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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年一月
31/252

一月二十七日 蟻さん

二十七日目です

 星暦二千百十一年一月二十七日 火曜日


 お早うございます。


 登校のため家を出ると、いつもの二人に加えてユリカがいます。


 嫌な予感しかしないので、くるりと回れ右をしてドアを開けようとしたら後ろから抱き付かれました。


「逃がしません」


「放せ。ユリカ。たった今体調不良になった。今日は休む」


 ジタバタしてみるけど、振りほどけない。


 ルミとかおりが背負っているわたしの(かばん)をするりと外す。


 さすがはNINJA。どうやって外した?


 それに、ユリカ。後ろから抱き付いてるのによく外せるな…ああ。ちっこいから邪魔(じゃま)にならないのか。


「とっても失礼なこと考えてる気がしますよー。ひどいですー」


 ぎゅうっと締め付ける力が強くなってですね。痛いから。放せー。


 放さないんでそのまま振り向いて歩き出す。が、一歩も動けず振り返っただけ。


「学校、行こうか二人とも」


「多分無理」


「残念ですけど、とりあえずユリカちゃんとお出かけして下さいまし。鞄は私が持って参りますね」


 なんとか進もうとあがきつつ声を掛けたら、ルミもかおりもあっさり見捨てて下さいまして。


 がっくりと全身から力をぬいてみる。少しは(あわ)てろ。


 びくともしねー。


 力の抜けきった人間なんてお荷物以外の何物でも無いはずなんだがなぁ。


 判ったからとユリカの腕をポンポンと。


 結局コミューターに押し込まれてドナドナですよ。


 仔牛(こうし)の気分をたっぷり満喫(まんきつ)中。


 ところで、昨日(きのう)、さつきは案の定、しこたま説教された模様(もよう)


 正座で延々三時間説教されて、(ゆる)されたときは歩けなくて、()って出てきたそうです。


 ユリカ、説教終わるまでいたんだな。そっちに吃驚(びっくり)だよ。


「そろそろ御用事のお話ししない?」


 にっこりと笑顔が向けられておりますが、なんだか背筋に悪寒(おかん)が走っておりますよ?


「はい」


 降参です。と両手をホールドアップ。


 なんでこんな頻繁(ひんぱん)にやっかいごとが起きるんですかね?




 やってきました、中央区。


 何回目になるんだろう。まだ一月が終わってもいないのに。


 本日の目的地は、研究施設の一つ。ロボットや自動機械などの動作確認を行う実働研究センター。


 一番大きな実験施設が使えなくなってなんとかして欲しいと要請が来た模様。


 現在責任者と担当者、二人から事情調査中。


蜘蛛(くも)型、(はち)型、(あり)型の三種類。五十、百、五十の全二百機が暴走中という事ですね?」


 ユリカが確認を取る。


 なんでこんな小娘にという態度がありありと(わか)るが、警備部総部隊長と大隊長が立ち会っているため渋々(しぶしぶ)ながら大人しくしている模様。他にも警備隊の方が三名同席中。


 ユリカも判っていてあおっているしな。


「うーん。この三種類ってー、親機があってそのコントロールで動いてるドローン端末だよねー?親は?」


「そんなものは無い。それぞれ独自のAIで稼働している」


 責任者さん如何(いか)にも心外だという様子で怒鳴(どな)っている。


「おかしいなー?全長五十センチクラスのドローンでしょ?そんなのに搭載(とうさい)出来るAIはまだ供給されていないはずなんだけどなぁ」


「一応の知識は持っているようだが情報が古いな。小型にまとめることが出来たから今回の実験を行ったのだ」


「それで暴走しちゃって施設占拠(せんきょ)されちゃったと。今のAIモジュール小型化すると冗長系(じょうちょうけい)の回路(けず)るしか無いから自己診断も出来なくなるし、AI回路なんて複雑怪奇(ふくざつかいき)なもの人間に解析なんて出来ないから異常があっても発見出来ないんだよなぁ。どうやって小型化したのかな?そもそも、現在供給されてるモジュールを小型化すること自体社内規定に違反してなかったかしら?」


