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決着の決塔  作者: 旗海双
第2章
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第四話「ワールドオブミラー」

 第一階層〈荒野〉で鏡夜は華澄を地面に降ろしてから息を荒げて屈んだ。

 残念ながら鏡夜には疲れないという常識外れの特質はついていない……。

「あれは、無理では?」

 華澄は胸に手を当てて小さく深呼吸して、気を取り直してから言った。

「確かに、今ある手札では足りませんわね。……根本的に意味がわからないですわ……。クエスト『カーテンコール』よりも数倍巨大なものを、どうやってこんな短期間で搬入しましたの……? クエスチョン『パレード』は人間大でしたので、まだ常識の範囲内ですが……」

 華澄は頭を抱えている。

「くすくす……対策が早いですね。初見殺し、新たな能力と対応の応酬が一パーティと機械兵器群で成立している時点で、前例がない埒外かと……。未来観測機械の使用許可をアルガグラムに要請しますか?」

「蜘蛛の魔女が許可するわけありませんの……よし、会話で冷静になりましたわ。よくやりましたのバレッタ」

「くすくす……」

 バレッタは華澄へ可憐に一礼した。

 鏡夜は立ちはだかってきたロボットたちを思い返す。巨大機動兵器にはQuest。人型機動兵器にはQuestion。

「巨大兵器はクエストシリーズであり、人型ロボットはクエスチョンシリーズだと」

 鏡夜の呟きに華澄は頷いた。

「〈Q‐z〉の名前をアレンジした、識別コードですわね。エーデルワイスのネーミングセンスは優れているのは認めざるおえませんの……あの魔術師……ええ……今回は、わたくしが対策を思いつきましたわ」

「え、マジです? 早くないですか?」

「貴方に早いとか言われたくないですわ。ふふ」

 そう笑って両の手の平を合わせて、パチンと手を叩いた。パーティメンバー全員が華澄に注目する。崩れて消失した片手が回復し、性能を確認するように手の平を閉じたり開いたりしていたかぐやも立ち上がって華澄へ顔を向ける。

「ただ、準備に一日かかりますの。明後日まで、しばらくお待ちくださらない?」

「……願ってもないですが」

 鏡夜では毒々しい銅の巨人をどうにもできない。

「何かお礼をするべきでしょうか?」

「………」

 華澄は驚いた。鏡夜は華澄と目を合わせて首を傾げる。

「いりませんわ。わたくしたち、互恵で……協力しあっておりますから。チームプレイにいちいち貸し借りをしては、煩わしいだけですの」

「なるほど」

「ていうか我が君の方がよっぽど活躍してるし白百合華澄を助けてるんだから、そうなると都合が障る――悪いだけじゃない?」

「かぐやさん、シャラップ」

「シャラッ……ああ、命令? 了解」

 かぐやは口を糸で縫い付けるような動作をして、沈黙した。華澄は肩を竦める。

「それもありますわ」

「別に誤魔化してもいいのに……」

「信頼関係に嘘を吐くほどアマチュアではございませんの」

「プロ意識ですか」

 かなり誠実な。しかし、今日、明日に第二階層にチャレンジできない以上、鏡夜は、後回しにしてきた、たくさんの事象を消化する必要が出てくる。

「いったんダンジョンから出ましょうか」

 さて、何をどうするのか……考える必要がありそうだ。


 決着の塔を脱出して、攻略支援ドームエントランスに戻る鏡夜一行。

「ではわたくし、本当に事務的な仕事をしてまいりますの。ご要望があるなら、考慮いたしますが、何かございます?」

「特には――、ああ、そうだ。バレッタさんに聞きたいんですが魔王様ってどういう方なんですか?」

 バレッタは歌うように語る。

「くすくす。Hosted State of Demevil. H・S・Dの王です。.戦争ではなく競争と闘争が満ちる坩堝。その頂点に立つ呪術王。政治的分類と比較すると……大統領に近いでしょうか……。勇者と魔王は決着の塔攻略に参加すること、なる伝承ルールに基づいて現在も活動中です」

