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鹿乃子の日常奇譚  作者: みゆki
星暦二千百十一年一月
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一月十二日 コピー

十二日目です

 星暦二千百十一年一月十二日 月曜日


 朝です。お早うございます。


 起きて、布団を上げて、朝食。着替えと身支度を整えると、(かばん)を背負って登校です。


 手持ちも、肩掛けも出来る鞄だけど、背負うのが一番邪魔にならない。


 昨日発見したルートでの初登校。予定通り到着出来るか楽しみ半分。不安も半分。変なアクシデントがありませんように。





 妙なフラグが立つことも無く 校門前に到着。やはり此方のルートの方が早い。


 軽く走ってきたので、体もほぐれて気持ちが良い。まだ一月。汗をかくことも無く、息も上がらず。 鼻の頭と耳が冷えてちょっと痛い。



 ホームルームに向かう前に購買へ寄り道。


 制服のスカート、買い直すのを忘れていた。またユリカに覗かれる前に用意しないと。


「あー。鹿乃子(かのこ)のパンツも見納めかー」


 ドコン!

 という音とともに床に崩れ落ちるユリカ。


 人のスカートをめくるんじゃ無い! (こぶし)を握りしめてユリカを(にら)むわたし。


 正当防衛です!


「これは、ユリカちゃんの行為がダメダメですよねぇ…さすがに。擁護(ようご)は出来ません」


「自業自得」

 かおりとルミも居たのかい。


「昇降口に着いたところで、ホームルームと逆方向に向かう鹿乃子ちゃんが見えたので、どこへ向かうのでしょうという事で。」


「追跡調査、実行中」


「もう追跡しなくて良いからね?任務終了ね?…ホームルームに行こ?」


 二人を促して移動開始。


「これ、どうする?」


 床の毛玉(金色)を示しつつ問いかけてくるルミ。


「放置…で、いいんじゃないかしら?」


「みんな ひーどーいー」


 かおりの答えに、手足をばたつかせて非難の声を上げる毛玉。もといユリカ。床につぶれたまま。


 やれやれと溜息(ためいき)をつきながら、ユリカの首根っこを(つか)んで引っ張り上げる。


「軽!体重(いく)つだ?お前」


「えー?女の子にそーゆー事を()くー?」


 口をとがらせつつブーブーと文句。ぶら下げられたままですが。


「いや、重かったなら そう言いたいの分かるけどな?逆だぞ?軽すぎない?」


「四十キロ切ってたはず」


 答えをくれたのはルミ。40キロ無いのか、この毛玉。小学生並みじゃん。


「それにしても、片手でぶら下げられる腕力って。私もぶら下げられてみたいです」


 なんだか変な食いつきをしてませんか?かおりさん?そんな憧れを込めた視線で見つめられても、ですね…


 結局ぶら下げましたよ。ルミまで。


「貴重な体験」


 とほくほく顔でしたね。変人どもめ。


 ちなみに、はた迷惑極まりなくも、購買の真ん前で繰り広げていたわけですが、購買のお姉さん。


 終始にこにこと(なが)めておりました。



 特に変わったことも無い授業風景はサクッと割愛ー。



 今日からカミーラの特別授業です。


 始めはお約束の気を感知するところから。お話とかではよくあるけれど、実際体験するとなれば見当も付かず。


 瞑想(めいそう)自体は巫女修行で経験してるからすぐ深い層まで入れるんだけどな。わたし。


 気を感じる、といわれてもなー?何が気なのか皆目分かりませんが。何か変わった感触を得られないかと悪戦苦闘中。


 傍目(はため)にはお昼寝中。


 いや!違う違う、瞑想中です。 部屋中央の応接用ソファで瞑想中。


 さつきとユリアは例によってお仕事で休み。


 ユリカたち三人は部屋の隅の椅子に座って何やら悪巧(わるだく)み中。


 ユウジ君は他のクラブ掛け持ちでそちらで活動中。


 ミュラ姫は何やら端末でお仕事中。


 カミーラはローテーブルを挟んだ対面に座って現在お菓子を食べておやつタイム。


「おやつ、違うからな?ちゃんと鹿乃子の気の流れ観察してるからな?だいたい、見もせずに()れだけ回りのことが判るのに気の流れが分からないっておかしくないか?」


 そう(おっしゃ)られましても。


「!」


 何だ?ユリカが二人になった?急にユリカのからだが二つに分かれて、しかも片方が近づくのを感じる。


 慌ててユリカを見ると…ひとりだね。元の場所に。でも、すぐ近くにもう一人居る?


「鹿乃子、気をつかめてるよねー?気の流れって言ったから何か液体が流れる様子に例えて、そー言うのを感じようとしてるのと違う?」


 何か違うの?


