二月四日 パワードスーツ
三十五日目です
前編です
戦艦と駆逐艦のサイズを間違えていたため、修正致しました。2022/2/3
星暦二千百十一年二月四日 水曜日
お早うございます。
かなり曇ってますけど雨は降ってません。
ミュラ姫を除く五人で朝食を済ませる。
姫は、学園に向かうのはお昼頃だそうで、自室にてお仕事中とのこと。
あれ?でも姫のお部屋って、まだ何にも用意出来てないよね?
「昨夜の内に地下経由で色々やったらしいー。今朝覗いたら結構それなりになってたー」
早いな、もう覗いてきたのか?ユリカ。
「家主の特権ですー」
絶対に違うと思う。
「単なる野次馬?」
ミュウの意見に一票。
「あはははははははははははははははははははは」
朝から喧しい。
「鹿乃子、ひどいー。あはははははははははは」
「かおりとルミも、呆れて笑ってるじゃないか」
クスクスしてる二人を示す。
「あれは鹿乃子とユリカ、二人に呆れてる?」
「えー? そんな! ミュウ。違うと言って」
「「「「あはははははははははははははははははははは」」」」
わたしは違うと主張したら、四人に爆笑された。
何故だ?
「そろそろ出かけませんか?」
ほっとくといつまでも笑ってそうなので声を掛ける。
「じゃ、姫に声掛けとくー」
ユリカがリビングに抜けるダイニング側の壁に付けられた端末に近寄って声を掛ける。
「姫ー。先に学園行くねー」
『はーい、気をつけて行ってらしゃいー』
スピーカーから姫の返事が聞こえた。
「此所で話が出来るんだ」
「あや?説明してなかったー?大抵の部屋に付いてるよ?インターホンとも繋がってるからねー。帰ったら詳しく話すよー」
ユリカ、他にも説明し忘れてないか?色々とありそうな予感。
こいつ、わざと話してない疑惑があるからなぁ。
前科もいっぱいあるし。
「ユリカは刹那的な生き方を改めるべき?」
「ミュウちゃん!ひどっ!」
ミュウの言う通りだと思うけどなあ。
ほら、NINJA二人も賛成してる。
「…味方がいない…」
「置いてくよー」
しょんぼりしたユリカに声を掛けて歩き出す。
「放置反対ー」
ユリカが叫んでまた笑いが起こるけど、無視だ無視。遅刻するぞー。
鞄を背負って玄関へ。
みんな揃うのを待ってミュウが浮く。
ユリカと二人でミュウを引っ張りいつものコース。
日課の挨拶を繰り返して学園到着。
「おはよー」
と声を掛けてホームルームに突入したら中に居た全員から「お早う」が返ってきた。
一部恥ずかしげな男子もいるけど目標達成。
良し!とガッツポーズを決めたらみんなから拍手が。
ノリの良いクラスでありがたい。
「鹿乃子ー。キラッキラの、挨拶返してオーラが全開爆発してたら無視出来ないよー?」
「えー?」
ジーナがひどいことを言うので非難の声を上げたらクラスが決壊。
「なにごとなの?」
そこに、わたし達の後で登校してきたクラスメイトは何が起きているんだろうと入り口付近で固まっている。
「鹿乃子のピンポイント爆撃炸裂ー」
入り口付近で説明する静香の言葉に、ああ、納得という表情で自分の席に向かう面々。
わたしの認識が爆撃機で統一されている?
両手を広げて「ブーン」とやりたいのを必死に我慢。
多分、みんなプロペラ飛行機なんて知らなさそう。
「さすがにジェット機以降でないと解らないんじゃないでしょうか」
クスクスを続けながらかおりが突っ込んでくれた。
また声が出てた模様。
もうじき始業時間なんだけど、重役ペアがなかなか来ないな。
そう思ったら[ピンポンピンポン…]と、何となく引きつけられるんだけど、微妙に間の抜けた感じのチャイム音が響く。
校内放送じゃないな。なんだろう?
