二月一日 住所変更
三十二日目です
星暦二千百十一年二月一日 日曜日
第四ラウンド最初は、改造バイクで怪人と戦う道交法的にあれな変身ヒーローをいくつか。
ここまで脱落しそうな人は無し。
みんな、かなりお好きな模様。
その後も、地球から 攫われて、ロボットになって帰って来た兄弟とか、白人が迫害される原始時代の話や、火山から飛んでくるロボットと友達になるあれとか、赤いマントの少年がイルカと世界を旅する話とか。
完ぺき超人の兄妹が学校で大暴れの話や、戦車で大暴走する女子高生、怪力とメカオタの女性警官ペア、見習い魔女っ子五人組プラス一さらにプラス一の大騒動物語、女子高生達が駆逐艦で海上ドリフトする話、コインを超音速で発射する中学生少女などなど。
気が付いたら朝ご飯の時間過ぎてるじゃん。
「あらあら。あたし午後からお仕事だし、一眠りしますね」
リディアさんが退出。
「モーニングセットでも頼む?」
「異議無し」×十人
泊まる予定だった部屋に配達を頼んでから移動。
明るくなった外を眺める。
目を休めているとチャイムが鳴って朝食到着。
トーストやロールパン、クロワッサンなどいろいろに目玉焼きとサラダ、濃いめのコーヒー又はジュースか牛乳。
ゆっくりいただいて目の疲れが治まってきたのでベッドに向かったらさつきが後ろから羽交い締め。
「逃がさないよ!鹿乃子ちゃん。まだまだこれからです!」
「ねーかーせー。眠いんだよー。はーなーしーてー」
ジタバタしてみる。
「秘密兵器発進。行け!アルファ」
「鹿乃子ちゃん。もうちょっと見よ?」
「ひーきょーうーだー。断れなーいー」
ミュウの指示で、小首をかしいげて上目遣いのアルファがおねだり。断れません。
引き続き鑑賞会がスタート。
現在部屋にいるのは九人。
カミーラが逃亡済み。
ミュラ姫もいつの間にか布団に潜り込んでたんで置いてきた。
アルファは眠くなったらしくてわたしの隣で寄りかかって来てうとうと中。
かおりはユリアにもたれて居眠り中。
ユリアも半分夢の中。
わたしもアルファをなでなでしながら睡魔と格闘中。
なので、何を上映してたか記憶が…
今映ってるのは、水力が動力源の赤い巨人。
「ルミ。ミュウ。次ので終わりにしよ?」
「「ういー」」
さつきも疲れてきた模様。
最後の一本は、町奉行の与力が二本の十手で変身する話。
そのまんまだ。
ああ。眠いのでうまく説明出来なくなってきた。
…
…
…
ふと気が付いたら、ミニシアターの椅子で寝ていた模様。
アルファはわたしの膝を枕に寝ちゃってるし。
あぁ。首が痛い。結構長い時間寝てたかな?
時計を見たら十六時回ってる。
スクリーンは相変わらず奉行所の役人が変身してる。
ああ。さつきがシリーズ再生掛けたまま寝落ちしたのか。
ルミとミュウは相変わらずだ。元気だなあの二人。
あっちこっち、寝落ちした面子ばかりだね。毛布が掛けてくれてあるけど誰だ?
