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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年一月
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一月二十三日 マニュアル

二十三日目です

 星暦二千百十一年一月二十三日 金曜日


 今日のクラブは重役ペアとミュラ姫がお休みです。


 え?授業ですか?何事もなく終わったところですが何か?


 言うほどの変わったことは無いですよ?




 それで、重役組は色々記者会見だそうです。


 面白いから是非(ぜひ)みるように、と、かおりの押しが(すご)いです。


 ミュラ姫は遅くまで報告書の作成に追われて、更に会見用の草案(そうあん)作りまでやっていたようで、お昼前に帰宅したとのこと。


 ユウジ副会長が(おっしゃ)いました。


 今、目の前で。


 お久しぶりですと頭を下げる。お見舞いありがとうございました。


「あー。これか。ユカ達がわかりやすいって言ってるの。すっげー納得いった」


 再会早々何やら納得されてしまいましたよ。疑問の解消が出来て何よりです。


「ぷっ!ホントに爆弾のタイミングが絶妙だね。くっくっ」


 横向いちゃいましたね。どこでツボったんだろう?


 ところで、ユカさんて?…あー。ユリカか。愛称ですか?


「あぁ、ごめん。幼なじみでね。小さいときから呼んでるから(くせ)で」


 なるほど。仲良しは良いことです。ところで一つ質問よろしいでしょうか?


「良いよ。って。ホントに(しゃべ)らないのに会話になるな。すげーや」


「ユウジ君て、めったにここにいらっしゃらないですけど、どうして?」


「お。久しぶりの肉声。で、理由はたいしたことじゃ無いよ?答えても良いけど多分爆笑だよ?」


「まあ、ホントに声を出さないでいるのもなんなので。ユリカが是非()いてみろって教えてくれないんですよ。この前から訊きたくて訊きたくて」


「まあ良いけど。ここって女の子率が凄いだろ?」


「今のところ、ユウジ君以外全部女子ですね」


「能力持ちが女子に(かたよ)ってるのが原因なんだけどね、それ」


「一般的なんですか?」


「うん。脳の造りが男女で若干違うんだけど、それが原因の一つらしい」


「存じませんでした」


「まあ、それはどうでも良くて、男子の学生メンバーズって自分ともう一人いるんだけどね」


「一向にお見かけいたしませんが?」


「ここに来ないからね。嫌がっちゃって。女子の集団に男子が一人か二人って状況。ものすごく目立つんだよ」


「まあ、それはあるかと思いますけど?嫌がるほど?」


「先ず一つ。他の男子からやっかみが凄い」


「はあ?」


「もう一つ。女子の会話に男子はついて行けません。気が付くと話題がコロコロ変わって何を話していたのか判らなくなる」


「あー。なんとなく?」


「で、女子集団の中で、ただ黙っていると、他の女子が見た場合、盗み聞きだなんだあること無い事ね?」


「そんなことが過去にありました。と」


「はい。ただ話について行けなくなっただけなんだけどなー。高等部ぐらいの年代だとねー」


「難しいお年頃。と言うやつですね」


 深い(うなづ)きが返って参りまして。ご苦労なさってますね。


 妙に達観(たっかん)されて見えるのは気のせいで?


()れだよ慣れ」


 なんだか遠い目をされて仰います。


 ユリカやかおり、ルミも周りにいるんですけどね?


 さっきから、そんなこと無いよーとか話題変えてないよねとか関連したお話が発展しているだけだよねとか誰だそんなヤキモチ妬きはとかうるさいんですよこれが。


 おもむろに胸の前で両手で拳をつくる。



「ガンバ」

 と言ったら突っ伏しました。ユウジ君。


 ユリカがよしよしと頭をなでていたり。


 かおりとルミはそれを指差してかわいーとか笑っていたり。だめでしょ?人を指差しちゃ。


「「「とどめ指したの鹿乃子(かのこ)じゃん」」」


 と反撃が。そうですね。すまんユウジ副会長。安らかに。


「まだ生きてるからね?」


 ガバッと復活。


 おー、と周りから拍手が響きまして。


 充分付いて来ておいでのようですが。


「ところで、今日は何故(なぜ)此方(こちら)へ?」


 ここで見かけるの二回目だよなあと。


「ミュラちゃんが徹夜明けだから部屋の管理。会長か副が居ないとやっぱまずいんだわ」


「お二人とも御用事の場合は?」


「カミーラも副会長だから三人居る。その全員がだめならその日はクラブお休みだね」


 カミーラも副会長だったとは。驚きの新事実発覚ですよ。


「そんな大げさなこと?」


 怪訝そうなユウジ君には悪いが吃驚(びっくり)事実でしたよ。わたしにとって。


 お節介焼きのツンデレ神様だと思ってましたからね。


「誰がツンデレかー」


 あ。ご本尊(ほんぞん)様だ。いらっしゃいましたねそういえば。さっきから部屋の隅っこで黙々と作業してらっしゃったので存在を半分忘れておりました。


「本尊ゆーな。仏教じゃねーか。せめてご神体(しんたい)にしろよ。神族だぞ?一応」


 あれー?神道(しんとう)の扱いでよろしいので?十字架関係の神様だったのでは?


