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決着の決塔  作者: 旗海双
第2章
27/59

プロローグ「終わりの袋小路(デッドエンド)」

 悪い怪物。「お前を奪う。名誉も、栄光も、未来も、過去も、全てだ。そして、私は私にとっての勝利を得るのだ。たった一人の人間によって世界は容易く形を変えるのだから」


 善き女。「なんて恐ろしいことを! たった一体の魔物が何かを決め、何かを為し、世界の行く末を左右するなど! 貴方は世界よりも重くはない、そんな当然のことも貴方の目には見えないのですか!」


 悪い怪物。「私の目には私にひれ伏す者どもだけが映り、他はみな無残なしかばねとなるのみだ。他者など軽い。お前は私よりも軽い。なるほど、私の考え違いだったようだ。お前は世に語られるほど偉大ではない。ならば用はない。とくと失せるがいい」


 善い女。「貴方は。何も、大切なことがわからないのですね」


 悪い怪物。「大切なことがわからないのはお前だろう?」



 〔勇者と魔王のジョーク集 【囚われの聖女と怪物】より抜粋〕



 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 速報約治・ニュースサイト 1000/1/2 17:57


 灰原鏡夜とは何者なのか?


 決着の塔挑戦者として突如現れ、そして常識外れの快進撃を続けている人物がいる。彼は、先日クエスト『カーテンコール』を打倒し、そして、当記事を書いた当日に――数日も経っていない! ――第一階層を、さらに第三勢力【Q‐z】が差し向けた新たなロボット(名称不明、塔関係者が攻略スピードに追い付けていない証左だと考えられる)を討伐して攻略したと確認が取れた。

 彼――灰原鏡夜とは何者なのか?

 そして、タイトルの問いは誰に発するべきなのか。


 そもそも本人に直撃できないのが、かなりの問題である。彼の所在地である絢爛の森は徹底した保護区域であり――絢爛の森管理人である不語桃音は依然として沈黙を貫いている。というより、不語桃音は沈黙の呪い(神代の、だ!)を受けているので、突撃しても何も得られないだろう。

 では、決着の塔攻略支援ドーム(長い名前だ、略称くらいつけていないのか)が答えられるのだろうか。

 筆者は取材を申し込み、快く引き受けてはくれた。とても丁寧に対応してくれた――が、残念ながら私は四時間ほど粘りに粘ることになってしまった。迷惑をかけてしまったと謝罪したいが、当然受け入れられなかったのだ。

 国際関係及び種族として信任を受けた、契国政府が、まるで灰原鏡夜氏を把握していないなど!

 完全な謎の人物、それが結論だ。。足跡すらない。本当にそんな人間がいるのかとすら思ったほどだ。当然人間体の祝福及び呪詛の方面も調べたが、人間体の呪詛に適正がある一人の冒険者は、灰原鏡夜と別人なのは確認している。

 決着の塔の挑戦者は信頼性の高い存在がなるはずなのに、逆説になってしまっている。決着の塔の挑戦者になったことによって、胡散臭い、身元も知れぬ人物が信頼性の高い存在となっているのだ。

 明らかにおかしいにも拘わらず、さらにとてつもない懸念が重なる。

 クエスト『カーテンコール』を誰も倒せず、倒せたのは灰原鏡夜率いるパーティである。

 であるのならば単純な帰結としてもっとも強い彼が! 決着を手に入れる可能性が高いのではないか。


 我々は代表を送り出したのであって、灰原鏡夜氏の願いを叶えるために灰原鏡夜氏を送り出したわけではないのだ。


 国家関係者及び塔攻略関係者、そして何より灰原鏡夜―――灰原鏡夜氏自身が、己の来歴及び願いを、きちんと説明すべきである。

 決着とはすなわち世界を改変するもっとも大きなものなのだから。


 関係各所には、取材した当日に、急いで本記事を書き上げ発表した意味を考えてほしい。

 ―――――――――――――――――――――――――――――

 追記:本記事は急速に拡散した。灰原鏡夜一行が、第一階層を凄まじい速度で踏破し、大獅子とクエスチョン『パレード』(取材により確定)を攻略した夜には、驚くほどのコメントと反応があった。勢いの強さから考えるに――当然の帰結ではあるが、世界へ広がるのは時間の問題だろう。

 民意が決着の塔攻略支援ドームおよび灰原鏡夜氏を動かすことを期待する。

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