「鹿乃子起きたんだー」
ユリカが来た。手に毛布持ってる。
「毛布、ユリカが?有り難う」
「さつきちゃん。最後だよって言った割りに次の話が始まったから、あれって思って見たら寝落ちてたよ」
ちょうど最終回が終わり、スクリーンがブラックアウト。
ユリカが再生装置を止めて照明を明るくする。
「「堪能した」」
例の二人は非常に満足そうです。
部屋が明るくなったせいか、寝入っていたみんなも、もぞもぞと動き出す。
「あー。寝ちゃってた」
「今何時?」
さつきとユリアが起きた。
かおりが起き上がって目をこする。
不意に、ガバッと アルファの足を抱き込むように寝ていたメグが起き上がる。
半眼で辺りを見回し、二、三度頭を振ってシャキッとする。
メグが動いたので、アルファも目覚めた様子。
わたしを見上げて、自分の状態に気付いたかちょっと赤面。
「ごめんなさい。枕にしちゃった」
そう言いながら起き上がる。
「全然かまわないよ。アルファ、軽いし、可愛いし。むしろご褒美です」
真っ赤になって肩をぺしぺしされました。
満足です。
「アルファが可愛いのは世界の常識です」
なんかメグが偉そうに宣う。
ますます赤くなって俯いたアルファがメグをポカポカし出す。
「あはははは。ご褒美ご褒美」
されるがままのメグ。
「そろそろ十七時になるけど帰るー?」
ユリカの台詞ではっとする。
今日は日曜日。明日、学校じゃん。課題やってない。
「帰ろう。速やかに帰って課題する」
そう宣言する。
「「「課題があった!!」」」
NINJAペアとユリカも はっとなって叫ぶ。
「メグちゃん、送ってあげて?」
「はーい」
ユリア。ありがと。メグ宜しく。
バタバタと泊まる予定だった部屋に移動して慌てて着替え。
みんなパジャマにガウンだもの。そのままじゃ帰れない。
ミュラ姫とカミーラはみんながバタバタしてるのも知らず、ぐっすりお休み。
「この二人は?」
「ほっといて良いよ。後でたたき起こすから」
どうすれば?と訊ねたらユリアの容赦ないお答え。
任せた。
荷物を纏めて玄関前のロータリーへ急ぐ。
玄関を出るとき勤務中のリディアさんにご挨拶。
飛行型のコミューターに乗って発進。
「あれ?自動運転じゃないの?」
メグちゃんがレバー持って操縦しているっぽい。
「自動だと最大三百キロしか出してくれないからー。手動運転中ー」
あれか。最高七百キロって自動運転じゃないんだ。
程なくユリカの大邸宅に到着し庭先に着陸。
「はーい降りて降りてー」
いや、メグちゃん。降りるのはユリカだけ。
「えー?みんなここに住所変更されてるよー?」
…
は?
…
なんですとー!?
「あたしがひまわり区に引っ越そうかと思ったけどー、みんなでこっちの方が面白いかと思って手配してみたー!」
どうだ!と言うユリカの頭を平手ではたく。
「何勝手に人の住所変更してんだよ。てか、出来るのかよ。勝手にそんなこと」
「痛ーい。ひどいよー。ちゃんと鹿乃子に同意確認のボタン押してもらったじゃんー」
何を言ってる?
…
あ!!
「あのときの端末![YES]ボタン無理矢理押させたヤツか!」
「無理矢理じゃないよー。[NO]が押せないようにしただけだよ。人聞きの悪いー」
「それを無理矢理と言うんだ!!」
ユリカを抑えてこめかみをぐりぐりと。
「痛い痛い痛い。あはははははははははははははははははははは」
他三人は、芝の上で団子になって三姉妹状態。
全員知っていた模様。この連中は…
なし崩しで、共同生活に突入することになってしまった。
あ。課題。
「荷物。色々持ってこないと課題が出来ない」
「引っ越し、終わってるよー。昨日のうちに業者さん頼んどいたー」
…
もう何も言うまい。
それでも何か悔しいのでもう一回ぐりぐり。
メグちゃんにお礼を言ってお見送り。
ユリカの案内で家の中へ。
玄関を入って右手側にNINJAの二人。
反対側の玄関脇がユリカ。
その二つ隣のドアに案内される。
「隣じゃだめなの?」
不思議に思ってそう訊ねると、
「隣だよ?」
と、要領を得ないお答え。
「これがリビング側」
と目の前のドア。
「あっちが水回りの部屋」
と更にとなり、一番外れを指差す。
?
