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決着の決塔  作者: 旗海双
第2章
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第二話「〈偶像聖女〉ミリア・メビウス」

 決着の塔、攻略支援ドーム最上階、六階。チンッ、と音を立てて開いた巨大なエレベーターから出ると、真正面に大きな木製の両開き扉があった。左右には、ぐるっと囲うように通路が伸びている。

 球を上半分に割ったような形をした天井である。六階建ての現代高層ドームに今いるのを鏡夜は強く感じた。

 木製の両開き扉には、【ホール】【終日利用】【ミリア・メビウス】といった金色の名札が取り付けられている。どうも最上階ホールは予約制で使えるらしい……。

 鏡夜は髪を戸惑ったようにいじくると、ホールへ――入らず、右側の通路へ向かった。


(なんとなく――気後れというのか、悪い予感というのか、そういうものを感じるな)


 まるでとてつもない大蛇が眠ってる洞穴に孤立無援の無策で突入するような、悪い想像から生まれる惑いが、即座に入室する賢明な行動を避けさせた。

 他者が誰もおらず、好奇でも危機でもないのなら、灰原鏡夜とはこんな男だ。他人への恐れから、遠回りをするような、弱さがあり。そして自身の弱さを決して嫌ってはいない。


「うん?」


 鏡夜は丸く続く廊下の途中に、鈍く銀色に光る未来的自動販売機が一つ、壁にめり込むように設置されているのに気づいた。

 鏡夜はふらふらと自動販売機の傍に寄る。自動販売機の前を通り過ぎ、名残惜しそうに何度も振り返りながら立ち止まらずに歩みを進める。

「アルガグラムコーヒー……、ねぇ」

 興味深い。飲んでみたい。だが持ち合わせがない。所持金ゼロ。いつか小銭を稼いだら買いに来ようと思う。超多角的に活動しているアルガグラムを何度も目撃している。クオリティは全て高かった。今度も期待できる、と鏡夜は先ほどの重い足取りとは打って変わってルンルン気分で歩き――再びホールの扉に辿り着いた時、思い出したと足取りを重くした。

 一周してしまったらしい。だが有意義な寄り道だった。寄り道、無駄な時間などといった概念を失くしかけていたので、有益かつ無駄な行為ができて少し嬉しい。

 だからこそ意を決してホールに突入できる、と理由にもならない理論づけして決意を固めて、鏡夜はホールの扉を開いた。



 まず感じたのは薄暗さであり――次に感じたのは明るさだった。天井から降り注ぐ光がステージに当たり、椅子に座っていた一人の女性を照らす。

 ふわふわとした青髪の柔らかな表情をした女性。スタイルの造形美を強調する、ギリギリのラインで上品さを保つ青いシスター服の女性はふわりと立ち上がると、にこっと笑ってお辞儀をした。

 誰であろう、彼女こそ《聖女》――ミリア・メビウスである。



 かつての栄華、失われた神話の栄光を研究し切望する、望郷教会の代表。どんな老獪なCEOだがCOOっぽいものが出てくるのかと思えば。

 《聖女》を想像してくださいと質問されて、思いうかぶ二つの選択肢。戦う聖女と癒す聖女のうち、後者がそっくり目の前に現れたかのような、第一印象だった。


 なぜか背筋が凍る――。


「来てくださって、ありがとうございます」

 鏡夜は姿勢を正した。

「お呼びいただき、ありがとうございます」

 鏡夜は頭を下げた。

「ふふ、そんなに身構えなくてもいいですよ、私と貴方以外、誰もいませんから。安心してください」

 穏やかに、こちらを安心させようと声をかけるミリアに鏡夜は笑顔の仮面で応じた。

「お気になさらず」

「……少しこちらに来ていただけますか?」

 鏡夜は無言で頷くと、ホールのステージへと近づいた。一階にもステージホールがあって六階にもステージホールがあるなんて、どんだけイベントを開きたいんだここで、と鏡夜は緊張を誤魔化すためにいつもように脳内でツッコミを入れる。

 ミリアの足元まで来た。ミリアは椅子の上に置いてあった四角く硬い紙を取り出すと、さらさらと書く。そして屈んで鏡夜へ手渡す。

「サインをあげましょう」

 そして渡される色紙。有名店の壁とかに飾ってある有名人の色紙と同じような縁取りと材質だ。斜めに流れるような筆記体でMilia・Möbiusと書いてある。

 鏡夜はサイン色紙を片手に持ってまじまじと眺める。

「生まれて初めてサインをもらいましたね」

「光栄です! ブロマイドもつけちゃいましょう」

 そう言ってミリア・メビウスはポケットからブロマイドを取り出すと、鏡夜に渡した。

(アイドルかな?)