 〈ほすてっどすてーつおぶでめびぃる? ユナイテッドツテイツオブアメリカ……〉

「H・S・Dって漢字が書くと、どう書くんですか?」

「こめと書いて米国です。Demevilのmeが変化して米です。名称自体を全て漢字にすると……」

 バレッタは自分の手の平を鏡夜に向けるとさらさらと指文字を描く。

「出米毘留です」

「米国……ええ、知ってますよ、あの、東の海を越えた先にある大きな大陸ですよね。ええ、ありがとうございます」

 米国大統領が魔王として契国(形も位置も日本)でダンジョンアタックしてる、その理解で正しいのだろう。

 意味がわからすぎて怖い。だが納得し向き合え――会わないといけないのだ。

 外交筋に根回しして会談の申し入れとかしなくていいのか。と鏡夜は内心乾いた笑いをしながら心の中でジョークを飛ばす。

 華澄はお礼を告げた鏡夜へ別れを告げる。

「では、何か突発的事象があればメールを送って下さいませ、考慮はしたしますの。では」

 華澄はバレッタを引き連れて鏡夜とかぐやと桃音と別れ、受付裏側の扉へと入っていった。

 鏡夜は、空いた時間に何をしようか考える。やることはありすぎる。全部やるのは、少し難しい。

 鏡夜は、受付の染矢に尋ねた。

「私、今まで一度も魔王様にお会いしたことないんですけど、いらっしゃいます?」

「あーと、ジャルドさんは夜に活動していらっしゃいますので……あと二、三時間待つ必要がありますかね」

「うーん、なるほど……? 夜、夜ですかぁ」

 となると……鏡夜は魔王へ自身にかかった呪詛の内容を尋ねようかと考えていた。そこまで思い出して、ふと、忘れていたことがあったと気づいた。


 そういえば、自分の能力の中で一つ、わかっているにも関わらず深く調べていないものがあった。


「染矢さん、大きな鏡がある部屋ってあります?」

「ご自分で出せばいいのでは?」

 びっくりした。明け透けに断ち切ってくるな。

「私の、能力ではなく、化学工場とかで生産されているような、シンプルな鏡、ミラーでお願いします」

「…………トイレですかね」

「ああ、なるほど」

 鏡夜は一つ頷くと、お礼を言ってトイレに向かった。



 じゃあトイレ行ってきます、と鏡夜は桃音とかぐやに行って男子トイレに入り――すぐさま、ばつが悪そうに出てきた。

「鏡が小さいんで」

 鏡夜は少しだけ恥ずかしそうに、男子トイレと女子トイレの横にある多目的トイレに入った。思った通り、かなり巨大な鏡が設置されている。理想通りだ。



 鏡夜は多目的トイレの鏡に手を突っ込む。いつか鏡の中に手を突っ込んだ時、鏡夜の手は鏡の中に入った。

 検証だ。


 いつかと同じように、手を鏡の中に突き入れる。

 ……しばらく待ってみるが、特に痛みや違和感はない。慎重に、肩まで突き入れる。

 次にもう片方の腕を。


(………よしっ)


