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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年二月
41/252

二月四日 安全宣言

後半です

 パワードスーツがわたし達に気付き、すぐに手の機関銃みたいなものを此方(こちら)に向け、上空の戦闘機を威嚇(いかく)してる?らしい。


 良いのかー?上だけ気にしてて。こっちの方が怖いと思うぞー。


 上空で旋回(せんかい)を始めた戦闘機に下品な手つきで挑発(ちょうはつ)を始めたパワードスーツ。


 とことこと近づくユリカを気にもしない。


 まあわたしも引っ張られて近づいてるんですけどね?


 上空に向けて発砲したり挑発したり。(すご)い音が鳴り響く。


 五月蠅(うるさ)い。


 パワードスーツの片足を()り飛ばすと、実にあっさり吹き飛んだ。


 片足だけ。


 電気のスパークと真っ黒いオイルと金属の破片がまき散らされひっくり返るパワードスーツ。


 その横で小さく前方宙返りから右足を伸ばして(かかと)落としで右半身を(つぶ)す。


 出てきちゃいけない赤い液体は出てこないから死にゃしないだろう。


 そいつはそれで動かなくなった。


 呆然(ぼうぜん)と固まっていた ほか四台がやっと状況を理解した?


 すかさずわたしに銃を向けてくるけど、ユリカもわたしもとっくに次の動作を始めている。


 人体の大きさと形状から判断して、スーツの頭と手足は結構破壊しても中身は平気そう。腹部も頑丈(がんじょう)そうだし多少変形しちゃってもいいんじゃないかな?


 なんで先ず二台目の腹部に掌底(しょうてい)を放ってへこませる。


 ベコッと凹み、盛大に煙を噴き上げるのでとりあえず放っておいて三台目に回し蹴り。


 片腕がちぎれたけどそのまま回転しつつ軽くジャンプ。


 頭部を横から蹴り飛ばすとまるごと吹き飛んで、中に大きく口を開け、白目を()いた変なおじさん。


 肩の辺りに手を掛けて自分の体を引っ張り上げ、三台目の上を飛び越えつつ背中に蹴りを入れうつ伏せにひっくり返す。


 二台目のスーツを見やればまだ動けるようで銃口を向けようとしている。


 かおりがやってたの、まね出来るかな?異空間は無理そうだから、念動で足元の空気を圧縮、そこを蹴ってみたら案外いけた。


 空気の密度が濃密になって、ちょっと柔らかいけどなんとか足場に出来た。


 二台目に接近出来たのでそのまま手刀で銃口をたたき落とす。


 手首からちぎれちゃったけど、今度は頭部を蹴り飛ばす。


 まだ反対の腕を向けようとしてるな。しつこいぞ。


 肩から踵落としで半身を粉砕(ふんさい)する。


 スーツだけ吹き飛んだみたい。中の人の腕がぷらぷらしてる。そのまま倒れて動かない。


 残り二台はユリカが動けなくしたのでこれで終わりだね?


 フーッと息を吐き出せば周りが普通に動き出す。


 やっぱり、戦うつもりで動き出すと時間が引き延ばされてるみたいだね。


 最後に倒したスーツの人が化け物とか叫んでたっぽいけど。(おこ)った神様は化け物どころじゃ済まないって知らないのかな?


 土石流(どせきりゅう)火砕流(かさいりゅう)。大津波や火山噴火、大地震。人間にはどうしようもない災害を起こす物の怪(もののけ)、妖怪を神として(あが)め、(まつ)って(しず)めるのが信仰の始まりってパターン。かなり多いと思うんだ。


 (りゅう)なんて、その(さい)たるものだよ?


 そういや、ユリカの倒した分はやけに綺麗(きれい)だな。どうやったんだろう?


 指先でツンツンしながら、しげしげ(なが)めてたら説明してくれた。


「超高圧の振動波打ち込んで手足の骨を砕いたー」


 だそうな。


 わたしとどっちが悲惨だろうか?


「いやー。あっちに比べたら全然マシだと思うよー?」


 そう言って指さしのはさっき海上に落ちた宇宙船。


 外から集中砲火でどんどん形が無くなっていく。


 周りは何かシールドみたいなもので覆われていて、汚染が広がらないようにしてるからやりたい放題。


 あれ、抵抗するの止めれば良いと思うんだけど…


「無理だろーねー」


 ユリカと話し込んでいたら警備隊の人たちが重機とともに大勢やってきた。


 壊れたパワードスーツを運ぶらしい。


 まあ此所(ここ)に放置されると邪魔(じゃま)だしねぇ。


 中の人を先ず引っ張り出すとこから始めるらしい。


 離れるよう注意してくれたけど、それやった本人だよ?今さらじゃ無いかな?


