一月二十五日 タウン・スイーパー
二十五日目です
星暦二千百十一年一月二十五日 日曜日
お早うございます。
現在、一人 居住区のまだ来たことのない区画を散歩中。
歩道の端、車道側に三十メートルの間隔で、直径五十センチ高さ一メートルの円筒形。てっぺんに十インチの端末を取り付けたような外観のそれは[タウン・スイーパー]。[タウンキーパー]達のアシストを担うロボットとのこと。
この間まで、案内用の公共端末かと思っていたんだけど。
具体的には火曜日の朝、登校途中で突然動き出し、落ち葉を回収しているのを見てかおりに教えてもらった次第。
それからは、近くを通るときは軽く声を掛けるようになった。
声を掛ければ反応して答えてくれるので、かおりとルミも面白がって一緒に挨拶している。
今日も、さっきから横を通り過ぎる度、挨拶しているところ。
「お早う。ご苦労様」
「オハヨウゴザイマス。オキヲツケテオデカケクダサイ」
と言った具合。
普段、端末部は何も表示しておらず、数メートルまで近づくと、顔を模した模様を表示してくれる。
話しかけると、いかにも喋っているように模様が変化して楽しい。
個体によって、表示する顔に違いがあったり、しゃべり方も個性があったりするようだ。
時々、ボディに内蔵されているマニピュレータを出して手を振るように挨拶してくれる個体も居る。
どうやって移動しているのか、説明はしてくれたけれど、今ひとつ理解出来なくて不明なまま。
シールドを利用して浮き上がって重力を傾けるとか言ってた気がする。
重力って傾けることが出来るものなのだろうか?
まあ、わたしが意識を失った西暦二千百十一年から見てかなり未来なんだろうなとは思う。星歴だしな。
後、紀元前から二千年くらいの歴史が、じいちゃんに教えてもらったのと若干違うのも気になってはいる。
重要人物の名前が違っていたり、知らない国の名前が出てきたり。
過去のことだし、覚え直せば良いだけなんで問題はないけど。
色々考えつつ、交差点で適当に曲がってみたりしながら気ままに歩く。
夕べ、わたしの中の龍さん。龍神様がそろそろ融合出来そうだと伝えてきたのを思い出す。
融合したらどうなるのか、訊ねてみたけど、たいして変わらないよと返ってきたので、そうなのだろう。
ただ、ちょっと今より更に人間離れはするかもしれないとも伝わってきた。
元々、普通の人間がどんなものなのか、ユリカたちに聞いてみてもよく分からない。
気力。体力。思考力。生命力。その他全て超人と呼ばれる領域だよ。とは再三教えてもらったけれど、ここに来て、体や頭のだるさがなくなって、運動能力が向上したことは実感しているものの、それ以外変わったようには感じていないしなあ。
いろんな事、おんなじ事、脈絡もなく一人考えながら歩き続ける。
お昼を告げるチャイムの音にはっとして辺りを見回す。
五時間歩き続けて周りは見たこともない区画。
道順は覚えているから問題ないが、さすがにお腹が空いた。
近くのカフェで食事。
適当に注文したけどどれも美味。
満足して店を出る。ゆっくりしたのでもうすぐ十三時。帰ることにして歩き出す。
来た道を戻るのも面白くないので、又適当に歩く。方角が分かっているからなんとでもなるだろう。
ここに来て、こんなにゆっくり一人になったことがなかったなと思い返す。
いつも楽しいみんなに囲まれていた。
気を遣ってもらっているのは十分承知している。
振り回されているのも、もう少し手加減して欲しいなあとも思うけど、多分わたしの変化が早すぎるんで、ゆっくり出来ないんだろうなと、理解している。
いずれ、恩を返していかなくてはいけないけれど、今は自身の変化が終わるのをじっくり待つしかないかなと考えている。
ふらふらと歩きつつ、ふらふらとまとまりなく考えて、もうすぐ家に着く。
何となく、本当に何となく、今夜。と感じる。
直後、龍さんから今夜当たり、と伝わってくる。
さっきから、体の芯がほかほかしている。
今日は、はやめに休むことにしよう。
家について、ゆっくり夕食を取り、明日の準備を済ませたら就寝の準備。
最後にゆっくり入浴し、体のほてりが収まったところで布団に入る。
それでは、おやすみなさい。
二十六日目に続きます
鹿乃子が意識喪失した年を間違えてました。
誤=二千百八年 → 正=二千百十一年