 鏡夜は、ついに意を決して、鏡の中へ頭を突き入れた。




 鏡の中は暗闇の中に、たくさんの窓が浮いているような空間だった。鏡夜は茫然とする。


「鏡の世界も異世界っていうのかぁ?」


 鏡夜は一人呟いて、内側から鏡の枠を掴むと、全身で鏡の中に潜り込んだ。

 ふっ、と、床もないのに鏡夜は暗闇の中に立つ。

 今まで一番ファンタジックで、オカルトで、意味不明な出来事だ。異世界へ来た一番最初の始まりを除けばだが、と、鏡夜は振り向く。


 鏡の中から多目的ルームを覗く。


 まったく見覚えのない二十代中盤ほどの契国人女性が唖然とした表情で鏡の中にいる鏡夜を見ていた。


「……こんにちは!」


 鏡夜はとりあえず笑顔で挨拶をした。



「……嘘でしょ! 嘘でしょ!? なに、なにこれ!? 何が起きてるの!?」

「………貴女、誰です?」

 鏡夜はとりあえず首を傾げて尋ねる。しかし、多目的トイレに入った女性は心底戸惑い慌てるだけだった。

「ありえない!! 異界技術なんて話じゃない! 基礎の生態系もないのに! 神代でも絶対にこんなことは起きない―――――!!」

「あの……」

 戸惑う鏡夜の中で、今までまったくなかった、第六感のような何かが鏡夜に言った。

 鏡夜は、鏡に映る光景を操れる。と。



(気持ち悪)


 率直な気持ちだった。まるで何度も何度も暗記して身体に覚え込ませた常識が、意識することもなく思い出せるように、鏡夜は、自分の能力を理解した。

 ……こんな、第六感で理解できるなら、最初から全ての呪詛の内容を理解させるべきだろう。

 まるで、鏡の中に入り込む能力だけが、他と違うもののようだ。

 鏡夜はパチンと指を鳴らした。周りの暗闇が変化する。

 鏡夜の周りの空間が変化する。暗闇の中に、パチパチと暖炉が燃える洋風の部屋で鏡夜は真っ赤なロッキングチェアに腕を組んで座った。

「私の名前は、灰原鏡夜と申します。貴女の名前は?」

「……!? ……!?!?!? なにこれぇ?!」

「はぁ……」

 鏡夜は鏡に映るものを、一般的な鏡と同じにした。まるでマジックミラーのように、向こう側からはただ多目的トイレと自分だけが映るようになる。

「ちょ、ちょっと! ちょっと待って!! ねぇ、どうやったの!」

 鏡をどんどんと叩く女性を見ながら、どう対応するか鏡夜は腕を組んだまま悩む。ロッキングチェアを何度も揺らしながら……うん、スムーズに会話するのは無理だな、トイレだし。

 女性とトイレで会話するのは、マナーとして終わってる。と鏡夜は自分を納得させた。洋風の部屋を暗闇に改変し、鏡夜は、鏡の世界に戻る。

 そして一度も振り返らず、暗闇の中を放浪する。歩いているのが飛んでいるのか漂っているのか。どうにも鏡夜が感じている触感は、筆舌に尽くしがたいものだった。


 暗闇の中の窓には多種多様のものが映っている。そしてどう考えても決着の塔攻略支援ドームの中にある鏡に映る光景だった。


 窓の大きさも、ドームの中にある鏡の大きさに準拠している……。



(どうも鏡の世界を、移動できるらしい。操れるらしい。なんて異能だ。まさに、鏡の魔人だ。言葉よりもなお、よりいっそう)


 鏡夜が浮かぶように暗闇を移動していると、まず見えたのは――。

「華澄さん?」


 鏡夜は、座っている華澄の姿が映る窓に近づく。華澄が携帯で何かを話している。

「ですから―――これは支援になりませんの。なぜなら、わたくしは、“買う”と言っているんですのよ?」

「―――! ―――!」

 電話口の相手は何事かを叫んでいる。だが、何を言っているかはわからない。

「はて――、簡単な話ですわ。アルガグラムのものだと配送に時間がかかる。わたくしが求める水準に適うものは、貴方のところの――機体だけですの。わたくし、実は小耳に挟んだのでしたけれど――久竜さんの件について、続報が」

「―――……!」

「いいんですの? このイベントをリークされた場合……確実に、めちゃくちゃになりますけれど」

「―――?」

「わたくしたちは大丈夫ですわ。いえ、大丈夫にしますの。貴方の失敗であり、我々の失敗ではなく――勝手にやってしまえばいいだけですから。脅しになりませんの。さぁ、さぁ、さぁ、わたくし――実は、答えを、一つしか聞く気がないんですのよ? 灰原さんを、待たせるわけにはいきませんもの。」

