一月三十日 イチゴのタルト
三十日目です
星暦二千百十一年一月三十日 金曜日
お早うございます。
昨日は一日中雨模様でしたが、今日は一転快晴です。
人工島(実体は宇宙船の上部甲板)な事もあって、すっきりと澄み切った空気が気持ちよい。
ここに来る前の日本は、島国なくせに何となくほこりっぽくて、綺麗な青空ってめったに見ることがなかったなぁ。
良い環境に生活出来てありがたきことですよ。
何となく予想してたけど、かおりとルミは、昨日の続きで調査のお仕事だそう。
「お早う。良い天気だね」
「オハヨウゴザイマス。オキヲツケテ イッテラッシャイマセ」
いつものように、円筒ボディーの[タウンスイーパー]に声を掛けつつ公園を突っ切る。
この公園出入口の[タウンスイーパー]。最近、わたしが近づいただけで両手を振ってくれるんだよ。
何となくうれしい。
切っ掛けは、多分 先日マニピュレーターを出し入れする蓋の所に枯れ枝を巻き込んでわたわたしているのを見つけて外してあげた件。
外れた後、二本のマニピュレーターで手を掴んでぶんぶんしてくれたから間違いないと思う。
一緒にいた二人が、こんな反応始めてみたと言ってたからかなり特殊?若しくは希なケースらしい。
そんなことを思い出しつつ、学園に到着。ホームルームに向かう。
「おはよー」
と声を掛けてホームルームに入れば、あちこちから挨拶が帰ってきた。
良いなあ。女子のみんなと気軽に話せるようになれて良かった。
一部、男子も返事くれてたな。手を振っておこう。
赤くなってあっち向いちゃったね。
「かおりが言ってたけど、ホント鹿乃子って誑しだったね」
ジーナがなにげにひどい?
「あはははははははははははははははははははは」
相変わらずユリカの沸点低いなあ。
「重役組もお仕事?」
そんな状態のユリカに問い掛けると、笑いながら頷いた。
「器用だな」
「あははははは。鹿乃子の爆弾、凄い威力ー」
ジーナまで笑い出した。はて?何が爆弾だったのかな?
「何々?楽しそうー」
と言って近寄ってきた静香もその後あえなく撃沈。
他のみんなも近づいては撃沈して、始業ベルが鳴っても大騒ぎ。
先生に怒られました。
みんなが席についてやっと朝のご挨拶。
ショートホームルームが十分遅れでスタートです。
「今日は最初に転入生がいますので紹介いたしますね」
あ!昨日のミュウとの会話がよぎった。
やっぱりだー。ミュウが転入して来ちゃったよー。
「ミュウという。姓は無い。宜しく」
ぺこりとお辞儀したミュウに手をひらひらと。
にっこり笑ったお顔が天使です。
あちこちからキャーとか可愛いーとか。
「鹿乃子ちゃんとお知り合いでしたね 近くの席が今日は空いてますからお好きなところに掛けてくださいな 月曜までには一式用意出来ると思います」
相変わらずノーブレスです。凄いなあ、なばちゃん先生。
あれ?、フルネームなんだっけ?
なば…なば…ああ、生天目だ。生天目 美來先生。
初日の自己紹介で『なばちゃん先生です』って自己紹介したんだよ。この先生。
だからみんな、[なばちゃん]としか呼ばないね。
そんなことを思い返してると、ミュウが来て隣の席に座る。
あれ?ユリカ、どこ行った?
右前にいた。ルミの席。
「今日は譲るよー」
と、手をひらひら。ミュウに隣を譲ったのか。
いつの間に移動したんだ?……あ!
今日は最初からルミの席に座ってた。
そうそう。席順も紹介したこと無いや。
わたし達メンバーズはひとまとめにされてクラス後方の廊下側におりますよ。
因みに廊下は南側、日光の直射が教室に入らないための配慮。
赤道近くの北半球なんで、冬期に南中高度が下がると言っても日本の初夏ぐらい。
一番高身長の私が最後尾。隣にユリカ。
一番ちっちゃいのが最後尾で良いのか?
一列前にかおりとルミ。
わたし達四人の一通り横にユリアとさつきが縦並び
来週からどう並ぶんだろう?