 さすがに校舎からは見えないように周りをシートで(おお)ってから解体し始めたけど。


 作業が進む合間合間に「これ一体どうやって」とか「何を使えばこんな状態に」とか声が聞こえる。


「教えてあげても良いけど…実際目にしなかったら、絶対信じないよねえ」


 ユリアがもっともなことを言ってる。


 大型の戦闘車両と戦ってもここまで壊れないそうです。


 粉砕しないように結構気を使ったんだけどなあ。


「ね。鹿乃子(かのこ)連れて戦艦に乗り込んだ方がもしかして早かったんじゃないかな」


 ユリアがボソっと(つぶや)く。


「「言えてる」」


 ユリカと一緒に、わたしも思わず同意しちゃったよ。


 周りに迷惑与えずに済むなら中から思い切り壊し放題?


 鬱憤(うっぷん)を晴らすのには大変有効な物件では無いだろうか?


「「発想が怖すぎ」」


 そこまでやったらだめみたいです。


 ユリアの携帯端末に呼出しが来る。


「はい?あーOKすぐ戻る」


 手を差し出してくるので、ユリカとともに自分の手を重ねる。


 次の瞬間にはメンバーズルームに到着。


 すぐにカミーラの元へ向かいそのままテレポートして消えるユリア。


 治療(ちりょう)が必要な人がいるらしい。


「どっか、けが人?」


駆逐艦(くちくかん)被弾(ひだん)した艦があって重傷者がいるみたいです。美姫(みき)先生も行ってるんですけど、手が足らないって連絡が来まして」


 状況を訊いたらかおりが説明してくれる。


 治癒能力(ちゆのうりょく)か。わたしも使えれば手伝いが出来るんだろうけれど。


「鹿乃子ー。そんな万能人間になってどうすんの?得意な分野を()ず伸ばすべきと違うー?」


偽者(にせもの)ユリカがいる」


「偽者と違うー!たまには真面目(まじめ)になっても良いじゃんかー!」


「「「あはははははははははははははははははははは」」」


 周りで笑いが広がる。


 珍しくユリカだけぷんすこ状態。


 再びチャイムが鳴り響く。


 今度は安心感の有る鳴り方をしている。


宙賊(ちゅうぞく)の戦艦は、無事撃退致しました! (ただ)、事後の処理に時間が掛かり、現在も作業が継続しております。安全が確保出来たとは言いがたい状況です。皆さんは、所属する組織の責任者さんから本日の予定変更をご確認いただきたいと思います。詳細につきましては、早急に(まと)めた上で発表致しますので、終息(しゅうそく)宣言をお伝え出来るまでは充分にお気を付けてお過ごし下さい! 以上、姫野(ひめの)グループ広報専用総会長、姫野さつきでした!』


 お片付け要員以外は撤収(てっしゅう)という事かな?とミュラ姫に目を向けると、


「今回はもうちょっとお付き合いお願いね」


 だそうで。


 そこへ、ユリアだけ戻ってくる。


「ただ今。病院はなかなか大変だったわ。犠牲者無しってのが信じらんない位。もうちょっと防御力上げた方が良いのかなー?」


「それ、出回れば対応した破壊兵器が出来るだけで(いたち)ごっこでしょうに」


「だよねー」


 戻るなりミュラ姫と会話を始めるが、(たて)(ほこ)のお話になっちゃうんで結論が出ないよね。


「ユリア、カミーラと美姫ちゃん先生だけで間に合うの?」


「ああ、メグちゃんとさつき、リディアちゃん、香歩(かほ)ちゃんに(かおる)君にも行ってもらった。みんな回復能力が強力だからがんばってもらってるよ」


 治療の方が心配で訊いてみたら大勢がんばってるらしい。


「出番が無かったの、待機と防衛担当のわたし達だけですね」


 かおりがそんなことを言うけれど、最終防衛線が不要だったって上々の結果だろうに。


「防衛隊と警備隊が()れだけ優秀だったって事でしょ?今回みたいな案件で、かおりちゃん達まで活躍しなきゃいけない状況は考えたくないわねー」


 ユリアがそう返す。


「待機しただけでお給料が出る。最高」


 ルミ。隣で激しく同意してるミュウ。二人とも正直すぎです。


「あはははははははははははははははははははは」


 やっと機嫌が直ったユリカが決壊した。


 堤防(ていぼう)安普請(やすぶしん)過ぎるだろ。お前。


「質問。なんであんなのが流れてきたの?」


 ミュウが()いたこと、わたしも知りたい。なんだったんだ?あの連中。


 情報集まっているんだろうか?