「星域非常放送ですね。何かやっかい事の予感しかしませんけど」
かおり、解説有り難う。
『緊急のお知らせをします!現在夜間の地域の皆さん。お騒がせしてごめんなさい!ただ今、惑星全土に空襲警報を発令します。宙賊の戦艦が一艘接近中!防衛隊が対応を始めておりますが、念のため警戒をお願いします。目標地点は海上都市と思われます。海上の船舶は至急近隣の港へ避難を。飛行中の航空機は緊急着陸をお願いします。地表の皆さんは、最寄りのシェルターを確認して、避難出来るよう準備しておいて下さい。 以上、姫野グループ広報専用総会長、姫野さつきでした!』
もう一度チャイムが鳴って放送が終わる。
いつもの調子で、ほとんど緊迫感がないままに、なかなかに物騒なことを淡々と告げてきましたな。
これ、もしかして、世界中に放送されてるの?
「世界中、と言いますか、惑星中ですね。同じ内容が携帯端末にも送られてますよ?どうやら此所に向かってるみたいなんで、一応クラブルームに行きましょうか」
かおりの言葉に頷いて、クラスのみんなに手を振って移動開始。
頭の中で龍さんがフラグ回収終了だねって笑ってますが…
ちょーっと斜め方向にぶっ飛んでいったかなー。
やれやれ。
クラブルームに到着。
ミュラ姫、カミーラ、ユウジ君、ユリアも居る?
他、見かけない顔が三名ほど…
あ、一人は学園長だ。
「学園長の[姫野 紗耶香]さんと男子が[羽根 薫]君。女子が[小鳥遊 香歩]ちゃん。どちらも高等部二年生です」
さらっとご紹介下さいました。かおりちゃんマジ有能。
「んじゃー、紗耶香ちゃんと香歩ちゃん。初等部の防衛。薫君とユウで中等部。かおりと姫で高等部を防衛ね。ユリアは移動のお手伝いメインで、ルミは足止め要員。カミーラは救護。私とかの子は遊撃。ミュウが待機。で、良い?」
パパッと配置を決めるユリカ。
そうすると残りはどうするんだろうとか色々あるから聞いてみる。
「大学部はどうすんの?後 中央とかそれ以外の施設は?」
「学部はメンバーズ居るからお任せするー。他の施設は警備部と防衛隊でなんとかしてもらうよー」
「んで、一番の質問が一つ」
「はい?」
「宙賊って何?」
ガタン。
音を立ててひっくり返るユリカ。
「あはははははははははははははははははははは」
「えーと、海賊は解りますか?ドクロの旗を掲げて大航海時代に海上を荒らし回ったという伝説の」
「おお。一般的によくイメージされる姿ですね」
「あれの宇宙版と思っていただければよろしいかと思います」
大笑いのユリカをほっぽってかおりが説明してくれた。
「宇宙船にドクロの旗かー。奇抜な集団だね」
「ブフ!鹿乃子ちゃん?いくら何でもイメージがストレートすぎませんか?」
一瞬吹き出し掛けて必死でこらえ、涙目でぷるぷるのかおり。
周りでみんなピクピク痙攣してますな。
ユリカは既に毛玉化中。
誰もわたしを見てくれません。
「嫌われちゃった?」
どっと一斉に大笑い。
「緊張感のかけらも感じない子。大物過ぎるー」
香歩さんがわたしを指差してお腹を抱えて転げ回る。
「は、話には訊いてたけど…これほどとは…」
学園長、丸くなってぷるぷる震えてる。
「「俺たちはノーコメント」」
笑いを必死にこらえて男子二名は逃げるように室外へ。いやいや、実際に逃走した?