ふと気が付くと、ユリカが膨れて睨んでる。
隣でミュウはクスクスしてるし。
あ![ちっちゃいの]が気に障った!ごめんなさい。
顔の前で手を合わせる。
「鹿乃子ちゃん ユリカちゃん お話しすみましたかー?鹿乃子ちゃんは室内放送控えめでお願いしますねー」
一気に笑いが広がる。
室内放送って凄くうまいネーミング。
先生にまで判っちゃう私の[判りやすさ]。これはもう一種の超能力。
「その通りですからね 控えめにして下さいねー 特に授業中ー」
「ごめんなさい」
またホームルームがどっと沸く。
そして、盛大に一限目に食い込んでショートホームルームが終わり、そのまま授業へ。
今日の一限目、なばちゃん先生の受け持ち学科で良かった。
他の学科だったらなばちゃん含めて大目玉だ。
尚、私は反省も後悔もしてません。
「後悔はどうでも良いから反省はしてね!?」
なばちゃん先生に怒られた。
後悔はどうでも良いらしい。
その後は大きな騒動もなく、私をチラチラ見てくるミュウに暴走しそうになった位で授業が終了。
まあ、休み時間ごとにミュウの人気が鰻上りでしたけどね。
「こんな可愛い子だらけのクラスで私は幸せだー」
って叫んだ、麗華が残念だったけど。
余りの人気ぶりに、クラブルームに行けるのか心配したけど、みんな結構クラブ活動が楽しいらしくて付いてくるのは三人だけ。
麗華、聡美、ミユの三人が最後まで付いて来て、地下に向かうエレベーターに乗ろうとしたところで透明な壁、シールドか?これ、に阻まれて置いてけぼりに。
普通にガラスに激突するみたいに顔面からぶつかってました。痛そう。
痛いのと悲しいので涙に濡れて、鼻の頭やおでこを抑えながら手を振る三人に、非常に困った顔で手を振るミュウがレアです。
クラブルームに到着。カミーラがお出迎え。
ミュラ姫も後片付けにかり出されているご様子。
「ホントに学生始めたんだな。ミュウも物好きというか」
「鹿乃子といると楽しい。一緒にいる時間増やしたい」
「えらく惚れ込まれたもんだね?鹿乃子」
ミュラと話し始めたカミーラの矛がこっちを向いた。
「惚れ込まれる理由が分かりません」
正直に答える。
「そのままで良い。鹿乃子らしいとこが好き」
なんだろう、凄い告白されちゃいましたよ。
「ユリカ。これどう返せば良い?」
「黙って俺に付いてこい!とかー?」
「なんか違う気がするよ?」
ミュウはこっち見てニコニコしてますが…。
「重役組とNINJA組、忙しいみたいだけど、手伝いは良いの?」
ちょっと心配なんで、カミーラに訊いてみる。
「平気。私や鹿乃子達は諜報の仕事不向きだから。行っても邪魔になる」
ミュウから返事がもらえました。
「カミーラなんか 物を作るか壊すしか能が無い。全く役に立たない」
「ひどい言い草だな。ミュウ。その通りだから文句言えないけどな」
その通りなんだ。
「ヤメロ?その目。なんか可哀想な人見る目じゃね?私可哀想じゃないからな?」
「いやぁ、ご本人には判らないところで何かあるのかなと」
大丈夫だよ。私の神様化を導いてくれた立派な神様だよ。
「それ、完全に他には役に立たないパターンじゃねーか。ひどくね?扱いがひど過ぎね?」
「おー。これが弄られカミーラ。尊い物を見た」
「あはははははははははははははははははははは」
弄ってたらミュウが感動しちゃったよ。ユリカは決壊したし。
「だからナチュラルに弄るなよ。一応鹿乃子の導師だぞ?私。もっと尊敬しても良くないか?」
尊敬しておりますよ?自然に弄りたくなる位、愛でてます。
「それは絶対尊敬じゃない」
あー拗ねちゃった。今日も盛大に。
「今日のお好みは?」
「イチゴのタルト!五号のホールで」
「行ってきます」
帰ってきたらお茶の準備も万端でお待ちかね。
カミーラに五号まるごと一ホール。
わたし達は四号を三等分。
中央区の七人プラスαに八号を用意してみました。
「カミーラ。ミュウ、後で持ってって?」
「あいよ」
「任された」
お願いしたら軽ーいカミーラのお返事と、比べると安心のミュウのお返事。
とりあえず十二等分してから箱のままテーブルの隅に。
「今日で片付きそう?」
進捗状況知ってるかなと聞いてみた。
「なんとかなるんじゃないかな。NINJAの二人はもうレポート纏め出してるし」
「なんで判るの?」
「そこ。ミュラの端末にルミとかおりのレポート作成中のアイコンが立ってる」
指差してくれたけど、私にはどう見れば良いか判りませんという落とし穴。
「あはは、これとこれが二人のレポート保管フォルダ。何か書き始めると、こうやって動き出すんだよー」
ユリカ。サンキュー。モニターまで近づいて示してくれた。判りやすい。
「カミーラはもうちょっと相手の立場で考えるべき」
「へいへい」
ミュウからきつい指導が。全然堪えて無いっぽいけどな。
「んふふふふふ」
ミュウ、笑った。声出して笑うの珍しい。レアミュウちゃんゲット。
ユリカの毛玉はもう飽きた。
「うわー。なんかひどいこと考えた気がするー!」
「うん。考えた」
「あはははははははははははははははははははは」
不思議だ、弄られてる本人が何故一番楽しそうなんだろう?