…
「どっちも鹿乃子の部屋。出入り便利なように二ヶ所ドアがあるよ」
「ちょーっと待とうか。ユリカ。そうすると何か?一人一部屋じゃなくて、マンション並みの部屋割りが一室って事か?」
「そうそう。理解してもらえて良かったよー」
「状況の把握は出来たが理解なんぞ出来るか!なんて家を建ててるんだよ」
最初から仲間と共同生活する気満々じゃないか。恥ずかしがり屋さんの照れ隠しだな?さては!
「ごめんね?強引で…」
ちょっと頬を赤らめてもじもじするユリカ。
珍しいモノが見れた。
「ありがたく使わせてもらうよ。有り難う。ユリカ」
ボン。って感じでユリカが真っ赤になった。
「うわぁー」
叫びながら自分の部屋に飛び込んだ。
ちょっと、突然すぎて固まっちゃったよ。
初めて見せてくれたユリカの表情に、にまにましながら貸してくれた部屋のドアを開け、中に入って明かりを付ける。
畳の匂いがする。
間取りはアパートとそれほど違いは無いみたい。
配置が若干違うのは出入り口が逆になったから。あと、広くなってる
隣のドアはアパートの勝手口当たりになっている。
各部屋は少しづつ広くなってるみたい。
居間兼寝室にしていた八畳間の畳が運び込んでくれてあった。
但し、部屋の半分がフローリングのままだから、かなり広いんだ。
アパートの配置の通りに、やや広くなった部屋に家具やら端末やらが置いてくれてあるのを確認していると、突然壁際辺りから声が。
『鹿乃子ちゃん。夕食にしませんか?準備出来ましたよ』
かおりの声。
インターホンか。入り口にあったなそういえば。
「今行くー」
そう答えて部屋を出る。
「準備するのが随分早いけど、お弁当でも買ってきたの?」
気になって訊いてみた。
「いえ、ここ、自動調理器設置してあって、材料セットしてボタン押せば五分位で大概のモノが出来ちゃうんですよ。速くて美味しいし、便利ですよ」
割と頻繁に来ていたのか慣れてるみたい。
「この家、去年の夏頃完成したんです。それから時々お邪魔してました。自分が住むとは考えてませんでしたけど」
クスクス笑いながらそう話す。
「同学年でこんなにメンバーズの生徒が集まるの、かなり珍しいんですよ。鹿乃子ちゃんの話が昨年流れてきてから色々動き出してましたから、そうなんでしょうね」
なんと答えて良いか判らない。
自分で顔が赤くなってるのが判る。
体が熱い。
隣でクスクス笑われて恥ずかしさがあるけど、それより何より、とにかく嬉しい。
案内されて食堂に行くと、まだ頬に赤みが残ったユリカと、眠そうなルミが待っていた。
我慢出来ず、立って此方を向いているユリカに近寄り、膝を着いて抱きしめる。
「有り難う」
もう一度お礼を、耳元でささやいて手を放すと、真っ赤になって固まったユリカと目が合う。
いつもと違い、わたしより少し上から見下ろして何か言おうと、しばらくもぐもぐしていたけど、きゅっと口元を引き締めてわたしの口に人差し指を当てる。
そのままくるっと回ってテーブルに着く。
この件はここまでという事らしいので、軽く頷いて空いている席に着く。
「えーと…明日から、ミュウもここに来るから宜しく。じゃ、いただきます」
そう言って手を合わせ、食事を始めるユリカ。
かおりとルミが、クスッとしてから手を合わせる。
わたしも続く。
「「「いただきます」」」
それから、課題について話したり、家の大きさや管理がどうなっているかなど話しながら夕食を摂る。
因みに、図面で確認したらこの家、間口約三十六メートル、奥行き約二十四メートルだったとのこと。
二階にまだ四部屋も空きがあるのに誰を呼ぶ気でいるんだろうね?
