一月二十六日 龍の角
二十六日目です
星暦二千百十一年一月二十六日 月曜日
お早うございます。
やはり、昨夜、融合というのが起きた模様。
その結果、現在絶賛困惑中。どうしましょう。
目が覚めたとき。首が痛いんですよ。固まっていたみたいな感じで。
寝違えたのかなあと思いながら横を向こうとしても頭が何か引っかかったようになって、うまく動かせない。
後、こめかみのちょっと上辺りに違和感が半端ない。
なんとか起き上がって頭を振ると、違和感が更に増大。
頭に手をやって固まりました。
何分固まっていたか判りませんが、ようやく再起動。すぐ洗面台の鏡を覗き唖然としましたね。
頭の両側に角がありました。
長さ二十センチ位のが。
鹿の角みたいな形。
うん。
これ。
龍の角だわ。
わたしの中の龍さんと無事融合出来た模様。
角が生えるのは想定外だったけどな。
頭の、こめかみから少し上に、ちっちゃい頃から瘤みたいなのはあったんですよ。
そうかー。角だったのかー。
あ。ラッキー。
便利なことに、龍さんの記憶が自分の記憶のように思い出せるみたいです。
角を小さくする方法はあるんだ。
やってみる。
小さくはなるけど…これ以上は無理みたい。先端が髪の間から覗いてますね。
ふと思いついて、もらったヘアバンドを着けてみる。
バンドの布地が厚いのと、割と幅広なのが幸いして角が隠れてくれる。
助かった。これなら相当注意しなければ角の膨らみも気にならない。
うーん。これ、多分予測していたんだろうなあ。
カミーラの説明の仕方からして、角が出て隠す術が必要になること。
その後はいつもの調子を取り戻して、登校の準備。
…
完了。
外に出ると、かおりとルミが既に待っていた。
「ごめんね。遅れた」
と謝る。
「そんなこと無いですよ。ヘアバンド、似合ってますね。
「わたし達が早かった。鹿乃子かっこよくなった」
と、告げられる。
とりあえず、いつも通り出発。
授業も、問題なく終了。
即座にユリユリとさつきがやってきて、
「さあ。詳しく聞きましょうか」
と言うなり、クラブルームへと連行されました。
かおりとルミは?顔のまま付いて来ます。
あと、
「「ユリユリ禁止」」
ユリカとユリアにダメ出しされました。
「あれー?うそ!もう神化しちゃった?早過ぎね?」
部屋に付くなりカミーラのこの叫び。
ミュラ姫は見当たりません。どちらかへお出かけのようです。
「えー?そうだったんですか?私全然気が付きませんでしたよ?」
かおりは吃驚顔。
「神様になっちゃった?角生えた?」
ルミは、なんだか凄くわくわく顔で迫ってくるし。
「生えた。こんな感じ」
そう言いながらヘアバンドを外して元の大きさに戻してみせる。
「か…かっこいい」
どっかずれてるなこの娘。
ルミの感想に思わずそう思う。
「龍神になるって聞いた。絶対かっこいい角が生えると思った」
なんだろう?凄く興奮状態ですよ。ちょっと怖い。
「可能性があるなとは思ってたけど、ホント凄いな。その角」
カミーラもまじまじと見つめながら。
「生えちゃったのかー。生えない方に賭けてたのにー」
ユリカ?何言ってんの?
賭博の対象になっていた模様。
「ルミちゃん龍神なら絶対角が必要って言い続けてたんですよね。以前[鹿乃子ちゃん、神様化するよ]って、カミーラちゃんが言ったときから」
「実に良いものが拝めた。感謝」
陰で色々盛り上がっていた模様。かおりに詳しく確認する必要がありそう。
後、ルミ。柏手打って拝むんじゃ無い。
…あれ?神様に成ったなら合ってるのか?