「―――……」


 穏やかに、静かに、冷酷に、華澄は交渉をしていた。鏡夜に先ほど告げた通り、準備をしているのだろう。

 具体的に何を話しているのかは雲をつかむように読み取れないが――。対策でもしているのだろうか。暗号や符号で会話をしているのかもしれない。

 あまり仲間を長く観察するのも申し訳ないと、鏡夜は華澄の控室の鏡から離れた。



 鏡夜は思いついた、ひたすら上に上がった。決着の塔の中に、鏡に類するものが在れば――そして上階であればあるほど―――決着の塔の攻略を効率的にできると思い至ったからだ。

 しかし、ある程度の高さまで来ると、すっかり窓がなくなってしまった。

 ……どうやら、決着の塔に、鏡の出入り口はないらしい。

 もしかしたら決着の塔のセキュリティによって、外側からの能力干渉が制限されているのかもしれない。

 いいアイデアだと思ったのだが、と鏡夜は残念がった。


 収穫がなかったので、下に降りていくと、一番最初に通りがかった窓にミリア・メビウスが映ったので、鏡夜は、移動を止める。

 ……あと一人だけなら、と鏡夜は、窓からミリア・メビウスを覗く。


 ミリア・メビウスは、最上階のホール、ステージの上に座ったままだった。

 しかし、彼女の座り方は極めて………横柄だった。肘掛けに肘をかけて、頬杖をついて、足を投げ出して、中空を薄目で見上げている。

 修道服を着ているのに、まるで覇王のようだった。


「そうだ」


 穏やかな質に反して、恐ろしく重い声だった。鏡夜は彼女の様子を鏡越しに窺う。

「私は回帰する。私は覚えている。テレビに映る美しい聖女。あの輝き。あの魅力、あのアイドル性! 世を導くは聖女である。世を救うは聖女である」

 ミリア・メビウスは、世界そのものへ覇気を叩きつけるがごとく宣言した。


「―――世を統べるは聖女である。ああ――、私はあの美しいセピア色の憧れを回帰する」


 そう言って、ミリアはふん、と鼻を鳴らした。

「ファンがいないと張り合いがない」

 ミリアは、何かを求めるように、懐かしむように目を細めた。

(……回帰は回帰でも、自分の理想へ回帰するってか?)

 なるほど、どうも、灰原鏡夜とミリア・メビウスは、願いに対するスタンスが似ているらしい。願いを自分のためにしか使うつもりがない。親近感と――なにより、こいつに願いを叶えさせてはいけない、確信だ。