「あー、待って待って、送りますからー」
いち早く復帰したユリアが慌てて後を追う。
ややあって戻ってくる。
「学園長、香歩ちゃん。送ります」
まだ笑い続ける二人の肩に手を置いて、二人もろとも消えるユリア。
「あ、テレポーテーションかー」
ぽんと手を打って、さっきユリカの言った移動の手伝いが理解出来た。
「あー。今日も絶好調だねー鹿乃子」
ユリカがやっと復帰。
「準備段階なのに疲れ果てた」
机に突っ伏して文句のルミ。
「作戦始まってから爆弾落とさないでくれよ?フレンドリーファイアは勘弁して欲しい」
椅子にもたれながらカミーラの苦言。
「いやー。何が起きてるのか理解出来ないんでー。やっっかい事ではあるんでしょ?」
「はー…そこからかー…かおり。頼むわ」
椅子から半分ずり落ちるように脱力したカミーラが、かおりに無茶ぶりをする。
「わたしでも良いですけどー…」
そこに二人を送り届けてユリアが帰還。
「鹿乃子ちゃんへの説明でしたらユリアちゃんが適任じゃないでしょうか?」
あ。かおりも丸投げする気だ。
二人揃って帰ってきたばかりのユリアを見つめる。
「何よ?その目は」
「鹿乃子が現状理解出来て無いっぽい。説明ー。よろ」
カミーラがパタパタ手を振って丸投げする。
ジトっとカミーラを睨んだ後わたしを見つめて…はーっと盛大に溜息をつくユリア。
ごめんなさいね。めんどくさい女で。
「違う。ごめん。この連中が何も説明してないのにがっかりしただけ。鹿乃子は悪くない」
カミーラ始め四人で部屋の隅っこにこそこそ避難していく。
「後で絞める」
四人揃ってビクッとする。
「まだ一時間ぐらい余裕あるからゆっくり説明するよ」
こっちこっちと椅子を持ってテーブル形の端末へ手招きするので、わたしも椅子を引きずって近くに向かう。
「そっち四人。ちゃんと監視」
「「「「はい」」」」
四人は壁の一面がモニターで埋められた一角に並んでそこに映る外の様子を揃って監視し始めた模様。
ユリアは、テーブル面になった端末画面に[太陽系(仮)]の模式図を呼び出す。
いや、画面の左下に[太陽系(仮)]って書いてあるからすぐ判った。
「めんどいから(仮)は飛ばすけど、これが地球。この赤い△が今此所に向かってきてる宙賊。青い△が地球の防衛隊。既にドンパチ始まってるけど、敵さんが使ってる宇宙船って、一隻だけとはいえ、全長が三千メートル級の戦艦なんだよ」
「三千メートルというと相当でっかい?」
「かなり大きい。防衛隊が持ってる宇宙船は四百メートル級の駆逐艦が最大なんだ」
「勝負にならない?」
「うーん、数が二十五出てるからそこそこ良い勝負になるとは思うけど、正直きつい」
画面の赤い△がまっすぐ進み地球に近づく。
青い△は周りを取り巻くように近づいたり離れたり。
「突破されて地球まで来ちゃう?」
「おそらく。だから、防衛隊は宙賊の大型の兵器を破壊することを目的にして攻撃してる」
そこで、赤い△が拡大されて、なんかごっつい宇宙船?が映る。
表面に大砲みたいなのがいっぱい付いていて、それに赤いバッテンが次々に書き込まれる。
「地球で強力な攻撃が出来なくなるように?」
「そうそう。で、多分地表まで降りてこようとするはずだから、大気圏に入るとき集中攻撃して先ずシールドを飽和させる予定」
「大気圏突入の時の高温でダメージを与えると?」
画面上で集中砲火でシールドがはじけ、大気圏に入って先端から順に真っ赤になっていく大型宇宙船の図。
「さすが。そこまで理解出来るか。そうすれば戦艦表面の装備は全滅するから、今度は艦載してる兵器が出てくると思うんだ」
「沢山載ってそうじゃない?」
「百ぐらいだと思う。それも割と小型の機体」
「それで、此方は?」
「さすがに航空戦力はかなり持ってるから三倍以上の数で迎撃予定。問題はあちらさんがパワードスーツとか装甲服とかって言う強化装備を持ってた場合」
画面にいくつかのタイプのロボットみたいなのが出てくる。
「これが割と有名何処のパワードスーツや装甲服。人型だから飛行機だと非常に相手をしづらい」
「いくつか地上まで来ちゃうと?」
画面が海上の人工島を横から見た絵に変わる。
その周りをシールドを表す線が囲み、そこに模式化された装甲服が突っ込む。