「「あはははははははははははははははははははは」」
おお。ミュウが大声で。本望です。
「鹿乃子、凄く変」
カミーラがひどい。…けど可笑しい。
しばらく笑いが収まらなかった。
「あら、まだ帰らずに待っててくれたんだ。終わりましたよー私たちの分だけですけど」
その声とともにNINJAコンビのかおりとルミがご帰還。
さっき切っておいたタルトから二人の分をお皿にのせて、はいどうぞ。
タイミング良くカミーラがお茶を入れてくれる。
「わー、有り難う。ちょうどお腹空いてるんだー」
「糖分不足中。感謝」
うれしそうにフォークを手にする二人。
「そういえば、ホントに編入しちゃったの?ミュウちゃん」
「私は顔合わせしかしたことない。榊 ルミ。宜しく」
ミュウが制服着てるのに気付いて かおりが声を掛け、ルミは顔合わせだけ?
「μ。ミュウと呼んで欲しい。鹿乃子に話は聞いてる。よろしく頼む」
「そういえば、ルミの趣味に興味持ったんだっけ?」
「そう。さつきの必殺技の原点が非常に興味深い。ルミが詳しいと訊いた」
ユリカが問い掛けたら、なんか答えがひどいことに。さつき、ごめんよ。
「かおりはミュウと話してるんだ?」
「私はルミちゃんと違って、バイトやパート扱いで潜入調査することが多いんですよ。ミュウちゃんのとこもバイトで行ったことがありますね」
さっきのかおりの反応思い出して訊いたら既に顔見知りだった模様。
「そうそう、明日、ミュウちゃんのところに私とルミちゃんと鹿乃子ちゃんでお邪魔って話してたんですよ。ご都合はよろしいですか?」
「何それ何それ。あたしもー。あたしも参加するー」
かおりが喋っちゃったのでやっぱりユリカが騒がしい。大人しくなさい。
「あら、ごめんなさい。こんな話したらユリカちゃん騒がないはず無かったですね。失敗です」
「かおり。超白々しい」
「あはははははははははははははははははははは」
ルミの言う通りホントに白々しいかおりの誘導。ユリカは騒がしい。
「じゃあ、さつきも巻き込まないとだね」
「「「「もちろん」」」」
私の提案は満場一致でした。
いや、カミーラが棄権してる。
「私は不参加」
じっと見つめる。
「だめ。行かない。行っても弄られるだけだから い や だ」
「弄られるのはさつきだよ」
「う?い、行かない」
「お返しするチャンスだよ?」
「ダメダメ、測定器一式修理してもらう恩がある。行かないよ」
「それじゃ余計に一緒に行かないと。、カミーラが守ってあげないとだめじゃない?」
「うー。なんだか行かないと大変なことになる気がしてきた」
「さつきが弄られすぎないように、カミーラが護衛しないとだよ?責任重大だよ?」
「…行くよ、行きますよ。私のこと弄るんじゃないぞ?」
「はーい」
「返事が軽すぎる。心配しかない」
「カミーラの参加承諾ゲットです」
「「「「おー」」」」
カミーラを丸め込んでみた。チョロすぎて心配。みんなは拍手で喜んでいます。
そもそも、さつきを弄っちゃだめって思いつかない当たりがね?