 みんなの目がユリアとミュラ姫に集まる。とは言っても、他に今此所にいるのはNINJAペアとわたしとユリカにミュウの五人だが。


「連邦軍の哨戒艦隊(しょうかいかんたい)から逃げてきたらしいんだけど、詳細はまだ不明」


三艇(さんてい)で、此所を襲撃するためにうろうろしてたのを艦隊が見つけたんだけど、一艇だけえらく練度(れんど)が高くて逃げられたみたい。相変わらず手際が悪すぎるのよねぇ。あの連中」


「連邦軍を巻くことが出来たせいか調子に乗って予定通り此所を襲撃したらしいんだけど。一艇じゃねぇ」


「まさか、連邦軍の艦隊より(かた)い守りが有るとは想像出来なかったみたいですね」


 ユリアとミュラ姫で交互に説明してくれた。


 姫、連邦軍に何か(うら)みでも有るんだろうか?


「有ります。それはもう。山のように!」


 ごめんなさい。何か踏んじゃいけないとこ踏んじゃったみたい。


「「「あはははははははははははははははははははは」」」


 ユリカは判るけど、かおりとルミも大笑い。


 君たちも良い感情持ってないんだな?


「連邦宇宙軍は姫野グループの天敵(てんてき)です」


 (わか)りました。今度改めて(うかが)います。長くなりそうな案件(あんけん)なんで勘弁(かんべん)して下さい。


「えー?これから良いとこなのにー」


 姫が壊れた?


 そこへ、ユリアの携帯端末に着信が。


「はいはい?判ったわ」


 端末をポケットに収めて、


「薫君と香歩ちゃん迎えに行ってくるわ。治療が一段落したみたいだから」


 そう言い終えると同時に消える。


 良いなあ。あれ。わたしも使いたい。


「だぁかぁらぁ。そんな完ぺき超人目指さないでってばー」


「出来そうなことは何でもやりたい!」


 ユリカが賛成してくれないんで、力一杯宣言してみた。


「欲張りすぎ!あはははははははははははははははははははは」


「あらあら、(にぎ)やかですね」


 この声、学園長だ。


 いつ帰ってきた?


「初めまして?で良いかしら。姫野紗耶香(ひめの さやか)です。ユリアちゃんほどじゃないけどテレポーターです。学園長なんて肩書きがあるけど気にしないでもらえると嬉しいわ」


(まき)鹿ノ子です。龍神(りゅうじん)に成り掛かってますが、修行中ですので(よろ)しくお願いします」


 名前に合わない綺麗(きれい)なブロンドロングヘアの美人さん。身長はあるな。わたしよか高い。


 姫野って家系はみんな こう、名前と見た目が合わないんだろうか?


「私とさつきちゃんぐらいですよ?名前と外見が合わないの」


「紗耶香ちゃん。にゃんこさんフル装備ですね」


 姫?それは今言っても平気なの?


「にゃんこさん…?て。ネコかぶってっるて言いたいの?ミュラちゃん!」


 姫。すっっかり[にゃんこさん装備]お気に入りの様子(ようす)


 事あるごとにぶっ込んでくるな。


 ところで、取っ組み合いしてるんだけど?誰かー。説明。ヘルプー。


「仲良しさんだよー」


 あ。了解。


「「ちょっと。ユリカちゃん?説明、雑すぎません?」」


 息ぴったりだー。


「「「あはははははははははははははははははははは」」」


「あー。紗耶香ちゃん。ネコさん脱走してるねー。随分早いなー」


 小鳥遊(たかなし)嬢がご帰還だ。羽根(はね)君も帰ってきたかな?


「ユリア。お疲れー」


 取り合えずユリアに(ねぎら)いを。


「鹿乃子ちゃん。香歩ですよー。よろしくねー」


 香歩さんと呼べと。かなり薄い茶髪で肩甲骨を(おお)う位のロング。顔立ちはほわほわしてて可愛らしい。ちょっと垂れ気味でおっきな目が特徴的。


 身長やや大きめ。百六十あるかないか?