「新型の回路を開発したのだ。社内規定違反などしておらん」


「一研究班がAI開発すること自体が規定で禁止されてるじゃん。ダメダメじゃん。という事で、レイナちゃん。自白いただきました。拘束(こうそく)して下さい」


「了解です。逮捕だ」


 レイナさんの指示が出ると同時に拘束。何か首筋にピストル型の器具を当ててトリガーを引くと一瞬で昏倒(こんとう)する責任者さんと研究員さん。


 即効性の睡眠薬(すみんやく)と無針注射器なんだそうです。


 弁明するいとまもなく運び出されてゆく。


 終始下を向いたままだった研究員さん。結局一言も(しゃべ)らなかったなー。


「何?今の茶番(ちゃばん)


 あっけにとられている内に終わってしまったので確認。


「ははは、AIのモジュールって小型化しちゃうとやっかいなのよ。小型のドローンに搭載出来ちゃうと色々危ない使い方が出来ちゃうでしょ?」


「まあ、想像出来るね。スパイ活動とか暗殺とか、爆発物持って侵入とか?」


「だからあえて大きく作って小型化出来ないように安全策が組み込まれてるんだって」


「聞いた話?」


「開発者から聞いたー。さっきの話も事前に教えてもらってたのさー」


 筋書き通りだった模様。


「これで終わりなの?帰ろ?」


「やだなー。判ってるくせにー。今から本番だよー」


「やっぱりな」


 はー。


 話をしていたら、拘束した二人の拘留処置(こうりゅうしょち)を終えたらしいレイナさん達が戻ってきた。


「で。これからが本番なんですが、どう対処なさいます?」


「ドローンの一番新しい情報を教えてもらえます?」


 ユリカの答えで打ち合わせを始める。


 情報の確認です。


 昨日ミュラ姫がいなかったのは、ドローンの解析作業をしていたためとのことで、現在も情報収集中。


 現在確認出来た機体は蜘蛛が六十五台、蜂が百四十五台、蟻が八十体。


 それとマザーと呼ばれる大型機体が一台。


 外部との通信が切断されており、ドローンとマザー双方が補完し合っているためハッキングが(きわ)めてやっかいなんだとか。


 結果、ハッキング自体時間が掛かりすぎるため強制排除(きょうせいはいじょ)となったらしい。


 (ちな)みに、ドローンもマザーも対人兵器を搭載している模様。


「とりあえず姫達のとこへ行こうかー」



 

 やってきたのが壁一面にたくさんのディスプレイがある広い部屋。


 ミュラ姫とユリアとさつき。あともう一人女の子。


 まあ、さつきは見てるだけみたい。


「やほー。どんな?」


 ユリカの掛けた声に応えたのはユリア。


「とりあえず三十パーセントぐらい浸食出来てる。本来の性能、半分出せれば良い方だと思うよ」


「りょうかーい。んじゃ、突入しちゃおうか?」


「待て。ユリカ。わたしはどんな場所を占拠されたのか聞いてない」


 即座に飛び出していきそうなユリカを止めて()く。


「直径三百メートルのドーム施設、障害物なし。出入り口二十ヶ所。以上」


 行き当たりばったりが確定しました。やれやれ。


「さつきも行くよー」


「え?わたしも!?」


「いけるの?」


 ユリカの言葉にさつきもわたしも吃驚だよ?


「へーきへーき。れっつらごー」


 両手にわたしとさつきの手を取って走り出すユリカ。渋々ついて行く二人。


「よろしくー」


 とディスプレイから片時も目を離さず手だけを振るユリア。


 ユリカは走りながら、


「蜂さんはさつきよろ。わたし蜘蛛さんやるから鹿乃子は蟻さんねー」


 と、アバウトな指示。


「妥当なとこかなあ。鹿乃子(かのこ)ちゃん。蟻さんは頭(なぐ)ればすぐとれちゃうから簡単よ!」


 さつきからフォローが入る。


「蜂さんと蜘蛛さんは?」


 とりあえず訊いておく


「蜂さんは飛ぶのと数が多くて早いのが面倒。蜘蛛さんは一番早くて頑丈!で、武器が多い」


 納得。


「後、マザーは早い者勝ちでー」


 と、ユリカから追加指示。


「マザー?マザーってどんなやつ?」


 情報が無いよ?