後、家の中を管理する[ハウスキーパー]というロボットメイドがいるらしい。
食事が終わったとき、キッチンから[タウンスイーパー]を一回り小さくして、如何にもロボットという見た目の頭を乗せた円筒形のロボットが出てきた。
こいつが、家の管理をしてくれるらしい。
ホント。便利な世の中だ。
[ハウスキーパー]が動き回るのを眺めていたら、みんなに笑われた。
初めて見るんだからじっくり見させて欲しい。
食休みを終えて、大問題の課題をやっつける。
手分けして済ませたら後はコピー&ペーストで。
ばれるだろうけどやってないよりマシ。
それで怒られるのも一つの醍醐味?
「寝る」
課題終了と同時に宣言して部屋に引っ込むルミ。
「大浴室でのんびりしてから寝れば良いのに。せっかちねぇ」
と宣うかおり。
そんな物までありますか?
部屋に浴室あったよねぇ?
「アパートもそうでしたけど、お部屋の浴槽、体を伸ばすまでは出来ないでしょ?だから作ってみたって以前聞きました」
呆れ果てたよ。と視線を向ければ口笛を吹いてそっぽを向くユリカ。
口笛、うまいな。
こういう時って吹けない口笛を、声でピーピーヒューヒュー誤魔化すのが定番じゃなかった?
「「あはははははははははははははははははははは」」
実際に浴室に案内してもらえば、十人位余裕で入れる大きさ。
お湯は浄化装置で循環させていて、二十四時間いつでも入れるとのこと。但し、[ハウスキーパー]がお掃除してなければ。
掃除中に入ろうとするとデッキブラシで追い回されるとのこと。経験者談。
まあ、[ハウスキーパー]がお掃除始める前に入浴してれば出るまで待ってくれるらしいので、途中で追い出されることはなさそう。
少し安心。
AIの個性なのか、割と気ままな動きをするらしくて、いつ、どこのお掃除を始めるのか決まっていないとは、ユリカのぼやき。
所有者の性格を反映してるんじゃないかい?
ぽんと手を打って納得した。
それでいいのか?所有者)様。
そのやり取りの間、珍しく かおりが笑い転げております。
せっかくなんで、三人で入ることにした。
今は、三人並んで浴槽で伸びている。
「時々思うんだけど…」
「「はい?」」
「相変わらずわたしが考えてる事に、普通に返事が返ってくるよねぇ」
ふと、思うところがあって質問したら、バシャン、と言う盛大な水音とガボガボと水の中で人がもがく気配が二つ。
「「げほっげほっげほっ」」
盛大に咳き込む二人。
「ゴホッ。唐突に爆弾投げ込まないで下さいまし。溺れちゃうとこでしたよ?鹿乃子ちゃん!」
「「あはははははははははははははははははははは」」
かおりに叱られた。
その後盛大に笑われた。
「全然気付いてないんだね」
と言うユリカの言葉に疑問しか浮かばない。
「鹿乃子ちゃん、ここ数日、普通にお喋りしてますよ?無自覚でしたか」
…
え?
声に出てる?ホント??
「出てる出てる。気付かずに喋ってたんだ。あはははははは」
「えー?」
意識してないのにお喋りしていたことが判明した。
吃驚だよ。
「「あはははははははははははははははははははは」」
つられてわたしも一緒に笑う。
大切なことだけしっかり意識してお話しすればいいや。気にしないことにしよ。
便利だし。
「鹿乃子ちゃん、ホント。大物ですねえ」
かおりが、普通気になると思う。と、笑いながら言うけど自覚ないし。
人は便利さになれちゃうと元には戻れないんだよ。
「どこの哲学者さんですか」
かおりの突っ込みでまた爆笑。
笑い疲れて三人揃って湯船に浮かんでホッコリと。
お風呂を上がって、髪を乾かしながら明日の登校時刻を確認。
部屋に入って就寝の準備。
完了!
それでは、おやすみなさい。
三十三日目に続きます