「あっ!」
しまったー。って思いっきり顔に出てます。言質は取ったからね。不参加は認めない。
「なんだか、鹿乃子ちゃんが真っ黒に見えるのは私だけでしょうか。説得するように見せかけて弄り放題ですよ?」
「カミーラを弄ることに関して執念が凄い?」
「あはははははははははははははははははははは」
かおり、黒くってもいいさ。カミーラが好きすぎて弄らずにいられないんだよ。だからミュウの意見が正解だよ。
後、ユリカ五月蠅い。
ルミが、左掌に右の拳をポン。
「初等部男子が好きな女の子に意地悪しちゃうあれ!」
「「「「それだ!」」」」
かおり、ユリカ、ミュウと一緒にルミを指差して叫ぶ。
ルミ。有り難う。すっきりしたよ。
「されてる方は良い迷惑なんだからな?加減しろよ!いい加減泣くぞ?」
カミーラは納得いかんと大憤慨の模様。
何故わたしがカミーラを弄り倒したがるのか。理由が分かってすっきりしたよ。
すっきりしたところで、明日、ミュウに会いに行くよと約束して帰宅です。
タルトの残りはカミーラとミュウに任せます。
今日はいつもの公園を四人で帰宅中。
ユリカが割り込んできた。
既に空は真っ暗です。まあ、街灯があるから危険は無いけどね。いろんな意味で。
道中、いつものように[タウンスイーパー]に声を掛けて回るわたし達を面白がってユリカも参加。
「良いね。これ。[スイーパー]から、好感度大幅アップだよー」
等という謎情報。
「あ。うれしい。こんな程度のことでアップしますか?」
「するするー。だんだんいろんな反応してくれる[スイーパー]増えてきてないー?」
かおりが呟いた疑問に答えるユリカの言葉に、思い当たる節が。
「そういえば、初めの頃ってどの[タウンスイーパー]もおんなじ挨拶だった気がする」
「でしょでしょ?好感度上がると個性発揮し出すんだよ?この子達」
ユリカの答えで納得した。
挨拶を続けていたら段々いろんな反応が出てきて楽しくなったんだよね。
「カノコ サン。オカエリ。キョウハオソイカラ シンパイシタヨ」
「ただいま。心配してくれて有り難う」
特にこの子。公園出入り口にいる個体は、最近、先に両手を振って挨拶してくれるようになったんだ。
「うわ。凄い反応。初めて見たよ」
情報をくれたユリカが吃驚するレベルなのか。
「その好感度って何か良いことあるの?」
「色々手助けしてくれる内容が増えるね。情報共有してるから初見の[スイーパー]からも好感度高めで対応してもらえるよ」
「普通は道案内で只ルート教えてくれるだけなのが、目的地に関する情報や似た施設の案内とかが追加されるとか。ゴミになる物を持っていると処理しに来てくれるとか。色々優遇してもらえるって訊きますよ」
何かが変わるのだろうかと訊ねたらユリカとかおりから凄い情報。
「聞いた話。好感度駄々下がり状態で道にゴミのポイ捨てしたら即通報事案があったらしい」
「訊いたことあります。いつも[スイーパー]叩いたり蹴ったりしてた人ですよね。普通捨てたゴミ回収して注意されるんですけどその場で拘束されて[タウンキーパー]に引き渡されたそうですね」
ルミとかおりがなかなか怖い案件を教えてくれた。
「ここだけの話ー。それやらせー。時々警備隊の人が街の中でやって見せてるの。内緒だよー?」
「叩いた云々は?」
「近くにサクラ役がいてテキトーに噂話を流す的なー?」
公共マナー守らせるキャンペーンだった模様。
「確かに、マナーを守りましょうって言うよりこんな怖いことになるよって実例の方が効果は高いよなー」
感心して良いやら呆れた方が良いやら。
「なんでそんなこと知ってんだよ。ユリカ」
「あはははは。サクラ役やったことある」
納得。
効果絶大だな。こんな騒がしいサクラがいたら。
「なんだかひどいこと考えてるー」
「どうせ、拘束された人指差して大笑いしたとかあの人いつも[スイーパー]蹴ってる人だーとか言いながら笑ったとかだろ」
「なんで判ったの?」
吃驚顔で訊かんでも。
「「容易に想像が付く」」
「はまり役以外の言葉が見つけられないんですけど」
「あはははははははははははははははははははは」
わたしとルミの返事とかおりの指摘に笑い出すユリカ
そんな遣り取りをしていたら家に到着。
「なんならユリカ。泊まってく?」
「ありがとー!!」
何となく声を掛けたら大感激で抱き付かれた。そんなにか?
隣にわくわく顔が二つ見えるんですが?
「いや。おんなじ屋根の下じゃん」
しおしおになる二人。
「判りました。どうぞ」
「「ありがとー!!」」
さっきとおんなじだ。ダブルで来た。
その後、予想に違わず大騒ぎで夕食、お風呂、そしてお喋り。
ユリカには二番目に身長の低いルミが洗い替えのパジャマを貸してくれた。
それでもぶかぶかだけど。
結局就寝は日付が変わりましたけどね。
ミュウとの約束がなかったら、明るくなるまで騒いでたな。間違いない。
そんなわけで、おやすみなさい。
三十一日目に続きます