御利益無いぞ?こんなド新神神様
「自分の出来る事って理解出来るかい?」
カミーラに問われ、出来ることに意識を向ける。
取り合えず、体力強化と念動力。気配遮断に精神障壁。物理障壁。精神感応。後、帯電。
「[それから先はまだ早い]だそうです」
「なんだそれ、他人に言われたような言い方」
カミーラさん。そう仰いますが、確認しようとすると、そう頭に浮かぶものですからね?
「ああ。完全に融合したんじゃ無いのか。まだ神様としての階位が低いからブロックされてるんだ」
「かいい?何それ」
カミーラから、又意味の分からない言葉がですね。
「神様の能力で決まる位。そのまんまの意味だよ。まだペーペーだから大きな力は危険だよって言われてるんじゃないか?」
説明されて意味が飲み込めたところで[それで正解]という龍さんの意識。まだ格が違いすぎて、龍さんの神の力が九割以上残っている模様。
どうやらわたしの成長に合わせてこれからゆっくり完全な融合に向かうみたいです。
必要な場面では今のようにご指導いただける模様。至れり尽くせりですね。
で、
「ああああ…」
ルミの悲痛な声。そんな声を上げるようなことか?
角が邪魔なんで引っ込めたんですけどね?
うえぇ?龍さんが落ち込んでいる…角が邪魔と思ったのがショックだったらしい。
かっこいいんですよ?ルミが夢中になる位だし。でもね龍さん?これまで角が生えた経験の無いわたしにいきなりあのサイズは持て余します。勘弁して下さい。
なんとか納得していただけた。良かった。
「完全には引っ込められないんだな」
カミーラに指摘された。やっぱ目立つよね。これ。
「これで精一杯。頂いたバンドが役に立ちます」
そう言いつつヘアバンドを巻く。
「良いね。うまく隠れるみたい」
「ルミちゃんの主張通りにヘアバンドにしといて正解だったね!」
ユリアとさつきの言葉でごまかせていると確認出来た。
「んじゃ、予備をもう二、三本用意するとして好きな色とかある?」
何かおっそろしいこと言い出しましたよ。さつきさん。
「一本あれば充分なんですが」
「いやいやいや。直接肌に装備するもの一本じゃだめでしょ!洗い替えは必要ですよ!」
さつきの力説に、全員 頷いていらっしゃる。
「えー?」
こんな高価なもの何本もいらないなー。
「バンド部分だけじゃだめなの?本体はそのまま使って」
そう提案してみる。
「金額は気にしなくても良いと思うんだけど?ベルトが全体の値段の半分占めてるから あまり意味ないよ?」
「特殊な素材だしね!」
「それ以前に、ベルト部分は温湿度調整のための回路が張り巡らしてあって分離は出来ないぞ?」
ユリア、さつき、カミーラに次々却下された模様。はぁ。気が重い。
「鹿乃子。これ」
「私もこれを付けていますよ」
ルミが頭のカチューシャを指さし、かおりが袖口をまくって腕を見せてくる。ブレスレットが一つ。
「鹿乃子ちゃんのものより小型なのでお値段もかなりお高いようですよ?ね?さつきちゃん?」
「おおよそ二割り増し。三個づつ渡してたよね?」
「はい。お預かりしています」
なんだか かおりとさつきが怖い会話をしているような。
「そんなわけで、標準装備なので気にせず使ってくれる?」
「じゃあ、後二本でお願いします」
「えぇー。五本でも十本でも良いのに!」
さつきさん。何か大層ご不満なご様子ですが。
「鹿乃子ちゃんに似合いそうな色。たくさん用意しておいたのに…」
そう言いながらひとつかみほど取り出したのはヘアバンド仕様の鉢金いっぱい。
どう見ても虹の色より多いぞこれは。
「レインボウカラー七色と中間色でしょうか?…十四色。綺麗ですね」