「羽根薫です。まず此所に来ないんで今後も余り顔を合わせる機会が無いかもしれないけど宜しく」


 線の細い美形男子です。髪は黒く、光が当たった所が茶色に輝いてる。


 長身。百九十超えてそう。


「槇鹿ノ子です。龍神初心者です。宜しくお願いします。後、羽根先輩はどんどんクラブルームにおいで下さい。美形は()でるためにいるものですよ」


 ブーッと盛大(せいだい)に吹き出す音。ユリアが珍しく真っ先に決壊した。


 声も無く、お(なか)を抱えて羽根先輩を指差したまま机に突っ伏してぷるぷるしている。


 羽根先輩は真っ赤にゆであがってオロオロしている。


「あっはっはっはっはっはっ。苦しいー。美形ー。初めて聞いたー」


 机の上でゴロゴロしながら(もだ)えるユリア。


 ちょっと反応極端過ぎね?


「羽根君はユリアちゃんの彼氏さんですよ。鹿乃子ちゃん」


 あぁ!そうなんだ!貴重な情報を有り難う!かおり。


 そうと判れば、二人並べて愛でるべし。


 と言うわけでセッティングをば。


「せんでいい!人前でいちゃつく趣味は持ち合わせとらんわ!」


 ユリアに首根っこ押さえられた。


 復帰するのが早過ぎるよ。


 残念だー。


「「「あはははははははははははははははははははは」」」


 それを見て笑うのはユリカとかおりとミュウ。


 ユリア。照れてほっぺがほんのり赤い。


「それよか、紗耶香ちゃん!状況確認して指示出ししてよ。みんな待機してるんだから」


 照れ隠しを兼ねて話題を変えるユリア。


 (にら)まれた!


「あー。そうだそうだ。学園のことは私が決めるんだったわね。みんな解散でいいや。何かあったら緊急招集するからよろしくねー」


 其れだけ言い切ると手を高らかに振りつつテレポートで消える。


「「「「「「「「「雑さ加減にも程があるだろー」」」」」」」」」


 みんなの心が一つになった。


 学園長の性格が大体つかめたよ。


「あー!もーっ。校内放送わたしが入れなきゃいけないじゃん。紗耶香の奴め。後で絶対絞める!」


「わたしも協力する!許すまじ学園長!」


 ミュラ姫とユリアが燃えている。


 結局、姫が独断で本日は帰宅後自宅待機。明日は休校で安全宣言が出なかったら自宅学習。出たら自由と決めて校内一斉放送で伝達。


 中等部、初等部も同様に。大学部に関しては責任取れんと放置の模様(もよう)


「教授連中に学園長に聞いてくれってメールを送って、と。よし。みんなが帰ったらあたしたちも返りましょう」


 そう言いながら、ミュラ姫? 今携帯端末の電源切りませんでしたか? ああ、部屋にいるみんなも端末を取り出して電源切ってる? 良いの? それでいいのか?