 残念ながら鏡夜はアイドル趣味に詳しくないのだが、連想したのはそれだ。えらくきゃぴきゃぴした、爽やかな笑顔とポーズを決めた水色のシスター姿をしたミリア・メビウスの写真――ブロマイドを渡された。

 鏡夜よりかは年上なのだが、圧倒的な自信と醸し出される魅力によって、なかなかに堂が入っている……アイドルとしてだが。

 由縁はともかくとして教会と名乗り、かつそのトップが自分の偶像を喜ばし気に渡すとは。

「ポスターもいりますか?」

「あ、ありがとうございます……?」

 さらに重ねてくるとは。やっぱりアイドルだな、もう言い訳のしようもない。と鏡夜はポスターを受け取りながら思った。

 サイン色紙とブロマイドと丸められたポスターをポケットに仕舞ったり、ベルトに差し込んだり脇に持ったりした後、鏡夜はステージ上のミリアへ言う。

「で、何の用です?」

「私のファンになってほしかっただけ……と言ったらどうします?」

「……ぴかぴか光るケミカルなライトの持ち合わせがないので、ミリアちゃんふっふー、と応援するのはまたの機会にしましょうと、解答します」

「残念です……」

 アイドルだと思った印象のままいつものように意地を張って虚勢で皮肉げに答えた鏡夜へ、ミリアは心底残念そうな表情で愁いを帯びた溜め息を吐く。

(やりづらい)

 また危険な兆候だ。冒険者は舐められてはいけない。それは侮蔑と嘲笑はもちろん、慈善へも向けられる。

 優しげで、柔らかく、お茶目で、好意的な女性。そんな魅力的なものにすっかり溶けて懐いて依存してしまうのもまた――舐められる。

 鏡夜は媚びたような愛想笑いをしたい欲求を戒めて、優雅に微笑する。ミリアは柔和な笑顔で鏡夜を見下ろす。

 まるで鏡のように、笑顔と笑顔で相対する。

 先に口を開いたのは、ミリアだった。

「私と組みませんか? 何が欲しいですか?」

 懐柔―――勧誘か。

「何が欲しいと思います?」

「女か金か権力か――が一般的な欲望ではないでしょうか」

(こっわ。こいつ――こんなはっきり言ってるのに)

 威圧感がまるでない。逆に恐ろしい。完全に、完璧に自己を支配している。自制心で態度を制御しきっている。

 意地と虚勢で塗り固めた鏡夜は、自分よりも出来の良い鏡を前にした気分になった。しかし、気圧されてしまうわけにもいかない。鏡夜はできる限りシンプルに答えた。

「違いますね、どれでもない」

「なら、なんです?」

「灰原鏡夜、ですよ」

「………」

 ミリアの教唆は成り立たない。欲しいものは灰原鏡夜である。魔人ではない、人間としての灰原鏡夜。

 だから――ありえない。何かに従うとか、所属するとか、欲望を追及するとか――心の余裕はまったくない。灰原鏡夜は決着を自分のためにしか使うつもりがないのだ。

「だから、貴女の誘惑は、残念ながら魅力的ではないです」

「傲慢ですね。傲慢の報いは恐ろしくありませんか?」

「恫喝も、残念ながら無力かと。報いって、何をするんです? 具体的には?」

「……本当に、傲慢です」

 鏡夜はにこりと笑った。鏡夜の家族はこの世界にいない。鏡夜の友人はこの世界にいない。鏡夜の仲間は圧倒的に強い不語桃音と、強烈に抜け目のない白百合華澄と異常なスペックのあるバレッタと、明らかに高性能極まりないかぐや、しかいない。

 誰もが、ただの刺客や陰謀でなんとかなるとは思えず――彼女たち自身で片づけてしまいそうだ―――さらに、根本的な問題として、信頼など最初からない。

 会ってまだ数日しか経ってないにも拘らず深い信用など得られるわけがないし得て良いはずがない。

 そして、それでよいのだ。アドリブでチームを組んで現場の機転でチームワークを発揮する。利用していると形容すればおおよそ正しく利用されていると表現すればもっと正しい――。

 だがあえて鏡夜が率先して裏切ると仮定してみると、さらに浮かび上がる問題がある。

 裏切った場合――白百合華澄を裏切る行為はパーティメンバーから外すしかできないが――彼女は特別顧問に戻るだけだ。そして彼女が齎すのは苛烈な報復だけだろう。意味がない。利点がない。