 (あせ)っている内にドームに到着。


「マザーは全長五メートルのカブトムシ。では とつにゅー」


  言うのと同時にドアを開け飛び込んでいくユリカ。


「鹿乃子ちゃんドア閉めてきてね!」


 と、続いてさつきが飛び込む。


「はー」


 溜息(ためいき)をはきつつ中に入ってドアを閉め、振り向いたら蟻がいた。


 いっぱい。


「!」


 瞬時に神気(しんき)をまとって身体能力を上げる。同時に回し()りで(とど)範囲(はんい)の蟻の頭を蹴り飛ばす。


 あらま。ホントにあっさりと。蹴った頭が(はる)か彼方へすっ飛んでいった。


 胴体は一瞬ピクッとした後煙を吐き出して動かなくなる。


 要領(ようりょう)が判ったので片端(かたはし)から頭を蹴り飛ばす。


 時々後ろ足だけで立ち上がってくる個体は殴りつけて頭を落とす。


 余裕(よゆう)が出来たので、ユリカとさつきを見ると、ユリカは蜘蛛の出す糸みたいなのや前足の攻撃、さらには口の辺りから出るビームをひょいひょい避けながら胴体に蹴りや突きをたたき込んでいる。


 大抵一発で胴体が大きくひしゃげて煙や炎を吹き上げて動かなくなる。


 さつきは、両手の指先から何かビームみたいなのをバンバン打ち出して片端から蜂を撃ち落とす。

中には爆散(ばくさん)している個体もあるな。一体に十発位ずつ(たた)き込んでる。


 さつきの出すビーム。見てると、(ねら)いがずれても軌道を曲げて必ず命中している。


 時々、修正が間に合わなくて通り過ぎ、Uターンして戻ってくるのもあるよ。


 蜂は、目の辺りからやはりビームを出してさつきを攻撃しているけど、全てシールドらしいもので防いでいる。避ける気はさらさら無いらしく。ただ突っ立ったままどんどん攻撃を続ける。