 全員が(うなづ)いているのでわたしも見習おう。


 その後、モニター画面で生徒学生が帰宅。職員も片付けを終えて帰宅してゆくのを確認する。


「ミュラ姫。さっきから姫の専用端末ペコンペコン鳴ってるけど。何?」


「いいのいいの。ほっといて大丈夫よー」


 あれか。学園長からのメールだな。


 携帯端末、電源切っちゃったからあっちに送ってるんだな。きっと。


 初、中、高の各建物が戸締まり完了したので帰宅します。


 裏口かな?職員専用の出入り口なんだそうで。そこから校舎外へ。


 香歩ちゃんはコミューターで。


 ユリアは薫君連れてテレポートで消えていった。


 残った六人はユリカの家に帰ります。


 例によってふわりと浮いたミュウちゃんを、今日はミュラ姫に任せる。


 ミュラ姫は一緒に浮き上がって後ろからミュウを抱きかかえ、そのまま(すべ)るように動き出す。


 他四名はいつもの通り()け足で。


 なんだかんだ、時間が過ぎて、もうすぐ日が暮れる。


 ツイッギーには例によって盛大に心配されつつ挨拶(あいさつ)を交わし、やがて家に着く。


「あー。今日はお腹いっぱいの一日だったー」


 ほっとしたのか、つい声に出た。


「「あはははははははははははははははははははは」」


 かおりとユリカがすぐさま反応するしな。


(ただ)し、夕飯は別腹です」


 夕飯抜きは嫌なのですぐさま宣言する。


 危ない危ない。


「「「「「あはははははははははははははははははははは」」」」」


 全員に笑われた。


 のんびりと夕飯を摂って、さすがにいつもほどには騒ぎにならず、みんな(そろ)ってリビングでほけっとしている所。


 ああ。そう言えば、夕食中に安全宣言が出た。


 放送の担当はレイナさんだった。


「レイナちゃんが担当したのは、さつきが安全宣言しても信用されないからだよ」


 と言うユリカの一言には全員で爆笑したけど。


「さて。ミュウちゃんちょっと手伝ってくれないかな?」


 と、ミュラ姫が唐突(とうとつ)に言い出す。


「何するの?」


 当然の質問に、かなり悪い顔になったミュラ姫が答える。


「連邦軍に抗議(こうぎ)文提出と損害請求するのよ。お前らがへましたおかげで大損害だぞーって。資料纏めるのと映像編集手伝って欲しいの」


「判った。たっぷり請求しましょう。そうしましょう」


 非常に乗り気になったミュウが怖いぞ?


「「あの馬鹿提督(ていとく)。絶対に泣かしてやる」」


 うわー。


 二人揃って真っ黒な顔になってるよ?


 何をそんなに()め込んでるんだろう?とっても怖いんですけど?


 全身から黒いものが出てるような雰囲気の二人が地下に降りていくのを黙って見送りました。


 かおりとルミも抱き合って震えてるし。


 ユリカだけは毛玉になって転がってるけどな。


 唐突に電話の呼び出し音が聞こえてきた。


 電話、有ったんだ。


「さつきから?」


 ユリカが壁際の端末画面に向かう。


 あれって、朝使ったインターホンだよね?


「ビデオフォンですよ。インターホンも兼ねてますけど。どの部屋にも付いてますから使い方お教えしますね」


 早く教えて欲しかったですよ。かおりさん。


「ごめんなさい。知らないとは思わなかったんです」


「ごめんなさい。常識が足りてません」


 かおりに謝罪されて、思わず(あやま)ってしまう。


 お互いにペコペコとお辞儀(じぎ)合戦に。


 そこに、


『なんでみんなして携帯端末の電原落としてるのさー!』


 と言う大声が聞こえて、ユリカがまた毛玉になる。


『ちょっと!ユリカ!説明しなさいよ。笑ってるんじゃ無いー!』


 追撃が来て四人揃って大爆笑。


「さつき。さつき。紗耶香がやらかした」


 真っ先に復帰したルミが説明…かな?


『あー。納得した。明日みんなでこっち来て欲しいんだ。都合(つごう)付く?』


 あれで納得出来るんだ?どんだけやらかしてるんだ?学園長。


「問題ない。何時に行けば?」


『九時までに来て欲しいかな。無理なら連絡して?』


「了解ー」


 と、トントン話が進んで電話が切れる。


 ユリカはまだ笑っている。


「ミュラ。ミュウ。明日九時までにお城集合」


 そのまま姫のところに連絡している模様。


『判ったわ。有り難う』


 と返事が返って連絡終了。


「ルミちゃんマジ有能。ユリカだと話が全然進まなくなるのは何故(なぜ)だろう」


「鹿乃子ちゃんはユリカちゃんのこと言えないと思いますよ?話を混乱させる大天才さんじゃ無いですか」


「えー?」


 疑問を口にしたらすかさずかおりに反撃をされた。


 おかしいな。場を(なご)ませようとしてるだけなんだけど。


「やり過ぎです」


 ピシッ!と指を一本立てて、まじめなかおで一言。直後に決壊するかおり。


「あはははははははははははははははははははは」


 ルミ。助けて?


 肩を(すく)めて首をふるふるされた。横方向に。


 待ってるのももったいないのでルミを引っ張ってお風呂に直行。


 二人でふにゃーっと溶けていたらユリカとかおりも入ってきた。


 後から来た二人に付き合ったせいでややのぼせてお風呂から上がる。


 ルミと二人、ふらふらしながら、それじゃまた明日と部屋に向かう。


 その様子を、かおりとユリカがずーっと笑って見てるしな。


 布団(ふとん)に入ってうとうと始めた所で龍さんからお知らせが。見通し距離で、瞬間移動が可能になったそうですよ?


 瞬間移動ってなんだっけ?


 眠くて理解が進まない。


 龍さんが笑ってるから明日でも平気かな。


 それでは、おやすみなさい。

三十六日目に続きます

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