「用意しちゃったんですね。こんなにたくさん」
うっとりと眺めるかおりと、やれやれと肩を落とすユリア。
「これだけの数改造するのはなかなか大変だったな」
どこか遠い目のカミーラ。
「これは断れないでしょー。毎日取っ替えようねー。鹿乃子ー」
お気楽なユリカの台詞。…断れなくなっちゃいました。
「いいよいいよ。鹿乃子が好きな色二、三本持って行きなよ。残った分はさつきが買い取りするから」
「え?ユリア?マジですか?マジで買い取りですか?」
さつきが大慌てしております。
「謹んで拝領させていただきます」
諦めて全部受け取りましたよ。
良いんだろうか…この後がとっても心配。
「良いな、良いなぁ。私もいろんな色が欲しいですよー。さつきちゃーん」
「我も。我も欲しい!」
やっぱりだー。かおりとルミも欲しいよね。いろんな色で。
「もちろんですとも。用意いたしましたよ。二人とも」
うわ。あっさり了承したどころか既に用意してありますか?大丈夫か?大丈夫なのか?予算的に。他にも色々と。
「……」
ユリア、頭を抱えて座り込んじゃったよ。大変そうだー。
喜び全開の二人とどえらい対照的な絵面になっておりますが…。
「さーつーきー!ちょーっとこっちへ来なさい」
「うきょ?」
首根っこを掴まれたさつきをずるずる引きずって別の部屋に入っていくユリア。
目を見開いたまま固まって引きずられて行く、さつき。
ドアが又 一段と頑丈そうに見えるんですがね。気のせいでしょうか?
ユリアが切れると怖いのは一昨日十分に理解いたしておりますよ。なんまいだぶなんまいだぶ。
「なむなむ」
隣でルミも手を合わせ、二人で見送ります。
「綺麗ですー。うれしいですー」
かおりはブレスレットに夢中ですね。少しは心配してあげようよ。
「いっぺんに持ってきて改造させられたんだ。ホント、大変だったぞ。たっぷり絞られれば良いんじゃないかな」
黒い笑顔が素敵です。カミーラさん。
残る一人は当然いつもの通りです。
そこに転がってます。毛玉状態ですよ。
ルミに目配せして頷き合い、こそっと部屋から抜け出します。
ゆるせ。さつき。強く生きるんだぞ。
帰りの道程も残すところあと僅か。公園の門が見えた当たりで、かおりが追いついてきた。
汗びっしょりでハアハアと息を切らせながら。
「置いていくなんてひどいですよーぅ」
半泣きで文句言ってますよ。
「ブレスレットに夢中で気付かなかったかおりが悪い」
ルミちゃん。なかなか手厳しいですね。
「声を掛けて下さいよー。黙って先に帰らないで下さいー」
泣き出しちゃったので、二人でよしよしと頭をなでながら帰ります。
「ルミ。さつきやユリユリは持ってるの?」
ちょっと疑問に思ったので確認。
「さつきはリボン。ユリユリは必要ない」
さつきちゃん。そういえばいつも頭にリボン巻いてたっけな。
必要無いってなんだ?
「ユリカは内蔵してる」
「ユリアちゃんはサイコ・キネシスが常時展開とか言ってますよ」
ないぞう?内蔵か?片や常時展開って。
ルミとかおりのお答えを聞いてがっくりと。どっちもぶっ飛び能力者ですね。
家に到着し、二人と別れて自室です。
ルミはまだえぐえぐしているかおりと一緒にかおりの部屋へ。しばらく慰める模様。言葉は辛辣だったけど仲いいよね。
部屋着に着替えるついでにもらったヘアバンドを並べて吊す。
明日から毎日とっかえひっかえ交換していきますか。
大丈夫か?姫野グループ。ホントに経費で落ちるのか?他人事ながら本気で心配。
重役コンビにカミーラを含め社員がやってることだから大丈夫なんだよな?信じるぞ?
それでは、おやすみなさい。
二十七日目に続きます