 わたしが蹴飛ばしている蟻はビームは無いらしく、時々液体を飛ばしてくるけど、大概(たいがい)速度が遅いんで当たらない。


 とか観察している内に予定の八十体終了。


 さっきから二人ともあえてゆっくり対処してるっぽいから親玉はわたしがやるって事だろうな。


 中央から時々ビームを()ってくるでっかいカブトムシに向かって全力で走る。


 一秒かからず到着し、その勢いのまま蹴り飛ばす。


 うわ。思ってたのと重さが違う。軽いよ。全然軽い。吹っ飛んじゃった。


 そのままほぼ一直線に壁に激突して大爆発。


 あらー。あっけない。


 同時に、ユリカとさつきも破壊終了。


 端末を出してどこかに連絡。ユリアだろうな。


「これで全部ー?」


 と訊いたあと一つ(うなづ)いて、


「しゅーりょーですー」


 と両腕ででっかいまる。


 爆発したカブトムシがぶつかった壁が心配で煙が収まるのを待って見たけどほぼ無傷。頑丈(がんじょう)だな。


「で、これどうすんの?」


 と、辺りの破片を指差せば、


「警備部の調査課が調べながら片付けてくれるからそのままで」


 と、さつきのお言葉。


 ユリア達がいた部屋に戻ります。


 部屋に入ると四人でお茶してまったりしてました。


「ただまー」


「お帰り。お疲れー」


 ユリカにユリアが答える。


 と、奥から、キャルさんがカップを四つ乗せたトレーを持ってくる。


「お疲れ様でした。お茶をどうぞ」


 とテーブルに並べてくれる。


 ご自身もテーブルについて、


 ()ずは一息。


 そういえば前回も今回もなんだかわたわたでキャルさんもレイナさんもよく見てないな。


 キャルさんはライムグリーンのふんわりロングヘアで優しいお顔。額にリング状のアクセを付けてらっしゃる。


 レイナさんはちょっと外に向けて()ねた(くせ)のあるショートヘア。ブロンドです。やや目つきが鋭くて凜々(りり)しい系の美人さん。


 じっと見ていたら、お茶を飲み干したキャルさんが此方(こちら)に話しかけてくる。


「鹿乃子さん、やはり(すご)いですね。マザーをあんな簡単に蹴り飛ばす人、ユリカちゃん以外では知りませんよ?」


 と、(おっしゃい)います。


「えー?キャルさん一人でも片付いたでしょ?あの程度」


 そう質問で返すと、


「出来なくは無いですがこの短時間ではちょっと。それに職務上問題が発生しちゃうので」


 と、申し訳なさそうに。


 隊員さん連れてけば平気そうに思うんだけど…


「鹿乃子ー。警備部の一般隊員さん。十人いても、蟻さん一匹で、全員大けがしちゃうからね?一般の人って訓練してもそのくらいだから覚えといてー」


 ユリカの言葉に思考が止まる。


 …そうですか。一般の人がよく(わか)らない私です…


「あ。そういえば初見(しょけん)だね。此方、AIの設計責任者。ミュウちゃん」


 そう言って、ユリアが女の子を紹介してくれる。


 ふわっとしたショートカットで綺麗(きれい)な明るい紫色の髪。目はくりっと大きく、瞳も紫。幼い顔立ちで。十二、三歳に見える…んだけどなぁ。


(まき) 鹿乃子です」


 挨拶(あいさつ)してみた。


μ(ミュー)。遺伝子レベルの調整体。これでも数百年、生きてる」


 淡々(たんたん)としてるけど、どえらい台詞(せりふ)が聞こえてきましたが。まあカミーラ見てるし今さらかも…


随分(ずいぶん)あっさりと受け止めちゃうんだね。この()


 (おどろ)いたらしく声を上げたのはレイナさん。


「鹿乃子、ちょっと常識がずれてるからねー」


 ユリカがひどい。君たちで()れたんだけどな?


「あはははははははははははははははははははは」


 じろりと(にら)んだら笑って誤魔化した。


「むー。全然驚かない。つまんない」


 えー?驚くの期待してたんかい。そっちに吃驚だよ。


「よし。驚いた。一応クリア」


 なんかガッツポーズしてるし。割と面白い性格してるね?この娘も。


「μちゃんで良い?わたしは呼び捨てで良いよ?」


「ミュウにして?鹿乃子。よろ」


 手をひらひら振ってくる。


「了解。ミュウ、(よろ)しく」


 わたしも振り返す。


「あたし、話してもらえるまで一月掛かったのに…初対面でいきなり呼び捨て。鹿乃子ちゃんずるいー」


 それまで黙って見ていたミュラ姫が半泣きになりまして。


 ずるいって言われましてもねぇ。


「アルファと馴染むのも超早かったよね。人(たら)し?」


 ユリア。ひどい。普通に話せば仲良くなれるじゃん。


「この娘、性格も態度も裏表(うらおもて)無いからなのでは?皆さんと違って」


 ナイスフォロー。レイナさん。


 三名様、(こお)り付きましたけど。なにか?


「レイナちゃん。皆さんて、どこからどこまでかな?」


 ユリカ。怖いよ。そうゆうとこだと思うけどな?


 こちらも固まりました。自覚無かったのかい。


 合計四名様解凍待ちです。


「キャルさん。お茶のおかわりお願い出来ます?」


「ミュウも」


「はい。お待ちくださいね」


「ミュウは初対面の人驚かすのが趣味かい?」


「違うよ?選別。外見で判断する人を選別出来る。この体が超便利」


「なるほど。一発で選別出来るね。いいなぁ」


「鹿乃子さん、いろいろと強いですね」


(きた)えられました。こいつらに」


 四人を示したらレイナさん、うんうんと納得された様子。


 お茶のおかわりを頂いてまったりと。


「「「「放置しないでくださいー」」」」


 四人が再起動しました。




「さつきが使ってた技、面白いね」


 報告書作成のため、会議室みたいなとこにみんなで移動。


 隣にさつきが座ったので訊いてみた。


「ああ。うん、面白いでしょ?便利なのよ…」


 何となく歯切れの悪い答えが。


「技名アルベルトって言うんだよ」


「それ言わないでよ!ユリア!」


 何か、慌てたご様子です。


 名前が付いているんですね。


 アルベルト。ん?アルベルト…はいんりひ?


「もしかして(ひざ)から強力なのが出る?」


「なんで(わか)るの?」


「最後、自爆しちゃう?」


「しません。痛いからやりません」


「中学時代に開発されましたか」


「全部合ってるけど!なんで断定?」


「そのネタも知ってるんだ、鹿乃子って」


 さつきを揶揄(からか)ってたらユリアの攻撃。


 後ユリカもニヤニヤしてるけど、他の皆さんは意味不明なご様子。


「両手だったし、ロボでも良かったんじゃ?」


 試しに()いてみた。


「あんなにでっかくないもん!って…あ!」


「これも通じました。ユリアさん」


「はいはい、話戻そうか。他のみんな、置いてけぼりだから」


「いやいや。ユリア、通じるって判ってて振ったよね?九つある技の四番目でしょ?」


「もうやめてー」


「あはははははははははははははははははははは」


 さつきちゃん、顔を(おお)って崩壊(ほうかい)。ユリカ爆笑。ユリアはさつきに土下座中。


 完全にカオス状態です。


 しばらく待機時間の模様。


 ミュウがとっても興味津々な顔をしているのでお話ししています。


 脱走した九体の試作兵器に壊滅(かいめつ)させられるコングロマリットのお話しと、宇宙人に教えてもらって制作した巨大ロボットを盗まれたあげくに宇宙人もろとも壊滅させられるお話し。