一瞬動きが止まって、表面の一部が壊れながら地上まで降りる装甲服。
「こんな感じで、シールドで有る程度壊せるけど完全に侵入を防ぐことは出来ないと思うんだ」
「それを地上の警備隊さんが相手する?」
「うん。重要な工場や中央は。市街地は防衛隊が出る予定だけど、此所。学園区がね」
「わたし達がいるから誰も来てくれない?」
「いや、防衛の必要が無いとこから順次来るよ?けど…」
「時間掛かるかー。メンバーズがいる前提の防衛策って有り?」
「メンバーズがいるから防衛予算に制限が付けられてる」
「判ったー。わたしはユリカとそれをぶっ飛ばせばいーんだね?」
「…中に人がいるよ?」
「他人に武器を向ける人に手加減する気は無いよ?」
「…平気?」
「その結果人が死ぬこと?大丈夫。わたしの育った環境は、基本自己責任だから」
じいちゃんに散々言われてた。人に武器を向けるときは自分が死ぬ覚悟を持てって。
相手は此方を傷つけるつもりで向かってくるんだから、遠慮したら 最悪、自分が死ぬ。
武器を持って襲ってくる相手から身を守るため、相手を死に至らしめた場合は言うに及ばず、 双方武器を使ってケンカをしたら相手が死んでも正当防衛が成立する。
世界大戦でアメリカに勝ってからそれなりに色々有って、軍国主義はなりを潜めたけど自分の身は自分で守る気風は廃れずに資本主義の民主政治に移行した。
歴史を教えてくれたじいちゃんが、争いの場で身を守るために遠慮は無用と繰り返し言っていた。
一人で外出なんてほとんど出来ない立場ではあっても、巫女修行以外では常に短刀を身につけていたしな。
そんなことを伝えたら納得してくれた。
「大丈夫。皆殺し案件にはしないから」
「了解。任すよ」
「半殺しはOKだよね?」
「控えめにして?」
「何を言う。暴漢なんぞ一撃で意識を刈り取らなきゃ何をしでかすか判らないよ?」
「鹿乃子。怖すぎ」
何か距離を取ろうとするユリア。そこで引くなよ。
「ユリカそっくりなことを言う」
それは嫌かも。
「割と進展早め。来たよ」
ユリカから声が掛かる。
「よりによって此所に来るかー」
「運が悪いなー」
「連中のね」
「「「「違いない」」」」
順に、ユリカ、カミーラ、ルミの発言。最後はかおりを含む四人の総意。
「この連中も充分怖いよ?」
ユリアに問い掛ける。
「わたしは運び屋。結果までは責任持たないよ」
「ユリアが宇宙船ごと太陽までテレポートしてたたき込んじゃえば早くない?」
「やだよ。そんなことしたら調査も何にも出来なくなっちゃうよ」
「出来るの?」
吃驚だよ。被害出る前にやってよ。
「人的被害が出そうならやるよ。そうならないようにがんばれ」
スパルタだなー。防衛隊の訓練を兼ねてたりしない?実績を積めとか言い出した人がいたりしない??
その方が怖いよ?
画面上、大量の煙を噴き上げ、あちこち爆発を繰り返すでっかい宇宙船が海に落ちる。
そこら中から飛行機や人型をしたものが出てくるが、片端から撃墜されていく。
人型。パワードスーツってやつらしいんだけど、何台か島に向かってすり抜けてくるのがいる。
此方の航空機は小回り出来なくて撃墜出来ないみたいだけど、なんとか散らばって逃走されないよう誘導は出来てるらしい。
てか、此所へ。学園に向かって誘導してないか?連中。
「あー、此所に追い込んでるなー」
カミーラが呟く。
やっぱりかー。
「最大戦力が此所にいるからなー。がんばれよー二人とも」
?
「ユリカは一人しかいないよ?」
カミーラの台詞が意味不明なので訊き返す。
「お前ら最強コンビだろ?」
「わたしもかー?」
「校庭に降りそうだし、行きましょうか」
ユリアがわたしとユリカの肩に手を置く。
同時に視界が校庭に切り替わる。
「マジですかー?」
まだ納得出来てないですよ?放置しないでくれません?
そんなことを騒いでいる間に最後まで逃走を続けた五台のパワードスーツが上空でシールドに引っかかる。
ドーンという音がして一瞬動きが止まった後、背中から煙を噴き上げて、何かの装置と背中に生えていた羽根が吹き飛ぶ。
「うまい。飛行ユニット破壊出来た。これなら地上戦で片付く」
暇なんだろうか? ユリアが後ろで解説を始めたよ。
後編に続きます