 不語桃音はもっとまずい。彼女の弱点につけこむようなスタイリッシュ裏切りムーブをせずに、格好悪い裏切りをした場合、何がどうなるかまったく予測がつかない。ただ鏡夜の直感がビシビシ伝えるところによれば、最悪たぶん死ぬと思う。鏡夜は死にたくないので、やはり裏切れない


 となると鏡夜自身へ直接的に何かするしかないのだが―――。

 鏡夜をなんとかできるそんなものがあるなら決着の塔の攻略に使えばよろしい。そんなものはないだろう。……ただのロジックでしかない。薄浅葱のように推理と呼ぶのもおこがましい。だから、ミリアの恫喝は、無力だ。ありもしない、虚像なのだから。

「―――なら〈神〉ですか」

 ミリアは静かに言った。

「〈神〉?」

「貴方は、〈神〉についてどれくらい知っていますか?」

「残念ながら、あまり知りませんねー」

 鏡夜はできる限りシニカルな態度で肩を竦めた。内心は冷や汗を垂らしていたが。〈神〉はなんだかんだと聞く機会を逃していた。まったくの不確定要素である〈神〉を駆け引きの材料にされるのは、始まりからして不利だ。

「では、聖女が、貴方に、説明してあげましょう」

 愛想良く、まるで長年の友達のようにミリアは語る。

「〈神〉とは、観測不能・干渉不能・交渉不可能の姿なき何かです。ただ、〈神〉は存在します。なぜ、我々は〈神〉の存在を確信しているのでしょうか?」

 まるで出来た講義のように、聖女は鏡の魔人に問いかける。鏡夜は即座に答えられた。

「呪詛と祝福でしょう」

 ミリアは頷く。

「祝福と呪詛を人類人外に施せる大本です。呪術師の呪いを扱う力も、聖職者の祝福を扱う力も、神から施術された力に過ぎないのです。はっきり言ってしまえば、〈神〉ではないものが扱う生命操作技術は、〈神〉にとって児戯に過ぎないのですよ。そして、本題なのですが。我々望郷教会は〈神〉をいくつか――恐らくですが、保持しています。興味ありませんか?」

「扱えない力には心惹かれません」

 ただでさえ鏡夜は過度に負担な呪詛に纏わり憑かれているのだ。

「ふふ、安心してください。制約や制限の条件は、我々が永い永い時間をかけて、文献と実地試験によって導き出してきました――。見えず、触れず、語れずとも。同じ刺激を与えれば同じ反応を返す――。ええ、そういうものでしょう?」

(……マジで神に対する敬意とかねぇんだな)

 極めて合理的な姿勢だ――、人道主義では、だが。扱いが考古学者にとっての恐竜や、医学者にとってのモルモットと同じだ。

 神代を望郷しながら〈神〉への敬意や信仰がまるでない。救う技術であり、操る力である。いつか華澄が言った“神ではなく神の御業を崇める不信心者の集まり”という言葉を思い出す。流石華澄。嫌になるほど適格だ。

「……〈神〉様って、呪いを解いてくれるんですか?」

「―――……賭けてみる価値はあると思いません?」

「はい、お断りします。誠実に答えてくださりありがとうございます!」

 餅は餅屋。呪詛については魔王に聞けと有口聖に言われたが、あの喧しいシスターはこうも言っていた。呪術師、聖職者ならおおよそ呪詛量、祝福量がわかる、と。

 聖女の測定結果は、“分の悪い賭け”だ。鏡夜にははっきりと、そんな副音声が聞こえた。

「では、私からも一つ、久竜晴水さんは貴女と同行していた時に失踪したそうですが、なぜ失踪をしたのですか?」

「回答すれば貴方は私と協力してくださいますか? ただの――合理的な、判断で」

「しないです。なら、いいです。そんな大切な用事でもないですし?」

 鏡夜は仕方なさそうに抱えた色紙を弄んだ。そして口を開く。

「ではもう、行っても……おおっと、一つ、よろしいでしょうか?」

「なんでしょう?」

 表面上は相も変わらず穏やかで柔らかなやりとり。

「ミリアさんは……〈決着〉についてどう思われます?」

「答えたら私の部下になってくれたりは」

「しませんね。答えたくなかったら答えなくてもいいですよ」

「せっかくですから……。〈チャンス〉でしょうか」

 ミリア・メビウスは一言一言確かめるように言った。

「今までずっと待っていた。かつての憧れを叶える絶好の機会。過去の――長い長い過去のわだかまりや因縁を解決し、天国のような世界を実現できる鍵。神代を終わらせてしまったのが〈契約〉なら、また新しい時代を始めるのも〈契約〉である。……と、私は思っていますね」