 どちらも悲劇ですよ。暴走って怖いよね。


 非常に興味深そうに訊いておられますよ?三人様。


「鹿乃子、(すご)い誤解が生じると思うんだー。その話しの持って行き方」


 ユリカ、タイトル教えちゃだめだよ。さつきの傷口がでっかくなるよ。


 ほら。ミュウが端末で検索始めちゃったじゃないか。


 さつきの信者が増加しそうな予感です。


 その後、ミュウが見つけた動画を再生しちゃって、さつきが魂抜けて放心状態。


「ミュウ。今度さつきにコレクション見せてもらうと良いよ。(あと)ルミとはきっと話が合う」


「おお。ルミちゃんとは以前から話してみたかった。今度会ってみる」


「じゃあ、今はそれ止めて会議に戻ろうか?」


「判った」


 動画を止めた途端お昼のチャイム。絶妙なタイミングだな。


「食事、用意しましょうか?」


 キャルさんの提案に一同頷く。




 で現在多人数用の休憩室で食後の休憩中な訳ですが。もちろん、非常に美味でしたよ?お食事は。


「鹿乃子ってさあ、どこであんな知識仕入れたの?」


 疲れ切った様子のさつきに問われますが、なんとお答えしたものか。


「うーん。言って良いのかなあ、ここに来る前お世話になっていたお宅なんですけど。そんな感じの資料が結構ありましてね?」


「地球で居候してたお宅?ミュラちゃん誰か判る?」


「石沢さんですよ」


「そう。石沢さん。まだ若い人。飛騨(ひだ)の仮面の方も実はそこで仕入れた知識です」


「納得した。鹿乃子ちゃん子供時代あんな知識身につくはずないもんねえ」


 そうぼやくように言いながら長椅子(いす)にごろんと転がって一言。


「わたしの感染源もそこだよ」


 驚愕(きょうがく)の事実が判明。


 ルーツが同じだった模様。


「そういえば。初等科六年の夏休みだったねえ。おじさんとこに遊びに行くって帰ってきたらこうなってたっけ」


 ユリアが(なつ)かしそうに暴露(ばくろ)


「中等部で重症化しちゃったよ。あはははは」


 さつきは開き直ってないかい?まあ、わたしが原因だけどな。


「あの、よろしければお仕事の話を始めたいのですが…」


 キャルさんが恐る恐るといった感じで声を掛けてくる。


 見事にやさぐれちゃってるもんなあ。怖いよね。


「「はーい」」


 さすがは重役コンビ。即座(そくざ)に切り換えて動き出す。


 お昼の直前、それやっとけば心に負傷しないで済んだと思うわたしは間違っているだろうか?


「……」


 黙秘(もくひ)されるご様子です。




 みんなで大きな机を(かこ)んで席に着く。


「結局、内部社員の暴走で(おさ)まってます?」


 と、先ずミュラ姫が言葉を発する。


「現在まで、外部から接触があった形跡はありませんね」


 レイナさんのお答え。


「研究員は完全に(だま)されていたようなので、規則の再教育でよろしいかと思われます」


 キャルさんから補足。


「責任者の課長さん、他社に流出して困る情報を持っている形跡は皆無」


 これはミュウの報告。


「個人の端末に結構データコピーして持ち出してたけど携帯用も設置型もクラウドサーバーも含めて欺瞞情報(ぎまんじょうほう)と置き換えちゃったからこれも問題なし」


 ユリアはデータの回収も終えている様子。


「ユリア?カードやディスク系のメディアは?」


「宙港通過するとき荷物チェックがあるからそこで対応出来るよ。郵便や宅配物も同様」


 さつきが心配するが問題ない模様。


「元々、要注意人物ですから、重要なデータへのアクセス権はなかったはずですよ」


 レイナさんが補足。


「後は、被害と損害額が出ればまとまるかな」


 ミュラ姫が入力作業を終える。


「責任者さんが言ってたドローンの数と実際の数が全然違ったのはなんで?」


 残っている疑問点を訊いてみる。


「半分推測ですけど、AIの改造なんて無理って気が付いた研究員さんが、あの責任者さんの無茶ぶりに対して誤魔化すために、実際必要だった数を(いつわ)って報告したんじゃないかと」