「日本人で良いよ。国籍日本にしか無いから。そうじゃないよ。大体、なんでこんな議論しなきゃいけないんだよ」


 ご本尊様呼びがお気に()さないようでしたのでそこから?


「ちげーよ。ツンデレなんて言うからだろ?あー、なんで神と仏がごっちゃになるかな?日本人て!」


 余計なことかと思いますけど、髪が傷みますよ?そんな頭ガシガシすると。


「ホント余計だね?心配してくれるのはありがたいけど。なんであっち行ったりこっち行ったり話がどっか行っちゃうの?」


 えー?それはなんと申しますか。


「カミーラが律儀(りちぎ)に突っ込むからじゃないかな?」


 ぽつりとユリカが(つぶや)く。


 ピタリ。と固まるカミーラ。


「遊ばれてる?」


 ぎぎぎ…とユリカを見ながら(たず)ねる。


 大きく頷く一同。ユウジ君も頷いてるね。


「カミーラ様の返しがとても美味(おい)しいのでついつい」


 本音をポロリしてみた。


 ()ねちゃいました。それはもー盛大に。


「購買特製プリンアラモード(大)ご用意いたします」


 頭を下げてそう言ってみる。


「今日はフルーツパフェの気分」


「了解です」


 お手軽にご機嫌回復出来ました。便利だね。


「お手軽便利って…」


 呆れモードのユウジ君はおいてけぼりですね。


 例の三人はずーっと笑い転げておりますよ。


「やっぱ、女子の会話付いてけねー」


 ぽつりと()らす呟きが妙に印象的ですね。


 そういえば、


「カミーラがいるんだからユウジ君来る必要なかったのでは?」


 と訊いてみると


「なんか、今日はカミーラ、作業に集中したいって言うんで俺も来た」


 とのこと。


 集中ってさっきからごそごそしてたあれ?


「さっきまで、カミーラ隅っこで何やってたの?」


 購買特製フルーツパフェ(ジャンボ)をうまうまと召し上がり中の神様に訊いてみる。


 割と気になってたりする。


「隅っこ言うな。わたしの作業机だし。」


 スプーンをくわえて濃い青色をした何かを、ポケットから取り出して此方(こちら)に放ってよこす。お行儀(ぎょうぎ)悪いと思います。


「それは気にすんな。それ作ってた」


 ハチマキ?


鉢金(はちがね)という。普段使っても違和感ないデザインになってると思う。必要になるから持ってると良いよ」


 綺麗なコバルトブルーのやや厚い布(?)製。中央に何か硬い材質の芯が入っている模様。額に当ててみるとぴったり合う。


 あ。肌触りが凄い。しかも暑くない。


 若干伸縮性があって、頭の後ろは面ファスナーのようにくっつけると固定されて引っ張れば()がせる。


 が、なんのために必要になるのかが判らない。


「後、これ取り扱いのマニュアルな」


 小冊子。吃驚だよ?何この説明書。アクセに必要な量と違う。


 ぱらっとめくって更に吃驚。超高性能の個人用防御シールド発生装置。物理(飛来物)と熱、冷気を一定時間(数秒〔物理〕~数分〔熱〕)防ぐって。


「もらえないよ?何このトンデモ装備。個人で所有するものと違うよ?」


「そんな大げさなもんじゃないよ。市販されてるのちょっと弄っただけだし。さつきからちょっと強化して鹿乃子に渡して欲しいって頼まれた」


「市販品とは言ってもですね?お値段が尋常(じんじょう)じゃないような?って、それより強化した?」


「物理シールドの方を五割強くしといた。多分ライフルの徹甲弾(てっこうだん)程度ならはじくと思う。値段は昨日のお仕事代で購入出来るよ?」


「えー?」


「実験すんなよ?危ないから」


「しませんよ!?」


 なんだろう。いつも異次元な会話だけど、路線が違う感じのこの異次元会話。


 渡されたものを手にオロオロしていると、


「わざわざ鉢金なんてタイプ、ヘアバンドに偽装してるんだから察しろ?きっと必要になるよ」


 真面目な顔で仰います。


 手にしたスプーンで指し示してなきゃかっこいいんだけどなあ。


 後、ほっぺのクリーム。


「え?どこ?付いてんの?」


 わたわたと。やっぱカミーラはこうじゃないと。


「うそかよ!」


「いや、ホント」


 右のほっぺのクリームをハンカチで拭う。


「ありがと」


 可愛いなあ。素直だし。


 瞬間真っ赤になるカミーラ。


 ほら、他の皆さんも同意されてますよ?