 近づいてきた見えないユリカが突然 正拳突き。


「うぉおい」


 慌てて飛び退()く。同時に見えないユリカが居なくなる。


「やっぱり、鹿乃子、完ぺきに分かってるよ?」


「分かった。ぼんやりとじゃなく完ぺきに感じ取れてるから流れって言葉じゃ理解出来ない。と」


「ユリカさん。カミーラさん。わかりやすくお願い致します。」


 つい(へりくだ)る。座ってた場所に戻っても良いですか?


「今、鹿乃子にはユリカが二人になったと感じられた。OK?」


 カミーラの問いに(うなづ)くわたし。


「それはユリカのいたずらで、自分が普段持っている気と同じモノをコピーして増えたように錯覚させたんだ。」


 えーと…


「ただ、普通の人に、このコピーは感じられないから何事も起きない。次に、気を感じ取れる敏感な人でも、目で見た場合、姿がないのでそこにある存在は間違いだと思い込む。」


 ……はい?


「その上のクラスでは、何かそこに居ると分かるので落ち着かなくなる。更に上級者はユリカと同じ存在が居るように感じるので非常に戸惑う。」


 ………はあ。


「で、ここに居る連中だと、ユリカが自分の気をコピーして鹿乃子にいたずらを仕掛けていたのがはっきり分かる。」


 そうなんだ?


「でも、多分。かおり」


「はい」


「最後、コピーが鹿乃子に何をしたか分かったか?」


「いえ。急速に近づいていったのは分かりましたけど?」


「気の塊が鹿乃子に向かって吹き抜けていったような?」


「そんな感じでしたね。」


 え?あんなにはっきりとした攻撃動作だったのに?


「それ。ユリカが意識していたとおりに認識出来ている。気の感知能力としては完ぺき。」


 えーとー?つまり…どうゆう?


「視力に頼らず、ここに居る全員が何をしているか分かるんだろ?」


 そうですね?


「自分自身の存在も確認出来てる?」


 はい。


「じゃ、自分の存在をコピーしてみて?こう、二つに分けるでも、存在感を集めて組み立ててみる、でもやりやすい方法で」


 えー?難しいことを…・何となく、自分の隣に自分自身がいる情景を思い浮かべてみる。


 うーん。ぼんやりと、こう、居るような、居ないようなー。


 しばらくうなって色々イメージを高めていると、急にわたしが二人居るイメージが浮かび上がってくる。


 右手を挙げる、もう一人も右手を挙げる。色々動けばその通り動くもう一人のわたしのイメージ。


「出来てるねー」


「これ以上無い位完ぺきだな」


「わたしにも鹿乃子ちゃんが二人になったとしか認識出来ませんよ?姿は無いのにそこに居ますね」


 ユリカ、カミーラに続き かおりが言う。


 目を開ける。イメージが霧散する。どーっと疲れが襲ってくる。


「うわっ。なんだこれ。きつっ」


 思わず声が出た。


「初めての気の操作、ご苦労さん。今の逆の要領でな?自分の存在が薄くなるイメージをするんだ。すると、相手に考えを読まれなくなる」


 存在が薄く?そこに居ない人の様子は見えないから分からないという事?


「簡単に言うとな…鹿乃子、君はいつも ここにわたしが居ますよって強烈に意識してるせいで周りの人に存在感が伝わりすぎてるんだ。今からこう動きますよーって盛大にアピールし続けてる感じ」


 それは…。分かりやすいね。これ以上無く分かりやすいよね。


「今を十として八まで薄めればふつーの人と同レベル、五まで減らせば姫くらいの能力者なら考えていることを読める、二まで減らせばほとんどの相手に対してガード出来るしゼロに出来れば視認出来てもそこに居るとは思われなくなる」


 なるほど、いつでもその状態に持って行けるように訓練しろと…


「んーにゃ。常に六くらいキープ、必要なときは瞬間でゼロが出来るように訓練な?」


「えー?」

 遠い道のりですよ。頑張れるかなぁ?


 よほど悲壮感が強かったらしく、笑い転げる金の毛玉が誕生致しましたよ。この毛玉めー!覚えてろっ!



 今日は、初めての気の操作なのに結構無茶なことをやっていたらしく、気力が抜けた状態。文字通り。


 帰ってゆっくり休むよう指示を受け、やや早いが帰宅することに。


 ユリカが念のため家まで付き添ってくれた。ありがとう。さっきの爆笑はチャラにしよう。さっきのだけな。


 明日からは自分の存在を薄めてキープする訓練。今日のような無いものを作るんじゃなく、在るモノを減らすだけだから疲れはしないと言われたけど。


 薄めるってのもなかなか意識するのが大変そう。頑張ってみますか。色々とダダ漏れさせないためにも。


 それでは、おやすみなさい。


十三日目に続きます

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