 鏡夜の願いは、自分にしか向かっていないが、ミリアの願いは世界に向かっている。世を統べると呟くやつに、世界の命運を渡すわけにはいかないだろう。


「笑える話だ。世界の命運? どうでもいいと言ってる奴が、世界征服を目指す奴を気にするのか?」

 鏡夜は苦笑いをしながら、ミリア・メビウスの鏡から離れた。


 ふと、鏡は思いついて、鏡の中の世界をこねくり回して、真正面に来た窓を通った。


 鏡夜は桃音の家のバスルームの鏡から頭を出した。


「距離の制限もねぇのか」


 無法だ。今までの、どんな能力よりも無法で逸脱して異常で無体だ。鏡を媒体にして、どこにでも移動できるなんて。

 ていうか、鏡の世界をしっかりと検証していれば……いれば………。

「〈Q―z〉のボス、キー・エクスクルに繋がる鏡よ来い!」

 しかし、なんの反応もなかった。

 さて、どちらだろう。あいまいな情報では、鏡の移動ができないだろうか。もしくは、キー・エクスクルが、鏡夜が移動できる場所にいないのか。

「現在の桃音さんの場所!」

 しかし、なんの反応もなかった。具体的に、明確に、場所を意識しなければ、ひとっ飛びで移動することはできないようだ……。

「ドームの多目的トイレ」

 とやると、鏡夜は即座に、多目的トイレ前の鏡の世界に移動した。

 先ほどと同じ配置に鏡の窓がある。どうやら意識した一つのポイントを起点にして、周辺の鏡の位置や窓を、暗闇の世界から確認できるようだ。

 こんなもの、デメリットにもなっていない。有益でしかない能力だ。



 さて、多目的トイレ以外から現実世界に帰還する必要があるが、鏡夜が通り抜けるに足る大きさの鏡はなかなかない

 右往左往して、あっちこっちを探し回っていると、ひときわ巨大な鏡を発見した。

(こんな大きさの鏡があるなら染矢さんが案内しねぇか?)

 しかし、鏡夜の前には鏡がある。他に通り抜ける窓もない。と鏡夜は覗きんだ。

 白い壁? と照明が映っている。人の影はない。……鏡夜は、よし、と鏡の窓を通り抜け。

 鏡夜は、決着の塔攻略支援ドームにある風呂場の湯船から飛び出すと、身体を一切濡らさずに、湯船の縁に両足で降り立った。

 ………背後に、生き物の気配がする。鏡夜は咄嗟に振り返った。


 恐ろしいほどに背が高く、恐ろしいほどに頑強な肉体をした、人の形をしていながら異形としか思えない男が、湯船に浸かっていた。

 ……凶悪な表情を浮かべる目が濃すぎる渦巻く闇の魔族がいた。瞳がまるで闇の嵐のごとく渦巻いていた。

 魔王の肌には入れ墨――なのだろうか。びっしりと、黒い図形が並んでいる。もとの肌の色も黒いのに、入れ墨はもっと黒かった。まるで光源のない闇のようだった。


 そしてもちろん、鏡夜は彼に見覚えがあった。

「これは、これは。魔王陛下。お会いできて光栄です」

 人外の代表、決着の塔挑戦者最後の一名――。間違いなく、異形、人外の王。“魔王”だった。いい湯だな、みたいな場所で初遭遇するべき者ではなかった。


 鏡夜は優雅に帽子を取って一礼しようとして、帽子が取れないのを思いだした。やばい、自分が感じているよりも絶望的に焦燥している。しかし、気取られるわけにはいかない。舐められてはいけない。動揺を読み取られるな。

 だから、鏡夜は微笑を浮かべて大袈裟なまでに演技めいて告げた。

「ご入浴をお邪魔して、申し訳ありません、すぐに失礼しますね」

 鏡夜は革靴で(公共の風呂場に革靴で入らないといけないとは!)湯船の縁から床に降りると、自分でもありえないくらいと思うほど、礼儀正しい所作で、風呂場から外に出た。


 鏡夜はとりあえず無人の脱衣所を出て廊下に戻り一息ついた。鏡から出るはずなのになぜ風呂場の水から出たんだ?


 鏡夜の記憶は、魔王が入っていた湯船の中身を思い出す。透明ではなかった。綺麗に天井と照明を映す――緑色に染まった水だった。

 ナルキッソスは水面に“映る”自分に恋をしたと言う。……水も鏡扱いらしい。

(無法か?)

 鏡夜の発想すら超えて能力の応用性が高すぎた。

 ……だが、調べた甲斐はあった。得た情報もあった。……得たリスクもあった。次に魔王に会う時が怖い。ものすごく、どういう意味付けをしたらいいのかまったくわからない遭遇をしてしまった。

 最悪、湯船魔人呼びされてしまうかもしれない。

 けれど魔王を避けるわけにもいかない。呪詛に悩まされる鏡夜は、呪詛の最高峰の存在である魔王と会話をする必要がある。

 逃れられないタスクである。



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