「事故を起こせば無茶な研究止められると思ったって自白してますからおおよそ合ってると思います」


 レイナさんの推測にキャルさんの情報追加で納得。


 自分では理解すら出来てないのに部下に無茶な要求すれば気が付かないところで誤魔化されても対処出来ない。


 思い込みと権力の乱用だけでは、望んだ結果は得られないよね。


 ふと、過去のこの人が開発した商品は大丈夫かと心配になったけど、


「採用決定会議でことごとく不採用だったみたい。もう後がなかったらしいよ」


 とユリアから聞いて一安心。


堅実(けんじつ)な仕事してれば優秀だったみたいだけど。昇進して欲が出ちゃったのね」


 ミュラ姫の情報により判明。


 前回の諜報(ちょうほう)課課長さんと同じパターンだった模様。


「我々が対応しきれないばかりに皆さんに度々ご迷惑をおかけします。申し訳ありません」


 レイナさんが謝罪(しゃざい)を口にするが、違うと思う。


「無理無理。こんな巨大組織監視しきれるわけないっしょ。姫野(ひめの)の警備部ほどしっかり社内の監視出来てる組織。他にないんだから完ぺきを求めちゃだめだと思うよ!」


「そうだね。百パーセントは目指すべき目標ではあるけれど達成する(ため)の目標じゃなくてもいいよね」


 さつきとユリアの考えがベストじゃないかなあ。


「「ありがとうございます」」


 レイナさんとキャルさんが姿勢を正して敬礼で答える。どこかうれしそう。


「ところで、実働部隊は撤収(てっしゅう)しても良いですかね?」


 と流れをぶった切って訊いてみる。


 ちょっと考えて、ミュラ姫。


「はい。お疲れ様でした。お二人は戻っていただいて大丈夫ですよ」


 許可を頂きました。


「わたしはー?わたしも戻って良い?精神的にものすごく疲れたんだけど!」


 さつきがごねだした。


「はいはい。メンバーズクラブ員は解散しましょうか。あたしは半分社員だから無理だけど。はぁ」


「そう言われたら帰れない…」


 ミュラ姫の溜息にしょぼんとする さつき。


「あら。そういえば重役さんだったわね。さつきちゃん」


 姫の黒いところでコロコロされている模様。


「ミュラ姫ー。あんまり黒いとこ出すとミュウが逃げちゃうよー」


 さつきの精神的疲労、心当たりがありすぎて、ちょっと援護射撃(えんごしゃげき)を。


 ミュウもすすっとミュラ姫から離れているし。


「ミュウちゃん?」


 振り返ってショックを受けている姫。


 あれ?もしかして、またカオス?


「ホント、鹿乃子って場を混乱させるの上手だよね」


「あはははははははははははははははははははは」


 ユリアの言葉にユリカ爆笑。


「えー?」


 ひどいよね?とレイナさんを見たら、


擁護(ようご)出来ません」


 首を横に振っていらっしゃる。


 キャルさんは横を向いてぷるぷる。こっちを見てくれない。


 味方がいない模様。


 待ちましたよ三十分。


 やっと笑いが止まったユリカを引っ張って立ち上がる。


「それじゃ、明日またー」


 ユリカに合わせて手を振って退出。


 さつきがゆっくり休めることを祈る。


 結構急いだけれど授業には間に合わず。


 クラブルームに行ってもカミーラと、他二名。


 のんびりと、お茶してました。


「特に指示は出てないから今日は帰って良いぞ」


 という事で、クラブルームで待っていてくれた、かおりとルミと帰宅いたします。


 途中、ミュウのことを話したらルミが食いつきまして。


 今度の土曜日辺り、遊びに行こうと決定しました。


 かおりが遠い目になっていたのは内緒にしておきます。


 二人と別れて色々片して就寝準備も完了。


 明日は授業受けられますようにと祈りを(ささ)げる。


 神様って誰に祈ったら良いんだろうという、(あら)たな疑問を(いだ)きつつ。


 それでは、おやすみなさい。

二十八日目に続きます

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