「なら、〈決着〉を手に入れたら貴女はどうします?」

「回帰を――ただ回帰だけを望みましょう」

「そうですか、ファンとして応援させていただきます」

 ミリア・メビウスは虚をつかれたように、きょとんとした顔をした。

「私を――応援すると? 敵対者である貴方が?」

「ええ、決着は私が手に入れますし、不幸なすれ違いこそありましたが――私にファンになって欲しいと言った貴女が嫌いではないので。お嫌でしたか?」

 素朴な理由だ。鏡夜が意地と虚勢を形作るような強者の姿がミリア・メビウスにはあった。鏡夜は自分の弱さを誇る人間だし、強さにかまけた展開が嫌いではあるが――誠実な、強さは決して嫌いではないのだ。

「いいえ……嬉しいです。灰原鏡夜」

 鏡夜は大げさに一礼すると、くるりと背を向けてホールから去っていった。

 灰原鏡夜はミリア・メビウスのファンとなった。些細なことである。


 鏡夜は出てすぐにあるエレベーターに乗り、一階のボタンを押した。扉が閉まりそうになり―――すっと、女性の手が扉を掴んで止めた。

 鏡夜は驚いてシミ一つない美しい少女の手へ注視する。

「少し、待ってくださいません?」

「華澄さん?」

 異物を感知して自動的に再び開くエレベーターのドア。その中へ、白百合華澄が滑り込んできた。

 閉まるドア。下がるエレベーター。

 鏡夜はぽかんと華澄へ言う。

「どうかなさいましたの?」

「どこに……いたんですか?」

 そうだ。おかしい。灰原鏡夜は、気まぐれに、六階部分を。ドームをぐるりと回った。鏡夜が回った回廊のどこにも白百合華澄がいなかった。

 白百合はすまし顔で言った。

「灰原さん。攻略支援ドームは塔を中心にした円形の建物ですの。つまり、ホールと廊下しかない最上階は奇妙ですわ。なぜかといえば、ホールと廊下の一部の間に、塔が通っているはずからですの」

「……構造の話です?」

 鏡夜は脳の中で想像する。つながった丸い廊下、中心にあるホール。上部分のホールと廊下には空白部分があり、空白に決着の塔が通っている……。

「丸い塔に、丸い廊下、四角いホール。組み合わせればデッドスペースができますわよね。つまり、わたくしが、いた空間ですわ。聖女さえもが油断ならない。なら、抜け目なく行動しておくべきと思いません?」

「盗み聞きしていたんですか」

「盗聴と表現するには、いささかスマートさに欠けておりましたけれどね」

 納得した。彼女が突然メール……便利で電子的な手段ではなく、人づての伝言なんて不確かなものを託した理由。

「ミリアさんが手紙を渡したところを見ていたんですね」

「ええ……時間がありませんでしたので、あのような形に。そんなことより、ずいぶん心惹かれておりましたのね。あそこまで惜しそうな貴方は初めてですわ」

 そう言って華澄は鏡夜に缶コーヒーを優雅に手渡した。鏡夜は手に持った贈呈品に表示されている名前を読む。

 先ほどのアルガグラムコーヒーだった。

(奢ってもらっちゃった……なっさけねぇ)

 ただまぁ、人の善意を無駄にする趣味も、コーヒーを無駄にする嗜好もない。

「どうも」

 鏡夜は微笑んでから、プルタブを開けると、アルガグラムコーヒーを飲んだ。

(うっま)

 まるで一滴の神の雫を舐めとるような味わい深さ。喉の乾きを癒す香りと瑞々しさ。今まで飲んだ経験がないほどの逸品だった。

 鏡夜は一口飲んで、完全に魅了されてしまった。できれば買えたらいいな、が、絶対に買う、という決意へ変わる。

 鏡夜は頬を緩めながらアルガグラムコーヒーを飲む。華澄は口を開いた。

「お気に召しましたの?」

 鏡夜は缶コーヒーから口を話して答える

「ええ、このコーヒーはとても良い」

「一滴の雫のごとく甘露だそうですし?」

「アルガグラム製品だそうですけど、ご存知でした?」

「技術者が知り合いですわ、機会がありましたら紹介しますの」

「是非……おっと、私と貴女の時間が空いた時にでも」

 今は塔の攻略中だ。趣味に走るわけにはいかない。


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