「ああ、これは私が二人に頼んで用意した別物。外観や使い方はおんなじで機能てんこ盛りの特製品だ」


 そう言いながらさつきとユリアを見て、ケースをポンポンとするカミーラ。


 ケースから離れてくれないかな。


「鹿乃子の無表情鉄壁」


 ルミの一言が突き刺さる。


「嫌がってる。すっごく嫌がってる表情なんだよ、ルミちゃん。鹿乃子の表情筋、頑張って仕事してるよー」


 有り難う。ユリカ。 只、余計に悲しくなるのは何故だろう。


 思わず顔を両手で覆ってしゃがみ込む。


「ユリカ、とどめ刺した」


 ルミの攻撃。


「えぇぇー? ごめんねー 鹿乃子ー」


 オロオロと近寄って私の頭をなでなでし始めるユリカ。


「「あははははは」」


 さつきとユリアの笑い声が聞こえる。


「カミーラちゃん、これ使って欺瞞(ぎまん)情報ばら()くんですか?もしかして」


 一人、我関せずなかおりがカミーラに質問してるし。


「ばら撒きっつーか回収させる。連中が使ってたのと同じ造りだし、気が付きゃしないだろ。気が付いたら気が付いたで牽制(けんせい)になるから問題なし」


「あー。逆に情報収集されるかもとか思っちゃいますね。もう全部ばれてるけど」


 ふつーに会話してる二人が(うら)めしい。


「それじゃ放出しちまうか」


「待ってーっ待ってー!!こんな所で蓋開けないでーっっ!!!」


 カミーラのものすごく不穏な台詞にユリカの大絶叫が。


「どっか見えない所でやってよーぅ」


 マジ泣きで懇願(こんがん)するユリカ。 わたしも絶賛大賛成。


「わーった。わーったよ」


 やれやれとぼやきながらケースを持って部屋を出て行くカミーラ。


「「「あはははははははははははははははははははは」」」


 さつき、かおり、ユリアの三人が大笑いしている。 やれやれ、助かった。

後半に続きます

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