 四人揃ってうんうんと。


 だーっと駆けだしてドアの外へ飛び出して行っちゃいました。


 あれ?あのドア出入り口じゃないよね?


 はてな顔でカミーラが出て行ったドアを指差して、ユリカを振り向いてみる。


「カミーラの研究室ー。大抵あそこにこもってるかー、姫野グループ本社の研究所にいるよ」


 了解。研究室に閉じこもっちゃいました。


「律儀だね。言い直しならぬ考え直し?」


「あはははははははははははははははははははは」


 ユウジ君の突っ込みにユリカ決壊。かおりとルミもぷるっぷる。


「やっぱ俺、場違いだよな」


 三人決壊。わたしも決壊。




 あー。笑ったー。笑いが収まって、カミーラの部屋を見るとドアの前にパフェのグラスとスプーンにメモ。


『ごちそうさま』


 と走り書き。カップもスプーンも軽く洗ってあるし。


 それを見たら、うれしくて笑いがですね。


 後ろは既に再決壊してますね。声は抑える配慮(はいりょ)付きで。バタバタする音は無配慮だけどな。


「ヘアバンド。ありがとうございます。さつきには明日直接お礼します。今日は下校しますね」


 そう声を掛けて振り向けばみんな帰りの準備完了でした。




 帰宅して先ず、今日はマニュアル熟読。


 わたしはマニュアルは隅から隅まで読む派です。読むだけで理解出来ないことがほとんどだけどな。


 えーと?先ずは注意事項。


 [一般の携帯端末用チャージャーでもエネルギーチャージ出来ます。]と。電気じゃないんだ。まぁ、電気じゃ無理か。


 [汚れたら全自動洗濯乾燥機で洗濯乾燥出来ます。]簡単で良いね。


 [ベルトは(ほつ)れたら交換です。交換はカミーラに渡せば大丈夫。]って、マニュアルまで改造してあるよ?


 [鉢金本体は宇宙船の外殻(がいかく)素材を更に圧縮したもので、超軽量高強度です。]と。どのくらい強いんだ?


 あ、次に書いてあった。[極薄に圧延(あつえん)加工したこの素材は、現在流通する携帯兵器で破壊することは出来ません。変形はしますので試験はご遠慮下さい。]…誰がするんだ?そんな試験。


 [物理シールドは、飛来物が三十センチ以内に接近した瞬間から弾き返すまでのごく短時間生成されますが、エネルギー消費が激しいため、合計で三~五秒間で、エネルギー切れとなります。]…人体に危険がある飛来物ってーと時速百キロ位からか?三十センチ手前からぶつかるまでって百分の一秒しかないじゃん。三百回も防げれば充分じゃん。


 [熱シールドは、マイナス二百七十度]…ほぼ絶対零度じゃん。[から、二千五百度までの環境で発動し、]って。どこだ?どこにそんな環境が存在するんだ?普通の生活で。まあ良いか。[最大強度で発動した場合、約三分でエネルギー切れとなります。]


 そうですか。なんだか疲れてきた。どれだけのエネルギー持ってんだよ。


 ああ。書いてあった。[(なお)、強度の高いシールドを発生するため膨大なエネルギーを内包(ないほう)いたしておりますので、破損には十分ご注意下さい。] 壊れないよ?宇宙船の外殻より強いんでしょ?そんな頑丈な素材で出来てるもの、どうやって壊すの?


 続きがある。[エネルギー満タンで破損した場合、半径五十メートルが瓦礫(がれき)となります。]って。爆弾じゃん。すっげーでっかい爆弾じゃんよ。超危険物だよ?


 ちょっと待て?そんな膨大なエネルギーをチャージ出来るって、携帯端末のチャージャーってどれだけのエネルギー持ってるの?そんなのが一般家庭にゴロゴロしてるの?超怖いんですけど?


 まだあるな。[尚、一般の携帯端末用チャージャーで充填した場合。満タン時の約五百分の一充填したところでチャージャーが空になります。物理シールド一回分にしかなりません。専用のチャージャーを、さつきから受け取って下さい。]


 ……ていっ!!


 投げちゃったよ。マニュアル投げちゃったよ。


 最初に書けよ最初に。罠か?罠なのか?書く順番、狙ってるだろ絶対に。カミーラに仕返しされたー。


 よし。今日(いじ)った分はこれでチャラだな。決定した。


 もういいや。明日さつきに詳しく聞こう。



 おやすみなさい

二十四日目に続きます

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